
86のレンタカーを借りて一日遊んでみたので、久々に試乗記でも書いてみる。
今回試乗したのは86のおそらく後期型。
純正のシートだがセミバケ風シートになっていて、乗り降りもしやすくホールド性も良好。一番驚いたのは長身の自分でも、理想的なシートポジションが取れること。
ステアリングはチルト&テレスコで手前まで来るし、ABCペダル位置も全く違和感のない位置に収まっている。
トヨタの普通のレンタカーだとどれもポジションが合わず、トヨタはよういうものだと思っていたのだけど、ターゲットからずれているだけなのかも--
走り出してからしばらくは渋滞にはまってしまったので、まずは渋滞の中でのインプレ。
ステアリングは少し重めで、クラッチもちょっと重いかな。
コロナの外出制限で退化した足(笑)には、207psのNA車としては少し重めのクラッチが少々気になる。FDのクラッチに比べれば軽いものの、渋滞が延々と続くと少しね。
シフトフィールはガッチリというかガチガチ。
マツダ車のようなコクコクという感じではなく、(触ったことないけど)ガンダムのレバーとか電車のノッチとかを触っているような感じ。
ストロークは非常に短くて、どこにはいっているか手でわかりやすい。半面、操作に抵抗感があって、本気で走らないときには自己主張が強いなと感じた。
続いて、高速でエンジン特性と加速をチェック。
低回転からフルスロットルで上まで引っ張ってみた。
中回転域の4500~5000rpmくらい?でVVTが切り替わるのか一瞬トルクが落ち込むが、そのあとはトップエンドまでトルクを保ったまましっかりと上まで回りきる。
ただレンタカーなので、酷使されているからなのか(走行48,000km)、それともカーボンがたまっているからなのか回転が重く感じられた。
車重の違いもあるし、加速感と実際の速度は一致しないものだけど、加速感は感覚的にはロドスタの1~2割増しくらいで、パワーほどの違いは感じられなかった。
ロードスターをセスナ、S2000を戦闘機とすると、86は爆撃機のような? たとえがイマイチだったかもしれないけど、パワーはそれなりとする代わりに安定感を重視しているような感じ。
で、加速時に驚いたのがエンジン音。3000rpmを超えるとすごい獰猛な大きな音を上げてトップエンドまで吹け上がっていく。これが水平対向の音かと思わせる、特徴的なドコドコ音。回して気持ちいいという音ではなく、回してより攻撃的になっていくタイプの音かと^^;
正直ちょっとやかましいくらいに感じたものの、重いステアリング、重いクラッチにシフト、メーターパネルのデザインといい、AE86時代の昭和の車の演出を意図しているのかもしれない。
後で調べてみると、ロドスタのインダクションサウンドエンハンサーと同様の、サウンドクリエーターというメカでエンジン音を室内に導いているようだ。巡行時には全く気にならないのだが、加速時はかなり大きな音がする。
続いてワインディングでテスト。
2速中心の低速なワインディングを走らせてみたところ、抜群に良いと思ったのがブレーキ。
街中でも非常に印象がよかったとおり、踏力のコントロールで自由自在に狙い通りのブレーキングができる。ブレンボは入っていなかったのでキャリパーは標準のもの、パッドは社外品が入っているのかもしれないが、さすがにスポーツカーらしくしっかりと躾けられていると思った。
ダンパーは街中でも感じていたとおり少し硬めなようで、コーナリングする時はしっかりとブレーキングしてフロント荷重をかけてやる必要がある。そうすれば気持ちよく安定感を保ったまま旋回していくことができた。
そしてガンダムチックだったシフトノブはワインディングに入ると一変。シフトアップ・ダウンでも気持ちよくノブが吸い込まれていく。若干硬い感じがするのは相変わらずだが、シフトの入りがわかりやすいので、シフトミスをしたらアクセルをつなぐ前に気づくことができるのはなかなか好印象。
高速コーナーで少し?と思ったのだが、アクセルに対する車両側の反応。
自分は、高速コーナーではステアリング舵角一定のまま、アクセルで回転半径を微調整して旋回することをよくやるのだが、ロドスタと同等の操作では旋回半径が変化しない。旋回半径を変えるのに、ロドスタだと1~2mmのアクセル開度で変化するのが、86だと5~6mm開度を変化させないとならない感じ。
ホイールベースがだいぶ違うので、86はホイールベースが長くて安定性が増している分、アクセルに反応しづらくなっているのかもしれない。
飛ばしてはいないので、追い込んでいった時の動きは全くわからないが、スタビリティコントロールの介入は結構遅めにセットアップされているようだ。雨のコーナーで少しラフにアクセルを踏んでみたところリアがスライドしたのだが、スタビリティコントロールが働く前に、人力スタビリティコントロールが働いたので(笑)。
ヒールトゥは非常にやりやすくて、全然慣れていなくても簡単に決まってしまうほど。ブレーキペタルとアクセルの位置関係はとても良いと思う。
そしてヒールトゥ時にアクセルをあおると、エンジンからフォンと音がするのだが、この音が絶品で意味もなく何度もヒールトゥしたくなるほど。水平対向特有の音なのか、今までは聞いたことがないような音だった。
坂道発進がラクになるよう、ヒルローンチアシストがついているのだが、こちらの介入もかなり遅め。よほどの急坂でないと働かないため、最初は壊れているのかな?と思ったほど。ロドスタだとアシストが入るようなシチュエーションでも、ほとんど介入してこない。
ロドスタと違ってON/OFFできるものなので、ONの場合はもっとしっかり利かせてくれてもよいのになー。
帰りの高速道路ではクルーズコントロールを試してみた。
流行りのレーダークルーズではないため、前走車に追いついたら自分で対応しなければならないものの、速度のコントロールは賢くて好印象。
上り下りに入ってもアクセル開度をスムーズにコントロールしてくれるため、不快になるようなことは一度もなかった。
最後にまとめ。
個人的な感想としては、86はとにかく「走る」ことが好きな人に向けた車なのだろうなーと感じた。「走る」は「攻める」に近いほうの意味合いで。
操作系の感じに音での演出など、昭和のスポーツカーを現代風にリメイクしたような感じが、これでもかと伝わってくる。
走り始めた瞬間、サーキットにコースインする瞬間をイメージしたと書けば伝わるだろうか?自分がサーキットを走っていた時代なら自分にも合ったと思う。
水平対向のエンジン音もなかなか魅力的だったし。
ただ、今の自分にはちょっとやんちゃすぎるかな(笑)