今年の夏、
私は「キス釣り」に
ハマりました。
* * *
キス釣りなんて、と思われそうですが、
わたしはこの歳になってはじめて
キス釣りをやったんです。

(↑右手にみえる山みたいなところにご留意いただきたい。ばべ鼻といって、後述する釣りスポットです)
これがもう、ドハマりしましてね。
「ブルルッ!」とくるあの独特のアタリがたまらなく快感で、休日はずっと砂浜でキス釣りに興じてました。
20センチクラスが釣れた8月アタマあたりが、マックスでしょうか。
ところが、8月お盆を過ぎると、パタリと釣れなくなる。
キスがいなくなったのか、あるいはキスはいるのに食欲旺盛なフグやベラなど外道が先に針にかかってしまうからなのか。
私はキス釣りからの脱却を余儀なくされました。
ですが、のべ竿でサシエにオキアミつけたウキ釣りでアジをねらっても、うまくいかなかったのはすでに経験ずみです。
世間では「ルアー」を投げる釣りが一般的だときいています。
アレでしょうか。
わたしもエサ釣りではなく、ルアー釣りで魚と駆け引き、真っ向勝負を挑むときがきたのでしょうか。
ただし釣り初心者の私には、これから何をどうしていいのかさっぱりわからないのです。
ここで急に話柄が一転します。
いきなりですが私の職場をご紹介しましょう。
わたしの勤務先は鉄工所です。
(↑勤め先の名誉のために申しておきますが、ここは本社工場でべつに第2工場がある。従業員数は50人をこえる)
鉄工所といっても、鉄骨を溶接するのが私の仕事ではなく、金属部品の加工をおこなう製造部門で、NC旋盤という工作機械をあつかうオペレーターをやっています。平たく言うと、旋盤工です。
みん友さんには以前ブログにてお話しさせていただきました。
前にいた会社を辞め、つい最近転職してきたんです。
なんでこんな話をするのかといいますと、私のこの職場、釣りをやってる人が異常に多い。
海に近い和歌山だからというのもあるのかもしれません。
工作機械をあつかう製造部門は8人。製造・組立を統括する部長をいれて9人のうち、わたしを含め5人が釣りをやっている。これはもう異常です。
しかもみな釣り名人ときている。
いや、釣り馬鹿というべきか。
その最たるが統括部長です。
部長は会社の各部門の残業・休日出勤に対応する激務のなか、土曜の夜から日曜の朝まで釣りざんまいという、根っからの釣り馬鹿、いやツワモノです。ていうか、タフガイです。会社創立からのメンバーでたたき上げの部長ともなると、これぐらいのタフガイでないとやっていけないのでしょう。
歳は私とおなじ昭和47年生まれ。ただし、1月生まれなので学年がひとつ上。顔は大阪のくいだおれ人形ににている。が、眼光に凄みがある。知能指数(IQ)が驚くほど高く、6台すべての工作機械のほか、溶接・組立の業務すべてに精通している天才。ただしサイコパス(他人の心がわからないという意味で)。心をヤラれそうなのでわたしは業務以外でなるたけ会話を避けるよう敬遠している。が、わたしが釣りをはじめたらしいとバレるとさっそく目をつけられる。
ある月曜の寒い朝、部長がツカツカと歩み寄ってくるので、仕事の指示かなと思ってるとやにわにスマホを広げ、
「ブリ釣れたで!」
「は?」
「きのう(日曜の朝)、ばべ鼻(※前述の1枚目の写真)で釣れたで!80センチオーバー!!」
「ウオーーーーーッ!?」

いっぽうで、松田さん(仮名)は30代の独身。映画「ドーベルマン」のヴァンサン・カッセルに似ている。和歌山県日高郡日高町におすまい。おうちの目の前にはうつくしい青い海が広がってるそう。うわさによれば、
「出勤前に釣りをして、仕事から帰ってまた釣りをする」
という「釣りキチ三平」もマッサオの釣りキ・・イヤ、釣り名人がおなじ職場におりまして、彼もまたある日のこと私にスマホをみせ、
「ウチの前で釣ったで!80センチオーバー!!」
「エッ!?」
「ヒラスズキ!!」
「ス、スゴイーーッ!!」
・・彼は背も高く痩せてることから「釣りキチ三平」をほうふつとさせることもあって、ほんとうに釣りキチ三平っているんだなあと思いました。
というのも、かれはソルトウォーターだけでなく、淡水もいけるクチで、バス釣りなんかも軽々とやってのけたりするから。

こういう職場にいれば、おのずと情報は入りやすい。
竿はなにを?
リールは?
ラインはどうすればいい?
すると、初手で私は大きな勘違いに気づきます。
アレなんですな。
竿はすでに持ってるはずです。キス釣りに使っていた、父譲りの「投げ竿」。この「ふりだし」の竿、タケノコのようにニョキニョキのばしてつかう竿のことですが、これでルアー釣りはしないんですナ。
ジギング用ロッドというのは、通常2つにわかれ、継いで一本の竿となす。
つまり2メートル越えをロッドだとしぜん、仕舞い寸法が半分の1メートルをこえるわけで、イヤおれバイクで釣りに行くんですけど、そんな長さでいけるの?
【10月】
で、思い切ってロッドを買ってみました!
ブリ部長がお持ちのロッド、シマノ「コルトスナイパー」を参考に。
シマノ 2021年モデル「ムーンショット」S96M

ここで型番の解説。
長さとしなり強度を表してるんですな。

リールはおなじシマノで2500番台の。
ロッドに合わせてそんなに高くないものを。

ルアーのかわりに「ジグサビキ」を。
BSテレビの釣り番組でみて、あー!そういうのがあるのかと購入してみた。
メタルジグは軽めの3gで。これは百均のダイソーで安く手に入るのがうれしい。

場所は近所の有名な釣りスポット。
栖原海岸の地磯。
地元の釣り師には通称「タタキ」とよばれている。

AF-S DX NIKKOR 16-80mm f/2.8-4E ED VR
(写真は今回、デジタル一眼レフカメラとスマホがごっちゃです)
ここがどれくらい有名なのか、停めたれらた車のナンバーをみればわかる。
さすがに北九州や愛媛ナンバーを見かけたときは、おどろいた。
じっさい、ここで釣りをしていると、大阪からきたにいやんにどこからですか?と聞かれ、近所です、バイクできましたとこたえると、なんともうらやましそうな顔をされた。釣り師にとっては、東京の銀座に住んでるようなものだろうか。
ちなみにこういう「ジグ」(ルアー)をつかって「ショア」(磯や防波堤)で釣る釣りを「ショアジギング」というんだそうです。
また「キス釣り」は砂浜で釣るから「サーフ」だそうで。おれずっと「ビーチ」だと思ってて。海水浴場だったから。会社でさんざん物笑いの種にされました。
で、こういう風景の写真ばかりならべてるということは、なにを隠そう、釣れなかったんですな。

ええ、ぜんぜん釣れないんです。
ここから私と魚との静かなる闘いのゴングが鳴ります。
ちなみに写真は明るいときに撮ったので、じっさい釣っていたのは午前4時。朝マズメねらいの夜間に寒さをこらえながら勝負をいどむ日々からここからつづきます。
【11月】
私は「アジング」という言葉を知りました。
アジに特化した釣り方とかあるんだ!
「ジグヘッド」という重りをかねた針にワームというやわらかい樹脂の疑似餌をぶっさす。

こんどは場所をかえ、近所の広川漁港へ。
ここの堤防、名称「天皇の波止」で。

なんで「天皇」なのか、さんざ調べても由来がわからかった。
ここへは車は進入できないが、バイクだとズズずいーーッと入れる。
これがわたしのアドバンテージ。
(バイクをおりてスグ釣りができる。車でくるひとは、遠くに車を停め、荷物かついでテクテク歩いて来なければならない)

上の写真は、明け方をねらって撮ったもの。
じっさい釣りをしてるのは真っ暗な午前4時。
すると、
ウオッ、なにかかかった!!
ガシラだーーーッ!!
(カサゴのことを関西ではガシラという)

アジを釣りにきたのに、ガシラとは。
ちょっと心中複雑。
だだ、コイツがめっぽうデカいのだ。
帰ってはかってみると、20センチオーバー。
ウヒョーーーッ!!
こんな大きなガシラ釣ったの、生まれてはじめて。
思わず小躍りして喜ぶ。

喜ぶのはいいが、
やはりアジが釣りたい。
このへんでわたしの目的がハッキリしてきます。
もはや、手段をえらばずアジを釣りたい。
なにもアジングにこだわらなくともよい。
アジは常夜灯にあつまる習性があり、日没から夜明けまで漁港内を回遊するといわれています。
それを証明したい。
この目で確かめたい。
一計を案じます。
小アジを釣る安易な仕掛けに「サビキ」というのがあります。
参考画像にアニメ「放課後ていぼう日誌」の第1話を使わせていただきますが、このアニメは本当に私は大好きで、釣り初心者の私にとってはすべてをお手本にさせてもらいました。

で、このサビキには針がエビに似せた疑似餌となっており、別についたカゴにアミエビをいれて小アジをさそうのですが、その針にべつにオキアミというエビをつけちゃう。
たとえるなら「餃子の王将」で「餃子定食」と「から揚げ定食」を頼んで同時にいただいちゃう感じ。(ちがう?)
こんなことで釣れるのかわかならいけど、とにかくやってみる。
11月のある大潮の夜。午前4時。

電気ウキではなく、ウキにケミカルライト(パキっと折ると光るやつ)を先っぽにつけて、ちょっと先までよいせっと遠投する。
写真には光るウキが写ってないが、いろいろ諸事情ということで勘弁ねがいたい、

すると、またたくまに5尾の中型アジを釣り上げる。
無我夢中というか、朝の4時というのもあって、夢でもみてるよう。

ちなみにうつってるのはカメラではなく、頭につけるヘッドライト。
となりのカマス釣りのオッチャンに、
「きょうはようけ釣れたナー」
と言われ、そこではじめて我にかえる。
カマスも大漁だったらしい。
ちなみに今年の和歌山は太刀魚釣りではなく、カマス釣りがさかんだった。
で、ウチに帰ってはかると、
に、25センチ!?
うはっ!
こんなデカいアジ、釣ったのはじめてだ。

これだけ大きいと、お造りにしてタップリいただけます。

自分で釣ったアジで、「なめろう」にして食べるのが夢だった。
「孤独のグルメ」シーズン6の第10話「千葉県富津市金谷のアジフライ定食」をみたせいだったかな。
とにかく、これで焼酎のむと、めちゃくちゃウマい。
いや、マジでうまい。

アジの開きにするのも夢だった。
ちなみに青いアミかごは、去年フライングで購入したがアジがサッパリ釣れず、父の家庭菜園でとれたトウガラシを干して鷹の爪にする物干しに使用されていた。使うのはいいけど、なんたる屈辱。今回やっと正当な使用方法、アジの開きに使えて感慨無量。涙がでるほどうれしい。

ですけど、サビキでアジ釣ったってなんの自慢にもならないんですな。
【アジ釣った翌日】
ブリ部長に誘われて、有田市初島にきました。

今回は青物・ハマチねらいです。
ここでハマチが釣れるらしいです。
ただし、ルアーに工夫が必要。
「ミノー」というのをアマゾンで買いました。
ブリ部長から教わったのは、「メタルジグ」はメタル、金属なので海底に沈みがちでこれはおもに船釣りようなのだと。
ミノーはアクリル樹脂製で海面表層を回遊する青物ねらいで、ショア・ジギングに適している。
アマゾンで売れ筋は2,000円くらいでしたが、わたしはどうにも「2千円」を海にどっせーいと放り込む気にはなれず。根っからの貧乏性なんでしょうね。、さんざんさがし回ったあげく480円のを見つけました。
あと、このミノーがよほど私にとって聞き慣れない単語だったらしく、なかなか覚えられなかったので、
「美濃。尾張の隣国は美濃」
と無理矢理おぼえました。

ふだんブリ部長から誘われても、かたくなに固辞してました。
釣りと旅は単独行がいいです。
好きな時に行って、好きな時に帰れるから。
ですがわたしも会社人として、なんですかね。接待ゴルフならぬ接待釣りですか。まあ、接待されてるのは初心者の私のような気もしますが。
なにより毎週青物・ハマチを釣り上げるブリ部長の腕を、この目でいちどみてみたい。
下の写真ですが、じっさい釣りをしたのは真っ暗な午前5時。
これはいったんうちに帰って、その日の午前中にバイクであらためで下見に来た時の写真。
しかも釣ったのは右の対岸。
正面にみえる製油タンクは、工場夜景で有名な初島の製油所である。
みん友さんでも来られた方もおられましょう。

ところが、部長がこない。
アレッ、おかしいな?急用でもできたか。
月曜会社で聞いてみると、15メートル離れたところにいたという。
駐車場所が異なったのでおたがい気付かなかった。
で、このとき部長に下の写真をみせる。
釣ってると、対岸の防波堤が気になって。
車は侵入禁止なので、いったんうちに帰ってバイクで防波堤の先までロケハンにきた。
すると車進入禁止なのに、パトカーが数台停まっている。
(なにごとだ)
と思ってると、警察官が多数現場検証する光景に出くわす。
まわりの釣り客に聞いてみると、釣り客がテトラポットから海に落ちて亡くなったらしい。

部長に、
「われわれが釣ってたあの時間帯だそうです」
というと、さしものサイコパスの部長も眉をひそめるけぶりをみせたが、すぐに冷酷な能面にもどり、
「僕らも気をつけなあかんなあ」
と言い残して去っていった。
・・この話はべつに伏線やフラグでもなんでもありません。
ただの日記ですので。
【12月】
・・あいかわらずアジングでアジが釣れない日がつづいたある日、会社でマシニングセンターという工作機械をあつかっている闇金ウシジマくんのドラマにでてきそうなコワモテの若いにいやんがニコニコ顔で、「アジ、釣れないんですって?」と声をかけてきました。
「Ricoさんちなみに、リーダーは何号使ってます?」
「2号やけど」
「太すぎません?アジに見切られとるかもしれませんよ」
(あッ)
と思いましたね。
釣りは通常、リールから導かれたライン(道糸)一本で仕掛けを結ぶものではなく、ショックリーダーという性質の異なる糸を数十センチ、介在させます。
この太さが釣果に影響するとは思いも及ばなかった。
それにうすうす気づいてきたんです。
最初に買ったロッドは青物用。
アジングがやりたければ、もっと細い専用のロッドでなくてはならない。
うすうすはわかってたんですけどネー。
釣り具って、もっと融通きくもんだと思ってました。
これがぜんぜん利かないんですね。
ゴルフクラブでたとえるなら、ドライバーを私はかたくなにアイアンがわりに使おうとしてたようなものでしょう。
融通のきかない趣味ほどお金のかかる話はありません。
で、結局アジング用ロッドを買いました。
このあたりでだんだんクレジットカードの請求書みるのがこわくなってきます。
シマノ ソアレ TT S76UL-S

2000番台の軽めのリールも追加で購入。
自分が「ダイワ」より「シマノ」派だと、このあたりで気づく。

ジグヘッドもワームも、だいぶそれらしくなってきた気がしません?
いずれもダイソーで安く手に入る。
前のと比較したのがコチラ。
図に描いた方がわかりやすいかと思いまして。
カッコ内が前のロッドの仕掛け。
これで間違いないでしょう。
このころから私は寝ても覚めても、仕事中も釣りのことばかり考えるようになります。
秋の深まりとともに、例年なら愛車アルファロメオを駆って紅葉の写真を撮りに行くところですが、ことしは行く気がしない。
釣りがおもしろくて仕方ない。
(↑仕事中に会社の裏手で。なんとなくスマホで一枚)
とうとう仕事を定時であがると、そのあと夜釣りに行くようになります。
こうなるとちょっと異常です。といっても夜通しでなく、小一時間ですが。
釣りに手ごろな漁港が近所にあると、こんな風になってくるのです。

おなじ場所を昼間に撮ったのがコチラ。
広川漁港です。
右に広村堤防がみえます。
「稲むらの火」で有名な、津波で田んぼに火をつけて村人に知らせるやつ。

あ、ついでに。ここに来るまでに、醬油発祥の地で有名な「角長」もあります。
なんか、地元PRになってきましたが。

これまでの場所を地図にしてみました。
こんな感じになるんですよ。
(私の住まいも勤務先も、この地図内におさまってます)

で、さっそくアジング開始。
タイムリミットは1時間。
それ以上は寒さに耐えられない。
すると、ビビッときた!
ガシラだーーーッ!!
アジング・メバリングでガシラ釣ったらダメでしょー!
アジが釣れるまで、おれの闘いは終わらない。
オレの戦いは
はじまったばかりだ!
* * *
【12月30日】
ブログアップぎりぎりまで、私の釣りはつづきます。
ばべ鼻です。
夏のあいだキス釣りやってた場所に近いので、知ってます。知ってるだけで、行くのははじめて。
ですが、正確にはばべ鼻には行けてません。あぶなくて、こわくて行けないのです。途中の磯で断念。
部長がブリ釣った場所で、ハマチとはいわずともスズキくらい釣れてくんないかな。
そんな気持ちで、年の瀬もせまるなか、ロッドを振りつづける私です。

ありがとうございました。
またお会いしましょう。
よいお年を。
Posted at 2021/12/31 13:20:41 | |
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