
先日、
トヨタが苦悩する「若者の車離れ」その理由を書いたのでその続きを書いてみます。前回は主に日本の自動車税制や保険など車以外の維持費の問題について書きました。これについては同意見の方も多いことと思いますが、今回はよく言われる「若者にとって魅力のある車」のお話です。
「若者でも買えるコンパクトでスポーティなクーペ」が無いから車を若い人が買わないのだというお話がたまに出てきますが、これは本当でしょうか?
これはオジサン世代が欲しかったシビックタイプRやAE86のことをイメージしている様な気がしますが、一般的な若い人はジムカーナに興味があるわけでもサーキット走行をしたがるわけではありません。ましてや峠道でのドリフトなんか憧れていませんし、もしそのような属性の若者であれば今でもそういったカテゴリの中古車は買えるはずです。
徐々に選択肢も狭くなり、そういったカテゴリの車両の価格が高騰しているのは事実ですが、中古車市場を見渡してみれば私の乗っていたRX-8等は少し走行の多いモノなら激安状態。選択肢は少ないもののコンパクトでスポーティな車両が希少だったり、高価過ぎるわけではありません。
根本的な問題はそういうことでは無いのです。大学の自動車部の学生に好まれる車では無く、本当の意味での現在の若者の最大公約数的意識をはっきりと自動車メーカーが捉えていないことが問題なのです。現代の若者の価値観は多様化しているなんてのも嘘で、日本人の価値観は多様化していません。
例えば若者が今でも好きなモノと言えばファッションブランド、ファストファッション、スニーカー、ジーンズ、スマホ、ゲーム、アニメ、オタク趣味などがあります。お金の使い道が車一辺倒では無い時代になっているのは確かですがこんな傾向は「価値観の多様化」などという大それたものでもなく、殆どの若者は数種類の属性に分類出来ます。
必然的に現代の一般的な若者には走りの性能より経済性が優先されます。ですが中古の軽四で既に在庫の豊富なカテゴリの車両は新車として市場性は乏しいとも言えます。スズキのハスラーがヒットした理由はジムニーでも無く、Keiでも無いファニーで、レジャーに役立ちそうな車だったからです。つまり、類似する車が中古車市場に見当たらなかった。
ということは中古車の在庫が枯渇している2ドアクーペの軽くらいしか、今の若者にヒットを狙えそうな車はありませんが、現在の安全基準、環境基準を考慮すると安くは作れません。また、メーカーは結局、お金を出しそうなオジサン向けに企画してしまいます。
もしくは新しいジャンルの車を発明できればそれもヒットする可能性はあります。私は屋根付きの電動バイクを
i-ROADをトヨタが本気で売るものだと思っていました。しかし、市販はされません。ずっと社会実験とかやってるだけです。日産も日産
ニューモビリティコンセプトとか掲げながらRENAULT TWIZYさえ、日本で販売出来ません。
HONDAもMC-βはベータのまま。主に安全性の問題などがあるということなんでしょうが、バカバカしい話。
また、車に乗る若者を教育する仕組みが無くなったことは大きな弊害です。原付きバイクにせよ「乗り物に乗る経験」をせずに育った人々は車に憧れも利便性も感じないはずです。自転車を除き、自力で移動するより、公共の交通機関を利用することに馴染んでしまうからです。今の若者達は何をきっかけに車に乗ろうとするでしょうか?また、親も子供に車に乗せるべきだと考えているのでしょうか?
エンジンの無いモーターで走行する超小型車は本来なら安く作れる車ですが、自動車業界の本音は安く電動の超小型車を市場に投入したら、既存の自動車が売れなくなり、ガソリンが売れなくなるという業界の不都合があるのです。
i-MiEVを300万円出して買う個人がいるはずもなく、こんな車が300万円である方が不自然。エコだの社会実験と称して、ぼったくり価格で、自治体などが国民の税金で購入しています。画像は i-MiEV SPORT。販売はされていません。
若者に変なイメージの付いていない、新しい乗り物としての「超小型車」を自動車メーカーがプロデュースするしか、若者にリーチできる車の市場拡大の突破口は残っていないと私は見ています。それも買い方も面倒臭い買取では無く、月に1万円とかを払えば良いだけのわかりやすい契約方法も含めてです。それも
ファッション性を伴ったブランディングと共に。
超小型車には安全性の問題は残ります。衝突すれば死亡する確率の高い乗り物です。しかしながら、それはバイクも同様であり、衝突を回避するテクノロジーの進化によって克服できる可能性は高いはずです。
自動車メーカーに注意してもらいたいのは「若い人の車好き=大学の自動車部」こういう考え方で、今若者向けの車を作ったら絶対に売れません。彼らはイマドキの若い人の平均値とかけはなれていますから。
多くの若い人達の意識が「自動車を持つことがダサい」「自動車に凝るなんてキモい」「車なんかにお金を払う人は頭がオカシイ」、極端ですがここまで来ていると考えて、マーケティングをしていかなければいつまで経っても自動車産業の未来は暗いままです。残念ながら豊田章男社長をはじめとするトヨタの人々の危機感はどこかズレているとしか私には思えないのです。
モタモタしてるとインド、タイ、マレーシア、ベトナムなどから、数年後には日本の若者にウケる安くて面白い車が作られて売られてしまうんじゃないかとも思います。
画像のタタ・ナノは販売不振とは言え30万円。もしも本気でそれなりの激安新車が作られたら日本の自動車メーカーもたまらないかもしれません。こんな話を書くと安全基準がどうのこうのと講釈を垂れる人もいますが、そうであれば昭和に作られた車や10年以上経った車には毎年車検を再び義務付けるべきです。新興国の車がいい加減だと批判する理由などどこにもありません。
実はトヨタが若者に嫌われている理由(まず、こういう基本認識をトヨタはしないといけないのですが)は車そのものより、マーケティング上の理由が大きいのですがそれはまた次回の記事で。
Posted at 2014/10/20 03:42:41 | |
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