ひと月ほど前、台風9号の猛威の中
無謀にも道東にキャンピングカーで出かけた私でしたが
実は8月21日、釧路を通過する際に
目の前で子猫が対向車に撥ねられるのを目撃しました。
加害車輌は無謀な運転のハマーH2だったのを覚えています。
子猫は、腰下をタイヤに弾き飛ばされたらしく
ぐにゃりとなって動かない後ろ足を引きずり
上半身(前足)だけで道路の中央で、逃げようと必死でもがいていました。
迷わず車を道路中央に停め、後続車&対向車を遮り
2次事故防止措置を取り、子猫に駆け寄りました。
両足がブラブラしてまったく力が入っていない状態で
下半身を引きずりながら、何が起こったのかわからないという顔で
泣き叫んでいました。
とにかく道路から移動させなければと思い、抱き上げて路肩に運びました。
まだ鳴く力が残っており、外傷が無く意識もしっかりしているので
助かる見込みがあるかもと思い、釧路市内の動物病院を探しました。
しかし、釧路には日曜日に診療している動物病院は見付からず
電話で病院を探しているうちに、1時間以上が経過していました。
子猫は足が痛むのか、しきりに鳴き続け
道路わきの草むらに身を隠そうとするのですが
このまま草むらに逃げ込んでも
事故で歩けなくなった猫の末路は、死を待つのみであるのは
誰の目にも明らかです。
その場から立ち去ろうとすると僕の姿を追い、草むらから出てこようとします。
鳴きながら「置いていかないで!」と訴えているように感じられました。
いや、この子は間違いなくそう言っていました。
旅程を1日残していましたが
意を決し子猫を保護し、札幌の病院まで高速で一気に走る事にしました。
この小さな命を助けたい!
ただその一心で。
抱き上げたその子を触診した結果、足の骨折は無いように思えました。
股関節の脱臼、あるいは股関節骨折のような感じです。
インスタントでスーパーの買い物かごをベッドにし、バスタオルを敷き詰め
キャンピングカーに一緒に乗っている我が家の先住猫2匹から隔離しつつ
眠れる場所を確保しました。
まずは雨でびしょぬれになった身体をドライヤーで乾かしてやり
落ち着ける場所を作ってやっても
人のぬくもりを知っている子なのか
いくらかごに入れようとしても
膝に上がってきて、丸くなって寝ようとします。
最初はブラブラしていた左後ろ足にも力が入るようになったようで
カゴから自力で這い上がってくることが出来るようになりました。
それでも濡れた寒さからは開放されたのか、泣き止んでくれて
ホッとしました。
「大丈夫かい?痛くないかい?」と声をかけると
元気に「ニャ~ン!」とお返事をする、おりこうさんの子でした。
あとはこのまま、札幌に着くまで持ちこたえてくれる事を祈りつつ
札幌に向け高速を爆走しました。
助かったら、もし歩けなくてもウチの子に迎えよう!
歩けなかったら、車椅子作ってやらなければならないなぁと
そんな事を考えながら2時間ほど走った頃
子猫は急に大量の嘔吐をし
急に元気がなくなり
2度、3度と咳き込んだ後
それっきり、動かなくなってしまいました。
まだ目には光が残っているし、当然温かい・・・・
心臓マッサージをしてみても、所詮素人の真似事。
動かなくなってしまった子猫は、遠くを見つめたままでした。
小さな命の炎が、目の前で消えてゆく瞬間でした。
野良猫を拾い、保護し、札幌に向けて走るという判断が
その時の僕の最善と思える判断でした。
放置したまま立ち去ればよかった?
車も停めずに、走り去ればよかった?
小さな命を助けられなかった無力感は、ぶつける先も見当たらず
小さな亡骸と共に札幌までドライブを続けました。
助けてあげられなくてごめんね、ごめんね・・・と、謝り続ける事しか出来ない。
せめて飼い猫と同じように家族として、手厚く火葬してやる事くらいしか
思いつかない自分が情けなかった。
釧路で保護した子だったので「鶴」と名付け
札幌の自宅に戻ってからは寝床を作ってやり、一夜寝かせ
翌日、ブラッシングしてあげた後、火葬に連れて行きました。
命の火が消えるのを看取るというのは
ペットの飼い主として何度も経験がありますが
何度経験しても痛みや悲しみは変わらないし、慣れるものでもありません。
この子のように、たった2時間だけの家族でも、やっぱり悲しいですね。
ペットの猫には、主従関係を結ぶ「瞬間」と言うのがあります。
最初はまさに「借りてきた猫」状態で、目を合わせたりは決してしませんが
ある日ある時突然に、親と決めた人をまっすぐに見つめて
「僕のママになってくれるの?」と、目で問いかけて来る瞬間があります。
この保護した子猫「鶴」君は、保護した瞬間にそれが有りました。
真っ直ぐ僕の目を見て、話しかけてきました。
だから尚更、助けられなかったのが悲しかったです。
晴れた夜
星を見ると、「鶴くん、お星様になったかな?」と
この子の事を思い出してしまいます。
おしまい
Posted at 2016/09/20 00:53:27 | |
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