
-「EcoBoost(フォードエンジン)なガソリンモデルのジャガーはどう?」って話-
※代車の写真撮り忘れたので、海外のWallpaperサイトからのイメージ。
最初に断っておくと、この話は2018年以降の新車ジャガーを買う人には関係が無いと言うか、参考にはならない話である。何故かと言うと、18年モデル(正確には17年秋モデル)から、ジャガー、そしてランドローバーのガソリンモデルの殆どはフォード由来のエンジン(エコブースト)から自社開発の"インジニウム・エンジン"に切り替わるからである。
また、特にジャガーからこれまでのエンジンがエコブーストであると日本で正式に発表されているわけではないが(ディーラーさんも知らなかったりする)、海外の情報やボア*ストローク、エンジンサイズや出力からの情報なので、参考程度に(ecoboostで海外サイトをググったりすると情報は出てきたりする)。一応このブログではエコブーストであるという想定で進めますが個人の感想です。
ジャガーXE発表と同時期に久々の自社開発であるインジニウム・エンジンも登場したわけだが、先んじて出てきたのはディーゼルである。ガソリンモデルに関しては発売当初はフォード由来のエンジンが搭載された。要するにガソリンエンジンの開発はXE登場には間に合わなかったとも言える。それはディーゼルが主流であるヨーロッパでは然程珍しいことではない。そもそもガソリンモデルは初代XF等の後期モデルに既に搭載されていたし、レンジローバー・イヴォークのエンジンも同系で既に実績が有った、つまり、焦る必要が無かったというのも有るだろう。
但し、インジニウムはディーゼル、ガソリン共にパーツを共有するモジュラーユニットエンジンなので、2年強のタイムラグで来年度モデルからXEを始め、全ての2L搭載モデルのジャガー車でエコブーストからインジニウムに切り替わると言うのは冒頭の説明の通り。
こんな事情もあり、当初からXEはインジニウムの発表もあり、ディーゼルモデルのほうが俄然注目されたのだが、VWの問題も有ったりして日本の導入は発売から半年以上遅れた(実はこの問題後、厳しくなった日本のディーゼル試験に最初に合格したのがXEらしい)。なので初期モデルではフォード由来のガソリン・モデルのみが出回った。このエンジン、定評もあり、レスポンスの良くフォードでも実績を十分に積んだエンジンだと思うので(クーガやエクスプローラーにも同型エンジンが積まれたことはフォード好きならご存知だろう)、例えば中古でXEを探す際にこの感想を参考にしてもらえればと思う。
考えようによっては安心してサポートを受けられる数少ない"フォード"エンジン車と言う事も出来る。エコブースト好きなら一考の余地ありだ。
なお、自分が乗ったエコブースト・ジャガーは以下の2車種。何れも同型のエンジンだが、チューニングにより若干出力が異なる。
・ジャガーXE Prestige 20t 2000cc 直4直噴ターボ 200ps/5500rpm 32.6kgm/1750~4000rpm
→ 今回はこのガソリンモデルのXEの話。
・ジャガーXF Prestige 25t 2000cc 直4直噴ターボ 240ps/5500rpm 34.7kgm/1750rpm
最初にガソリンモデルの、良い所、悪い所をざっと書くとこんな感じだ。
長所
・ショートストロークらしく吹け上がりが軽快
・恐らくディーゼルより速い、若しくは加速感を感じやすい(ディーゼル[20d]とガソリンモデル[20t]の0-100kmのタイム公表値は双方とも7秒台で大体同じだが、踏み込んだ時の馬力感に差が出る、先述の吹け上がりの良さも関係している)
・ライバルの2L標準モデルよりパワーで勝る(BMW320i→184PS、Audi A4 2.0TFSI→190PS)
・リリースから時間が経っているので(エンジンとしては2010年登場)、枯れており、実績の少ないインジニウムより細かい改善が進んでいる(はず)
・上と共通するが、エコブーストはフォードが社を上げて開発したエンジンなので自社だけでなくボルボやランドローバーなど多くのモデルで採用例がある
短所
・直噴ターボの割に燃費が良くない(設計年次が一世代前というのもある)。特に都内街乗りだと7km/Lを切ることすら有る(高速巡航なら10km/Lは超えられるが)
・ショートストロークなせいか、最大トルク、馬力の付近(加給がかかるところ)で突然加速する、所謂"ドッカンターボ"っぽい(好きな人もいると思うけど)
・上記に関連し、極低速のトルクがやや細い
・リリースから時間が経っている分、一世代前のエンジン感は有る(振動、日本には関係ないがEU環境性能レベル等)
読んでみれば分かるかと思うが、要するにこのエンジンは「長所が短所」なのである。それをユーザがどう捉えるかと言う所だろう。つまりはショートストローク特有の吹け上がりの良さはスポーティなサルーンにはふさわしいけど(ハッキリ言って見た目からすればこの軽やかさの方がディーゼルよりXEに似合う)、現代のエンジンは省燃費、トルクを稼ぎやすいロングストローク時代である。昔はロングストロークだとかったるいエンジンになりがちだったが、今は摩擦係数などの技術が上がり、そんなに気にならない時代だ。
それでもインジニウム辺りはロングストローク特有のダルさも感じるのだが、そもそも直噴ターボやディーゼルは、高回転までエンジンを回さなくても十分力の出るような中低回転向きのセッティングなので、回さなくても良くなった時代なのだ(特に回転数の低いディーゼルは知らない内に思ったよりスピードが出ているという事が多い)。
だが、エコブーストはちょっと他の欧州メーカーのそれら(直噴ターボエンジン)と味付けが異なり、ある程度軽快に吹けあがりながらクルマを走らせていくエンジンだ。とは言え、高回転型のN/Aエンジン程回す必要はない。良い塩梅って感じ。だから乗っている分にはそこそこの所で回ってる感じがクルマらしくて楽しい。
その分、燃費ではややライバルには劣る。いや、はっきり劣ると言って良いだろう。近年のBMWやアウディのそれら2L直噴ターボは、180~200PS、30kgm辺りは当然稼ぎながら、JC08モード燃費も15km/Lを超えてくるものが多いし、実際都心街乗りでも10km/L近くまで行く車種が多いが、このエンジンとジャガーXEの組み合わせだと、良くて7km/L後半、悪いと6km/L後半辺りで推移する(ジャガーXEののJC08燃費は11.8km/L)。これはショートストロークで回転の上がりやすいエコブーストがストップアンドゴーを然程得意にしてないことや、ライバルに比べてやや古い(2010年発表)設計年次もあるだろう。
直噴ガソリンターボも世に出回るようになってから10年以上経過し、VWやBMW辺りでも2世代目、3世代目のサイクルに入っている。それらは環境対策(EURO6基準、燃費向上)、静音化(特に振動など)、モジュラーユニット化(4気筒なら2L、3気筒なら1.5Lのように組み合わせでエンジンを構成できる)が進んでいる。
そういう中で言えばジャガーに搭載されたエコブーストは、1世代前の感は有る。燃費も然りだが、振動系、これはR世代のミニのエンジン辺りもそうだったけど、冷却ファンの作動頻度や振動が多いエンジンだった。とは言え、R世代ミニ(2代目、R56系)で積まれたPSA(プジョー・シトロエングループ)とBMWで共同開発された通称"Prince"エンジンはアップデートされて現在でもプジョーやシトロエンのガソリンエンジンではメインだ。
つまり、ヨーロッパでは既に環境対策としてEV化を急ピッチで進めており、過渡期である現在ではPHVやディーゼルのほうがガソリンより優先される。CO2排出量の多いガソリンエンジン、もっと言えば長らく自動車を支えてきたレシプロエンジン自体が急速でオワコンに向かい始めている。だから特にガソリンエンジンに関しては順番が最後になる傾向が目立つ(それだけガソリンエンジンは完成してるとも言えるが)。
そうは言っても、市場に出て枯れているからこそインジニウムのような未知の問題は少なく、安心して乗れるとも言えるのだ。フォード・エコブーストやPSAのPrinceエンジンにおけるこの10年のダウンサイジングにおける貢献度は高いし、十分信頼できるとは思う。
クルマ好きなら御存知の通り、フォードのクルマ、エンジンは昔から一定以上のものがある。元々英国フォードとしてヨーロッパ向けのコンパクトモデル、フェイスタやフォーカスは、B、Cセグメントの実用車としてVWポロやゴルフと対峙し、時には彼らの立場を脅かすほどの評価やセールスを欧州ではあげてきた。残念ながら日本ではアメ車自体のセールスが伸び悩み日本市場からは撤退してしまった。それでも特にフォードにはエンスー中心にファンは多いし、今でもエクスプローラーが街を元気に走っていたりする(知人でもエクスプローラー乗りは居たりする)。
そう言ったヨーロッパの「ダウンサイジング」の波の中で切磋琢磨して生まれたのが"エコブーストEcoBoost(ガソリン)"、"デュラトルクDuratorq(ディーゼル)"エンジン(どちらも過去にジャガーランドローバーで採用されたと言われているエンジンだ)なので、美点も多く存在する。だから、もし中古や在庫品でガソリンモデルが欲しいと言う向きで、インジニウムではないジャガーはどうなんだろうと感じてる人がいるなら、それは全然気にする必要はないと思う。
まだ自分もインジニウムのガソリンモデルは乗ったことが無いのだが、リリースしたてのエンジンは大小問題が多いだろうから(自分のインジニウムXEなんてバランサーシャフト不良から大きな交換作業が起きた)、チョイスして後悔することは無いと思う。先述の通り今となっては日本でサポートを受けられる数少ないフォード由来エンジン搭載車種(別にフォードで面倒見てくれるわけではないので、悪しからず)なので、そういうエンスーにも◯である。
もし、PORTFOLIO(25t)のガソリンモデルが中古でタマがある場合、これは同じ2Lでもハイパワーモデル(240PS)なので、Sみたいなハイチューンまでは必要ないけど、そこそこ速い車が欲しいという向きにはお得かもしれない。BMWで言ったら328i相当だ。
こんな感じで、フォード由来のジャガーXEも中々良いのだが、中古を手に入れようとする時にディーゼルとの最大の違いは何かなと考えてみると、燃費かなと思う。都心ではJC08モードで20km/L走るクルマでもハイブリットでもない限り、高速に乗らないで走っていれば大体10km/L前後行けば良い方だ。それは過酷なストップアンドゴーや渋滞が日常茶飯事だからである。
そういう意味でエンジンフィールとかフォード由来とか新しく作ったエンジンだとかそういう細かいことを抜きにしてしまえば、基本的に大きくパワー関係は変わらないので、大雑把にガソリンもディーゼルも性能差はあまり無いと仮定した場合、一番大きく変わるところは燃費かなと思う。
仮にガソリンを7km/L、ディーゼルを10km/L(実際は走り方でもう少し良く出来ます)として、その差は3km/L程度だが、かたやハイオク、かたやディーゼルなので、L辺りの価格差は30~40円/L出ることになる。その辺りのコスパにもシビアに行きたいならディーゼルだとは思う。条件は様々なので細かくは書かないけど、このペースで1年8000km走ったりするとディーゼルは燃料費が半額程度になることも有り得る(実際は8000kmも走れば色んなケースが出てくるのでこの限りではないけど)。
コスパ重視ならディーゼル、ルックス通りの軽快さならガソリンなのかな。ありきたりな回答だけど。
別の回でも書いているが、インジニウムの実績のなさから来るネガも有るには有るし、良く言われる「ディーゼルの絶頂感の無い加速」は慣れが必要かもしれないが、基本的にはディーゼルも十分良いエンジンだとは思うし、このクラスにおけるディーゼルの恩恵は燃費、性能(坂道や巡航では特に)共に小さくない。ま、それでも新しいジャガー自体がまだまだ人柱な部分も有ると思うので、何れにせよ中古とかでもサポートを受けやすいメーカー認定の中古車を勧めるけど。
そんな訳で、僕的にはやっぱりディーゼルだけど、ガソリンモデルも良さは有るので後は好みかと。来年には出回るインジニウム・ガソリン車も乗る機会が有ればまたここで。
最後にだけど、エンジン以外に中古で大きなところとしては、初期モデルにはインフォテイメントシステムとしてInControlが導入されてないので、ここはこの手のものが気になる人は要注意かも。最も別の回で書いたようにInControl自体もかなり発展途上系なので、ちゃんとナビが使えて車内の設定にアクセス出来ればこだわらないよって人には余り気にしなくても良いかも。