
F1レース活動について
2008年12月5日(金)
私どもHondaは、このたび、2008年をもってF1レース活動から撤退することを決定いたしました。
サブプライム問題に端を発した金融危機と、それらに伴う信用危機、各国に広がった実体経済の急速な後退により、Hondaを取り巻くビジネス環境は急速に悪化してきています。
当面の世界経済は不透明さを増すばかりであり、回復にはしばらく時間がかかることが予想されます。
Hondaはこの急激かつ大幅な市場環境の悪化に対し、迅速かつフレキシブルに対応をしてきましたが、将来への投資も含め、さらに経営資源の効率的な再配分が必要との認識から、F1活動からの撤退を決定いたしました。今後のHonda Racing F1 Team、英国でエンジンの供給を行ってきたHonda Racing Development Ltd.については、チーム売却の可能性も含め従業員と協議にはいります。
Hondaは第3期のF1活動として、2000年よりB・A・Rとの共同開発という新しい形での参戦をいたしました。その後のF1を取り巻く環境変化により2006年よりHondaが100%出資するチームとしての運営に移行しました。最高峰のレースへの挑戦は、思いのほか厳しい道のりでしたが、多くの応援を頂き、2006年に貴重な1勝をあげることができました。頂いたご声援に十分お応えすることなく撤退の決定をすることは大変困難をともなう決断でした。
今後は、この激動の時代を生き抜き、レースで培われたチャレンジング・スピリットをもって、様々な新たな課題に引き続き挑戦し続けてまいります。
これまで、ご声援をくださった多くのファンの皆様、そして活動を支えてくださったF1界の皆様に対し、心よりお礼申し上げます。
尚、来年、鈴鹿サーキットでは予定どおりF1日本グランプリを開催いたします。来シーズンに向けての改修工事も順調に進んでおります。
ありがとうございました。
本田技研工業株式会社
代表取締役社長
福井 威夫
衝撃的なニュースが飛び込んできました!何と、ホンダが第3期F1活動からの撤退を電撃発表。今年、2008年をもってすべてのF1活動からの終了を宣言したんです。つまり、昔の様なエンジンのみを供給するというスタイルのエンジンサプライヤーに戻っての活動も一切無しというまさに完全撤退。鈴鹿サーキットの全面改修、新車RA109の開発、2009シーズンのドライバーとしてジェンソン・バトンとの契約も終了しているホンダに一体何が起こったというのでしょうか?
「F1の撤退は昨日決定した」と苦渋の決断だった事をアピールするホンダ福井社長。アメリカのサブプライムローンを発端とする世界恐慌の影響を受けて、世界のホンダも業績が急速悪化。一方で年間400億とも500億とも言われる巨額のF1参戦費用がホンダに重くのしかかり、株主からは「業績低迷で宣伝効果にならないからF1なんてやめてしまえ!」という強いプレッシャーを与えられ続けていた事は想像に難しくありません。また、福井社長も数年前からF1の撤退を考えていたとも語っていた事から、ホンダは数年前からF1撤退をする時期を模索していたとも言えます。
ホンダは、セナ&プロスト、セナ&ベルガーの優秀なドライバーと、マクラーレンとの強力タッグで、マクラーレンホンダとしてホンダ黄金時代を築き上げました。特に1988年にはホンダエンジンを搭載したマクラーレンが16戦中15勝もするという、ホンダの圧倒的な性能を世界に見せつけたんです。
第2期黄金時代撤退直前では、うねうね動くアクティブサスペンションなどの驚異的な最新システム&シャーシ性能で圧倒するウイリアムズを、マクラーレンがホンダの世界一を誇るエンジン性能のおかげで何とかねじ伏せるという数々の名勝負を繰り広げてきました。セナ VS マンセルとの死闘はあまりにも有名ですよね?
この栄光時代を受け、日本国内でもホンダファンが急増!世界最高峰であるF1のエンジン技術をフィードバックしている唯一の日本企業という絶大な宣伝効果から、シビック、CR-X、インテグラ、プレリュードと若者をターゲットにした車が爆発的な人気を集めたんです。
また、F1技術から生まれた可変吸気システムに、焼き鳥屋でひらめいたという可変バルブタイミング機構を組み合わせて開発に成功したと言われる名機「VTEC」や、実際にF1エンジン設計者が開発を担当したと言われる初代オデッセイV6エンジン「J30A」を登場させる等、F1からのフィードバック技術により、ホンダのエンジン技術は飛躍的に向上していったんです。
これだけの過去の栄光があったからこそ、ホンダは今まで撤退するタイミングをなかなか見つけられず、ズルズルと低迷するF1活動を続けるしかなかったのかも?
過去の栄光から、せめて撤退するまでに年間タイトルを一度は取っておきたい。でも近年のF1はエンジン性能よりもシャーシと空力性能が重要視されている時代なので、なかなか勝つ事ができない。撤退する時期はかなり悩んでいたと考えられます。
唯一撤退するチャンスが訪れたのは2006年。棚ぼたながら、ハンガリーGPでバトンが第3期F1活動で念願の初優勝を達成した事から、これでホンダは撤退か?という噂も流れましたが、逆に性能は確実に向上している、来年は上位争いできると判断してしまったようで、その後の2007年、2008年は見るも無残な結果なのは知ってのとおり。今回の世界恐慌は、ホンダにとって2度目の撤退チャンスだったとも言えるわけです。
もちろん、第2期黄金時代を最後にF1を一切やめたままでいれば世界でもっともエンジン性能が優れている企業というイメージを独占し続ける事ができたのですが、今回の第3期の中途半端な撤退により、ホンダの企業イメージは大きく崩れてしまいました。当然、市販車販売でのイメージダウンも避けられず、現在のホンダF1の低迷を受けるように、売れているのはフィットとフリードのみ。本格スポーツモデルはS2000のみという寂しい状況になってしまいました。欧州シビックtypeR発売決定で、少しでも消失したホンダのスポーツイメージを復活できるといいのですが・・・。
その一方で、F1レースそのものも時代にそぐわないレースになってきているのもたしか。地球温暖化を始めとする地球環境の急激な悪化により、絶対的なパワーを追求するよりも、環境に配慮した性能の方をメーカーに競わせた方が良いのでは?という意見が増えてきているんです。
たとえば、マシンから排出される排気ガスの基準を厳しくして燃焼効率とクリーンさをアピール。すでにF1マシンに搭載しているスピード減速時に発生するエネルギーを取り込む事ができるエネルギー回生システムを進化させつつ、エンジンとモーターで車を動かすハイブリッドシステムや、太陽光をエネルギーに変えるソーラーパネル搭載で、レース中のガソリン給油量をルールによって制限する事により、性能と燃費を両立させないと無事ゴールまで走り続ける事ができなくなるとか・・・?
そうすれば、速いけど燃費が悪いからガス欠でリタイア。ハイテクで燃費はいいけど重いから遅い。速くて燃費の良い車のみが優勝するという今の時代にピッタリのレースになっていくと思うのですが?マシンが速くなり過ぎるからと、タイヤやウイングにさまざまなレギュレーションを課してマシンを強制的に遅くしたり、開発費が高騰するからとエンジン供給を1社に限定するというプランをぶちまけるくらいなら、時代に合ったレースに変革させていった方がいいと思うんだけど?
非常に残念な発表となったホンダの第3期F1活動からの撤退終了。ホンダといえばやっぱりF1!エンジンが良い!!というイメージが大きいだけに、再びホンダがF1へ戻ってくる日を楽しみにしています。
Posted at 2008/12/06 14:07:48 | |
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車 | 日記