デミオに乗っていたときに感じたのが、MTのギア比が高くて若干使いづらいということでした。気軽に高回転まで回しづらいということもありますが、逆に極低速でも走りにくいと感じさせるものがありました。
徐行時や小さな交差点を曲がるようなケースでは、1速よりもトルク変動が小さく細かな速度調整がやりやすい2速をアイドリングを割らないくらいまで特に意識せず使って来たのですが、ギア比が高いとそれでも速度が出すぎてしまうのです。それ故アイドル回転数を下回りそうになってノッキング回避のため1速へのシフトを強いられる機会が多くなるわけですが(あるいは一旦クラッチを切って、2速のまま半クラッチを使いながら騙し騙し再加速する)、ギア比が大きく離れた「発進用ギア」の1速へ走りながらスムーズに落とすのは慣れていても意識しないと難しいのではないかと思います。「MT乗りが怠けるな!」と思われる向きもあるかと思いますが、実用車としてはこういう場面で円滑に運転できる方が望ましいのではないでしょうか。
車種によるギア比の良否について論じたページは数ありますが、この「2速徐行のしにくさ」を簡単に定量化して比べる方法はないかと思案し、試しに「2速1000rpmにおける速度」を一つの指標にしてみました。今回はデミオを始めこれまで乗ってきた車・気になる車などでこの「2速1000rpm速度」を比較してみようと思います。
なお、ここで表す速度はギア比・タイヤサイズから計算した理論値です。正確には動的負荷半径とかその補正とかが必要らしいですが、比較のためということでご容赦ください。スペックは各メーカー・
goo-net自動車カタログのサイトを参考にしています。
まずは私の乗っていたデミオから。
マツダ・デミオ 13C(DE) 15.5km/h (排気量1.3{L}、5段変速、減速比2速1.842・最終3.850、タイヤサイズ175/65R14。以下同)
次にこれまで所有した、徐行に不都合を感じなかった車から。
アルファロメオ・156 V6 13.5km/h (2.5、6段、2.235・3.937、205/55R16)
プジョー・306 Style(N3) 14.5km/h (1.8、5段、1.870・4.053、175/65R14)
日産・パルサー GTI(N14) 14.3km/h (1.8、5段、1.826・4.176、185/60R14)
14±0.5km/hに収まっていますが、この辺りがちょうどいいところなんでしょうか。
156はトルクに余裕がある上にギア比も低めで、気軽にバンバン回せて本当に痛快でした。
ちょっと異なる例も出してみます。
ダイハツ・コペン(L880K) 10.1km/h (0.66T{ターボ}、5段、1.842・5.545、165/50R15)
軽(小排気量)のターボということで低速トルクが小さく、これでも2速アイドリングからの加速は「何とか可能」というレベルでした。当然ながらシフトのせわしなさは不可避で、海外仕様にあった1.3Lエンジンにそれなりのギア比を組み合わせればより楽しいのでは、と当時思いました。
次は試乗などで乗ったことのある車を少し。
フィアット・500S 13.1km/h (0.9T、5段、2.174・3.867、185/55R15)
コペンほどではなくとも、同じ小排気量ターボでアイドリング近辺のトルクがやや不足するTwinAirエンジンとの組み合わせで若干低めになっています。この500S、1速のギア比もかなり低い一方で3速から上は結構高くて全体的にはかなりワイドな配分になっており、「スポーツ」を謳うにはちょっと「?」がつく設定に思います。
アウディ・S1 14.1km/h (2.0T、6段、2.086・3.944、225/35R18)
これもMTということで気になって、試乗だけしました(笑)。
パフォーマンスはスーパーですが、ギア比は割と普通ですね。2速以下ではブースト制限がかかりますがそれでもメチャクチャ速いです!
マツダ・ロードスター(ND) 13.2km/h (1.5、6段、2.991・2.866、195/50R16)
さすが自然吸気のスポーツエンジン、7500rpmと余裕あるレブリミットを生かして500Sと同レベルの低さですがこれでもNC型(12.5km/h)よりは高く設定されており、1~5速はNB型の1.6Lとオーバーオールでほぼ同じ、そこに高速燃費・静粛性重視の高い6速を追加した構成になっています。開発陣曰く「つながりを重視してギア比配分を見直した」そうで、実際に試乗してみてもギア比を意識することなくエンジンの持ち味を活かして気持ちよく走れました。
ロードスターと同じように?「駆け抜ける喜び」をテーマに掲げるBMWもずっと3シリーズにMTをラインアップしてくれているわけですが、こちらはいかがでしょうか。
BMW・320i(F30) 15.8km/h (2.0T、6段、2.548・3.077、225/50R17)
昔のETAエンジンの如く高回転側を見切ったエンジン(最高出力は5000rpmで出る)と組み合わせるだけあって6段もあるのにデミオよりまだ高い!! 2速だけでなく全体的に高いので、せっかくのMTですが運転しづらいんじゃないでしょうか。RWDなので、対応する低いファイナルギアセットがあれば交換の手間はかからなさそうですが(笑)。
ちなみに先代E90型320i・その前のE46型318i(いずれも2L自然吸気)は揃って14.0km/hと、至って常識的でした。
(2016/9/26追記)
5月のマイナーチェンジでギア比が変更され(グレードも320i Sportに限定)、2速2.130・最終3.385で2速1000rpm時17.2km/hとさらに上がってしまいました。
(追記以上)
ちなみに、「ウルトラハイギアードな実用車」というと思い出すのが往年('90年代前半)の燃費スペシャル車、BG型シビックETiです。
ホンダ・シビック ETi(BG) 18.5km/h (1.5、5段、1.761・3.250、165/70R13)
これ、同じBG型で高回転高出力型VTECエンジンを搭載したSiRの「3速」1000rpm時の速度(17.5km/h)よりも高いんです。実際に乗ったことはありませんが、当時の試乗記でも異常に高いギア比・省燃費タイヤのプアなグリップなどが相まって「とても運転しづらい」という印象が多かったように記憶しています。ちなみに5速100km/hは2100rpm、3速で180km/hリミッターに当たってしまうのですから恐れ入ります。
「他のデミオ」はどうなのかも気になったので、ディーゼルや1.5Lも含めてデミオ4世代の比較をしてみました(D:ディーゼル・G:ガソリン、4代目DJ~初代DWの順です)。
(DJ)1.5D 18.4km/h (6段、1.652・3.850、185/65R15)
(DJ)1.5G 14.2km/h (6段、1.904・4.388、185/60R16)
(DJ)1.3G 15.0km/h (5段、1.904・4.105、185/65R15)
(DE)1.5G 14.5km/h (5段、1.842・4.105、175/65R14)
(DE)1.3G 15.5km/h (5段、1.842・3.850、175/65R14)
(DY)共通 14.5km/h (5段、1.842・4.105、175/65R14)
(DW)1.5G 14.1km/h (5段、1.842・4.105、175/60R14)
(DW)1.3G 14.9km/h (5段、1.842・3.850、165/70R13)
ちなみにDW~DEまで5MTのギア比は全て共通です。最終減速比のみ、DYの1.3Lは車重増加を補うためか1.5Lと共通の4.105に低められています。
DEの1.3Lも高い部類ですがやはりDJディーゼルの高さは際立っており、徐行はかなりつらいのではないかと想像されます(実際につらいという感想を書かれた
オーナーのブログも拝見しました)。最近追加されたDJの1.5ガソリン車(15MB)もモータースポーツベースモデルという割にそれほど思い切ったギア比ではないように見えますが、おそらくエンジンがロードスターほど高回転型でないこともあるのでしょう。
普通に考えると自然吸気の小排気量モデルはギア比を低めてパフォーマンスを補うもんじゃないのかと思うのですが、昔から日本のB・Cセグメントあたりのクルマはカタログ燃費や静粛性のためと思われますが概してエンジンが小さくなるほどギア比も高く設定してあったように思います。
さて、今乗っている147はどうでしょうか。
アルファロメオ・147 1.6TS 12.9km/h (1.6、5段、2.238・4.067、185/65R15)
NDロードスターやフィアット500Sよりもまだ低いですね。ちなみに2.0TSも最終減速比3.867で13.8km/hと低い部類に入りますが、1.6は4.067とさらに下げられ見事に上記の私見通り(?)の設定になっています。
昔、145・146の2.0TS同士でも146の5速と最終のギア比がわずかに下げられた設定になっていたことが「145より35kg『だけ』重い車重が理由だとすれば走りのために手間やコストの増加を惜しまない姿勢はすばらしい」とカーグラフィック誌で賞賛されていましたが、アルファにとっては当然のことなんでしょう。
正直を言いますと、2.5Lの156に乗っていた頃は「147の1.6なんてまともに走るのか?」と懐疑的でした。確かに諸元表だけ眺めてパワーウェイトレシオなど計算してみるとデミオといい勝負ですが、いざ乗ってみるととてもそうは思えないくらい活発に走りますし、ローギアードだからといってシフトがせわしなく感じられるわけでもなく(これは適度にルーズで軽く操作できるシフトのお陰もあると思います)、ショートストロークで回りたがるエンジンとトランスミッションがぴったりマッチしていると思います。言い古されたことですが、やっぱりクルマは乗らなきゃ解りません!!
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2015/10/09 14:26:06