X350型XJ

新車当時8万台しか売れなかったこともあり、ジャガーとしては商業的には失敗作であった。
しかし、個人的には歴代で一番すきなジャガーがX350だったりする。
X350は確かに歴代のXJと比較すれば背が高い。
歴代のXJというのは、低いウエストラインに面積の小さいグラスエリアのプロポーションがもたらす4ドアクーペとでも呼びたくなるような外観が魅力の車だった。
そもそも、XJ シリーズ1は往年の名車Eタイプのシャシーをベースに開発された。
そう、XJの出自はスポーツカーなのだ。
だからこそ、XJ シリーズ1はウエストラインが低かったのだし、また新車当時は大型セダン随一の運動性を誇るスポーティーサルーンだったのだ。
その後ジャガーは30年以上低くて平べったいXJ以外の何物でもないスタイリッシュな外観を保つ事で、BMW7シリーズやメルセデスベンツSクラスとの差別化をはかり独自のマーケットを築いていた。
しかし、年々厳しくなる衝突安全基準、そして年々体格が良くなっていく人間。
これまでのXJのような低い車高のままでは、どちらもクリア出来なくなるのが明らかだった。
そんな中で、ジャガーにBMWを辞めたヴォルフガング・ライツレがやってきた。
そして、ライツレはXJをモデルチェンジで7シリーズと直接火花を散らすライバルとなる性能とジャガーらしさを両立させ、これまでのジャガーの顧客だけで無く、BMWやメルセデスからも顧客を取り込もうと考えたのだ。
そして、X350の下敷きとなったのが、恐らくはライツレの作ったLセグメント、E38の7シリーズ。
E38は全高が1435mmもあるにも関わらず、アルピナでは20インチホイールを入れられてしまうほどタイヤハウスを大きくしたり、ボディ下部をブラックアウトする事で目につくボディパネルの面積を減らして平たく見えるようデザインされていた。
X350もまた20インチホイールを純正オプションで用意する程ホイールハウスを広めに取り、ボディ下部をブラックアウトする代わりにプラスラインを入れた。
E38と似た手法を用いる事で、居住性や安全性の確保の為に全高を10cmも上げながらもXJらしい薄く見えるボディに仕上がった。

また、ボディを絞り込む事で、とても全高が1450mmもある様には見えない外観を保つ事に成功した。

それは確かに、E38の様に薄く伸びやかに見えた。

がしかし、ライバル比では低く見えるボディも、往年のXJに見慣れていたユーザーには受け入れられなかったようだ。

まず、キャビンを広げようとCピラーを後ろに引っ張った結果、XJのなだらかに下がっていく長いトランクは

短縮され、

また低くは見えても1360mmしかないX308よりは明らかに背が高かった。
それが、往年のX308までのXJを愛した方々の意見であった。
こうして、XJは壊れる(X40の電装品、X308のATの信頼性の低さはあまりにも有名)という風評から新規客がつかなかっただけで無く、往年のファンまでが買い控えをしてしまい、X350はジャガーの想定をはるかに下回る実績しか残せなかったようだ。
しかし、私はそれだけでX350が失敗作扱いされてはならないと思うのだ。
逆に、私はこのモデルチェンジでジャガーが好きになったくらいなのだから。
X350へのモデルチェンジでホイールベースは長くなり、またトレッドは広がった。
車重もアルミボディで軽量化されて、XJRですら1770kgしかない。
そこに、406馬力の強力心臓。
その結果、驚異の運動性能を誇るのです。
https://m.youtube.com/watch?v=7cmAWtNCFSk
シャシーはエンジンより速くが哲学のはずなメルセデスが電制を切るとスラロームで散々な結果となったのに、XJRは電制を切ってもこの見事な身のこなし。
かの土屋圭一氏も絶賛。
そう、XJはアルミボディの採用で再びフルサイズ スポーティーサルーンのトップの座を久しくして取り戻したのだ。
(XJは基本的なメカニズムは1968年の初代と1986年のX40そして、2003年のX350の3回しか根本的なメカニズムが変化していないのだが、Eタイプが出自のシリーズ1はともかくX40やX300はシャシーの絶対的な能力は決して高くはなかった。)
さらに、私はデビュー当初X350のデザインにどこかE38が重なってしまい、当時X308には興味が無く、またE65に馴染めずにいた私には非常に好印象だったのだ。
クラシカルで穏やかなルックスながらフェラーリに喧嘩を売られたら

スーパーチャージド406psと高いシャシー能力で対抗できる。
この車の二面性に私は只ならぬ魅力を感じるのだ。
ジャガーはこれだけ素晴らしい車を作っていたというのに、市場は評価してくれなかっただけなのだ。
市場の評価と完成度の高さは必ずしも一致しないとのである。
あまり人気が無いのか、現状は中古車価格も安め。
XJRでも100万円代から狙える。
適切な評価を得られていないこうした車、中古車で探すときは非常にお買得だ。
いつか、状態の良いXJRを購入したいものだ
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jaguar | 日記
Posted at
2016/12/22 15:45:57