2017年10月10日
前回の続きです。
10年前 ルミside
目の前の少年、今は泣き止んでいる上村真にルミは声をかけたが、話し方次第で再度泣き始める可能性が有るのでどのように話しかけるか正直言って悩んでいたが、ある案を思い付くとそれを実行したが『本当、性に合わないな本当に、幾ら泣いているからってこの手を思い付くとは…』内心でそう苦笑しながら真に近付くと、徐に真を抱きしめるとルミは優しい声で囁く「少年、泣いているんならお姉さんが相談に乗ってやるから言ってごらん?」
ルミ&真 side
唐突に抱きしめられ上村真は驚いていた。最初にいい香り、おそらくシャンプーか何かの香りを感じたが、それ以上に顔に当たっている柔らかな膨らみの感触が真を混乱させ慌てて脱出しようと振りほどこうとしたのだが、更に強い力で抱きしめられたため、今度は顔を左右に振って脱出しようとするが野球帽が落ちるだけで、その間にも柔らかな感触が容赦なく真を襲いかかり、そんな事をしているとやがてルミが抱きしめるのを止めて真を放すと「お~お~元気いいな~少年、お姉さん嬉しくて思わず全力で抱きしめちゃったよ」かけていた眼鏡のブリッジ部分の位置を直しながら、余裕のある明るい口調のルミに真は顔が赤くなるのを感じながら「な、な、なにを考えてるんですか先輩!行き成り見ず知らずの人間を抱きしめるなんて!!」少し、いやかなり怒りの口調を込めるが、それ以上に先程まで顔に当たっていた柔らかい感触を意識するとどうしても顔が赤くなり、それを見たルミは今にも笑いそうな口調で答えた。
「見ず知らず?名前を聞いたから見ず知らずじゃないぞ、それにな少年、顔を真っ赤にしながら言ってもちっとも怖くないぞ、もしかしてお姉さんの胸の感触で真っ赤になったのか?ウブだな~」核心をついたルミの発言に真は、更に真っ赤になり黙るのを見たルミは今度は真面目な口調で問いかけてきた。
「そんじゃ改めて泣いていた理由を聞こうじゃないか?言わなきゃお姉さんに無理矢理で抱きついたと、言っちゃうぞ少年」そのルミの発言を聞いた真は観念したのか、泣いていた理由を述べ始め、それを聞き終えたルミは数分ほど真剣な表情で考え始め、そんなルミの表情を見た真は先程まで自分を抱きしめ、ふざけた事を言っていたのと同一人物かと、ルミの顔を見ているとルミは指を鳴らすと興味深い表情で真をみると改まった口調で言う。
「少年、結構期待されてるんだな」
「期待ですか…どういう事ですか?」そんなルミの発言に困惑した真はルミに真意を問い質した。
「そうか、入学したばかりだと知らないか?ウチの野球部、中等部、高校問わず、戦車道の試合を観させるのが伝統だからな、横に座るぞ少年」そう言いながらルミは真の隣に座り、戦車道の試合を観させる理由を語り始めた。
「理由は簡単な話で指揮統制、チームワークとプレー、そして伝達力の重要性を戦車道の試合を観させる事で、学ばせているからな」
「どういう意味ですか?野球だってチームプレーが重要ですよ先輩」
「確かに、でもな戦車道の場合は事情が違うから少し説明させて貰うぞ」
真side
真は先輩、ルミから戦車道の説明を聞き野球と戦車道には共通する点もありチームとしての有機的な運用に適材適所の人の配置などだが、野球と戦車道に最大の違い、咄嗟の判断と状況の理解力、そして伝達力の重要性が野球とは大きく違っており、その事を理解するとルミに質問をぶつける。
「要するに戦車道の試合は1台撃破されると戦力が減少する為に事前の作戦立案もさることながら変わった状況下での咄嗟の判断が重要になり、指揮官は咄嗟の判断で下した事を僚車にしっかり伝え、伝えられた僚車の車長も理解し自分のチームメイトに伝えた後に、チームとして行動しないと」
「そうだぞ少年、さっきも言ったけど咄嗟に伝える状況というのは大抵の場合は相手から奇襲か、不意討ち等の謂わば不利な状況下だ。指揮官は不利な状況でも冷静さを失わず的確に把握しチームに明確な基本方針を示すと同時に僅かな判断の遅れが勝敗を左右するからな」
「それは判ります。野球の試合でも負けている時にキャプテンの判断1つ、例えばネガティブな態度や言動をみせたりするとチームの士気に影響してきます。不利な時こそキャプテンは味方の士気を盛り上げなければいけませんから」
「おっ、上に立つ人間の心構えをわかってるな少年」
「一応小学校の頃地元の野球チームでキャプテンをしていました。あとそれから先輩、もしかしなくても高校で戦車道をやっていますよね」
「うん、なんでわかった?」
「戦車道で例え話をしたということは、戦車道をしている人間でないとしませんよ。それも現役で」
「ほ~う、洞察力もあるね少年、じゃその洞察力で今日の紅白戦のレポートを書けるじゃないか」その言葉に真は表情を曇らせ困った表情をするのを見たルミは察した。
「落ち込んでいてちゃんと見ていなかったか少年?」
「そうです」
「そうか」言い終えるとルミは暫く考えた後に口を開く。
「じゃ少年、今から行くか?」
「えっ何処に?」
「整備倉庫」
「どうして?」
「ここで私が教えてもいいけど、当事者たちの意見も必要でしょう。そうと決まったら行くぞ少年!」ルミは言うや否や
立ち上がりつつ足元に落ちていた真の野球帽を手に取ると整備倉庫に小走りで行くのを見た真は、慌てて後を追いつつ「先輩、帽子を返してください!」と言うとルミは楽しそうな声で返す。
「レポートを書き終えたら返してやるぞ少年」その言葉に真は、諦めの表情を浮かべるとルミの後を追った。
ルミside
整備倉庫、規模が大きい学園艦の場合は高校と中学で別に整備倉庫を持つが、継続高校学園艦のように規模が小さい学園艦だとスペース節約のために共用の場合が殆どである。そんな整備倉庫には、これまた共用のミーティングルームがあり室内では真がレポートを書き終えた。
「おかげでレポート無事に終わりました」
「気にするな少年、それから忘れるなよ」ルミは野球帽を真に渡し被ると礼の言葉を述べた。
「今日は本当に助かりました。改めてありがとうございました」そう言うと真はルミに頭を下げるが、ルミはそんな真を見ると思った事を口に出した。
「それにしても少年、背が低いな~私とそんなに変わらないな」
「まだ150センチですけど伸びますから」
「何で伸びると断言できるんだ少年」
「父さんや叔父さんも中学1年の頃に一気に背が伸びて結果、今だと身長が共に180センチ近くありますから、だから俺もそれぐらい伸びる筈です」
「でも伸びない可能性が有るかも知れないだろ?」
「伸びますから、それから先輩さっき言った。期待されているとは?」
「あ~、それはまだ言えんな、もう少し経ったら教えてやるから早く帰りな少年、たぶん今頃、キャプテンや監督が戻って来ないからヤキモキしているんじゃないか?」
「判りました。ルミ先輩」真はそう言うとルミに一礼してからミーティングルームをあとにする真にルミは「もし戦車道の試合に興味があるなら解説してやるぞ少年、もっともお姉さんが暇だったらな」
「判りました。期待してます」そう真は言い返し、野球部の部室に向かい姿が見えなくなると、ルーム内に居た。正確には真のレポートの手伝いに駆り出された。中等部1年三人2年二人、そして3年の中等部戦車道副隊長のルカの計六人が一斉にルミに詰め寄りだした。
「あの~ルミ先輩、真くんとはどんな関係なんですか、教えて下さい。もし付き合っていると言われたら私、冗談抜きに寝込みます」
「ハヅキ、そうしたら寝込むだけじゃないわ、マジで戦車道辞めるは私」
「ごめん、私もその一人だから」1年三人組のハヅキ、ヤヨイ、ナツミの三人が聞いてくるとその後を
「年下好きとは世間一般でショタですよルミ先輩、それはそうともう手を付けたんですか?」
「トウコ、もう少し表現を柔らかくと言いたいけど、あんなに親しげなんてやっぱり手を…」2年の二人トウコとリリが言うと、本来なら止めるべき副隊長のルカも便乗してルミに聞いてくる。
「ルミ先輩、本当のところはどうなんですか?目を付けたのはいつ頃ですか?教えて下さい戦車道を辞める人間を出さない為にも」と、言う有り様で詰め寄られたルミもこの事態に完全に呆れると同時に、黙らせる為に些か強引な方法を採った結果、ルーム内に六回の音が響き渡った。
「ルミ先輩いたぁ~、クリップボードで叩かないで下さい」ルカが抗議の声を上げるが、ルミはそんな事を気にせず呆れが混じった口調で答える。
「角で叩いてもよかったんだけど、というか本来なら押さえるあんたも便乗してどうするルカ、あんただけ角で叩こうか?それからトウコは兎も角、押さえ役のリリもノルな。それから1年三人、興味があるかも知れないががっつりすぎだ!」そんなルミの発言に1年三人組が謝りだした。
「すいませんでした。ルミ先輩、調子に乗ってました」
「申し訳ありませんルミ先輩、真くんと親しげにしていたので気になっちゃって」
「ごめんなさいルミ先輩、でも真くんの事を知っている人たちからすればちょっと気になって」
「わかる、わかるナツミ、真くん中等部入学寸前に事故に遭ったからね」
「ハヅキ、そうよね」ヤヨイがそう言うと、ルミが慌てて訊ねた。
「ちょっと待て、事故って一体なに説明してくれない?」そのルミの発言に1年三人組が驚いた表情をすると顔を見合わせ小声で話すとやがて、ナツミが代表として言い出した。
「この事はあまり人には話さないで下さい。真くんは中等部に入学する前2月1日に交通事故に遭いました」そう言うとナツミは事故の事を話始めた。
独自設定
ハヅキ、ヤヨイ、ナツミ、上村真の同級生三人組で真と同じ小学校出身者、なお戦車道を小学校の頃からやっている経験者はヤヨイだけだが、ハヅキとナツミは中等部に入ってから、ヤヨイに誘われて戦車道を始めた。
トウコ、リリ、ガールズ&パンツァーサイドストーリー、フェイスエリカでの登場人物、口調セリフに違和感ありか?
作者から一言、ラブコメ話は難しい
Posted at 2017/10/14 19:29:40 | |
トラックバック(0) | 日記