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2017年12月14日 イイね!

納車にまつわるエトセトラ(Jaguar XE) その2

-納車は2月の小春日和、こ、この使いにくいタッチ・インフォテイメントは・・・-

ミニも含めて、BMW系に乗って長いせいだろうか、知らず知らずの内にBMW式に慣らされて育っている。それが使いやすいかづらいかは置いておいても、慣れてるので自分的には使いやすいのだ。それか気が合うんだろう。実際VW EOSには4年くらい乗ったのだが、何処かインパネがしっくり来なかったり(デザインありきで配置がメチャクチャなミニの方が慣れればこなしてた)、何となく足回りのマナーがBMW系と違うのでコーナリングが気になったのだ。勿論VWのクルマって当たり前のように使いやすく出来てるので、EOSのせいではなく、こちらの問題なんだろうけど。

その最たるものがiDriveで、これは素晴らしいインフォテイメントシステムだと思っている。とにかくメカ感の強い操作ボタンが慣れてしまうと使いやすい。全然見なくても操作できるし。強いて言えばナビでフリーワードをコントローラ上のタッチパッドから一文字づつ書くわけも無いし、ピンチイン・ピンチアウトは出来ない(F世代の3シリーズはタッチパネルではない)、ナビの場所移動もコントローラでしか出来ないなどウィークポイントも有ったりするのだが、何となくメカ好きなら慣れてしまえるような、そんな良さがiDriveには有る。

そして、ジャガーのインフォテイメントシステム、InControlだ。これは色んな意味で悩ましい。先ず「クルマでタッチパネルって使いやすいのか?」という原理的な疑問だよね。基本的に空調やナビの操作は止まって安全な時にやる、それはアタリマエの事として分かっては居るけど、それでも、例えば寒い日の夜にさっと車で出かけます、暖房が効く前にシートヒーターを付けましょうってなった時、ミニやBMWなら位置やタッチ感を覚えているから見なくても出来るわけ。似たような話でラジオのボリューム調整とかも見なくても出来るし、運転中に音量を変えるなんてザラに有るでしょう。まぁその手のオーディオ操作はBMWもジャガーもハンドルに操作系が有るから今はそれで問題ないわけだけど、たとえ停車中でも、インフォテイメントに集中しないといけないタッチパネルだけのインターフェイスって、やっぱりクルマにはどうなのかと思うんだよね。画面サイズを稼ぐというスマホと同じ理由も有るんだろうけど。

でも、その画面サイズを全く活かせないクソみたいなビルトインナビゲーションにも凹む。日本仕様は恐らく日本のメーカーのナビをOEMとして導入しているのだろうけど、それにしても酷い。先ず、これだけ横長な画面なら多くのユーザが二画面表示(右に広域、左に詳細マップのあれね)にしたくなるだろう。元々自分は余程小さいナビでもない限りその表示を好むので早速設定しようとしたが、何と出来ない。。。何のための膨大な横長画面なんだろう。

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パッと見は中々雰囲気と存在感のあるInControl Touch Pro、今のジャガー・ランドローバーの多くにはこれが導入されている。画面もきれいだし、一見操作系も分かりやすそうで、ナビは馬鹿、大事な機能が足りないという悩ましい発展途上インフォテイメントシステム。

因みに初期導入時はInControlではなく、独自の簡易なインフォテイメントシステムで、画面サイズも8インチだった。この初期システムは画素こそ荒くて見てくれはイマイチだったのだけど、ナビも2画面表示が出来て、音声コマンドにも対応し、案内精度も日本のナビのアベレージくらいは行っていたのだ(恐らく反応速度から察するにDVDナビなのだろうが)。それと比べると、InControlのビルトインナビはSSDナビかつ10インチのワイド画面で、画素も精細で表示も美しいのだが、二画面表示、音声認識(英語では対話機能に対応してるらしいが)は出来ず、更には案内精度が酷い。馬鹿みたいに裏道の右左折多めルートとか普通に案内してしまう。

結局近年だとナビは地図のアップデートも含めてスマホ、タブレットのほうが早いので、ざっくりと使うならGoogleマップで事足りるし(それが気に入らなくてもいくらでも有料、無料のスマホナビは存在する)、音声認識(検索)もネットも絡ませて精度が高いのでそっちをと言う人が多いだろう。現にVWのインフォテイメントシステムは遂にスマホのGoogleマップを車内の画面にエクスポート出来るようになった訳だし。

とは言え、やはりスマホだと回線が切れた所でどうするとか(これも有料でオフライン動作するナビを使うという手も有るけど)、VWみたいな連携が無いのなら、これだけ立派な画面が有るのだから活用したいと思うことだって有るだろう。しかし今のところInControlにはそのような連携は無い(JaguarAppsの今後には期待したいが)。

ちょっと話がずれるけど、そもそも車のナビに対して、僕は10年位前から旧態依然な感じがしていたのだ。考えても見ればiPhoneが出た頃、いや、もっと前のPDAの時代からそうだったけど、何故クルマって30万も40万もするたいそう高価なナビを一生懸命オプションで選んだり、後付で買わないと駄目みたいな風潮が有ったのだろうと当時から思っていた。更にそれをアップデートするにはまた高額を払わされるのである。

既にスマホが定着する前から、ネット経由でアップデートできるアプリなら、それらは簡単だし、そもそもソフトウェアだって自由に選べるわけだ(PCでもスマホでもマップソフトなんて無数に有るわけで)。なのに(特に日本では)それがとても遅れていたと思う。結局こんなのは利権絡みで、簡単にナビやら操作システムをスマホに取って代わられたらメーカーは困ってしまうからプレッシャーをかけていたとしか思えない。だが、結局Googleと大手IT企業が段々ナビとかにも力を入れてきたので、結局ユーザがスマホなりを代替えに選び始めて、更にはVWグループがインフォテイメントシステムとの連携も進めてしまったので力負けし始めただけのことに思える。

ナビのことがそうなのかは置いておくとしても、日本って利権やしがらみのせいで出遅れることが多いと思う。技術や緻密さはどの国よりも優秀なのに、中々パイオニアに成り得ない。逆に独自技術は普及が下手(利権は幅を利かせる割にロビー活動は上手くない)だ。結局根底にある保守的な発想が邪魔をしてるんだと思う。故にガラパゴスになりやすい。燃料電池車(FCV、水素が燃料のアレ、トヨタMIRAIね)はどんな道を辿るんだろう。EVがヨーロッパでは主流になりそうな気配だが、さて。

閑話休題、InControlシステムの話だった。とにかく現在もアップデートが続いてるようなので、機会が有ればシステムアップデートをディーラーにお願いするつもりだが、まだ試行錯誤は続いてるようだ。XEに関しても日本導入直後から以下のような遍歴を経ている。

XE導入初期:InControl未導入、サイドに操作ボタンの有るナビを中心としたシステム(DVDナビ) → 2017年モデル:10インチのInControl Touch Pro導入(SSDナビ、僕のはこれ) → 2018年モデル:更にバーチャルインストルメントクラスター化(最近流行りのデジタルメーター+ナビやインフォメーションをメーター部分にフル表示出来るやつ。XF以上には先んじて装備されていた)

機能としてもSIM+WiFiによる車内ホットスポット化や、InControl Appsとの連携によるスマホ画面の表示などアップデートは続いている(恐らくこれが強化されるとGoogleマップの表示も時間の問題かも)。だので、今が駄目なだけで、どんどんブラッシュアップされていくだろう。新しいもの好きは意外と損をする。

今のところ、唯一評価してるのがデジタルTVが標準装備なこと(フルセグ、ワンセグ自動切り替え、結構切り替わりまくって見づらいが)。実はBMW3シリーズはTVチューナーはオプションです。残念ながら僕はほとんどTV見ないんだけどね。。

機能、精度は良くなっていくのかもしれない、しかし、やっぱりタッチパネルってクルマで使いやすいのかなぁという根本的な疑問は拭えない。

せっかく直近でBMW3シリーズ乗っていたので、次は比較になるような話をしようと思う。
Posted at 2018/01/07 03:32:06 | コメント(0) | トラックバック(0) | Jaguar | 日記
2017年12月13日 イイね!

納車にまつわるエトセトラ(Jaguar XE) その1

-納車は2月の小春日和、素晴らしいコーナリング性能に舌鼓-

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納車の日、たった一日だけ一緒に並ぶ新旧のマイカー。左のベントレークライスラーは他のお客さんのクルマ。

ジャガーXEの納車日は冬の終わりの2月後半、BMW320dと入れ替えで納車した。そんな経緯もあり、ちょうどガチンコのライバルであるDセグメントの、しかも近年流行りのクリーンディーゼル車の乗り換えと相成った。

そんな訳で結構リアルな比較も出来るというか実際に感じたことも多かった。勿論モデルがワゴン(BMW320d)からセダン(ジャガーXE)に変わったので、細かい違いは有るのだが、乗り始めて数日で感じたことは、ジャガーXEがこれまでの不遇を払拭するべく肩肘張った作りであるのに対して、BMWはこのセグメントの王者な訳で、その作りは貫禄が有るというか、一見スポーティでプレミアムな風情なのだが、実は利便性も生活感を出しすぎない中で実に痒いところに手が届く的な作りになっていることを実感したことだ。

だからと言ってBMWが素晴らしいからジャガーを選ぶのはやっぱり無しとかそういう事でも無いのがクルマの面白さだ。3シリーズは昔からそのコンパクトさからスポーティかつ家族持ちにも耐え得るワゴン、セダンと言われてきたが、既にDセグは随分大きくなり(Cセグが普通に3ナンバーの時代なのだから全てのセグメントが肥大化の一途を辿っている)、日本ではとても"コンパクト"なクルマとは言えなくなって来ている。これは3シリーズだけでなく、今回のジャガーXEやアウディA4も同じことだが、既にDセグは15年前のクラウンやセドリック並みの大きさなのである。80年代の3シリーズがクラウンより大きいなんて事有り得なかった。

それはクルマのカラーにも現れてきていて、既に3シリーズは、良く言われるほど「スポーティ」ではないような気がする。どちらかと言うとハンドルやアクセル反応自体は鷹揚さ、ラグジュアリーさも有るし、何よりF世代のBMWは随分足回りもしなやかになったと思う。僕の乗っていた320dはランフラットタイヤを履いていたが、良く言われるランフラット特有の硬さなんて殆ど感じなかった。むしろ高速のコーナーとかではスピードが高いと少し柔らかいと感じる時も有ったくらいだ。勿論数多の日本車よりは足回りは締まっている方なのだろうが、それでも一昔前のドイツ車のイメージとは随分違う気がする。

僕が乗っていたのはスポーツサスを装着しているM-Sportsとかではなく、Luxuryの方だったのも有るのかもしれないが、それが普通なわけだから。何よりサイズが大きいし、1.6トンも有る車だからコーナーをスイスイ曲がると言うよりは、ディーゼルなのも手伝い、とにかく巡航時の快適さがハンドリングのチューニングも含めて印象に残っている。それでも50:50のバランスが織りなすコーナーで体がカーブの真ん中に居るような安心感は、それまでFF車に乗ってきた自分には新鮮で有り、感動したものだが。

つまり、サイズの肥大化や、Dセグの高級化、更には一つ下の1シリーズの登場によってBMWとしては、スポーティなキャラクターは1シリーズに任せ始めていて(近年唯一のCセグFR車と言える1シリーズはレビューなどでもそのオンザレールなコーナー性能を良く絶賛されている)、明らかに3シリーズ辺りからは値段相応のプレミアム感や快適さを感じやすいようにチューニングされているのではないだろうか。勿論潜在的な能力は健在だが、3シリーズに乗っている時は100km位でクルージングしている時こそドイツ車らしさを感じた気がする。

逆にジャガーXEは、Dセグというサイズを忘れるほどタイトに作られている。そもそも車内が狭い!サイズなんて3シリーズより大きいくらいなのに、先ず傾斜のきついAピラーや低い車高のせいで、乗るときですら頭をぶつけないよう気を使う。クーペスタイルとは言えセダンなのに。。。更には全体的に囲まれ感の強い内装が狭さを演出している。良く言えば「クルマを着るような」なのかもしれないが、リアなんて直ぐ頭が天井に当たる。実は足回りとかは結構余裕が有るのに、その辺りは損している気も。でも、それこそがジャガーの狙いなんだろう。

そもそも現時点ではジャガーはXEより下のサイズのモデルは出ていない。現時点で発表されたばかりのE-PaceはいよいよCセグの範疇なのかもしれないが、SUVだから一概に比較できないし、恐らくXEよりは広く感じる作りになるはず。だから、小気味良いスポーツ感はジャガーにとってXEの役目になるわけだ。よって、かなりスポーティなチューニングがされていると思う。

例えば、ハンドルだ。かなりセンターの遊びが少なく、3シリーズとミニならミニに近いと思う。だから、コーナーなんかはその素晴らしい足回りと相まって気持ち良いのだが、大きさの割にハンドル反応が鋭くて、結構高速直進の時は気を使うのだ。

そして、車内の狭さが精神的に影響しているのと、足回りを中心としたチューニングも有ると思うが、コーナリングではサイズを感じない。とにかくコーナーは得意。特に首都高速くらいのコーナーはジャガーXEが得意とするところだと思う。アルミシャーシ特有の硬い剛性感も有るんだと思う。そして、バランスもBMWと同じくほぼ50:50のFRなので、つんのめり感は皆無でコーナーのハンドリングはちょっとドキッとするくらいのスピードで入り込んでも全くバランスを崩すような素振りを見せない。FRならではのハンドリングのクリーンさも心地よい(既に前輪が操舵だけに徹している自家用車は贅沢な時代になってきた)。

遊びが少ないことも含めたシャープなハンドリング、タイトな室内空間、アルミならではのボディ剛性、そしてワイドアンドロー(ドレッドがライバルに比べても広めなのも一因に有ると思う)なボディバランスの良さがコーナリング性能に寄与していることは間違いないが、絶対的には小さい車ではないし、重さも1.6トンあり、ごく普通のプレミアムDセグのアベレージの重量だ。これも後述するがジャガーのエンジンはややターボラグが他のディーゼルや直噴ターボより強く感じるので(その割に特定の回転から急激にトルクが出るのでドッカンターボっぽい)、出足のアクセリング次第ではそれなりに重さを感じる時も有る。

それでもコーナーのオンザレール感は少なくとも今まで乗ったクルマの中ではベスト。ミニみたいな軽めで足回りも硬く(クーパーS)、やや強引なことをしてもその小ささでグイグイ行ってしまう感じとは異なり、恐怖感というものを感じないで曲がってしまうことがちょっと危ない位の足回りの良さだ。かと言ってさほど足回りは固くない(ドイツ車、ヨーロッパ車に慣れてるという前提で)。

はっきり言ってエンジンより足回りが完全に勝っているクルマだと思う。少なくともディーゼルの20dや近いパワーの20tではそういうクルマ。V6 380馬力のSならまた話は少し変わるという前提で。

何というか、昔のジャガーが言われていた「ネコ足」、つまりイギリスのレンガ道をいなしながら柔らかくこなしていくそれのモダンアップデート版とでも言ったら良いのだろうか。柔らかい足回りとは言わないが、ドイツ車みたいなゴツゴツ感はあまり無く、それでいながら高速でもひたひた路面を捉えて話さない感じなのだ。それは直進の時でもそうで、多くのクルマは普段乗りではそこそこ良い足回りも、流石に100km以上のところでは多少なりともふわふわ感が出てくるものである。例えば高速のジョイント間隔が短めでスピードが出ていると、相応の足回りでも多少ロールが出ることが有る。それが殆ど無いのだ。これは上位のスポーツグレードでも、スポーツサスペンションでもない僕のジャガー(プレステージ)ですらそうなのだから特筆すべき事だと思う。

ジャガーのセールスの人と最初に試乗した時に、彼が「足回りはかなり頑張ってベンチマークの3シリーズに大分近づいてますよね」と言っていたが、最初に軽く試乗した時から「いや、これは負けてるどころか今の3シリーズよりスポーティな足回りとしては一枚上でしょう」と思っていた。謙遜も有ったと思うが普段正に3シリーズに乗っていた自分が最初に響いた所がエンジンとかよりも足回りだったので、あながち的外れではないと思うんだよね。

実際にXEの足回りはフロントにWウイッシュボーン、リアにインテグラルリンク(マルチリンクの発展系とでも言えばよいのかな)という、このクラスではかなり奢ったシステムを採用している(WウイッシュボーンはBMWなら5シリーズからだ)。最もメーカーが異なるので直接どちらが良いと言う事ではないが、とにかくジャガーXEの最も素晴らしいところはそのコーナリング性能なので、是非試乗でチェックして欲しい。そう高速でなくてもちょっとコーナーを走れば車好き(SUVに未だ抵抗がある人は特に(笑))なら思わず微笑んでしまうほどだと思う。硬いだけの足とは全く異なる上品で引き締まった足回りに最も価値がある。

良いことから始めたが、乗って直ぐ解るネガも有る。それは次回に。

つづく
Posted at 2018/01/07 03:28:17 | コメント(1) | トラックバック(0) | Jaguar | クルマ
2017年12月10日 イイね!

ジャガーXEに至る経緯と英国車史の背景 -その4-

-イギリス発の主要セグメントを一手に担うJLRの今後-

「何故XEを選んだか」という話をするはずが、長々今日までの英国車の歴史と現在の立ち位置まで踏み込んでしまったが、もう少しお付き合いを。

ドイツ車(VW、アウディ、BMW、、メルセデス)、フランス車(PSGグループ、ルノー)、そしてイタリア車(フィアット、アルファロメオ)と対等に向かえるイギリス車のラインアップはB~Cセグメントをおさえる"ミニ"とDセグ以降のプレミアム・ラインが揃ってきた"ジャガー"、そしてプレミアムSUVとしては老舗かつ同門の"ランドローバー"が並んだことで形は整ってきたと思う。しかし、一点ポイントなのは、ミニは突き詰めればイギリスのブランドとは言い切れないし、資本自体も100%BMWだ。プロダクトもイギリスで生産されているとは言え基本的にはBMWと同じプラットフォームになった。そしてJLR(ジャガー・ランドローバー)には何の関係もない。

ここからは勝手な想像なのだが、この先ジャガーはもしかしたらCセグくらいまではモデルを用意するのではないかと考えている。XE,F-Pace,XFは成功と言えるし、それによりセールスも急激に回復している。恐らくE-Paceもかなり売れるだろう。次世代的にはEVのI-Paceも開発中だ。ここまでくればCセグハッチバックの"XD"を出しても何も変ではない。

ただ、ジャガーブランドとして、これ以下のサイズのクルマを用意するかと言われれば疑問が残る。アウディもポロベースのA1を売っている現在では何が起こるかは分からないけど、僕はこのコンパクトセグメントやもう少し大衆寄りのクルマで、もしかしたら"Rover"というブランド名を復活させるのではないかと思っている。

実はローバー75、Xタイプと比べたり、いや、75の方が好きだったという人も居ると思うんだよね。少し値段もこちらの方が安かったし。ローバーブランドでリーズナブルかつ英国的なハッチバックやコンパクトが出てきたら、英国車好きには夢が広がるとは思うのだけど。ちょっとクラシカルな路線をローバーに残すってのも悪くないと思う。まぁ妄想だけどね。特にミニはかなり手強い相手だからね。ミニと戦う"Rover"ってのも何とも皮肉なことにはなるけど。名前は、そうだな、やっぱり「メトロ」がいいんじゃないかな。英国車好きの方々なら分かってもらえるネーミングだと思う(笑)。

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"1997 MINI Concept"1997年に提示されていた来るべき次世代ミニのコンセプトモデル。2タイプ提示された。BMW買収以前のRover時代から開発は始まっており、そのRover主体で作られたものが右側。今のプレミアム・コンパクト感やスポーティな印象とは異なり、小さいボディの中に大人4人がちゃんと乗り込めるようなシティコミューター的な側面が強い。初期のベンツAクラスや、三菱のi(アイ)辺りとの共通点も。逆にBMW主体で作られたものはアイコン的な部分は活かしつつもボリュームを増し、スポーティさを全面に押し出したもの。こんなに極端な形にこそならなかったが、2代目ミニはどちらかと言うと、左のモデルに近いのが良く分かる。恐らくこの時点でミニだけは手放すつもりが無かったんだろうな、BMWは


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"Austin(Rover) Metro"1980年頃、ミニの後継としてリリースされたメトロ。ゴルフやフォード・フィエスタが流行った頃のものらしいデザイン。モデルチェンジなども後に行われるが基本のスタイルは変わらず98年まで販売された。それはミニのようにユーザに支えられたものではなく、根本的なモデルチェンジを行う資金が無かったという当時のRoverの事情による所が大きい。

しかし、タタ・モーターズがジャガーとランドローバーを買収した時、ここまでの復権を予想できただろうか。特にイヴォーク以降のランドローバーは、その都会的な路線をどんどん強めており、高級化も著しい。以前はファミリーやエントリー向けだった"ディスカバリー"は最低でも800万以上、オプションなど必要品を載せれば簡単に1000万超えしてしまう高級車で、僕には「家族多めの富裕層向けSUVデザインの高級ミニバン」に見える。また、イヴォークの路線として、ワンサイズ上のアバンギャルドなレンジとしてデビューした"ヴェラール"も、かつて無いスムースなデザインで、こちらもエグゼクティブ向けにヒットは間違いないだろう。

つくづく商売というのはタイミングも存在すると思う。勿論現在のJLRの復権はその質を今までのイギリスのそれらとは大きく見直したことが一番の勝因なのだが、ローバー末期、ホンダやBMWがテコ入れしてもどうにもならず、はたまたイギリスを良く知るアメリカのメーカーであるフォードがジャガーやランドローバーを買収した時は、きっと上手くいくだろうと思われたが、むしろ混迷させてしまったイギリス車の復権は、ミニ以外かなり厳しいと予想された。

しかしタタが資金的に支えたJLRはイギリスのブランド感、プレミアム感は強調しつつも、クラシカルというか懐古的路線を捨て去って、ドイツ車を「欧州車の標準」と認めた上で、それに習ってモダンに豹変した戦略は、ニッチで一部のマイノリティが愛してやまない英国車を葬り去って、富裕層にとって普遍的な高級感を醸し出すことに成功したわけだ。

ただ、それには一抹の寂しさも有る(XEに乗って何を言ってるんだという話だけど)。これはイギリス車に限らず、フランス車やイタリア車もそうだけど、今はグローバリゼーションが強く広まり、また、情報や流通、ディーラー体制の完備、発達で何処の国のクルマでも入手しやすくなった。情報社会だから事前にネガ、ポジも十分入ってくる中でキテレツなクルマや故障率が高いと噂されるクルマにわざわざ手を出すような輩は居なくなっている。それは当たり前の事だし、ポジも沢山有るのだけど、その反面、世の中で良いとされるデファクトスタンダード、もしくはマジョリティにメーカーも向かわざるを得ず、ネガと表裏一体な、メーカーや国ごとの味も何処かで置いていかなかければならなくなったとも言えるのではないだろうか。

だって、携帯選ぶ時に、これは日本製とか、アメリカ製とか意識する人はあまり居なくなったと思う。勿論メーカーは気になるし(Appleとかね)、一部国産メーカーに拘る人も居るし、韓国中国の製品は絶対イヤという人も居ないわけではないけど、多くは使いやすいものを選んでいると思う(そもそも国産メーカーのスマホって昔より減っている)。iPhoneもGALAXYはアメリカ人も日本人も意識せずに使っているわけ。クルマも段々と同じことが言えると思うし、それは強まっていくだろう。

最早シトロエンだって、とてもソフトで良い乗り心地だけど、重量は嵩むし、故障するとサスペンション機能を果たさなくなり、車高までおかしくなるハイドロサスは遂にC5の生産中止と共にその役目を終えるようだ。ルノーのアヴァンタイムも比較的近年では衝撃的なクルマで、ミニバンフォルムに常軌を逸した大型2ドアを取り付けて、何故かリアをえぐり取ったようなフォルムにしたため(ミニバンとクーペの融合だそうだ、でもリアのサスは安価なFF車的なトーションビーム・・・)ミニバンなのに後ろの座席の足元が狭いという、本当にフランス車好きでないとちょっと意味が分からないモデルも有った。好き嫌いは置いておき、それも個性だと思う。

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どう見てもヤヴァイスタイルをしている真にアバンギャルドな"ルノー・アヴァンタイム"。ミニバンベースなのに2ドア、積載性やリアシートのスペースを削り取るCピラー周辺(そもそもこのクルマにBピラーはない)のアバンギャルドなデザイン。フランス車なら何でもアートに見えるホンモノのフレンチエンスーに捧ぐ逸品。

ジャガーの話で言えば、残念ながらフォードとジャガーが描いたネオクラシカル路線とも言うべきXタイプとSタイプはそのデザインはともかくとして商業的に大失敗に終わった結果として、ジャガーは今の道に邁進することになった。このネオクラシカル路線、もう少しプラットフォームやエンジンにもお金をかけて(ミニのように)、デザインももう少し煮詰めれば違う結果も有ったのではないかと思う。そうしたらジャガーは今どうなっていたのだろう。でも、現在が結果であり、それはたらればの話でしか無い。

でも、個人的にはやっぱりアメリカのフォードとコンサバなイギリスを代表するジャガーの相性がつくづく悪かったんじゃないかなぁと思う。アメリカが求めるもの、イギリスが求めるもの、それは生まれが同じながらもフィロソフィが全く異なる愛憎関係のようなものだ。イギリスのコンサバさに嫌気がさして、新しく自由な国を作り上げたアメリカ人にとって、イギリス人の嗜好に合わせるのは苦痛というか、何処か相容れない感情が邪魔してしまったのではないだろうか。やっぱりSタイプとか見ていても、クラシカルで良いデザインなのに何処か愛情や思い入れが足りないような気がしてしまうのは僕だけだろうか、絶妙にCピラーとかはアメ車っぽい気がするんだよね。

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"ジャガー Sタイプ"サイズ的にはXFの前身、つまりBMW5シリーズやメルセデスEクラスと対峙するEセグサルーン。こうしてみると中々悪くないんだけどね。アメ車っぽい内装とかリンカーンと乗り味が一緒だとか評判は当時から微妙だった(後年改良されていくが)。

それでも、やっぱりドイツ車は何処か無骨さや機能美が残ってるし、フランス車も、プラットフォームやエンジンの共用化は進んでいるが、その一方で最近出たシトロエンC3やカクタスは庶民車としてはぶっ飛んだデザインをしていると思うし、アルファロメオのラインアップを見ていると、やっぱりイタリア車はセクシーで格好良い(ジュリアはジャガーXEを参考に、よりイタリアらしく格好良く味付けした感じもする)し、ジャガーに乗っていると、プロコン含めてそこはかとなく「普段はドイツ車と変わんないなと思ってもやっぱイギリス車だなぁ~」と思う瞬間は有るのだ。ま、それはこれから追々話していく事で。

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ブサイク(ごめんなさい)顔なのに何処か愛着も持てそうなニュー・シトロエンC3。先に出たC4カクタスもこんな顔だったよね。ミニバンのピカソも含めこれが新しいシトロエンの顔。やっぱりフランス車じゃないと出てこないデザインだよね。

まだまだ新しい英国車像は発展途上なんだけど、それについて行ってみようと思ったというところかな。と言うわけで、普段使いの感想、レビューもここからはそろそろ書いていく。
Posted at 2018/01/06 22:36:40 | コメント(0) | トラックバック(0) | Car Review | クルマ
2017年12月07日 イイね!

ジャガーXEに至る経緯と英国車史の背景 -その3-

-ミニが牽引する英国車の現在と矛盾、そこを埋めにかかるジャガーの戦略-

少し逸れたけど、ジャガーが最初に行った「スタイルの変革」「新しいデザイン言語の提示」の後、ジャガー・ランドローバー・グループはイヴォークなどのヒット、タタ・モーターズの資金提供など安定した基盤を築いていった。そしてベースの安定したジャガーの次なるストラテジーは以下の様なものだったと思う。

・空洞になっているイギリス車のC~Dセグメントのモデル確立

・完全自社開発のエンジン、プラットフォームの開発

・ジャガーブランドの再構築(SUVなど既存イメージを打ち破る(ぶち壊す)プロジェクトを含む。むしろ新しいジャガー像の確立というべきか)


先ず最初の話だが、現存し、日本や世界で入手できる英国車はどんなものだろう?
現状も踏まえて箇条書すると、

-ミニ → BMWミニとしてイギリスデザインを纏ったプレミアム・コンパクトなドイツ車として大ヒット

-アストンマーティン(マーチン) → フォードPAG傘下の後、クウェート投資会社を中心に最近ダイムラー(メルセデス)とも提携し、株主へ。遂に英国超高級車三強(アストンマーチン、ロールスロイス、ベントレー)も御三家関係に。基本はGT、スポーツカーだが2000万超えがザラな超高級ブランド。
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アストンマーティン DB7 イアン・カラムデザインによる名作の一つ。今でもアストンマーティンのデザインにはこの時代の面影が残る。

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ジャガーXK(二代目) 同じくイアン・カラムデザインのGTスポーツ。現在はF-Typeにその役割を譲り生産されてないが、「イアン・カラムなジャガー」の初期作品の一つ。DB7と共通点が見て取れる。

-ロールスロイス → 言わずもがなの高級車の代名詞。BMWグループ傘下、実質BMWベースのエンジンやプラットフォーム。

-ベントレー → ロールスロイスと袖を分かち、現在VWグループ傘下、車種にもよるが、VWベースのエンジンやプラットフォーム(クアトロ系の4WDを多く採用している)。とてもお金のある富裕層には人気なので時折都内でも見かける。

-MG → 中国上海汽車傘下、MG周辺の英国車史はかなり複雑なので割愛するけど、とにかく今のMGはライトウェイトスポーツのMGが有った頃とは全く別の会社。プロダクトも中国寄り。日本には現在進出してない。
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MG最後?のライトウェイトスポーツ、"MG TF"。これちょっと憧れたんだよね。MGの2シーターには憧れがある。

-ロータス → 中国吉利(ジーリー)汽車傘下、ジーリーはボルボも傘下に収める。プロダクトは英国。

-ローバー(Rover) → MGと同じくブリティッシュ・レイランドのゴタゴタから色々あり、企業、ブランド共バラバラにされて現存しない。主要なブランドとして、ミニはBMWに、ランドローバーはタタに買収された。なお、現在Roverのブランド名はタタが保有している。

-ジャガー・ランドローバー → インドタタ・モーターズ傘下、今回の話の主役ね。タタは資金提供が主でプロダクト自体は英国。

TVRはどうした?とかケータハムは元気だぞとかそういう意見も有るかもしれないが、先ずは日本人でもパッと思いつけて、かつ、乗用車と呼ばれるものを作っている、若しくは作っていたメーカーを羅列した。

先ず、特徴として、前の回にも触れたように、既にイギリス独自で企業として回っているメーカー、ブランドは殆ど無いことが挙げられる。これはBL(ブリティッシュ・レイランド)統合後のゴタゴタ、セールス不調等から英国自動車産業がどんどん傾いて行ったことが大きいと思う。また、欧州自体の自動車開発競争において、ドイツの優位がどんどん強くなり、結果としてイギリスを代表する高級車、ロールスロイス、ベントレー、アストンマーチンは全てドイツの資本や技術提携無しには成り立たなくなっている。また、ロータスやジャガー・ランドローバーのように中国やインドと言った新興国によって資本を支えられているケースも存在する(これはイギリス車だけに限ったことではないが)。

そういう意味で現在の英国車はブランド名としての英国メーカーを利用しつつもその資本や技術は他国が支えるという新たなフェーズに入っているのである。その先鋒を切って成功したのがBMWミニと言うことになるだろう。

ミニが成功した背景には、BMWのブランドイメージ戦略も勿論あるが、ミニ自体が英国人や世界の人に深く愛された小型車であることも大きいと思われる。"Mini is british icon"とイギリス人が言うくらいミニは今でもイギリス人に愛されている(人口比で勘案すると今でもミニはイギリスで一番売れているようだ)。

つまり、ミニは小型車としては十分高級な部類に入るのだが(特に近年は全然安くない)、その一方でちょっとしたサラリーマンではとても手が届かないと言うレベルではない。また、ミニが出た当時はBセグ辺りは実用車が多く(例えばポロとか)、それらよりもう少し面白さとか高級感のある"プレミアム・コンパクト"が殆ど無いか少なかったという事も有ると思う。つまり、潜在的なニーズを埋めた形になったのだと思う。

当初は2ドアかコンバーチブルしか無く、今のようなバリエーションも無かった。正直リアシートも足元が狭く、ラゲッジルームも小さかったのだが、先ずコンサバなミニ・ファンをクラシックからニューミニへ移行させ、新しいデザイン(むしろサイズと言った方が良いかも)に時間をかけて慣れさせ、年を追うごとに今までの2ドア(3ドア)ハッチバックとは異なるモデルを少しづつ提示し始め、徐々にエンスーやミニマニアだけでなく、一般層へもミニを浸透させていっての今があるんだと思う。既にBMWミニも登場から15年ほど経過し、今ではワゴン、SUV、PHVなどバリエーションを持つ一ブランドに成長している(その分、"MINI"というブランド名が形骸化してると毎度叩かれてもいるけれど)。

そんな風にミニがBMWのバックボーンと元々持つブランド力を合わせて現在のプレミアムB~Cセグメントをリードしているわけだけど(2016年の日本における外車売上で遂にゴルフを抜いて1位に)、これによって表向きでもイギリス車はドイツやフランスのコンパクトと拮抗出来るモデルを得たと言える。いや、むしろ御三家よりも先んじてコンパクトセグメントのプレミアム化を実行し、リードしているとも言えるだろう。ミニの成功の後、A~Bセグは様変わりしている。イタリアのフィアット500の復活なんて思いっきりミニと被る路線だし、アウディがA1を出したのはVWグループとしてポロだけではカバーしきれない層を拾うためだと言える。更にはSUVのミニ・クロスオーバーが出たことで、同じくフィアットも500ライクのデザインでSUVという"500X"を、アウディも今までにないポップなデザインの"Q2"を最近リリースしたことは記憶に新しいところだと思う。

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サイズはミニより1サイズ下だけど、ネオクラシカルなコンパクトという選択肢としてミニのライバルでもあるフィアット500

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既にQ3というコンパクトSUVが存在していたが、よりポップで若者にも訴求する選択肢としてQ2が今年登場。ミニクロスオーバーやフィアット500Xとも対峙していく。因みにBMWも間もなくX2を出す。もう完全にMINIとBMWが被り始めている。

前述の通り最近ではSUV(クロスオーバー)やステーション・ワゴン(クラブマン)まで登場し、Cセグすら脅かす存在になっているミニなのだが(既にクラブマンと兄貴分のBMWの1シリーズはほぼ同サイズだし、むしろクラブマンのほうが高めだ)、流石にこれ以上のサイズ感は今すぐは出てこないだろうし、3シリーズを脅かすモデルを同胞であるBMWが作るとも思えない(今にしてみればSUVも最初は十分有り得なかったので将来は分からないけど)。

そこに最初に焦点を合わせたのがジャガーだったのだと思う。ミニは基本小型車だし、大きくしすぎれば同胞のBMWと被ってくるのでそこはBMWもさじ加減が難しい所だとは思う。しかしながら、他の「イギリスブランド」を眺めた場合、それが出来るのは恐らくジャガーくらいしか今は居ないのである。

先ず親会社自体が御三家であるロールスロイスとベントレーは置いておくとして、最近ダイムラーが絡んだとは言え、ついこないだまではそうではなかったアストンマーチンが庶民派(これらブランドから見たら、だけど)なDセグメントで2L前後のエンジンのモデルを作るだろうか?アベレージで2000万以上の車がゴロゴロしているブランドである。彼らは御三家よりも更に高みに居て(モデルにもよるけど)、本気の金持ち、例えば成功しているIT企業の社長とか、執行役向けのブランドなのである。ライバルはむしろマセラティとかテスラとかそっちなんだと思う。ロータスはスポーツのための孤高のブランドだし。

既にMGやRoverに世界的な戦闘力が無い、解体している現在、中間的なモデルを作れるのはジャガーしか残ってなかったのだと言える。実際に実績(Xタイプ)も含めてそうだろう。むしろジャガーがフォード末期のゴタゴタとXタイプの失敗でズッコケていただけなのか知れないけど。

そこで新たなフェーズの最初の取り組みは「Dセグで世に問えるクルマを作る」事になったのだと思う。但し、Xタイプの苦い経験から、これにはかなり慎重になっていたと思われる。幸いにもバックボーンとなったタタ・モーターズは資金も豊富かつ、カネは出しても口は出さないと言う感じでプランからしっかりジャガーがお金をかけて進められたことで、良い人材の登用(BMW出身のCEO採用やイアン・カラムをジャガー専任のデザイナーに留めることが出来た)、柔軟なプラットフォームの開発(これが次期XFやSUVにも繋がる)、完全に自社設計のエンジン(インジニウム・エンジン)に繋がっていった。

そして、既存のイメージを打ち破るブランドイメージの構築である。これはXFから始まっていったことだが、XEの開発時期にそれはより一層強く高まっていったのだろうと想像できる。先ず、XEという広く知れ渡ることになる庶民的なセグメントの開発において、ライバルを明確に御三家と定めて、明らかにそれまでのイギリス車や過去のジャガーを参考にするのではなく、ドイツ車を出来るだけ参考にしたところである。それはデザインからテクニカル、パフォーマンスまで全てである。実際に同セグメントのライバル車をジャガーでは何台も購入して、デザイン、機能の確認や比較を行って開発をしていったようである。それは英国の誇り高きブランドにとって、大きな変化だったと思う。

これらを包括して完成したXEは、ワイドアンドローでモダンなクーペスタイルの外観を持ち、スポーティな足回りを携え(後々書くが、実はXEで一番素晴らしいのは足回りだと思う)、プリクラッシュセーフティ(ACC、衝突軽減ブレーキ等)や独自のインフォテインメントシステム(InControlTouch)を装備し、最新の環境性能の高く、かつスポーティなエンジン(燃費の良いクリーンディーゼルや直噴ターボ)を積んでいた。

ある意味見た目の極めつけは、XEはが「イタリアンレーシングレッド」をモデルのイメージカラーに選んでいたことである。確かにXEにはこの色が最もスポーティに見えて似合うような気がする(だから僕もこのカラーを選んだ。赤い車なんて乗るとは思いもしなかったが)。当初はブリティッシュレーシンググリーンも設定色には有ったが、最近カタログ落ちしたのも象徴的だろう。もう古い英国車像からは加速度的に離れていってるのである。その離れっぷりはデザイン自体は意外とコンサバなミニ以上である。

上記のような特徴は、正にドイツ車、ヨーロッパ車の標準として求められるようなスペックである。もはやクラシカルな外観や木目調のインテリアなどは存在せず、ワイドアンドローで比較的マッシブなフォルム、肉感的なフェンダー周りは近年のヨーロッパ車で流行のそれなのだが、敢えてイギリス車らしさ、ジャガーらしさを指摘するのなら、筋肉質なフォルム自体が動物のジャガーを表現していると思われるので、細マッチョ的と言うか、グラマラスでは有るが、中性的な雰囲気も有ること、流行のスタイルの中でも、サイドベントなどが大きく開いていたり、キャラクターラインが多用されていると言う程でもないのである。その中でややクラシカルさを残すグリルとシャープながらも全体的には昔のジャガーのようにスリークとまではいかないが基本はシンプルなボディデザイン、機能性よりはデザイン度が高いインテリア(逆に所々にドイツ車より安っぽさもあるが・・・)と言った所だろうか。

このXEの振り切れっぷりと同時に、ジャガー初のSUVである"F-Pace"も同じプラットフォームを流用し開発していった訳だから、「既存のイメージをぶち壊す」と言うのもあながち的外れではないと思う。僕のような比較的後追い世代のジャガーファンですらSUVが出ると聞いたときには結構驚いたので(その一方でジャガー・ランドローバーになったわけだからSUVのウンチクは凄い有るので作ってもおかしくないよなぁという変な感慨も)、オールド・ファンにとっては腰を抜かすほどの衝撃だったのではないだろうか。

でもね、そんなに拘ってない人には「高級車ブランドの洒落たSUV、いいねぇ」ってなもんなんだと思う。ミニ・クロスオーバーだってマニアは「こんなのミニじゃない、認めない」といった所で、普通に洒落た車欲しい人には「ミニのデザインで人も荷物も入っていいねー」という感じで、今や日本ではクロスオーバーがダントツ売れてるわけだからね。ケツの穴が小さい輩ばかり相手にしてられないのが商売なんだろうね。

こうして、Dセグメントの"XE"の登場を皮切りに、BMW3シリーズやアウディA4らと似て非なる「新しい英国のエントリー・プレミアム」を紹介することが出来たジャガーは、流行りのSUVにおいてもBMW X3,X5、いやむしろスポーティなポルシェ・マカンをライバルとする"F-Pace"、そして改めてエグゼクティブの中心セグメントとも言えるEセグメントの"XF"でも新しいプラットフォームやバリエーション(スポーツブレイクと言われるステーション・ワゴンも登場)を用意し、BMW5シリーズやメルセデスEクラスのオルタナティブとして機能するに至っているのである。

これにより、一気に空洞になっていた「イギリスのDセグ以上」が埋まったことになる。更には上位層のダウンサイジング、SUVがブームも含めて最も今後アツいとされる「CセグメントのSUV」にも遂には"E-Pace"の発表で切り込んできた。ここで新ジャガーでは初めてFFベースのプラットフォームを採用している。こうなると何れはCセグでハッチバックスタイルのジャガーも登場するのだろうか。名前は"XD"とか?

https://www.themotorreport.com.au/car-review/jaguar-xd-hatchback-rendered-82317.html

ググってみたらとっくに世間でも噂になっているみたいね。レンダリング画も登場してる。今のジャガーなら十分有り得そう。ここまでやればほぼイギリスブランドでもドイツに対峙出来るモデルが並ぶことになる。

長くなったが、こういう未来が見えたことで、僕自身もそんな御三家のオルタナティブに成り得るかもしれないジャガーに肩入れしてみたくなったし、ある意味それを純英国車としてやってやろうと思っているジャガーはある意味精神的には凄く英国的に思えてきたのも有るかもしれない。勝手な解釈と判官贔屓も有るだろうけど。

続く

Posted at 2018/01/06 22:32:08 | コメント(0) | トラックバック(0) | Car Review | クルマ
2017年12月06日 イイね!

ジャガーXEに至る経緯と英国車史の背景 -その2-

-ミニが牽引する英国車の現在と矛盾、そこを埋めにかかるジャガーの戦略-

イアン・カラムの思想を色濃く反映し、それまでのクラシックなスタイルと別れを告げ、更に経営がフォードからタタ・モータースに変わった最初の作品が2007年、1サイズ上の”ジャガーXF”だった訳だが、まぁその変貌ぶりと何となく覚えづらいデザインには当初全くついていけなかった。

特に初代XFは、イアン・カラム他デザイナーズサイドにも変革に対する躊躇と過渡期対応が有っただろうと思われるデザインへの葛藤がそのまま現れていて、丸目を残した前照灯や、クラシカル感を残すためのメッキ感の強いグリル周りは、それまでのナロー(スタイルという意味で決してジャガーは小さくないけどね)でクラシカルなスタイルに毒されてきた自分には俄に受け入れられない類のものだったのは間違いない。

jaguarxf2009.jpg
Sクラスの後を受けて登場した初代XF。今見ると旧デザインとの葛藤が透けて見えるフロント周り。とは言え、今につながるデザインの系譜はここで始まった。スタイルは大きく変わったが実は初代XF、Sタイプのシャーシを流用しており、開発、展開も含めてまだまだ過渡期だったことを伺わせる(供給先のフォードの事情も有るが、エンジンもMY毎にかなり変わった)。

寧ろ今日のジャガー的”デザイン言語”が完成するのは、次の2009年に発表された”XJ”で、内部的には丸目4灯ながらも鋭い目つきのユニットデザインになった前照灯、サイズを上げ光沢感を抑えたフロントグリル、より流麗さに振り切ったクーペスタイルなど、「もう、古いジャガーはここにはありませんよ」という一種の決別的な割り切りが見て取れる。

jaguarxjnew01.jpg
jaguarxjold01.jpg
上が現在のXJ、下がそれまでのXJ(書くまでも無いかもしれないけど)。モデルチェンジと言うか別の車と言っても良いと思う。

この後程なくしてXFもXJ寄りのフェイスリフトが行われる。

XJ辺りからは作る側もデザインとして慣れてきた感が有ったが、やっぱりそれでも僕はピンとこなかった。と言うか批判多かったでしょ。いや、むしろジャガーだと気づいてない人が多数だったのでは?だって、ジャガーのブランドイメージを作り上げたあのXJがこんなに変わっちゃったんだもの。前モデルの無い(実質Sタイプなんだけど)XFとは違ったインパクトを与えたと思う。

特に「欧州車ではなく英国車が好き」という人達には、新しいXJが例え「優れたヨーロピアン・サルーン」で有っても「伝統的(コンサバ)な英国高級車のフラッグシップ」には全然見えないからね。

良く、ブランドイメージを確立するのは最低10年かかると言うけど、その通りで、このイアン・カラム流ジャガーを世間が認識、評価するには結局10年近くかかって今が有るんだと思う。僕はそのサイクルで評価した典型なんだろうな。戦略通りか。

古臭くてもそれまでのジャガーは多くの人を魅了してきたわけだし、それを覆して「新しいモダンなブリティッシュカー」のイメージを浸透させるのはそれだけ大変だし、地道な忍耐も必要なんだと思う。実はそれが苦手なのが日本車だよね。名前もデザインもコロコロ変えちゃうので一時的には売れても続かないモデルも多い。BMWなんて番号が車名で、それを50年近く続けていて今が有るわけだから。ゴルフはずっとゴルフだしね。プリウスがそれを今後できるかどうか。

デザインや路線をテコ入れしつつも、まだタタ初期のジャガーは過渡期で、むしろタタは先にランドローバーにテコ入れした感じがするのは僕だけじゃないと思う。その最初の成果が大ヒット作"レンジローバーイヴォーク"なわけだ。もはやアーバンコンパクトSUVの代表格として町の至る所で見かける。ワイドアンドローなディメンションでスポーティなデザイン、後ろ下がりのルーフ、今までのランドローバーの無骨さとある意味対極にあるクールなスタイルは今につながるSUVブームの先陣を切ったと言っても良い。これが無ければX4、X6とかGLCのクーペみたいな「クーペそのまま大きくして持ち上げてSUVにしました」みたいなスタイルがこんなに市民権を得なかったかもしれない。

つづく
Posted at 2018/01/06 22:26:51 | コメント(0) | トラックバック(0) | Car Review | クルマ

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「マイ・イヴォークの紹介と、イヴォークがランドローバーにもたらした功績を考えてみる http://cvw.jp/b/2246861/45479630/
何シテル?   09/21 05:54
cafebleuです。英国車、ミニが好きでローバーからBMWのミニへ合わせて3台乗りました。ミニ・コンバーチブルに乗ったらオープンカーに取り憑かれてVWイオスに...
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