
オーバーホール・換装に向けて整備を進めている456GT後期型標準のブレンボのブレーキキャリパですが、対抗4ポットのキャリパからピストンを外す方法について工場長さんから説明を受け、その方法が
非常に勉強になったので別枠で記事にすることにしました。
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456GT後期型標準ブレンボ / ブレーキキャリパ分解
とても合理的な手順でひょっとして企業秘密なのではと思いましたが、聞いてみると「
キャリパのピストンを分解する場合はどの整備工場もこれと似た方法で分解しているはずですよ」とのことで、特に門外不出の秘密というわけでもなさそうです。念のため、工場長さんの許可を得ています。
キーパーツはタイトル画像の道具(治具)です。バイス(万力)のようにアーム内に挟みつけるようにして固定する機能のほか、逆にアーム部分が外に広がりアーム両脇にあるものを押さえつけることもできます。4POTキャリパの場合はこの治具を
2つ使用します。
例として、画像の下側・左側のピストンを取り外すことを考えます。
(1) まず1つ目の治具を上側のピストン両方に当てるようにして固定します。
(2) 2つ目の治具を,、下側・右側のピストンを押さえつけるようにキャリパの外側から挟むように固定します。1つ目の治具は写真には映っていませんが、上側のピストンは2つとも固定された状態です。
(3) これで、下側・左側のピストンのみ動く状態になりました。ここに、油圧がくるライン(矢印部)から圧縮空気を入れれば、ピストンが勢いよく出てきます。注意点として、この写真の状態だと発射されたピストンが治具に激突して破損する可能性があります。
(4) 取り出すピストンの手前に厚手の布切れ・ウェスを入れておくことで、ピストンを一切傷つけずに取り出すことが可能です。他のピストンもこの4つの手順をアレンジし順次取り外します。
(補足) 片側キャリパであれば下の写真のような専用のブレーキ整備用の道具を使用できますが、対抗4POT以上のキャリパだと上記(1)~(4)のような工夫が必要になるとのことでした。
ブレーキキャリパのポットのピストンを取り外す上で
絶対にやってはいけないこと、それは
マイナスドライバなどで一方向からこじるようにピストンを取り外そうとすることです。
上下は共に説明用のイメージ画像ですが、取り外す前はこのように無事なピストンでも、
一方向から無理にこじって外そうとすると、このようにピストンの一部分が破損してしまう可能性があります。工場長さんの話では、このようなブレーキポッドのピストンの一部の欠損は、
脱着時に無理にこじってピストンを外そうとした結果、欠けた可能性が高いという説明を受けました。
確かにこれはブレーキパッドをピストンの”面”で押すという機能を考えれば容易に導ける理屈であり、ピストン上面の一部分に応力が集中してヘタってしまうことは確かにありえないと思います(もし局所的にヘタるならあっという間に対抗ポットのピストン破損によりブレーキが使い物にならなくなる)。
自動車の整備の中でもブレーキキャリパのオーバーホールはあまり機会のないレアな整備と思われますが、
整備士の工夫・技術が露骨に結果に現れる好例だと思いました。
Posted at 2015/12/21 00:23:12 | |
自動車技術 | クルマ