2016年10月12日水曜日。
その日はなんとなく曇天で、なんとなく気分の冴えない日だった。
せっかく早起きしたのに、ニート街道一直線の私は朝食を食べるなり、ガンダムブレイカー3とかいうクソゲーに打ち込んでいた。
しかし、私は何を思ったか、突然温泉に行きたくなった。
でも冬用ジャケットはないし、メッシュジャケットでいくのかぁ…なんて思いながら、タンデムシートバッグにウィンドブレーカー替わりのレインコートを入れてGSX-R750のセルを回した。
その日は気温が低く、なかなかエンジンの温度が上がらない。
いつもなら130ºFくらいで走り出すのだが、何故か今日は100ºFくらいで走り出してしまった。
なので、エンジンが少し嫌がっているような振動がした。
表六甲を上がり、左折。西六甲から小部峠。そこからはDダム方面へいつもの道を流し、R428を北上。
ねずみ捕りポイントは、秋の合法カツアゲ週間に何度も通って勉強させて頂いたお陰で把握済み。
R428のワタクシ的終点、物流会社ハヤブサ(ワタクシ的聖地)が見えたらその先で右折。
そのまま道なりに行くと、道の駅吉川。
その中にある『よかたん温泉』
現在ワタクシ的最もホットなスポットです。
県内でもトップクラスの濃い炭酸泉。
兵庫県民の方、また関西地域の方は是非足を運んでみて下さい。
といっても、私がハマっているのはミストサウナですけどね。
久々に、どっぷり湯に浸かって、人生について考えてみた。
答えは、出るわけないよね。
仕事を、するのか?俺は?
はぁ・・・。考えるだけで憂鬱だーーーー。
温泉では色々考えますけど結局答えは出ず。
まあいいか。
明日があるさ、明日がある。若い僕には夢がある。夢があるのか?!
よかたん温泉でガソリン4円引きのチケットを貰ってJAのガソスタで給油。現金会員2円引き+よかたん4円引き。かつ一般単価が124円とかだったりするので爆安。1000円入れて8Lも入ってラッキー!
と、日も暮れてきて、ちょっと温泉に長居しすぎたなあと帰りを急ぐ。
秋の雲に夕焼けが非常に美しい。
ヘルメット越しに吹き抜ける風もサラッとして気持ちが良い。
夕方の渋滞にもハマらず、順調に小部峠入り口へ。
ここからは日も落ちているし、羊や猪、狸の横断が怖い、なんて思いながらなんとか西六甲、六甲山牧場のあたりまでたどり着いた。
すると、目の前から右手に白いヘルメットを持った人のようなシルエットが見えた。
左手をプラプラさせながらこちら側に辿々しく歩いている。
どうやら足も、思うように動かせていないらしい。
私は、彼を一瞬見た。
事故ったのか?
まあ、歩いてるし、問題ないか。
にしても・・・。ここに来るまで、バイクの一台も見てないし、事故った跡もなかった。
とすると、この先か?
ん〜・・・。変だなぁ・・・。
なんて思っていたら、ありましたよ・・・。
最初の右ヘアピンを抜けた先の左ヘアピン。
目を覆いたくなるほど大量の腐葉土が、4m四方対向車線も跨いで道路上に撒かれていた。
そこはブラインドコーナーになっていて見通しが悪い。
さらに夜のため、ヘッドライトで行く先を照らせない。
私は先程の妙な感覚のため、15km/hくらいで走行していたためなんとか対向車線にはみ出す程度で済んだ。
勿論、腐葉土の上では、リーンし始めた車体を無理矢理引き起こして、一直線に通り過ぎるしかなかった。
ヘッドライトの照らす先にはライムグリーンの車体。
妙なことにそこだけはガードレールが無かった。

(許可取ってないので画質を落としています。)
フロント大破。フレーム破損。全損か。
先を走っていたライダーはこの状態から自力で這い上がってあの道を歩いていたのだろうか。
とにかく、彼が心配だ。
Uターンして引き返してみたが、先程の彼の姿がない。どこかで倒れたか?!と辺りを探してみたが見つからない。
牧場の詰所にでも行ったのだろうか・・・。なんとなく、深く詮索してはいけない気がした。
とにかく、あの腐葉土はきっと他の誰かをまた事故に追いやる。
私がやらねば、誰がやるのだ!!!
と、件の場所の近くにバイクを止め、ハザードを焚き腐葉土を足で蹴りながら端へ寄せた。
こんな真っ暗な場所で、ブラインドコーナーで作業するのは正直怖い。
何台か自動車が通りがかった。
皆驚いて急ブレーキをかける。
一応ハザード見える位置で焚いてるのだが。
腐葉土が残っていたため車も滑っていた。
腐葉土を蹴り出しながら、自分も滑って転びそうになった。
オイルでも混じっているのか?!と疑いたくなる。
厚みは2cm程あり、単車ならほぼ確実にコケるだろう。
不思議なのはこの腐葉土、広葉樹の腐葉土なのだ。
ここら一帯は針葉樹なのに。
だとしたら、誰かがここに撒いたのだろうか・・・。
ますます背筋がゾッとした。
もし、あのとき、あの場所で、あの人を見なかったら私も、私のGSX-R750もお釈迦になっていたのか。
公道でのちょっとした勘。
これと運に助けられた。
折角の温泉ツーリングは事故現場の目撃で一気に湯冷め気分となった。
教訓として、夜の峠の恐ろしさと、発煙筒、タンデムシート下に収めておこうと思った。
2016年10月13日木曜日。
昨日の一件があったので、出かける気にはなれなかった。
そして今日。
あの現場を見に行ってみた。
赤いタオルが落ちていた。
花束は無かったのでほっとした。
だが、あの日見たあの人は本当に人だったのだろうか。
思い返せばますます分からなくなる。
まるで雨で流れてきたかのように撒かれた腐葉土も、本当に存在したのか?
私が温泉に浸かってる間に大雨でも降らない限りあんな状態にはならないように見える。
幻でも見たような気分だった。