私の住んでいる市街地では、雪は降らなくなったものの、道路を除雪した雪が道路脇に結構な高さで残っています。結構な高さで雪が残っていると、脇道から出てくる車の確認が難しくなってきます。
G-Bowlアプリを使った碁盤の目の練習をしたいなぁと、気持ちがうずうずしているのですが・・・。交差点の進入は雪で他車の確認が難しく危険なので、碁盤の目の練習は1ヶ月はできずにいます。
運転ができない時は、イメージトレーニングと言わんばかりにYouTubeで、昔のベスモやホットバージョンの動画を見ています(笑)
そんな中で、スーパーGTでARTAのGT500ドライバーだった伊沢拓也選手と、当時のチームアドバイザーだった土屋圭市氏の、同一車種でのデータロガーを比較した動画を見つけました。
こちらがその動画になります。
(データロガーと、運転を解説する土屋圭市氏のところだけを見れるように、編集し直しました(^^;)
(土屋圭市氏と伊沢拓也氏とのデータロガーでの比較動画)
こちらの動画では、データロガーのうちアクセル操作だけにしぼって。そして一目で分かるようにPC上のデータロガー+車載映像を重ねて、アクセル操作・車に掛かるG・車速を比較しています。
特に伊沢選手と土屋氏のステアリング操作を、Gのコントロールと一緒に比較できるので、見ていてとても面白いです。
動画は2008年のものなので、土屋氏は引退して数年は経っているのに、練習走行でのタイムで現役GTドライバーの伊沢選手に勝ってしまうなんて・・・。凄いですね(^^;
さて今回のブログでは、「こちらの動画を見て下さい」とだけだと、なんだか素っ気ないので。コーナーの映像を画像にして、気になるところを見て行きたいと思います。
撮影で使われたサーキットは、ツインリンクもてぎのフルコースです。
まずはコース上に描かれた色の説明を。
コースのイン側のラインは、土屋圭一氏のアクセルのデータロガーで、コースのアウト側のラインが伊沢拓也氏のアクセルのデータロガーです。(実際は同一ラインを走っていると思いますが、比較のために左右に走行ラインを分けたと思われます)
コース上の緑色が、アクセル全開の区間。青色が、アクセル全開ではないのですが、ハーフスロットル区間。グレーの色は、アクセルオフの区間となります。
こうしてアクセル開度のデータロガーを見ると、プロはコーナー半分あたりからアクセル全開で走行している事が分かりますね。そして、コース上の緑のアクセル全開区間が長いですね。一方で、アクセルオフの区間はコーナー進入に限られていますね。
次にコーナーについて具体的に、画像で見ていきたいと思います。
①
このコーナーは先ほどの全体コースの画像で、棒でさし示している2コーナー目のものです。
データロガー上では赤い丸の土屋氏と、黒い丸の伊沢氏。両氏とも、ほぼ同じ速度で減速に入ろうとしている事が、車載映像に表示された速度で分かります。
ちなみに、データロガーでの減速途中の短い青線。これはシフトダウン時のヒール&トーでアクセルをあおった事によるものです。
②
減速から、ステアリングを切り始めるターンイン始めの画像です。
この時の速度に注目すると、土屋氏の速度は118km/h。一方で、緑色の区間が土屋氏より少し長く、ブレーキを奥でかけた伊沢氏は142km/hとなっており、ターンインでの速度が全く異なっていることが分かります。(速度を測る機械の誤差も、あるのかもしれませんが)
結論を先に書きますと、伊沢氏の運転は突っ込み重視のブレーキングでタイムを削る走行だと思います。
(ちなみに、私のような素人では、サーキットで伊沢氏のようなブレーキで差を詰める運転は、全然できないだろうなと想像します。そもそも1Gで減速して、そこから思い描いたラインでターンインにつなげる操作自体ができないと思いますし^^; 公道で1Gのターンインをする勇気もありませんし・・・w)
③
こちらが、ブレーキを抜きながら横Gをかけている、ターンイン最中の画像です。この時の土屋氏の速度は、93km/h。伊沢氏の速度は108km/h。
こちらの走行映像は、同じ地点での映像比較ではなく、ラップタイム差の0.6秒の差をつけて映像を並べていると思うので、一概に比較はできないのですが。この③画像と一つ前の②画像の速度差を見比べてみると。
②と③画像の時間差は、画像左上の時間にあるように、1秒も経っていません。そうした中で、伊沢氏の方がターンインしつつ減速している、短い時間での減速幅が大きいことが分かります。その上、車載映像の伊沢氏の舵角は、土屋氏より小さいのにもかかわらず、横Gは両氏ともほぼ同じGが出ています。これは伊沢氏の方が土屋氏と比べ、速度が乗り過ぎている事によるものと思われます。
ちなみに、G-Bowlアプリを使った90度コーナーで、0.3G制限の減速・旋回・加速の練習だと。ターンインしながら減速を強めてステアリングを切ると、G-Bowlが斜め上の方向に大きく飛び出す、「アンダーステア」となり、0.3Gを超えてしまって「カーン」と鐘が鳴ります(^^;
今の③画像で、フロントガラスの外に映し出されたコーナーの様子を見ると、土屋氏・伊沢氏の双方ともほぼ同じラインを走行しているように見えます。と言うことは、伊沢氏の大きく減速しながらのターンインでも、ラインを外していない事が分かります。だがしかし、減速幅は大きい。
一方の土屋氏は、伊沢氏よりも手前で大きな減速を済ませて。そして、減速幅を小さくした区間で何をしているのかと言うと。ステアリングをより深く切り込んでいます。伊沢氏のステアリングとを比べても、土屋氏の方が拳2個分くらい深く切り込んでいます。
ここからは私の想像なのですが、このタイミングで、タイヤを減速方向に使っている伊沢氏に比べ、ステアリングを深く切り込んでタイヤを横方向に使っている土屋氏の方が、コーナーの手前で、車を行きたい方向に回転させるヨーモーメントが大きく出ているのではないかと思います。
同じ走行ラインでもタイヤにかける力は、2台は全く別物と言えそうです。
④
同じ車載映像のタイミングではないので一概には言えないのですが。土屋氏のGのグラフを見ると、減速方向にはGはかかっておらず横GのみGがかかっています。おそらくこの時は、アクセルをハーフスロットルにしながら舵角一定で定常円旋回をしていると思われます。
一方の伊沢氏は、まだかすかに減速Gが残っています。私の想像なのですが、アクセルを開けていないため、減速Gが残ってしまっているのではないかなぁと思っています。
この④画像でのステアリングの切り込み量を、1つ前の③画像と比較すると。土屋氏は拳半個分くらい増えていて、一方の伊沢氏は拳2個分のステアリングの切り込み量が増えています。
と言う事は、土屋氏は③画像から今の④画像までの間を、コーナーの入口から高いヨーモーメントを維持しながら、長い時間曲がっていた事が言えると思います。その結果、車の頭が早くコーナー出口に向けられるため、旋回中のアクセルonのタイミングも早く行えたのではないでしょうか。
一方の伊沢氏は、減速にタイヤを使っていたため、ステアリングを深く切り込むタイミングが土屋氏と比べ遅れています。その結果、車の回頭もまた遅れてしまって、コーナー脱出からのアクセルonも、土屋氏とは遅れたタイミングになったのではないかと考えます。
また、ステアリングを最も深く切った量を見てみても、土屋氏の方が伊沢氏と比べ拳半個分ほど多くステアリングを切っています。土屋氏は、伊沢氏と比べてコーナリング中の速度が遅い分、タイヤに早く大きな横Gをかけて大きいヨーモーメントを早く発生させられる。そして車のヨーを感じながら、ハーフスロットルをコーナーリングの早い段階で行っていると言えるのではないでしょうか。
これらの結果がコーナー脱出から後の2台の、エンジン回転数の差と速度差になって現れてきます。
ちなみに旋回中のこの画像の、2台の速度はというと。
土屋氏はハーフスロットルを使いながら、時速76km/h。一方の伊沢氏はアクセルoffの状態で、時速86km/h。速度差は約10km/hで、伊沢氏の方が速い速度でコーナリングしている事が分かります。
⑤
こちらの画像は、コーナーを脱出し終える時のものです。2台の速度差は、土屋氏が時速123km/h、伊沢氏が時速125km/hとほぼ一緒になっています。
また、動画を見ていると分かるのですが、土屋氏の方がエンジン回転数が伊沢氏に比べ500rpm程高いと思われます。シフトアップをうながすランプが、土屋氏の方が早く付きます。このエンジン回転数の違いが速度になって現れてくるのが、次の画像です。
さらに時間を進めた、コーナーから後の直線区間の画像です。
⑥
コーナーから後の直線区間では、土屋氏が時速162km/h。伊沢氏が時速159km/hとなり、またデータロガー上でも土屋氏が伊沢氏よりも若干前に出ている事が分かります。
以上のように、コーナー進入時の減速の仕方によって、ターンインからのステアリングの切る量やヨーモーメントの発生の仕方が変わり。高いヨーモーメントがコーナーの早い段階で出せたために、旋回中にハーフスロットルを使うことができる。それがコーナー脱出時のエンジン回転数の差となって。エンジン回転数の差が、コーナーから後の長い直線区間での速度差とタイム差になって現れる。
1つのコーナリングという狭いパーツでタイム差を見るというよりも、コーナー進入・脱出とその先のストレートから次のコーナー進入までと言ったトータルのタイム差を見てみると。プロ同士の走行でも、次のコーナーに行くまでにこれ程の差が生まれる。
データロガーって面白いですね(^-^)
これらの事は土屋氏本人が、データロガー後の運転の解説でおっしゃっています。
「(伊沢さんや)君達は、すごく(コーナーに)突っ込んでいるじゃない? 俺は4つのタイヤに対して、一瞬だけドンっと前輪にかけるのだけれど。その後、4つに戻しているんだよ。君たちはドンっとかけてずーっとフロント2本にかけているから、フロント2本の仕事の量が増えるわけ。」
「ドンっと踏んでノーズダイブを起こした時に、フロントタイヤがつぶれてタイヤの接地面積が増えるのだけれど、それを君達は旋回という所に活かしていないんだよ。」
「俺はタイヤをつぶし切らないうちに、ハンドルを切る時に一番 接地面積を上げるようにしている。」
上の土屋氏がおっしゃられている内容。一瞬だけフロント2本に荷重をかけて接地面積を増やしたあと戻す。そしてタイヤがつぶし切らないうちに、ハンドルを切る時に再び接地面積を上げる。
これを聞いた時、減速GをG制限一杯にかけた後にブレーキを抜きながらハンドルを切りこんで。そして減速Gが無くなる頃に横Gが最大になる、「ボールを回す」動作に似ているなぁ、と思いました。
そして、データロガー上にあるように、ボールを回す動作+旋回中のハーフスロットルによるアクセルon。これらの結果がコーナー脱出からのエンジン回転数の違いとなり、速度差につながるのかなと思いました。
土屋氏単独の走行では、なかなか見えづらかった事が、別のプロドライバーとの車載映像の比較によって、違いがはっきりと見えてきますね。
ちなみに土屋氏の運転を、G-Bowlに似たシステムとアクセル開度・ブレーキ圧とを一緒に表示した走行動画があります。
私が以前に編集し直した、土屋氏がS660を運転している車載映像です。
こちらを見ていただくと、どれくらいの横Gのかかり具合で、どれくらいのアクセル開度で旋回しているのかが一目瞭然ですね。
(ここからは私が普段練習している、0.3Gでの90度コーナーの取り組みについての考察です)
・・・このような土屋氏の走行を、90度コーナーの0.3G制限での、減速・旋回・加速でどのように活かそうかと想像すると。今やっている舵角をもう少し深く切り込んでみる。深く切り込むと当然に横Gが増えるので、横Gが0.3Gを超えないように減速距離を長くとる。
あるいは、減速距離はそのままでラインをコーナーの奥にとる。U字コーナーに対して「レ」のラインのイメージにする。
これらの事をやりつつ、横Gが最大になりつつアクセルを入れる。以上のことを、G制限以内でやる。
このように文字にしてみて、ひとつ思ったのですが。
0.3G制限内で舵角を深く切り込もうと思うと、Gの制限内に収めるには必然的に最低速度が低くなります。おそらく20km/hまで落ちてしまいます。ブレーキをかける前の時速60km/hから時速20k/hまでを落とそうと思うと。普段やっている3速から2速のシフトダウンだけでは、2速を使ってもエンジン回転数が1500rpmを切ってしまいそうです。そうなると、いくらハーフスロットルをしてもエンジン回転数が、全然上がらないというジレンマが(^^;
そのため、1速を使ったシフトダウンにしようか。または今までの3速→2速をやってみて、様子をみてみようか。練習しながら考えてみたいと思います。