• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+

家村浩明のブログ一覧

2014年10月22日 イイね!

コンパクトFRは、やっぱり、こんなにおもしろかった──シルビア

コンパクトFRは、やっぱり、こんなにおもしろかった──シルビア§日付けのある Car コラム
§『アクション・ジャーナル』selection

ぼくより年長の──といってもたった一つだけだけれど、その友人がクルマについて、こんなメイ台詞を吐いた。次期購入車は、某国のB車に決めている。なぜなら、そのクルマが「FR」だからである。そしてそれは、ボケ防止にとてもよいと思っている。むろん、マニュアル・シフトにする……。

これはわかる! そして、20世紀の世紀末に立ち向かわんとする初老(!)にとって、クルマというものはそのような存在であることも示す、貴重な発言でもある。(そう、19世紀と20世紀の差異は「核」だけではない、クルマも忘れてはならない)

もうひとつ証言を記そう。あるラリーストに、多くのラリー屋さんがなぜ後輪駆動車を好むのかを訊いたことがある。(今日、勝つためには四輪駆動が必須だが、その事実とは離れてである)その答えは、なかなかだったね! 

いわく、クルマを「曲げる」には二つの方法がある。ハンドルを切ることと、アクセル・ワークによってテールをスライドさせることである。「FR」つまり後輪駆動車は、「FF」と違って、この二つの方法でクルマの向きを変えられる。

たとえば、あるブラインドコーナーがあるとする。FRなら、コーナーの入り口からアペックス(頂点)まで、まず四輪ドリフト/カウンターステアで入って(滑って)行く。そのコーナーがもう終わっていて直線に連なってるとすれば、すかさずグリップ走行に戻して、コーナー出口に向けて立ち上がっていく。そのコーナーが予想よりなおも曲がっているとすれば、アクセルでさらにクルマの向きを変えて、出口に向かう態勢を作ればいい。

FFでは、とくにこの後の方の場合、アクセル・オフでノーズの向きが変わることを期待するしか策がない。その“受け身”のところがイヤだし、曲がる方法がハンドルだけというのもイヤなのだ──。

ウーム……。この二つの意見の中間ぐらいのレベルにおいて、そして88年FF全盛時代の中において、ライトウェイトFRはやっぱり価値があると思う。右足=アクセルで向きを変えるなんてドラスティックなことはできなくても、また、ボケにはまだ遙かな年齢であると信じていても、FRという方法が持つささやかな緊張感は、クルマを操ることのおもしろさを改めて身体に教えてくれる

新しいニッサン・シルビアがスペシャリティ・カーを標榜し、サーキットやラリー・シーンに登場することはないと宣言しつつも、以上の意味において、シルビアとは紛れもなくスポーツライクなクルマである。またFRとは、こんなに曲がりやすいクルマだったのかと実感させてくれるニューモデルでもある。

ぼくのチョイスは、ノンターボ、ノン・ハイキャス。これで十分に速くて“fun”であり、また分相応……。さて、かの年長の友人はどうするだろうか?

(1988/06/21)

○89年末単行本化の際に、書き手自身が付けた注釈
シルビア(88年3月~  )
◆FR車は前輪──つまりステアリングを回すと“動くもの”のところにエンジンのパワーが来ない。逆に言うと、エンジンのパワーや爆発や振動がステアリングホイールに侵入しない。表現がわかりにくいかもしれないが、要するに、ステアリングのみを独立させて操作できる。この軽快感の魅力を、後輪駆動車は基本的に有している。久々の「小さなFR」シルビアによる発見がこれだった。それは、この国のクルマ・シーンにスポーツ感覚を思い出させたFRルネッサンスでもあった。
Posted at 2014/10/22 11:24:09 | コメント(0) | トラックバック(0) | 80年代こんなコラムを | 日記
2014年10月19日 イイね!

「外車」衰退の時代へ。ローバーの自己批評が興味深い

「外車」衰退の時代へ。ローバーの自己批評が興味深い§日付けのある Car コラム
§『アクション・ジャーナル』selection

プレ90年代というべき今日、「外車」ってものにどう対処するか。男として(女でもいいけど)けっこうクルマに対してスレッカラシでもある──つまり「眼」を持った男として、どういうスタンスを採るべきなのか。ようやくひとつ、答えが見えたような気がする。

その(1)。“コワれても好きな人”として、エンスージァストってのをやってみるか。多少のマイナートラブルには目をつぶり、愛のある(!?)外車生活を選ぶか。

その(2)。こんなに良くなった日本車に何の不満があるのか! 日本製のクルマに欠けるものがあるとすれば、それは「ブランド性」と、センスというか雰囲気というか──それは単にストレンジであることだけかもしれないが、要するに、そういうものだけである。クルマは、動かなければ、ただの粗大ゴミ。きちんと動いて、働くことこそ、日常をともにするトランスポーター(道具!)としての基本要件であり、最低限の資格でもある。マイナートラブル? とんでもない! 我、わが国産車よりのみ、パートナーを選ぶものなり……とするか。

突き詰めると、この二タイプのどちらかに収束されるのではないか。ワタクシ、こう思います。

それで、タイプ(1)にして、その精神ややカタめの人は、西独車のどれかとか、せいぜいプジョーあたりに落ち着く。極めちゃえっ!てな向きは、日常車としてもランチア、シトロエンあたりまで行っちゃいますかねえ……。

タイプ(2)ですと、黙ってブルーバードをセレクトしてたり、静かにコロナと暮らしてたり、フェスティバGTで楽しんでたり、シーマでベンツをカモったりしてる、と。まあ、そういう状況かと思われます。

ただ、どちらにも言えるのは、どっちもかすかなガマンがあるということでして、(1)でいえば、もっと信頼性があれば、さらにいいのにィ……であり、(2)においては、デザインやディテールがやっぱり“コクサン”なんだよな……という嘆きであろう。それはたとえば、無用なツートン趣味とか、不可思議なケバさとか、渋さの不在、とかですね。

さて、どっちにしてもかなりウルサ型である、この(1)と(2)を、ともに満足させるようなアプローチというものは果たしてあるのか……というと、あった! それは「欧州コンセプト/ジャパン・メイド」を買うという“第三の道”である。VWサンタナのノックダウン、カリフォルニア・デザインのニッサン・エクサ。こうしたモデルはいくつかあり、いすゞのジェミニも入れてよいかもしれないが、なかでもおもしろいのはローバー・スターリングという存在であろう。

これは日英共同開発で、それもわが日本メーカー(ホンダ)がハードの主たる部分を担当し、デザイン/インテリアなどのソフト部門を英国ローバーがやるという、組み合わせとしても優れて、しかも高度なレベルでの相互補完をその方法論としている。ディテールにおいて、英国風高級車の雰囲気を醸し出すべく、ローバーはかなりこだわっており、好ましく誇りを保つ。

そしてキメは、このクルマが、わがホンダの狭山工場でフィニッシュラインを越えて商品になるということである。……と書くと、何か“ネオ・ソンノージョーイ”みたいでちょっとヤなんですが、ニッポン・メイドというのは、やはり気配りに満ちていて、細部まで鍛えられている。

つまりローバー・スターリングというのは、「外車」であって、なおかつ「国産車」なんですね。それで、このカッコの中の「プラス部分」だけが一台になってる。(へへへ……(笑))思わず、不謹慎な笑いが出ちゃうくらいに、イイ線でしょ? 

88年モデルのスターリングは、エンジンが2・7リッターとなり、サスペンションにも手が加えられて、ドライバーズ・カーとして好フィーリングを示すクルマに仕上がった。スレッカラシのウルサ型に試してほしい、今年のローバーです。

(1988/05/10)

○89年末単行本化の際に、書き手自身が付けた注釈
ローバー827スターリング(88年~  )
◆「純・国産」……。クルマにおいて、いまにサベツ用語としてこれが出て来ると、ぼくは夢想している。ネジひとつとして外国品じゃありませんぜ、どうですか、お客さん!……というやつである。
ところでローバーは、スターリングの、このあまりにも複雑な成り立ちを厭うたのか、日本で販売するローバー・スターリングはイギリス製を輸入することとした。というわけで、本コラムのテーマは、89年以降、その効力を失うことになった。ローバーはいま「英国車」である、念のため。
Posted at 2014/10/19 21:03:51 | コメント(0) | トラックバック(0) | 80年代こんなコラムを | 日記
2014年10月18日 イイね!

すぐれた日常使用車として、そして、新型呈示の転換として──コロナ

すぐれた日常使用車として、そして、新型呈示の転換として──コロナ§日付けのある Car コラム
§『アクション・ジャーナル』selection

われわれは「よいクルマ」という形容句を与える際に、どこかで、速いとか凄いとかいう要素を基準に判断する場合が多い。いわゆるモーター・ジャーナリズム関係の人々はさらにこの傾向が著しく、加えて、新しいメカニズムの盛り込み具合が、その採点に多大な影響を及ぼすのも常である。87~88年の“今年のクルマ”という賞典が、同クラス最強の心臓を持ち、「4」の付く新メカは何でもあり……として作られた三菱のギャランに与えられたのは、決して偶然ではないのだ。

ニッポンにおけるクルマ史とは、要するに、開発史と発展史である。どこまで来たか、何を拓いたかで、新車は評価されるべし……という考え方がその底流にはあり、これはジャーナリズムのみならず、一般のクルマ・ユーザーの内にも、けっこうしっかりと存在する視点であろう。

……困ったもんだ、とは言わない。そのような有形無形の(市場からの)サポートがあったからこそ、後発ではあったけれど、日本の自動車工業は今日の世界的水準まで駆け上ることができた。さらに言うなら、このように「走りつづける」特性は、クルマ世界のおそらく本質であり、これはべつに我がニッポンのみが、いつも過渡期でありつづけたわけではないと思う。

日本のクルマが、主にここに記したような性質を重視して、その歴史を転がしてきたとすれば、その“色”が薄い国もあれば、そうでないメイクもある。ただ確実に言えるのは、伝統もいいけれど、「昨日」といかに訣別するか。どう捨てて「明日」を獲得するか(したか)が、すべての自動車メーカーのテーマであったことだ。

──と、すこし話が飛んだので、冒頭のテーマに戻す。ハヤくもスゴくもなくても、よいクルマというのはある。いや、当然なのだが、この事実は、この国の自動車ジャーナリズムにおいてはしばしば消失する。具体例をひとつ挙げれば、プジョー205とは“よくできた”クルマであるが、その「GTI」とは、あくまでシリーズ中のスペシャル・バージョンであると思う。然るに、その“ホットハッチ・バック”の熱さのみをピックアップして、これぞ205なり!とする雑誌、あなた、見たことありません?

さて、ここまでは、実はマクラである(長いけど)。とりたてて速くなく、ハイ・メカニズムの嵐でもなく、世界初や日本初はとくになくても、とても良いクルマができたこと。足まわりやボディワークの、いわば目立たぬところにカネと意欲を費やした新型車が生まれたこと。

さらには、そういう成り立ちの──つまり、これまでの日本車に見られないフルチェンジを行なえるような土壌が、この国にもついに出来上がった。これは、ひいては日本メーカーの自信の現われであり、「国産車」の売りものがひとつの転換期を迎えたことでもあるだろう。

「1987年」は、やはり重要な年だった。ブルーバードとカローラを生み、さらに年末に、『アクション・ジャーナル』今週のクルマであるコロナが発表になったのだから──。

メカニズム的にはとくに新しくはなくても、既存のものをしっかりとツメて行って、新型車にそれを盛り込む。こういうフルチェンジを欧州メーカーがやると、「さすが……」という声が上がるなら、ぼくは同じような評価をトヨタに捧げたい。コロナは十分に「新しい」。

サイレント・マジョリティという言葉は死語になりかけているようだが、自動車生産国・各国の「マジョリティ・カー」を並べてみた場合に、コロナほど、文字通りにサイレントなクルマはおそらくなく、そして、乗り心地やその“揺れ方”の気持ちよさなどにおいても、まったく他国製に劣るものではない。

デザインは……。これは空力的要請を踏まえつつも、見事にブランド性や“識別性”を確保している造型は、他車にはけっこうあって、これはちょっとコロナの負けかもしれないが。

でも、他国のユーザーと比べて、ニッポンのサイレント・マジョリティは幸せだとは、やっぱり思う。たとえば、このコロナを、この価格で、あっさりと日常車として手に入れ、その成熟を享受することができる。その成熟があまりにも日本的に過ぎる……とは、余計なお世話というものであろう。

(1988/04/12)

○89年末単行本化の際に、書き手自身が付けた注釈
コロナ(87年12月~  )
◆80年代の後半は、やたら「ソフト重視」の時代だった。ハード主義のそれまでの自動車ジャーナリズムの“失職”の時代だった。そして、素人がクルマについて発言力と影響力を得た時代でもあって、本コラムも(その書き手も)まさにその時流に乗っている。ただ、来たるべき90年代では、ふたたび「ハードの気配」が浮上すると、ぼくは感じている。イメージや感性はやはり主役だろうが、それを裏打ちして保証するハードウェアの存在に関心がゆく時代──。クルマへの一般の人々の“接触水準”がワンランク上昇する。こう言い換えてもよい。
Posted at 2014/10/18 18:33:40 | コメント(0) | トラックバック(0) | 80年代こんなコラムを | 日記
2014年10月17日 イイね!

テーマがハッキリしているクルマのおもしろさ!-プロボックス&サクシード part2

テーマがハッキリしているクルマのおもしろさ!-プロボックス&サクシード part2もちろん二代目プロボックス/サクシードは、ビジネス・ユースという視点からクルマのインテリアをいろいろと見直した……というだけの新型車ではない。初代から10年以上が経ち、2010年代半ば時点での「実用車」とはどういうものか。それに対するトヨタ&ダイハツからの答えがいろいろとある。

たとえばミッションは、マニュアルシフト(MT)でもトルコンATでもなく、CVTのみとなった。今日、こと燃費を考えるなら、MTよりもCVTの方が上位だとは、国内各社の一致した見解だが、これに加えて、近年の運転免許事情も絡んでいるという。仕事でクルマを使うような会社(カーディーラーを含む)であっても、もうMT車では業務に差し支えるのだ。いまや免許はAT限定時代であり、これしか持っていないという社員やスタッフが増えている。

エンジンでは、初代にはディーゼル仕様もラインナップにあった。ただ、これはデビュー後数年で消えている。そしてそのまま、ディーゼルは二代目でも復活していない。まあ初代の場合、ディーゼル仕様は売れなかったのだろうし、従って二代目ではその点は割り切り、ガソリン車だけに開発を集中したということであろう。また、昨今の「プロ/サク」カスタマーをいくらリサーチしても、最新ディーゼル車の充実と迫力を体感していなければ、ディーゼル待望論が出て来ることもなかっただろう。

ただ、私なりの提案も含んで言えば、この2010年代、日本市場がディーゼルを見る目は変わりはじめている。マツダが“ディーゼル攻勢”を仕掛けているが、それもマーケットからのしっかりした反応があるからだ。

「プロ/サク」のような“リアルな実用車”を考えた場合には、ハード的にコスト高につくディーゼルは不向き──。トヨタ&ダイハツはこういう判断をしたのかもしれないが、しかし、リアルなことを言えば、国内では、軽油はガソリンよりも安価である。“働くクルマ”=プロボックス/サクシードが考える「ディーゼル」とはこういうものだという提案は、いずれ見てみたいと思う。

初代といえば、当時からこのモデルはシートにこだわってきた。初代の試乗会で印象的だったのは、「こういう商用車の方が、乗用車よりも、ドライバーがクルマに乗っている(乗り続けている)時間は長いんですね」という開発陣の言だった。ただ、そうであっても、高級車のような“リッチな”シートは付けられない。ゆえに、このモデルはシートの「基本形状」そのもので勝負している。そんな気概のコメントもあった。

この二代目でも、シートには力が入っている。カタログのコピーを借りれば、「腰から背中をしっかりと支えるために、シートの各所を最適化」したものが装備され、たしかに、どこか特定の場所(たとえば臀部)に負荷を感じるような形状にはなっていない。また、初代に比べて、全体にクッション性が高められ、座った感じがぐっと“豊か”になった。初代の場合は、その気概や形状はともかく、座っていて、どうも薄くて硬いな……という感は拭えなかったのだ。

そして、シートにもつながる足まわり全体の動き、それから生まれる走行フィールも、新型は向上している。何より「接地感」がある“足”であり、路面からのインフォメーションを常に感じつつのドライビングができる。また、市街地で最も多用する速度域、時速50キロ以下の低・中速域での“足”の動きに、硬さやカドがない。シルクのように滑らかな……というタイプではなく、一瞬、肌触りが硬いかなと思わせつつ、しかし結局は身体に馴染むコットンの着心地に通ずる質実剛健な乗り味で、“働く乗用車”として、これもいいと思う。

この“働く……”でいえば、一新したかったというフロントマスクも、そのコンセプト通りの仕上がりだ。いまにして思えば、初代は“光りもの”も配しつつ、真っ正面から見たら「セダン」に見えるでしょ風の無意味な背伸び感があった。しかしこの新型は、商用車(ライトバン)として、そのへんが吹っ切れている。フロント周りは、タフにも見え、一方ではどこか流行の“ユル・キャラ”にも通ずるような、おもしろい顔をしていて、「プロ/サク」として成功したデザインになっていると見る。

最後に、バッグ置きスペースやデスク/テーブルもいいが、私が最も「プロ/サクらしい」と感じた装備について触れる。それはエアコンのコントロールで、このクルマ、2010年代の最新モデルであるにもかかわらず、いわゆるオートエアコンではないのだ。

オートエアコンは、温度を設定すれば、それに「なる」ように自動的に作動するが、見方を変えれば、温度と風量は別々には設定できない。この状況の時は温度はこのくらいで、そして風の量はこのくらいが……といった、その時にカスタマーが望む選択ができない。このクルマはオートエアコンにはしないでくれ!──これもまた、いま「プロ/サク」を使っているカスタマーから出て来た強い声であったという。

そのエアコンの操作系は各パーツが大きく、そしてデザインも“彫刻的”で、なかなかいい感じだ。タッチパネル式と違って、こういうコントロールの方が運転しながら手探りだけでやれる。アナログ上等!……と、リサーチの際にカスタマーからの声があったかどうかは知らないが、新型プロボックス/サクシードで、実は一番気に入ったのは、この“アナログ感”溢れるエアコン操作と、そのデザインであった。

(了)
Posted at 2014/10/17 07:32:04 | コメント(0) | トラックバック(0) | New Car ジャーナル | 日記
2014年10月14日 イイね!

テーマがハッキリしているクルマのおもしろさ!-プロボックス&サクシード part1

テーマがハッキリしているクルマのおもしろさ!-プロボックス&サクシード part12014年9月に、12年ぶりの新型となったトヨタのプロボックス/サクシード。このモデルには、初代が登場した時(2002年)から注目していたが、二代目では、自身が持つ「テーマ」をさらに明確化して究める、そんなモデルチェンジが行なわれたようだ。

そして、その開発時に行なわれたというカスタマー調査と手法がいかにもトヨタ的(このモデルにはダイハツも深く絡んでいるが)というか、超・現場主義で興味深いものだった。その調査から生まれたであろう、開発陣によるさまざまな判断。また、リサーチの結果をもとにしての新型の改良など、とにかくこのクルマは、いろいろとおもしろいのだ。

時間の流れとしては、まずリサーチがあり、そこからのコンセプト作りになったはずなので、まずは二代目開発にあたって、開発陣がどんな調査をしたかを見てみる。聞けば、それは徹底した“聞き込み”であったようだ。通り一遍のアンケートとかグループ・インタビューといったことでなく(これらももちろん行なっただろうが)エンジニアが実際に「現場」へ出向いて、直接に聞き取りをする。この場合の「現場」とは、プロボックス/サクシードの「車中」である。

ほとんどが社用車や営業車として使われるであろうこのモデルだが、その実態はどうなのか。誰かそれを確認したのか? おそらく、こんな根源的なギモンがフッと生じ、そこから、実際にどう使われているのかを、開発エンジニアの目で見るということになったのだろう。そして、どんな“取材”が最も効果的かということから、丸一日、カスタマーのクルマに同乗するアイデアが出て来た。

ただ、トヨタ的なモノの考え方では、これはそんなにフシギではないのかもしれない。知る範囲でいえば、たとえばクラウンの開発にあたって、「クラウンのお客様」とはいったいどんな方々なのか。これを探るため、開発陣がクラウン・カスタマーの居宅に行き、面談しながら「客像」を体感して行く。そういうことを当然のようにやってきたのがこのメーカーだからである。

登場した二代目「プロ/サク」(社内ではこう呼ばれているらしい)は、フルチェンジされた新型であるにもかかわらず、Aピラーから後方の車体には、ほとんど手が加えられていない。この部分での変更点はテールランプの細部のみであり、こういうこと(無変更)が自信を持ってできたというのは、やはり“聞き込み”リサーチがあったからだと思う。荷室には問題はない、ここは変えないでくれ──こういうカスタマーの声が多かったのだ、おそらく。

そのほか、クルマ全体のレイアウト、車体のフォルム、そしてヒップポイント(HP=着座位置=前席座面の地上からの高さ)の「585ミリ」なども、新型でありながら変更されていない。新型開発に際して、何をして、何をしないか。この点がおそろしく明確なのがこの二代目なのだが、それはやはり、現場での聞き取り調査の故であると思う。

一日、カスタマーと同行していれば、カスタマーはリラックスするだろうし、そんな時間の中で、エンジニアはカスタマーの等身大のコメントが聞ける。ちょっとした彼らの呟きが改良のヒントになったこともあっただろう。かしこまってインタビューなどされると、どうしても人は構えるものだ。そして、何かイイコトを言おうとして、肩に無用の力が入る。また、メーカーへの無意識の“媚び”も混じってしまうかもしれない。しかし、エンジニアの方が彼らの仕事の場に出向くという格好なら、主役はカスタマーであり、彼らのフィールドでの本音も聞けることになる。



何を変えなかったかは前述したので、ここからは、新型では何が変わったか、追加されたかを見ていくことにする。新型「プロ/サク」には、そうしたユーザー取材から生まれたと思える装備がいっぱいなのである。

まずは、ビジネスとしてクルマを使うドライバーは、手ぶらではクルマに乗らないという発見だ。彼らはほぼ例外なく、ビジネスバッグを携えている。そうであれば、その置き場があるべきだろう。また、納入先との打ち合わせに使う書類も運ぶから、それをきちんと収める場所もほしい。

もちろん、今日のビジネスにスマホや携帯電話は必須であり、それ専用の置き場所があるべきで、その充電にも万全を期したいところだ。さらに、さまざまな仕事やその準備をするために、車内にはしっかりした“デスク”がほしい。また、運転する際には上着は脱ぎたいので、ハンガーでそれを掛けておくためのフックも要る

そして、車内での飲食も、外回りの営業ではおそらく仕事のうちである。昼になっていちいち食堂に入るより、コンビニなら駐車スペースは基本的にあるし、そこで弁当でも買って車内で済ませれば、時間の節約になる。その場合、さっきの“デスク”は、ダイニング・テーブルとしても使える。飲み物にしても、クルマで一日動き回るのであれば、1リットル入りの紙パックをドーンと置いておく方が、はるかに面倒が少ない。

まあ、こうして書き続けるとキリがないのだが、新型プロ/サクのインテリアには、こうした“働く乗用車”としての機能と装備がいっぱいである。クルマを使って仕事をするという場合に、こうなっていればいい、あれがあれば便利だろうな……といった願望が、さまざまな装備や工夫によって、ほとんど充たされているのではないかと思う。

(つづく)
Posted at 2014/10/14 17:26:28 | コメント(0) | トラックバック(0) | New Car ジャーナル | 日記
スペシャルブログ 自動車評論家&著名人の本音

プロフィール

「【 20世紀 J-Car select 】vol.14 スカイラインGT S-54 http://cvw.jp/b/2106389/39179052/
何シテル?   01/15 10:59
家村浩明です、どうぞよろしく。 クルマとその世界への関心から、いろいろ文章を書いてきました。 「クルマは多面体の鏡である」なんて、最初の本の前書きに...
みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

<< 2014/10 >>

   1 2 34
56 78 91011
1213 141516 17 18
192021 2223 2425
26 27 282930 31 

愛車一覧

スバル R1 スバル R1
スバル R1に乗っています。デビュー時から、これは21世紀の“テントウムシ”だと思ってい ...
ヘルプ利用規約サイトマップ
© LY Corporation