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初めてのマイカー、30ソアラを買ったのは95年の夏だけど実はその前に春に一度商談をしていた。

ペーパードライバーだったけど一念発起して車を買うことにした。
東京ではソアラは東京トヨペットと東京トヨタで取り扱っていた。
車の買い方なんて知らないので平日の午後にアポなしで市内にあるトヨペット店に行くと誰も出てこない。
客だと思われなかったんだろう。
しばらくして出てきた事務のネーチャンに「ソアラを買おうと思ってるんだけど…」と言うと
カタログをよこしただけで見積もりは作ってくれなかった。

次にトヨペットでの経験を生かして前もって電話してから数駅離れた東京トヨタへ行った。
今度はテーブルに案内されてジュースが出てきて見積もりを作ってくれた。
若手セールスが応対したが「たたき上げのセールス」といった感じの年配の課長代理が同席した。
70万円分のオプションをつけて（あの頃はナビ、ABS、エアバッグがオプションだったからね）
ある程度の値引きも出たのでそろそろハンコを押すかと思った時、
当時は実家暮らしだったので両親から「親のスネかじってるのにそんな高い車買うなんてふざけるんじゃねえ」と横ヤリが入った。
いきなり「車を買う」と言い出して
さらに「予算は財形や定期をかき集めた有り金全部」というのだから待ったをかけられても仕方ないかもしれないが、
「カネなんかまた稼げばいいじゃん！」と言い放ったオレも若気の至りだったと思う。
今だったらあんなこと言えないよ（笑）
ハンコを押す直前まで行ったのだが結局契約はできなかった。

それから数ヶ月の親子ゲンカを経て両親を押し切り夏に再び東京トヨタへ行った。
今度は新人らしきセールスと前回の年配の課長代理が応対した。
たぶん新人に最初の売り上げを付けてやろうという親心だったのだろう。
「この前はすいませんでした。前回の見積もりはもう無効ですよね？」と言うと
「いえ、一度出したものは引っ込められませんよ」と答える課長代理。
トントン拍子に話は進み今度はハンコを押した。

ハンコを押して1〜2週間後ぐらいだったろうか、
セールスと課長代理が「成約のお礼に」と突然ウチを訪ねてきた。
まだ納得していない母がトゲトゲしく「あんな高い車買うの反対なんだけどね！」と言うと
課長代理が穏やかに「お若い方ですからスポーツカーに乗りたいんですよ」。
二人が帰ってから「車のセールスってもっとガラの悪い人かと思ってた」と母が言ったが、
それからはあまり車のことをとやかく言わなくなった。
あの一言で母を丸め込んでしまったということなのだろう。

BMWに乗り換えてからもずっと保険はあの東京トヨタで更新していたけどそれはあの課長代理に義理を感じていたから。
あのころ50代ぐらいだったからとっくに定年になっていると思うがまだお元気だろうか、あの課長代理。
昨日のブログで「お若い方」という言葉を使ったのでふとこんな古い話を思い出した…。

ソアラには10年乗ってたけど「満身創痍」三部作で書いた大きなアクシデントは全て前半5年の間の出来事。
後半の5年は大きなアクシデントも無く、通勤や買物のアシとして順調に距離を重ねていた。

ただ、事故の影響もあったのかもしれないが5〜6万キロからボディのヤレを感じ始めた。
職場近くに借りてる駐車場は砂利敷きで所々にデコボコがあるんだけど、
そこを乗り越える時にボディがきしむ音が聞こえるようになってきた。
些細なことだけど毎日同じ場所を通っているとそういう事にも気づいてしまう。
それとショックアブソーバーをビルシュタインに替えてしばらくしてからタイヤショップのニーチャンが
「（ビルシュタインやミシュランは）国産車のアシじゃ良さを活かしきれない」
と言っていたのも心に引っかかっていた。
そんなこともあり「ドイツ車ってどんな感じなんだろう」と気になってきたんだけど、
ソアラに乗っている間に住宅ローンを抱える身になってしまったので大きな買物をする勇気は無かった。

エンジンやミッションといった大きな故障をしたら買い換えかな、と漠然と思いながらも
現実的には乗り換えを考えていなかったら2月にエアコンが故障した。
それまでにも効きが悪くなり何度かガスを補充していたけど、
環境問題のせいで原因を突き止めて修理しなければフロンをまき散らすだけなので補充はもうできないと言う。
で、ディーラーに修理の見積もりを依頼したら17万円だったのでその帰り道にBMWディーラーへ行った。
（BMWへ乗り換えた経緯は以前ブログに書いたので割愛します）

BMWディーラーから帰ってきたらトヨタのセールスさんから電話がかかってきた。
「修理代がけっこう高額だけど、どうしますか？」
「そうなんだよね〜。だから帰り道にBMWへ寄ってきたんだけどね…」
セールスさん大慌てで
「ちょっと待って下さい！絶対にまだ契約しないで下さいよ！！」

セールスさんはゼロクラウンの2.5アスリートをすすめてきた。
「社外秘」と書かれたファイルを持ってきた。
中身は契約後に客がキャンセルしてしまいディーラーが抱え込んでしまった車両一覧。
大幅値引きしてでも早くさばきたい在庫だった。
「あ〜、在庫車両を安く売るってことか…」と思ったら
「新車の注文をこれと同じ条件でやります」とセールスさんが言う。
ソアラに10年乗っていたから点検に出す時には
「（買い換えないから）儲からない客でごめんね」と冗談半分で私はよく言ってたんだけど、
「買い換えなくてもいいんです。
6ヶ月ごとに点検で入庫してくれるのでディーラーが現状を把握できてるのはいいお客さんなんです。
困るのは売ったあとに連絡が取れなくなってしまうお客さん。」
とセールスさんが言ってたのは本当みたいだ。

ほぼ同じ価格帯だけど全くタイプの違うE46ツーリングとゼロクラウン。
選択のポイントは「どちらを気に入るか」という私の主観のみ。
セールスさんは上司から「この客は絶対に逃がすな」と言われてたらしく私も心苦しかったけど、
既に心はBMWに傾いていたので長年の付き合いや情をもってしてもそれを覆すには至らず。
セールスさんへの私からの気持ちとして保険はトヨタディーラーへ残したけど上司から叱責されてしまっただろうな。
保険は昨年の7月の更新まではトヨタで継続してたけど、それで帳消しってことにしてくれないかな…。


ソアラに乗った10年12万キロでいろいろ経験した。
ペーパードライバーがいきなり買ったのは無謀だったと思うけど、
ソアラという高級車に乗ったからBMWを買うことが現実的な選択肢になり得たんだと思う。
最初にもっと安い車に乗ってたらBMWを買おうなんて大それたことは考えなかったはずだから（笑）
いやあ、本当にいい車だった！

最初の1000キロでエンジンオイルとATFを交換してそれ以後は5000キロごとにエンジンオイルを交換。
ソアラに乗っていた10年間はずっとそのサイクルを守っていた。
そういう消耗品の交換や定期点検や車検はディーラーでいいけど、ライン装着されていたアドバンがすり減った時にタイヤはちょっとこだわりたいのでディーラーでなく別の店がいいだろうと思った。

どこかいい店はないかな、と考えて思い当たったのが時々店の前を通りかかるといつも外車が入庫している国道沿いの店。
国産車は相手にされないんじゃないか、とちょっと不安だったけど勇気を出して店へ行った。

「ソアラのタイヤ交換をしたいんだけど、どんなタイヤがいいだろうか？」と相談すると、
「ウチはミシュランやピレリといった輸入タイヤをメインにしているのでソレをオススメしたい」
「ミシュランは長く使っても性能の劣化が緩やかなので特にオススメ」
ということだった。

で、ホントはミシュランのスポーツタイヤを履きたかったけどソアラの60偏平ではコンフォートタイヤしかなかったのでパイロットプライマシーをチョイスした。
確か4本で工賃込みの価格が7〜8万円だったと思う。
今みたいにタイヤ価格が高騰する前のいい時代だったな…。

すり減ったタイヤから新品タイヤに交換したんだからミシュランじゃなくてもいい感じだったのかもしれないけど、乗り心地やロードノイズには満足したので好感を持った。
でも本当にミシュランの良さが分かったと思ったのはE46にPS2を履かせた時なんだけど…。

それなのでパイロットプライマシーがすり減った時には、ミシュランで60偏平がラインナップされていなかったので65偏平にサイズダウンしてまでミシュランを履き続けた。。
ディーラーでは「まだ抜けていないから大丈夫」と言われたけど、その時一緒にショックアブソーバーをビルシュタインに交換したりもした。
なんか替えてみたくなったのでね(笑)
その作業が一泊二日だったので代車にE30を貸してもらったのが私のBMW初体験。
その時は、ステアリングもアクセルもブレーキも重い車だな〜と思っただけで後に自分が買うなんて思わなかった。

というような経験をしたので私はタイヤ交換ではミシュランが最優先。
ミシュランがMスポのサイズのRFTを作っていないので今はS001を履いてるけどホントはPSSを履いてみたいんだよね…。

ある週末、すごく疲れていたことと世田谷の住宅街に迷い込んで動転したことで注意力散漫になり事故を起こした。
一時停止無視で交差点に進入しソアラの前部が相手の車の左後部に衝突。
どうしていいか分からずにいると通りがかりの人が110番通報してくれた。
人だかりができて付近が渋滞し、警察が到着して現場検証し警察署で事情を聞かれ何かの書類を作成したけど、ショックでよく覚えていない。
ソアラは自走できたので乗って帰ったけど、当然ながらすごく慎重な運転だった。

車はディーラーへ修理に出した。
ショックな出来事ですぐに事実と向き合うことは出来なかったから誰にも言わなかったけど、突然に車で通勤しなくなったわけだからやがて職場の連中にはバレた。
ソアラには10年乗ってたけど最後まで妬みや逆恨みを持ってるヤツもいたから、あの時は「ざまあみろ！」と思ったろうな。

暫くしたらディーラーから電話がかかってきた。
「ソアラは専用部品が多いので修理代がかかるから100万円を超えそうなんですけど…。あっ、でも車両保険に入ってるからいいのか。」
1年目の任意保険と車両保険の合計が約18万円だったけど、恐らく10年分の車両保険料を合計してもこの修理代と相殺か保険会社の持ち出しだと思う。


約1ヶ月で修理は完了したけど、示談が成立していないからまだ事故は終わりではない。

相手方もいろいろ言ってきたようだけど保険会社に対してそれが通るわけもなく…。
最後に残った1点は、保険会社の提示する過失割合70:30に対して「納得できない。自分は75:25だと思う」という主張。
相手方の車は10年落ちぐらいの古いクラウンだったので金額にすれば2〜3万円ぐらいのことなんだけど、自分の主張が一つも受け入れられないのは承服できなかったのでしょう。

で、保険会社から私に問い合わせがきた。
「会社としては70:30での支払いしかできないので(私が)5%分を負担する意思がありますか？」
事故の日に警察署から出て相手方と別れる時に、ぶつけられて腹も立っていただろうけどそれを飲み込んで「お互いに誠意をもって解決にあたりましょう」と言ってくれたので、その言葉に応えるために5%の負担を了承して翌日に相手の口座に振り込みをした。

この程度の事故はたくさんあるのかもしれないけど示談成立までの半年ぐらいの間の心労は大きかった。
その後は危ないなと思う時は運転しないし高速で煽られたらすぐ譲っちゃうけど、「事故を起こすよりはマシ」と思うから腹は立たないもの。
保険会社にも相手の人にも迷惑をかけてしまったけど、誰にも迷惑をかけずにこういう教訓を学ばなければいけなかったと思う。


余談だけど、相手の人は地元の金融機関に勤めていた。数年後にその金融機関が破綻したニュースを見て「あの人は大丈夫かな？」と相手の人を思い出すなんてこの時には想像もつかなかった…。

信号待ちで停車中、路側帯を押して歩いている自転車をぶつけられた。
助手席側のドアに断面がV字形の2〜30センチの長さの線状のキズ。
自転車を押していたのは爺さんだったけど逃げやがった。
現場の近所に住んでそうな感じだったから張り込みをしようかと思ったけど、貧乏そうな爺さんだったからどうせ払えないだろうと思いヤメた。

かなり深くて長いキズだった。
キズを見た職場の後輩は「板金塗装じゃないですか？」と言った。
だけど「ブルーイッシュグリーンの微妙な色合いを再現できるのかな？」と疑問だったので板金塗装はしたくなかった。
そして、その頃ちらほらと聞くようになったデントリペアで修復できないかと思い立ち、二つ隣の市にあるコーティングとデントリペアをやっているショップへ行ってみた。
しかし「デントリペアってエクボは修復できるけどこういう長い線状のキズは無理です。」

どうしても板金塗装はイヤだったから、その頃は毎月4〜5誌の車雑誌を購入していたのでそのうちのひとつの外車雑誌の編集部へ一縷の望みを託して電話してみた。
「私、貴誌を毎月愛読している者なんですけど」(←ホントのことです)から話し始めて事情を説明し「ウデのいいデントリペアのショップをご存じなら教えていただけないでしょうか？」
そうしたら親切に「ウチで取材したことのあるショップでよければ…」と北区浮間のショップを教えてくれた。

教えてもらった浮間のショップに電話して週末に車を持ち込んだ。
そこはコーティングやデントリペアのショップだけでなく開業希望者向けのスクールを併設していて、デントリペアの講師をしている人が見てくれた。
「なんとか直せると思います。」

その場で予約をして後日に車を預けた。
一週間後に作業の完了した車を引き取りに行くと、コーティングショップで使う強い光の蛍光灯を当てればかすかにヘコミが分かるぐらいにまで修復されていた。
費用はたしか3万か5万だったけど、この技術になら喜んで払いたいと思った。

雑誌編集部とあの職人さんには本当に感謝です！