2015年09月01日
あれは、今年の初めの頃、珍しく地上波テレビを見ていた時の事、「秘密のケンミンショー」で、大阪のすき焼き事情を解説していたときのこと、
「そういえば本当のすき焼きってどんなんだろう。」
私は、オフクロを連れて関西地区にもよく旅行をしていて、もちろん関西風の砂糖を敷き詰めて肉をのせて焼くすき焼きも食べたことがあるのに、関東風の割り下を入れるすき焼きを本格的に食べたことがないことに気がつきました。
私のウチは、地方といってもオフクロの千葉くらいしかないので、関西は旅行に行くだけですし、九州の親戚といってもオヤジのいとこなので、全然関係が近くないのです。
ですから、九州のすき焼きは知りませんけど、何より自分の地元のすき焼きを本格的に食べたことがないのです。
この話をオフクロにすると、
「そういえば、私も子供の頃から、ご馳走と言われて、家で作ったすき焼きは食べたことはあるけ ど、専門店と言われるところで食べたことないわねぇ。」
というので、本格的なすき焼き専門店に行こうということになったのです。
「さて、どこにするか?」
考えあぐねていました。
それから数日後、所用があってうちの近所の某有名百貨店へ買い物へ行きました。
当初の来店の目的である手土産を購入して、食品売り場を歩いていると浅草○○という文字が目に入りました。
そうそう、ここの牛肉の佃煮美味しいんだよな・・・・そういえばここは、元々すき焼きを食わせるところではなかったか?
それに気がつき、家に帰りパソコンで調べると確かに店舗で、食事処を持っているのです。
オフクロに
「生まれて初めて、本格的すき焼きを食べるのは、○○はどうだろう?」
と聞くと
「あぁ○○ね。あそこの佃煮はどれを食べても美味しいから、きっといいんじゃない?」
というので、暖かくなる前に行っておこうと、みぞれ降る中、V70で出掛けました。
浅草の○○は、仲見世の入口近くにある店で、昔ながらの店構えで、木造の建物、出入り口の格子戸が時代を感じさせます。
入ってみるとやはりレトロ感満載。
店の給仕をする人たちもかなり高齢なお姉様たちです。
「この時間のお品書きです。」
無愛想にお品書きを提示され、なんか最初から嫌な予感がしました。
皆さんは、ご存知とは思いますが、私の完全休日は、火曜日のため、行くのは火曜日です。
休みの明けた有名店の給仕は、お疲れモードで気だるそうに準備をします。
なんかぞんざいな手振りでコンロに火を点け、肉を持ってきました。
そして、
「食べごろのところで給仕します。」
と言ってすき焼きが始まりました。
ところがその味ときたら、不抜けた味なのです。
塩気が足りないという、すき焼きにあるまじき味なのです。
オマケに肉が運ばれてきた時から見るからに安物の赤身、これじゃちょっと煮ただけで硬くなってしまう!と内心叫んでいました。
実際に口に入れるとすき焼きのくせにゴワゴワしていて、とてもじゃないけど食べられたもんじゃない。
これで、1人前5000円はないだろう!
オフクロも
「佃煮は、あんなに美味しいのに店頭はどうしてこんなにひどいの?」
「何よりあの肉のひどさは、許せない!」
と私。
この日以来、この日をスキヤキの戦い開戦日となりました。
いつかは、美味ししと思わせてくれるスキヤキに出会うまでスキヤキを食べるぞと誓ったのです。
しかし、この日以降急激に暖かくなり、すき焼きを食べる気力がなくなり、スキヤキの戦い忘れていたのです。
夏も終わりかけた先週、中年男と会う前にオフクロを連れて、日本橋のデパートに行ったのです。
ここは、うちの街の新興百貨店とは違い、老舗ですので一級品が置いてあります。
そこで目に入ったのが、人形町○○の文字。
○○は同じなのですが、地名が違っています。
「あぁそうだ!○○は、二つあるんだった、浅草と人形町が!」
見るとお弁当が美味しそうです。
お値段も中々の値段。
オフクロに
「そういえば、スキヤキの戦いあれっきりだけど、ここ試してみようか?」
「ええっまた○○?同じじゃないの?」
「ほら、浅草と人形町の違いがあるじゃない!試しに買ってみようか?」
「アンタが買ってくれるなら・・・・」
クソババァ、自分で買えよと思いつつ、店員に
「こっちの2600円のやつと安いやつでは、どう違うの?」
「お肉が違うんですが、もう高い方はございません。」
これが噂に聞く老舗デパートの高級品から先に売れていくという法則かぁ。
仕方がないのでひとつランク下のすき焼き弁当をオフクロに買い、自分は、お金がもったいないのと、すき焼き以外の弁当も試してみたいと思い、そぼろの弁当を購入したのでした。
その日の晩、早速食してみると、そぼろ弁当と言いながら、牛肉の煮付けも入っていて、とても満足出来るものでした。
オフクロもすき焼き弁当を食べたのですが、購入時に賞味時間を遵守するように言われたのですが、その理由は、なんとすき焼き弁当の中に半熟卵が入っていて、それに肉をつけて食べるようになっているからなのです。
前回のスキヤキの戦いに敗れているオフクロが、
「お肉が柔らかい。」
と言って嬉しそうに食べています。
「これならお店で食べてみたくなる?」
と私。
「食べたい。」
とオフクロ。
「じゃあ一週間後ね。」
そして、一週間が経ち、今日訪問することとなったのです。
人形町○○は、Webで調べると銀座と上野広小路にも食事処があるのですが、やはり昔ながらの建物がいいと思い、本店に行きました。
前もって電話をすると、駐車場も2台分用意しているということで、ランチタイムを外した時間に訪問しました。
さて、行ってみると入った瞬間、綺麗な和服の若いお姉さんが、ズラッと並んでお出迎えしてくれてこちらが少々恥ずかしいくらいです。
そして二階に通されると、また違う若いお姉さんたち7~8人が出てきて、
「いらっしゃいませ。」
とやられて、緊張感が心に湧いてきたのを感じました。
お品書きは、見なくてもすき焼き以外に頼む気はないのですが、一応カッコつけて
「すき焼きのコースで。」
とドキドキしながら言うと
「わたくしが、つきまして給仕させていただきます。」
なんと嬉しいことか!
これで、この値段なら格安だわいと心の中で快哉を叫びました。
しばらくすると材料が運ばれてきました。
「この肉は、本日は北海道産でございます。」
差しの見事な霜降り肉です。
「煮過ぎると、風味を損ないますから」
と言ってすき焼きを始めました。
「野菜は本日から秋野菜をお出ししております。」
物腰は、悠揚で楽しいです。
お肉を食べたら、やはり見た目通りの美味しさで、関東風のすき焼きを堪能できました。
最後の締めのふわとろ卵ご飯まで頂き、楽しい食事の時間を過ごすことができたのは大きな余録となりました。
「スキヤキの戦い。連敗しなかったね。」
とオフクロ。
今日でスキヤキの戦いは、無事に停戦となり、当方が勝利できたことは、誠に晴れ晴れとした気持ちであります。
Posted at 2015/09/02 00:03:51 | |
トラックバック(0) | 日記