
さて、本シリーズも早くも第3話になりました。
この「モーターライフについて」は、30年以上前のことを一生懸命思い出しながら書いているんですけど、不思議と、すごく鮮明に覚えている部分と殆ど記憶が飛んで空白になっている部分がありますね。
なので、「年表」みたいなものをまず作ってから着手すれば良かったところを、適当に書き始めたために時系列にやや正確性を欠いていたようです。
前回の「時は1983年」という書き出しなんですが、これは間違えてました!
正しくは「1985年」でした。お詫びして訂正します。
ということで、今回は、3年間乗ったホンダプレリュード2.0siから、私にとっての「初めての外車」プジョー205GTIに乗り換える話です。
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時は1987年(笑)、何の不満もなくプレリュードを毎日乗り回していた私がプジョー205GTIというクルマを知ったのは、当時定期購読していたCar Graphic誌の「ロングラン・レポート」という連載記事でのことでした。
このページは、普通のレビューと違って、CG誌が「これ!」という車輌を購入しマイカーのごとく日常的に使用したインプレッションを、1年くらいの長期間に渡ってレポートするというものです。
同時並行で2~3台レポートしてるんですけど、その中で205GTIは飛び抜けて高い評価の与えられていたクルマでした。
とにかく乗って楽しいということが、これでもかというくらいに毎回書かれていたのです。
「これはよっぽどいいクルマなんだろうなぁ」と感心しながら、私も毎月の205GTIのレポートを読むのを楽しみにしていました。
それで、もう場所も正確に覚えてないんですけど、たまたま通りがかった練馬区のディーラー(オースティン・ローバー・ジャパン)に205GTIが置いてあるのを見つけ、思わず試乗してみちゃった訳です。
ここで、プジョー205GTIがどういうクルマか、簡単に紹介しておきましょう。
「205」は1983年にデビューしたプジョーのスモールハッチで、その基本性能の高さやバランスの良さが世界中で評価されて、メーカー自身の予想を上回る大ヒット作となったモデルです。
ボディ・デザインは、スタイル・プジョーとピニンファリーナとの共同開発で、2ドア+ハッチバックのボディは全長3,705mmと小柄ながらも、ホイールベース2,420mmを確保したショートオーバーハングスタイルは、スポーティ感に溢れ、直線と曲線を上手に融合させたボディデザインは高く評価されました。
そしてプジョーは、ここまでの205の成功を確固たるものにすべく、最上位モデル(1360ccのツイン・キャブレター仕様、81.1ps/5800 rpm)に加えて、更なるスポーティ・バージョンを投入します。
それが、3ドアのよりスポーティなモデルとして1984年に登場した「205GTI」です。
エンジンは、オールアルミ製の横置き直列4気筒SOHC、1590ccのパワーユニットを搭載、ボッシュLジェトロニック・インジェクション、圧縮比10.2:1によって、最高出力105ps/6250rpm、最大トルク13.7kgm/4000rpmを発揮。
さらに、GTI専用の装備として、強化タイプのサスペンション及びダンパー、フロントブレーキにベンチレーテッドディスク、フロント及びルーフエンドにスポイラー、バケットタイプのシート、レブ・カウンター、油温計、水温計が備えられたインパネ、グラスサンルーフなど、エクステリア・インテリアともにかなりの豪華装備が奢られています。
また、車両重量は890kgと軽量で、5速M/Tを介してのトップスピードは190km/h、0-100km/hの加速は9.5秒と、なかなかの俊足でした。
さて、半ば興味本位で試乗してみた訳ですが、走り出してすぐにあまりの「クルマの違い」に、私は驚愕しました。
ただのSOHC8バルブ1,600ccの高回転までストレスなく回る軽快なエンジン・フィーリングと、絶妙のクロスミッションにより、2速→4速にシフトアップしていくときの気持ちいい加速感。
また、剛性感の塊のようなダイレクトなステアリングフィールと、路面に張り付くようなしなやかな足回り。
今思うと、80年代の国産車はまだまだ発展途上で、アウトバーンやモータースポーツで鍛えられた欧州車とは、クルマの完成度にまだ大きな隔たりがあったんですね。
205GTIっていう大衆車においても「これでも同じクルマか?」と、その違いをまざまざと見せつけられてしまいました(笑)
さらに、205GTIのエンジンは初期型1.6リッター105ps、中期型1.6リッター115ps、後期型1.9リッター120psの3種類があって、最初に私は中期型115psに試乗してそのあと後期型120psに乗ったんですけど、これまた「これが同じクルマか?」というくらいにドライブ・フィールが違ったんです。
後で知ったことですけど、私が最初に乗ったのが205GTIのベストモデルと言われた中期型(パワーアップ後のクロスミッション仕様)で、後に乗ったのは軽快な205GTIの長所をスポイルするような変更ばかりされた後期型(ロングストローク化、ワイドミッション、車重増)だったんですね。
120psとなった1.9リッターモデルは、1.6リッターとは似ても似つかぬ鈍重な印象で、最初に感じた205GTIのスポーティさがほとんど感じられない「残念な」クルマでした。
そのディーラーには「中期型」の在庫がたまたま残っていて、新車で買うなら今がラストチャンスとのこと。
そして、あまり迷うことなく、私は購入を決断してしまいました(笑)
価格は、小さい車格の割には結構高くて、290万円くらいだったと思います。
こうして、プジョー205GTIへの乗り換えによって、私の「外車でのモーターライフ」が始まりました。
折しも、世の中はバブルの真っ盛り。
メルセデスやBMWのような贅沢なクルマにが街に溢れていて、E30のBMWが「六本木のカローラ」と言われていた頃です。
その中で、バブル感の全く無いむしろストイックな205GTIですが、小回りが利いて悪路でも高速でも「道を選ばない」軽快な走りが楽しめて、当時の私の好みやライフスタイルにピッタリ合っていたと思います。
その頃始めたカートのレースに出るために毎週四街道の「新東京サーキット」を往復したり、冬はスタッドレスに履き替えて頻繁にスキーに行ったりしてました。
205GTIは、これと言った欠点は無いクルマでしたけど、強いて言えば、バブル景気の頃というのはとにかく道が混んでいて、深夜だろうがいたる所で渋滞してましたから、そういう時のMTはちょっとしんどかったですね。
また、「六本木のカローラ」などと較べると小さくてちょっと見は「ただの大衆車」に過ぎない205GTIは、女の子には全くウケなかったですね。
「これずいぶん小っちゃいけど、なんてクルマ?」なんて言われてました(笑)
結局、205GTIには、1989年に3年間の海外駐在が決まって惜しみつつ手放すまで、2年半くらい約10万キロ乗りました。
(次回に続く…)