
十数年前、私たちは筑波サーキットコース1000を貸し切って走行会をしておりました。
そんなある日、つてを頼って國政さんをゲストにお招きした時の話です。
恐れ多くも國政さんに「自分の車を運転して下さい!」と頼み込んで助手席に乗り込みました。コース上では十数台のドライバーが入り乱れて所狭しと走っております。自分の車はインプレッサのスペックCでしたので、國政さんが本気で走ればあっという間に前走車に追いついてクリアラップを取るのは難しいだろう・・・という状況。
サーキットに通った方はご存知だと思いますが、前が詰まってクリアラップが取れないとイライラしますよね(金返せって言う人もいるくらいw)。それが「お手本見せて下さい」って頼まれて、ひとついいところ見せないとって時に素人が前ふさいで全開にできないんじゃ・・・。こりゃもう怒涛の追い抜き祭りでもするしかないのか?と。
そしたら國政さん「ふつー」に走ってるんです、ゆったり高速を流すようなリラックスムードですよ。速くも遅くもない、全体の平均くらいのペース。そんで、後ろから速い車が追いついてきたら流れるように前に行かせます。あからさまに遅かったり不自然な動きは無いのですが、気がつくといい所で抜かせている、
空気のような存在です。追い抜いていった車はタイムダウン無いはずです、邪魔になっていませんから。そうして他車を次々と前に行かせながら周回を重ねます。
(その間、車内は和やかな会話で、とてもサーキット走行中という感じではありませんw 正直、手を抜いてるのか?と思った程)
何周かしたところで、気がつくと前に車がいません(「スペースを作った」ということなんでしょうね)。ペースアップして何事もなく一周クリアラップを取ってパドックに帰りました。(*1)
あの混走の中、どこにそんなスペースが? あの空気のような抜かせ方も普通にやってたけど・・・、空から見てたの?
当時、がむしゃらに走っていた私には想像外の展開で、おもわず「後ろにも目がついてて、コース上にいるクルマの動きが全て分かってるかのような運転でした」と感想を言った記憶があります。それに対して國政さんは言いました。
「普段運転する時、周りの車の動きを予測しつつ走るでしょう? それに比べたらサーキットなんかシンプルだから簡単なものですよ」、と。
(いやーそう言うのは簡単ですけど・・・)
・・・時は流れて、手元に「四輪の書」があります。その最初の章は
交通ルールの話(!)です(皆さんちゃんと飛ばさずに読みましたか?)。公道において他車と交わる事の意味が説明されています。
タイトル画像はその1ページ、「周りのクルマを予測して走りましょう」ってお話です。
「知ってるよ、その位やってるよ」
と読み流した方、少なくないのでは?と想像します。
でも、私は、あの日のことを思い出す訳です。
サーキットのアレが簡単に出来るほどのレベルで普段からやる話だと想像した人がどれだけいるだろう?と。よく見ると「サッカー選手のように」とそれを想像させる一文が入っています。でも、「オレ知ってる、やってる」と思って読む人にその真意がどこまで伝わっているか?
自分には「運転が上手いって、こういうことか!」と心底思って意識が変わった話ですが、「出来てる」と思って流しちゃう人もいる訳です。書いてあっても容易には伝わらない、だから難しい。
どうしても自分の知識、体験に照らして読むしか無いので、難しい部分はあります。でも、「交通ルールの話」をサラっと読み流してしまった方、「この章は飛ばしてもいい」と思った方には、この話がヒントになるんじゃないかと思うんですよ。
つまり、運転を学ぶ上では自分の想像を越えたことが沢山あると言う事。一度読んでピンと来なくても、アタマに柔らかく留めておいて、上手い人の助手席に乗せてもらったり、自分で試したりしながら、また読み返すことで「これか!」と理解が進み、正解に近づいていく、そういうものだと思います。
「自分なりに解釈して終わり」ではもったいないです。世界が広がりません。
あせらず、こういった気付きのプロセスも含めて楽しむのが上達の秘訣かなと思います。運転に限らない話かと思います(^^)
*1 中途半端なプロなら、素人の車なんか邪魔だオラオラで追い越して、追い越して、最後までクリアが取れないで「こいつら邪魔だからムリだわ」とか言いそうな所です。
Posted at 2017/06/17 03:13:08 | |
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