
Sansui AU-D907F/Gシリーズ。1979~1981年頃の同社の上級プリメインアンプです。最上位機種はAU-X11(\275,000)でしたが、一般的な機種はD〇07Fシリーズ/D〇07Gシリーズで、初級機D607F/G、中級機D707F/G、上級機D907F/Gが有り、それぞれにMCトランスを内蔵したExtraタイプが有りました。市販アンプでは回路規模が大きく原価アップになるため、非常に稀な「フィードフォワード回路」を搭載しており、片ch当たり2組の出力段を持っています。又、CD普及前のレコード主体時代の最後を飾る非常に贅沢なDCフォノイコライザー回路(22石/ch)を持っています。(次の世代のD〇07Xシリーズ以降はぐっと簡略化されています。)
上:D907F Extra (\175,000) 汎用高音質チューニング
中:D907G Extra (\178,000) クラシック専用チューニング
下:D907 (\142,000) オリジナル・レストア
手前:取り外した40年前の電解コンデンサ
いくら名門Sansuiの高級アンプと言え、産まれて40年の歳月は各部の劣化は免れません。人に例えれば60歳と言うところでしょうか。でもこのD〇07F/D〇07Gシリーズは設計が良く、FETやトランジスタ等の半導体の特性経年劣化に寛容で、程度の良い中古品なら半導体は交換不要なモノが多いです。
しかし寿命15年程度とも言われる電解コンデンサの劣化は深刻で、そのままでも音は出るものの本来のD907Fシリーズの持つ深さと広がりに溢れ・潤いや艶を持ち・キツくならず瑞々しい音香は再現できません。
そこでこのD907F/Gシリーズを5台入手し、電解コンデンサを全て(ブロックコンを除く)取り出し、LCRメーターで1個1個測定し、特性劣化の極力少ないモノを集めて1台だけに集約移植。その後に不具合個所を修理しバイアスとオフセットを調整したのが「下:D907F オリジナル・レストア」です。
次に別の2台を現代の高級オーディオ用電解コンデンサを使って修理・調整しました。当初、ニチコンMUSEシリーズに統一して全ての電解コンデンサを交換したところ、確かに現代的な元気で解像度の高い音にはなりましたが、「オリジナル・レストア機」に比べこの機種が持っている本来のプレゼンスに富んだ音の良さが無くなってしまいました。
それからかれこれ1年間近く掛けて、電解コンデンサを回路部位毎に別品種に交換しながら特性測定と音楽視聴を繰り返し、ようやく一応の形が2種に整いました。それが「上:D907F Extra 汎用高音質チューニング」「中:D907G Extra クラシック専用チューニング」です。
何れも電源基板部の電解コンデンサはほぼ共通で、東信工業のUTES-1000uF/100Vを10本。プリアンプ用定電圧電源の出力のみ、汎用高音質機は東信工業のUTWXZ-2200uF/50Vを2本、クラシック専用機はエルナーのSilmic2-470uF/50Vを2本です。小型電解コンデンサは何れも東信工業のUTWRZの同耐圧・同容量です。
ドライブ基板とファイナル基板は、電源入力部の100V耐圧品のみ東信工業のUTES-1000uF/100Vに同社UPZ-0.22uF/100Vを並列接続したモノを4組、その他は汎用高音質機は全て東信工業のUTSJ-63Vで容量は2倍~4倍、クラシック専用機は全てエルナーのSilmic2-50Vで容量は1倍~2倍です。
フォノイコライザー基盤も電源入力部の1組は東信工業のUTWRZ-470u/35Vで共通、その他の部分は汎用高音質機では東信工業のUTSJ-63Vの容量1~4倍、クラシック専用機ではエルナーのSillmic2-50Vの容量1~4倍です。
トーンコントロール基板は、電源バイパス用は東信工業のUTWRZー220uF/35V、その他のDCカット部も東信工業のUTWRZ-10uF/35Vです。尚、D907F/Gのトーンコントロール回路ではオーディオ信号通過部はフィルムコンデンサが使われています。
プロテクト回路やランプ点灯回路等の音質に関係ない基板の電解コンデンサは、拘る必要が無いのでルビコン製等の安価で同定格の国産標準品にしています。
D907F/Gシリーズに於ける電解コンデンサの音質傾向は、UTES:あくまで汎用の電力供給用(安価)、UTWXZ/UTWRZ:特徴は無いが素直で解像度も低下させない(比較的安価)、UTSJ:解像度が高く力も有りつつ繊細で上品な艶も有る(高価)、Sillmic2:薄いベールが掛かるような解像度の低下は有るが繊細で余韻が美しい(高価)、といった印象です。ヘッドフォンアンプやDAC等と異なり、回路規模が遥かに大きいので、電解コンデンサ1個変えても音の変化は感じ難いですが、100個近くの電解コンデンサを全部交換すれば明らかに音質は変わって来ます。
良質のヴィンテージアンプを修理してでも愛用している方は、電解コンデンサを好みの音楽ジャンルや使用しているスピーカーに合わせて、全数を適切な品種に交換されてみる事をお勧めします。D907F/G・D707F/G・D607F/Gシリーズ(Extra含む)に関してはこの1年間弱の調整結果が参考になると思います。

手前の左から2台が修理・調整待ちのプリメインアンプで、Sansui D907F Extra (\175,000)と 同 D907X Decade(\193,000)です。診察・診断・治療については、D〇07F/Gシリーズは既に回路図を読み込んで理解しているので良いのですが、D〇07Xシリーズはバランス型アンプに変わっていて回路図の読み込みと理解から始めなければなりません。
ラック右側に収まっている3台は、前の写真で紹介した修理・調整・チューニング済のSansui製D907F/Gシリーズ・プリメインアンプです。上にはAurex SR410レコードプレーヤー(\74,000)が乗っていて各種MMカートリッジで音楽を奏でます。
ラック左側の2台のプリメインアンプは上がLuxman L-530X (\179,000)、中がLuxman SQ38FD/ii (真空管式 \168,000)。上にはThorens TD126/iii+SME 3009/Sii レコードプレーヤー(\296,500)でOrutofonのMCカートリッジで使います。
ラック中央は上からDENON DCD-SA1 SACDプレーヤー(\500,000)、米HP社#8903Bオーディオアナライザ(歪周波数特性測定器)、Rigol社 DS-1504 4chデジタルストレージ・オシロスコープ、Kikusui #183 ミリボルトメーターです。上に音楽用PCと自作DAC等が乗っています。
手前右側は修理完了したDENON DVD-3910 SACD/CD/DVDプレーヤー(\168,000)です。高級機とは言えませんが手軽に高音質のSACD/CDを聴きDVDも観られるプレーヤーとして便利なモノです。
オーディオ機器のちゃんとした修理調整は、回路図の読み込みや設計資料の理解が必要なので時間が掛ります。でもSansui D907F/D907G, D707F/707G,D607F/607GとそのExtraタイプに限っては、1年間掛けてしっかり学んだので比較的早く出来るようになりました。もしお持ちの方で修理・調整・チューニングを希望される方が居れば、レコード時代最後の銘器ですので、引き受けても良いかな~なんて思っています。
ちなみに音楽を聴いているスピーカー達はこんな感じで、一番手前のは新入りの高能率30㎝フルレンジ(自作BOX)です。
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2019/03/11 00:18:49