-納車は2月の小春日和、素晴らしいコーナリング性能に舌鼓-
納車の日、たった一日だけ一緒に並ぶ新旧のマイカー。左のベントレークライスラーは他のお客さんのクルマ。
ジャガーXEの納車日は冬の終わりの2月後半、BMW320dと入れ替えで納車した。そんな経緯もあり、ちょうどガチンコのライバルであるDセグメントの、しかも近年流行りのクリーンディーゼル車の乗り換えと相成った。
そんな訳で結構リアルな比較も出来るというか実際に感じたことも多かった。勿論モデルがワゴン(BMW320d)からセダン(ジャガーXE)に変わったので、細かい違いは有るのだが、乗り始めて数日で感じたことは、ジャガーXEがこれまでの不遇を払拭するべく肩肘張った作りであるのに対して、BMWはこのセグメントの王者な訳で、その作りは貫禄が有るというか、一見スポーティでプレミアムな風情なのだが、実は利便性も生活感を出しすぎない中で実に痒いところに手が届く的な作りになっていることを実感したことだ。
だからと言ってBMWが素晴らしいからジャガーを選ぶのはやっぱり無しとかそういう事でも無いのがクルマの面白さだ。3シリーズは昔からそのコンパクトさからスポーティかつ家族持ちにも耐え得るワゴン、セダンと言われてきたが、既にDセグは随分大きくなり(Cセグが普通に3ナンバーの時代なのだから全てのセグメントが肥大化の一途を辿っている)、日本ではとても"コンパクト"なクルマとは言えなくなって来ている。これは3シリーズだけでなく、今回のジャガーXEやアウディA4も同じことだが、既にDセグは15年前のクラウンやセドリック並みの大きさなのである。80年代の3シリーズがクラウンより大きいなんて事有り得なかった。
それはクルマのカラーにも現れてきていて、既に3シリーズは、良く言われるほど「スポーティ」ではないような気がする。どちらかと言うとハンドルやアクセル反応自体は鷹揚さ、ラグジュアリーさも有るし、何よりF世代のBMWは随分足回りもしなやかになったと思う。僕の乗っていた320dはランフラットタイヤを履いていたが、良く言われるランフラット特有の硬さなんて殆ど感じなかった。むしろ高速のコーナーとかではスピードが高いと少し柔らかいと感じる時も有ったくらいだ。勿論数多の日本車よりは足回りは締まっている方なのだろうが、それでも一昔前のドイツ車のイメージとは随分違う気がする。
僕が乗っていたのはスポーツサスを装着しているM-Sportsとかではなく、Luxuryの方だったのも有るのかもしれないが、それが普通なわけだから。何よりサイズが大きいし、1.6トンも有る車だからコーナーをスイスイ曲がると言うよりは、ディーゼルなのも手伝い、とにかく巡航時の快適さがハンドリングのチューニングも含めて印象に残っている。それでも50:50のバランスが織りなすコーナーで体がカーブの真ん中に居るような安心感は、それまでFF車に乗ってきた自分には新鮮で有り、感動したものだが。
つまり、サイズの肥大化や、Dセグの高級化、更には一つ下の1シリーズの登場によってBMWとしては、スポーティなキャラクターは1シリーズに任せ始めていて(近年唯一のCセグFR車と言える1シリーズはレビューなどでもそのオンザレールなコーナー性能を良く絶賛されている)、明らかに3シリーズ辺りからは値段相応のプレミアム感や快適さを感じやすいようにチューニングされているのではないだろうか。勿論潜在的な能力は健在だが、3シリーズに乗っている時は100km位でクルージングしている時こそドイツ車らしさを感じた気がする。
逆にジャガーXEは、Dセグというサイズを忘れるほどタイトに作られている。そもそも車内が狭い!サイズなんて3シリーズより大きいくらいなのに、先ず傾斜のきついAピラーや低い車高のせいで、乗るときですら頭をぶつけないよう気を使う。クーペスタイルとは言えセダンなのに。。。更には全体的に囲まれ感の強い内装が狭さを演出している。良く言えば「クルマを着るような」なのかもしれないが、リアなんて直ぐ頭が天井に当たる。実は足回りとかは結構余裕が有るのに、その辺りは損している気も。でも、それこそがジャガーの狙いなんだろう。
そもそも現時点ではジャガーはXEより下のサイズのモデルは出ていない。現時点で発表されたばかりのE-PaceはいよいよCセグの範疇なのかもしれないが、SUVだから一概に比較できないし、恐らくXEよりは広く感じる作りになるはず。だから、小気味良いスポーツ感はジャガーにとってXEの役目になるわけだ。よって、かなりスポーティなチューニングがされていると思う。
例えば、ハンドルだ。かなりセンターの遊びが少なく、3シリーズとミニならミニに近いと思う。だから、コーナーなんかはその素晴らしい足回りと相まって気持ち良いのだが、大きさの割にハンドル反応が鋭くて、結構高速直進の時は気を使うのだ。
そして、車内の狭さが精神的に影響しているのと、足回りを中心としたチューニングも有ると思うが、コーナリングではサイズを感じない。とにかくコーナーは得意。特に首都高速くらいのコーナーはジャガーXEが得意とするところだと思う。アルミシャーシ特有の硬い剛性感も有るんだと思う。そして、バランスもBMWと同じくほぼ50:50のFRなので、つんのめり感は皆無でコーナーのハンドリングはちょっとドキッとするくらいのスピードで入り込んでも全くバランスを崩すような素振りを見せない。FRならではのハンドリングのクリーンさも心地よい(既に前輪が操舵だけに徹している自家用車は贅沢な時代になってきた)。
遊びが少ないことも含めたシャープなハンドリング、タイトな室内空間、アルミならではのボディ剛性、そしてワイドアンドロー(ドレッドがライバルに比べても広めなのも一因に有ると思う)なボディバランスの良さがコーナリング性能に寄与していることは間違いないが、絶対的には小さい車ではないし、重さも1.6トンあり、ごく普通のプレミアムDセグのアベレージの重量だ。これも後述するがジャガーのエンジンはややターボラグが他のディーゼルや直噴ターボより強く感じるので(その割に特定の回転から急激にトルクが出るのでドッカンターボっぽい)、出足のアクセリング次第ではそれなりに重さを感じる時も有る。
それでもコーナーのオンザレール感は少なくとも今まで乗ったクルマの中ではベスト。ミニみたいな軽めで足回りも硬く(クーパーS)、やや強引なことをしてもその小ささでグイグイ行ってしまう感じとは異なり、恐怖感というものを感じないで曲がってしまうことがちょっと危ない位の足回りの良さだ。かと言ってさほど足回りは固くない(ドイツ車、ヨーロッパ車に慣れてるという前提で)。
はっきり言ってエンジンより足回りが完全に勝っているクルマだと思う。少なくともディーゼルの20dや近いパワーの20tではそういうクルマ。V6 380馬力のSならまた話は少し変わるという前提で。
何というか、昔のジャガーが言われていた「ネコ足」、つまりイギリスのレンガ道をいなしながら柔らかくこなしていくそれのモダンアップデート版とでも言ったら良いのだろうか。柔らかい足回りとは言わないが、ドイツ車みたいなゴツゴツ感はあまり無く、それでいながら高速でもひたひた路面を捉えて話さない感じなのだ。それは直進の時でもそうで、多くのクルマは普段乗りではそこそこ良い足回りも、流石に100km以上のところでは多少なりともふわふわ感が出てくるものである。例えば高速のジョイント間隔が短めでスピードが出ていると、相応の足回りでも多少ロールが出ることが有る。それが殆ど無いのだ。これは上位のスポーツグレードでも、スポーツサスペンションでもない僕のジャガー(プレステージ)ですらそうなのだから特筆すべき事だと思う。
ジャガーのセールスの人と最初に試乗した時に、彼が「足回りはかなり頑張ってベンチマークの3シリーズに大分近づいてますよね」と言っていたが、最初に軽く試乗した時から「いや、これは負けてるどころか今の3シリーズよりスポーティな足回りとしては一枚上でしょう」と思っていた。謙遜も有ったと思うが普段正に3シリーズに乗っていた自分が最初に響いた所がエンジンとかよりも足回りだったので、あながち的外れではないと思うんだよね。
実際にXEの足回りはフロントにWウイッシュボーン、リアにインテグラルリンク(マルチリンクの発展系とでも言えばよいのかな)という、このクラスではかなり奢ったシステムを採用している(WウイッシュボーンはBMWなら5シリーズからだ)。最もメーカーが異なるので直接どちらが良いと言う事ではないが、とにかくジャガーXEの最も素晴らしいところはそのコーナリング性能なので、是非試乗でチェックして欲しい。そう高速でなくてもちょっとコーナーを走れば車好き(SUVに未だ抵抗がある人は特に(笑))なら思わず微笑んでしまうほどだと思う。硬いだけの足とは全く異なる上品で引き締まった足回りに最も価値がある。
良いことから始めたが、乗って直ぐ解るネガも有る。それは次回に。
つづく
ブログ一覧 |
Jaguar | クルマ
Posted at
2018/01/07 03:28:17