雨のなかを走っている。
午前5時半に
和歌山市を発ち、
途中、
奈良の山の中。

サァーーッという雨音が心に響くえもいわれぬ情景なのだが、これを写真で表現できない己の腕の無さがただただにくい。
ここは、八井内というところらしい。

信号のある交差点のそば。
なぜかこんなところに忽然と唐橋がある。
これを車中発見したので、おもわずこんな山中で立ち止まってみたのだ。

なにやら歴史のある橋らしい。
橋を横から撮ればよかったね。失敗。
午前8時。長谷寺境内駐車場着。

雨はまだやまず。
30分待つうちに装備をととのえ、
8時半入山。
長谷寺に雨がふる。

煙雨にかすんでよくみえないが、
とおくにうっすらみえるのが「本堂」。

ふりしきる雨のせいなのか、あるいは山寺特有の構造なのか、ここからだと長谷寺の全体像がさっぱりつかめない。
ま、いいや。
行ってみればわかるでショ。
その雨のせいで、これはおそらくまちがいないことに、観光客の出足がにぶっている。
思ってたよりお客さんの数が少なめ。
静かな写真が撮れそうだ。
「陀羅尼道」

山門をくぐってすぐに、長大な木造りの回廊。
雨がしのげてたすかるのもあるが、
なにより立ち止まってカメラをかまえたくなること必至。
「登廊 のぼりろう」

いいねえ。ちょうどこういうの撮りたかった。
これのいわれがたいへん面白くて、なんと神主さんの寄進なのだという。
そう、お寺に神主さんが寄進。すごくヘン。
おなじ奈良の春日社の宮司さんがいて、せがれが病気になったんで、神様におすがりしたら神様でてきて、
「それワシにはちょっとムリ。病で死ぬのはせがれのファイナル・デステニーやし、のがれられへん運命やで。そや、まァ、長谷寺におまいりしたらええかもな」
と超絶丸投げしたらしくて、それで宮司さんが長谷寺に詣でたら、なんとたちまち快癒し、大喜びのパパはこの「登廊」を寄進したそうな。
なんじゃそりゃ。

(ここにひとりの撮影者が粘っていて、自分も真似してカメラを向けると、「ああ、雨を撮っていたのか」と気づく。シャッター速度を1/1600秒まで上げ、ISO2000でようやく雨をとらえる。でも、まだなんかちがう。隣の撮影者はf2.8通しの明るいレンズで撮っていたようだ)
登廊をのぼりきると、そこには絶景。
おいおい、長谷寺よ。奥にどんだけ絶景秘めてるんだ?
『 嵐の坂道 』

この絶景にみな一眼やスマホでパシャパシャとってるが、さすがにたいしたもので、誰もまわりに遠慮して容易に坂を上ろうとしない。

日本人の気質の美徳といえよう。
しまいに、「そろそろあがります?」などと声があがり、おもわず笑ってしまったのだが、私にもおなじ年くらいの男性が「あがります?」ときくので、「みなさんが上がったら、自分も一緒に上がりますよ」とこたえておいた。
で、まあ、そろそろあがってみようか。

右上にうつってるしろいのは、傘。
そう、左手に傘、右手にカメラ持ちという雨天強行撮影、ストロングスタイルでこの場をしのいでいます。
持つのか、おれの右手!
もう、シビレて痛いんですが。
ところで、厳密にいえば、この道はすでに順路をたがえている。

「国宝 本堂」がみえたが、じつは本堂の出口。

あじさいに導かれるようにして行くと、順路からはずれてしまった。
そう、タイトルの「あじさい案内」とは、長谷寺のあじさいを私がみなさんに案内する意ではなく、むしろ長谷寺のあじさいにわたしが案内されている、という意味なのでデス。

いばって言うほどのことではないですが。
「国宝 本堂」

本堂は、山腹の中空に配置されたいわゆる「舞台づくり」になっている。

清水寺みたいな感じ。
本堂正面。

からのながめ。
そろそろ雨も上がりそう。

霧に烟(けぶ)る「五重塔」。

深山霖雨に濡れ、
伽藍幻の如く在り。
舞台まわりをぐるりまわると、
これも長谷寺名物の絶景。
『翠巒・長谷寺』
森閑ここに極まれり。

そこから、さきほど見た「五重塔」へ。
その五重の塔のまわりには、
たくさんのあじさいが咲き誇っていた。
これは好都合!とばかりに、ここでちょっとレンズをかえ、
SIGMA APO 70-200mm F2.8 EX DG OS HSM
で切り取ってみましょう。

山内(さんない)でもっとも標高のたかい場所にあるあじさい。

そのためか、なんだかフレッシュで鮮度が高いような気がする。
このみずみずしさを、写真にとって帰りたい。

気温は20度を下回ったが、高い湿度のために汗が流れる。

午前10時をすぎて、ようやく雨もやむ。

「帰り道」との案内があるが、
フッ、甘いな。
そんなトラップがこの私に通用するとでも?
そっち行ったらジ・エンド。
あじさい巡りが終わってしまう。
私は知っているのだ。
むこうの「奥之院」にもっとあじさいがあることを!
と思ったら、アリャリャ!?
通行止め?

(※おそらくこの先は工事中ではなく、雨による山肌の土砂崩落を懸念しての予防措置とおもわれます)
しかたなく、案内どおりの順路にしたがいます。
帰りながらも、鵜の目鷹の目であじさいをさがします。
今回お気に入りの一枚。
『青の回廊』
(【写真あるある?】正直いいますと、コレは偶然撮れたモノ。あ、いいなと思い中望遠のレンズで、遠くからパシャリ。モニターをみると、アレッ?あんがいいいかもと、露出をかえおなじ立ち位置でカメラをかまえるも、もう二度とおなじ写真がとれない!構図の再現性がない。何枚撮っても最初に撮った一枚目を越えられない。手持ち撮影の宿命でしょうが、こういうのしょっちゅうなんですけど、みなさまはこういう経験ってあります?)
最後まで、あじさいに導かれながら、山をおります。

さいごに、長谷寺にちなんだ句碑を写真におさめておわりです。
花の寺
末寺一念
三千寺
(高浜虚子)

* * * * *
お寺の門前、みやげ物屋がギッチリつまった通りをあるくと、やたらにゅうめんの看板が目につく。

そう、ここは「三輪そうめん」の産地。

この店先に、エアコンの室外機になぜか唐突にネコがいておどろく。
しかもこのねこ、やたら愛想がよく、私のような猫にきらわれ、犬にほえられ、寄ってくるのは小バエばかりといった男にすらも、もしやキャッチセールスではないか、高額な壷でも買わせられるのではという疑念を抱かせるほどの極上の愛嬌をふりまく。
「この猫は、向かいのよもぎ餅屋が飼い主だよ」
と、通りすがりの男が訊いてもいないのにおしえてくれる。
ふ~ん、そうなんだ。
で、アンタ誰!?
気をとりなおして一軒の店にはいる。

それじゃ、上の看板メニューの
「にゅうめんとたけのこごはん」のセットでも頼もうか。
AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED
この店をえらんだ理由はカンタン。店先に料理の実物があったから。(食品サンプルにあらず)写真だとわかりづらいからね。あ、こんなふうにしいたけやら山菜が「ひしめきあうように」のってるんだ!と視覚で理解するとスッと店に入っちゃう。

ちなみに、店の若い女店員にあらかじめ、
「冷たいおそうめんにもしいたけやにんじんがのっかてるんですか?それともあったかいにゅうめんだけですか?」
と問うと、
「にゅうめんだけです(ニッコリ」
だったので、
「じゃ、NEW麺で」
という注文になった。
暑さ寒さよりも料理の見栄えにより重きをおくようになった個人的今日この頃であるが、わりとそれが正解であることのほうが多く、
じっさい、この梅雨時でもあったかいにゅうめんは、あじわいよかった。

店をでて、駐車場へもどる道、
さっきとおなじ場所でこんどは、
「なんか赤道小町みたいな格好をしたちいさな女の子にさっきとは別ネコがメッチャスリスリしている」現場に遭遇してめまいをおぼえる。
※似ているが、さっきとは別の猫。首輪からしておなじ飼い主であろう。
なんだこの光景は。
白昼夢でもみてるのか。
ねこねこ幻想か。
意外にも、そうめんと猫が名物でした。

ありがとうございました。
またお会いしましょう。
*44,005km → *44,217km
Posted at 2018/06/29 20:04:03 | |
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