
タイヤは走り方や使い方によって、寿命の迎え方も人それぞれ。
中には「ひび割れが出たから交換」という方も多いと思います。実はちょっとした工夫で、ひび割れと溝の減りを同じタイミングにそろえることができるんです。
そうすると、安全性も経済性も両立できて、しかも運転が楽しくなります。
今回は、その考え方と実践のヒントをご紹介します。
A. ひび割れで交換、正しい派の言い分
B. ひび割れで交換、間違ってる派の言い分
C. ひび割れたとき残り溝2mmになるタイヤ選び
具体的な方法「接地面が柔らかいタイヤを選ぶ」
グリップ性能が高いと、運転そのものが楽しい
年間走行距離を意識的に伸ばす
“楽しくなるドライブ”で距離を伸ばす
A. ひび割れで交換、正しい派の言い分
1.「だって、最後までちゃんと使い切ったじゃん」
いや〜、ひび割れ出たから交換したけど、ちゃんと寿命まで使ったってことじゃない? ガソリンだって節約できただろうし、無理に使い切るよりはこれで正解だと思うよ。
2.「これが一番ムダのない、エコな使い方でしょ」
無理に走ればガソリン代の方が掛かるし、ひび割れまで乗ればタイヤも本望ってもの。製造にもエネルギー使ってるんだから、ゴムの寿命まで履くのがエコでしょ。
3.「溝がないよりは、まだ安全だと思うけど?」
雨の日にスリップするのが一番怖いんだから、溝が残ってるなら水はけはいいわけでしょ? ひび割れって見た目は悪いけど、まだ走れるし、ツルツルよりは全然マシじゃない?
★確かに確かに。みんカラのタイヤレビューを見ていても、溝はまだあるけどひび割れが出た時点で「寿命」と考えて交換する人はすごく多いです。
ひび割れたらあきらめもつくし、使い切った満足感もあるでしょう。欲を言えば、摩耗と劣化が均等に進んで、同時に寿命を迎えられたらもっといいですよね。
B. ひび割れで交換、間違ってる派の言い分
4.「いやいや、ゴムが劣化してたら危ないって」
ひび割れってのはもうゴムが固くなって柔軟性なくなってる証拠じゃないですか? グリップなんか期待できないからいざって時危なくてしょうがないよ。
5.「そもそも、そのタイヤ選びが合ってないんじゃ…」
ひび割れまで乗れちゃうのは、タイヤの減りが遅すぎるからじゃない? むやみに長寿命タイヤ履くと、溝があるのに劣化で終わるもったいないパターンになりがちだよね。
6.「もっと走って、カーライフ楽しめたんじゃない?」
クルマって走ってナンボのもんでしょ? ひび割れまで放置って、全然走ってないってことだよ。もっと走ってスリップサインまで楽しんだほうが、車もタイヤも喜ぶよ!
★溝がなくなって交換してる人たちの意見もよく分かります。ドライブ好き、長距離通勤、走り屋、サーキットユーザーなど、車と日常のつながりが深い人ほどタイヤ摩耗も早くなります。
タイヤが新鮮なうちに使い切るのは使い方として大正解なので、この人たちの楽しそうな様子を「ひび割れ派」の方にも分けてあげることはできないのでしょうか。
C. ひび割れたとき残り溝2mmになるタイヤ選び
A派もB派もどちらも一理あるので、溝と劣化のベストな交換タイミングを考えてみました。
それは「3〜5年後ひび割れが始まった時、残り溝が2mmになるくらいの柔らかいタイヤを選ぶ」というもの。
◎ひび割れるまで走っていいの?
しかしひび割れが出るというは、表面の柔軟性が失われ、内部に向かって酸化(硬化)が始まっている状態なので、ここを限界としました。
ちなみにパックリやメリッといった「亀裂」「断裂」は末期で要注意です。
◎なぜ残り溝2mmなの?
ブリヂストンの
サイトにあったグラフによると、タイヤの溝は2mmを切ったあたりから急に制動距離が伸びています。
ブリさんは残り4mmでの交換を推奨していますが、それはちょっともったいなすぎるので、数値が悪化しだす2mmを残り溝の限界値としました。※独自基準です。
スリップサインが1.6mmなので爪1枚多く残ってるくらいですね。
具体的な方法「接地面が柔らかいタイヤを選ぶ」
●ひび割れが始まった時、溝が3mm以上あった人は少し柔らかいタイヤを選ぶ
・転がり抵抗AA→A(日本)
・低燃費性能B→C(EU)
・トレッドウェア400→300(US)
例:ブリヂストンアレンザ LX100、ピレリパワジー、ヨコハマアドバンフレバ V701、ファルケンアゼニスFK510
●ひび割れが始まった時、溝が5mm以上あった人はさらに柔らかいタイヤを選ぶ
・転がり抵抗AA→B or C(日本)
・低燃費性能B→F(EU)
・トレッドウェア400→240(US)
例:グッドイヤーイーグルF1 Asymmetric、ヨコハマアドバンスポーツV107、トーヨープロクセススポーツ2、ブリヂストンポテンザS007A
転がり抵抗性能を下げる
低燃費性能を下げる
トレッドウェアを下げる
極端な例だと、年間5,000kmも走らない、雨の日は走らないというお車であれば、ポテンザRE-71RSという超柔らかハイグリップタイヤを履いても3〜5年持ちます。転がり抵抗C、トレッドウェア200です。
ここでいう硬い柔らかいというのは接地面のゴムの硬さのことで、柔らかいほど摩耗が早くなりますので、溝を余らせるくらいだったら柔らかいタイヤを履いた方がよくグリップして安全です。
グリップ性能が高いと、運転そのものが楽しい
グリップが高いと制動距離が縮まる、コーナーをオンザレールで駆け抜けられる、高速走行時の接地感があって頼もしい、ステアリングインフォメーションが増えるなどが期待できるので、エコタイヤでソロソロと走るのとは別の世界が待っています。
車に乗らなくなる理由として「つまらなくなった」「飽きた」というのはよくありますよね。エコに寄りすぎるとせっかくの車の良さがスポイルされてしまいます。ひび割れでタイヤ交換する人が多い理由はここにあると思っています。
そんな時タイヤのグリップをワンランク上げると、同じ車とは思えない新鮮な驚きを得られることがあります。車メーカーは認めたがりませんが、乗り味におけるタイヤの存在はすごく大きいのです。
年間走行距離を意識的に伸ばす
「タイヤ変えたばっかり」「週末しか乗らないから、どうしても距離が伸びない」そんな人はまず年間8,000〜10,000kmを目標にがんばってください。
月間670〜830kmを走れば「摩耗」と「劣化」の限界がほぼ同時にやってくる理想的な状態に近づけます。
「ガソリン代も高いし環境にも配慮したいから、できるだけ走りたくない。」そう考えるのはもっともですが、車にとって走ることがプラスになるケースもあります。
◎走ることで防げる3つのリスク
・ゴムが固くなる(酸化が進む)
・接地面だけ劣化・変形する
・ブレーキ固着やエンジン不調、バッテリー劣化
“楽しくなるドライブ”で距離を伸ばす
そうは言ってもやっぱり目的が欲しいし、ただの距離稼ぎより楽しくドライブしたいという方はこんな使い方はいかがでしょう。
↓
・車で推し活(アイドル、スポーツ選手、イベント)
・気晴らしに60分のパジャマドライブ
・毎月1回は道の駅・温泉巡り、滝・道路などの百選巡り
・峠ステッカー、道の駅切符、スタンプの収集
・県道全走破の旅
・旧街道をたどる旅
タイヤを使い切れるしクルマも長持ちするし気分的なリフレッシュにもなる。一石三鳥の“楽しい距離”を積み重ねる習慣を作ってみてはいかがでしょうか。
Posted at 2025/08/10 16:18:46 | |
ドライビングテクニック | クルマ