バーミヤンに到着すると、まだいつもとは違う雰囲気のまま自動車よもやま話が始まった。
「しかし、韓国の兵器レーダーの照射事件は、ひどい話だよな。」
このクルマ、野球以外に興味のない男が、意外に怒っている。
「おれさぁ、実は昔の会社の経営会議で、韓国から当社の生産施設は撤退するべきだって主張したのよ。
でもその時は、正直感情的に韓国が嫌いだから、『撤退、撤退』て言ってたんだけど、ここまで国家間がこじれると、経済制裁されたらひとたまりもないぜ、結果オーライじゃねか?と思うのよ。」
なんて言いながら、アツくなってるなんて、いつものヤツとは違う一面を見せました。
ふふん、まだアツいところもあるんだと思いながら、話しを聞いていたのでした。
ヤツが最近、金曜日の晩にミーティングを開催するのも私が送るので安心してお酒が飲めるからで、今回も既にハイボールを二杯、ワインのデカンタを3本くらい飲んで、結構いい調子になってきたようです。
最近の自動車関連の企業は、飲酒運転で捕まると会社をクビになるので、運転するときは絶対に飲まないという習慣がついてきました。
本当にひどい話ですが、若い頃はぐでんぐでんになるまで飲んで、社用車に乗って帰るという信じられない悪行をしていたのですが、職を賭してまでのことはしなくなりました。
話は横にそれましたが、いつもと違う雰囲気が絶好調になってきました。
「ウチのオフクロなくなったろ、でさぁ、俺の息子がウチの実家に住まないことが決定して、じゃあ家どうするってことになったのよ。俺はさ、まあいつかは子供らも出ていくことになるだろうからと考えてワザと小さめのマンションを買ったのよ。ところがさ、俺んち、70坪くらいあるし、都内だろう相続が大変だから、売ろうってことにしたのよ。で、アニキのウチと総出で、実家の整理したのよ。」
ヤツのアニキは大層な金持ちで、子供それぞれに一戸建てを買ってるのだけど、その中で、一番古くて、デカイのがヤツの実家だったのでした。
「いやさぁ、俺、家なんかに執着しないタイプだと思ってたんだけど、俺が物心ついてからずっと住んでた家だから、整理していたら、なんかものすごく悲しくなってさ・・・オヤジもオフクロも写真が大好きなんで、ゴチャマンと写真が出てきて、それに輪をかけて、自分が生まれる前の写真なんかまであって・・・」
いやコイツらしくないな、クルマの話じゃないじゃないか!こんなことも珍しいなと思ったのも束の間、
「でさぁなぜか車の写真が出てきたのよ」
さあ、始まったぞいつもの調子だ。
と言ってやおら、カバンの中から、古い写真を出してきて
「これは、珍しい色のソアラVRターボ。本当は専用色が標準なんだけど、注文車なんだよな。」
とか、
「これは、初めて海外で借りたレンタカーで、海外でというか恐らく人生で最後になるであろう大事故を起こした車の事故起こす前の写真」
などなど
「お前ならこの車の意味がわかるだろう。俺の格好見てみい、ブラック・スカイライン西部警察意識してんのよ」
ヤツは比較的若いうちに実家を出ているので、本当にごく初期の頃のクルマ遍歴が明確に出てくるのです。
コイツとは逆に私は、国産車ばかりだったので、在り来りに見えるのですが、部品商は生涯の車歴は、圧倒的に外車が多いので、国産車に興奮するようです。
そして、一枚の写真を見て私は、釘付けになってしまいました。
30数年前の写真。どこで撮ったかも記憶も定かではない。人物は今より30数歳若い部品商本人
「オイ、これアウディ1005Eじゃねーか!お前これ乗ってたの?」
このクルマは、我が家にもヤナセの営業が、持ってきた車で、ものすごく広いスペースユティリティーを持つ車。
「オマエは、中古かもしれないけど、俺んちは、これ新車の時にウチへヤナセが売りに来てさ、123のディーゼルと一緒に乗ったよ。まだこの時、俺免許取れる年齢じゃなかったんだけどそれまでのどんなクルマとも違う、だだっ広い感じがたまらなかったの未だに鮮烈に記憶してるよ。で、また俺んちに来た試乗車が、信じられないことにこれのツードアだったんで、なんて無駄な作りなんだろうと思ったものよ」
と言うと、
「やっぱオマエらしいよ。オマエくらいだぞ!これ見て興奮するのは・・・もっともそんなリアクションするのは読めていたけどな。」
と言われてしまった。
「でもさ、このアウディー100、日本では、もちろんだけど、外国でも使い捨てられちゃうから、生きてるクルマはほとんどないだろうな。極端に没個性的だし、本当に実用車に使われているから、とっておこうとか思われないモノだもの。恐らくジャパンのスカイラインの方が生き残ってるだろう。」
「うん、残念だけどその通りだよ。」
と部品商ががっかりしたような声を出しました。
付け加えるように部品商が、
「しかし、オマエ、予想以上に反応したな。これ同じ構図で2枚あるから、一枚やるよ。」
「えっ、あっそうかネガがあるから大丈夫か!」
「いや、ネガは全部処理したから、写真だけだ。」
「いいのかよ!俺本当にこの車が好きなのよ。貰うぜ!」
「でもな、これがウチのカミさんなんかが見れば、『ああ古い写真ね』で済まされちゃうんだろうな。」
とやっぱりいつもと違う部品商なのでした。
で、私は家に帰るとまっさきにコンピューターを立ち上げ、スキャンして、画像をコンピューターに取り込み、原版は、デスクマットの下に挟み込んで、いつでも眺められるようにしたのは、言うまでもありません。
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2019/02/03 06:41:55