
年内はもう無いと思ってた【雑談】です。ルーフの話をしていて、ふと思いついてしまったので、勢いで書きます。
建物のドアノブじゃありません。クルマのドアノブの話です。例によって暇の有る方のみお付き合いください。
唐突ですが、カーデザイナーってドアミラーとドアノブが基本的に嫌いなんじゃないかと思います。モーターショウのコンセプトカーを見ても、基本的にドアミラーとドアノブは主張しないサイズと形ですし、そもそもそれらが付いていない(見えない)ものも存在します。想像ですが、ミラーもドアノブもクルマが空気を切り裂いて駆け抜けることにおいては「異物」「障害」でしか無いからなんだろうなと思います。
なので、その「異物」をいかに自然にデザイン処理するか、ということは昔からの課題だったのではないかと想像します。
ドアミラーは別の機会に触れるとして、今回はドアノブに関して思ってることをちょっとだけ(?)雑談してみます。
普通の車にはたいていドアノブが付いています。クルマに乗り込む時には必ず、そして頻繁に使うものですし、かなりの重量物であるドアを開け閉めするものなので、作りも華奢ではなく、かなり頑丈に、骨太にできています。しかしデザイン上は前述のように「異物」でしかないので、できるだけボディデザインに溶け込んで「異物感」「存在感」を消すように処理するところがデザイナーの腕の見せ所なんではないかと思います。
ドアノブの異物感をなくす手法は古くからあって、
たとえば1960年代の国産車では1962年のプリンス・グロリアが下の写真のようにショルダーラインのモールにノブを一体化させて、上手くその存在感を消しています。
BMW3シリーズを例に挙げると、1980年代は下の写真のように、ショルダーのプレスラインとフラップ型のドアノブの下辺を合わせて悪目立ちさせない様にし、
1990年代後半ではグリップ型のドアノブとつまみ上げたような鋭角のショルダーラインを合わせ、ボディとの一体感を出しています。
国産車を見る限り、1980年代以前は殆どがフラップ型のドアノブで、もともとあまり目立たないものでした。フラップ型というのはこういう形のもの。下から指を入れて持ち上げるタイプのものです。
1980年代以降は安全上の理由(万一の際にウインチ等で引っ張ってドアを引きはがせる)からか、あるいは単に欧州車デザインのモノマネなのか、特に高級車においてはグリップ型が主流になってきたように思います。グリップ型というのはこういう形のもの。上から握るタイプのものです。
1980年代に欧州車風のグリップ型を最初に採用したのは日産のグロリア・セドリックだったと思います。CM曲は坂本龍一のRiskyで渋かったですね~。あ、これはどうでもいいか。
■日産グロリア(1987)
話が逸れました。もとに戻します。
グリップ型のドアノブをボディデザインに融合させるのは上記のBMWの手法以外は今のところ極めて困難だと思います。しかし、世の中には凄いアイデアマンが居て、「融合させにくいなら、最初から隠してしまえば良いのでは?」ということで、「隠しノブ」が登場します。最初に世間で話題になったのは、4ドアクーペを、あたかも2ドアクーペのようにスッキリ見せてくれたアルファロメオ156(1997)。比較的存在感を主張するフロントドアのノブに対して、リアドアのノブはCピラーの付け根にブラックカラーで隠してあります。
■アルファロメオ156 (1997)
しかし、この手法はアルファロメオが開祖ではありません。アルファロメオよりもずっと以前の1986年に日産テラノが実施していたという説があります。あまりきれいに隠せていませんが、ごく普通のフロントドアノブに対して、明らかに「隠したい」という意思が窺えます。
■日産テラノ (1986)
しかし、しかし!テラノよりもちょっと前の1983年にホンダバラードスポーツCR-Xがドアのエッジとフラップのエッジを合わせたノブを採用しています。私はこちらが開祖なのではないかなと思ってます。
■ホンダ バラードスポーツCRX(1983)
上手く隠れているかというと微妙な感じもしますが、ドアを開けた時はスッキリ見えます。
その後、1991年にNSXとRX-7が
■ホンダNSX (1991)
■アンフィニ RX-7(1991)
2000年にはアルファロメオ147が
■アルファロメオ147 (2000)
2010年にはコンパクトSUVの日産ジュークが
■日産ジューク (2010)
そして最近では
ホンダヴェセルや
ホンダNスラッシュや
トヨタC-HR
など、スタイリッシュなクルマ、特にデザインコンシャスなSUV系には隠しノブが当たり前になってきています。ここまで当たり前になってしまうと、こうしたデザイン処理にはオリジナリティがほとんど感じられなくなって「ああ、またコレか・・・」「今はこのデザインが流行りだよね」という感じになってきます。同様の事象として、ボルボ850を開祖とする「Cピラーと一体化した縦長テールランプ」や、アウディを開祖とする「大型開口のグリル」などが挙げられると思います。流行に遅れるのも辛いでしょうが、流行を採用しすぎて個性を失うのも辛いところです。
上記のような「ピラーに隠す」という方法を用いずにドアノブの存在感を消す(あるいは空力的に障害にならないようにする)方法としては
1985年のスバル・アルシオーネや
1992年のTVRグリフィスや
ノブ自体を消し去ってしまった、同じくTVRのキミーラ(1994)

の例があります。TVRはドアノブをどこにやったかというと

ドアミラー下のスイッチにしているんですね。わからないと乗り込むこともできないので、ある意味防犯に役立っている?
その他にも2004年以降のアストンマーチン
最近ではテスラモデルSなども上手く処理されている様に思います。
おそらく近い将来、ドアノブは消え去って、スマホタッチや人体通信によるアンロックが登場するのではないかと思います。冒頭に触れたドアミラーも小型カメラ化するのと合わさって、クルマのエクステリアデザインは異物感の無い「つるりんっ」とした形状に向かっていくのではないでしょうか。そんな中、各メーカーは、どのように個性を主張していくのか・・・とても興味深く思います。
しょうもない雑談にお付き合いくださいましてありがとうございました。
良いお年を!
Posted at 2016/12/31 19:29:30 | |
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