
E36レストア手引き書(原題:「BMW 3 Series E36 Restoration Tips & Techniques」・Greg Hudock著・2012年Brooklands Books刊)の非公式和訳です。
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第8章 エンジン
E36のガソリンエンジンは、どれも回して楽しめるものばかりだ。6気筒は概して機械的に丈夫だが、ヘッドガスケットが問題視される4気筒の評判は芳しくない。だが、それは実のところM42型エンジンのタイミングケースプロファイルガスケットが欠陥品というだけの話であって、他の部分の信頼性は6気筒に何らひけを取らない。
(項目一覧)
1. (4気筒エンジン) M40/M42型
2. M42型エンジンのプロファイルガスケット交換
3. M43/M44型
4. (6気筒エンジン) VANOSとは
5. M50型
6. M52型
7. M3用エンジン
8. 6気筒エンジンのオイルポンプナット問題
9. タイミングチェーン
10. タイミングチェーンテンショナー
11. VANOSの整備
12. VANOSはオーバーホールか交換か
13. カム角センサー
14. ディーゼルエンジン
15. 要約
4気筒エンジン
M40/M42型
基本的にはともにE30型3シリーズから継承されたエンジンで、同じ基本構造ながらM40型は8バルブSOHC、M42型は16バルブDOHCのカム駆動系をもつ。M40型は1990-1992年モデルの欧州仕様316(M40B16)・318(M40B18)に、M42型は1992-1995年モデルの北米仕様318・318tiと欧州仕様の318is(M42B18)に設定された。機構的な共通点も多いのだが、BMW愛好家からの情熱には明らかに差がある。
M40型の性能はE36のガソリンエンジンでは最も控えめで、重くなったE36を元気よく走らせるには心もとない。カム駆動にチェーンではなくゴム製のタイミングベルトを使っているのも弱いところで、カムシャフトも摩耗しやすく、タペット交換の間隔も比較的短い。
先代E30型の318isでお目見えしたM42型は同じE30型M3のS14型に次ぐスポーティなエンジンとして好評だったが、車重の増えたE36では大人しく感じられる。カム駆動がM40型のようなベルトではなく耐久性のあるチェーンなのは有難いところだが、こちらはヘッドガスケット不良という悪評がある。ただ、これは実際にはエンジン前方のタイミングケースに付くプロファイルガスケットの不良である。この不具合は1993年9月以前の生産分のみと言われているが、私の知るところではどの年式のクルマにも起こっている。
エンジン冷却水が減り続けてしょっちゅう足さないといけないような場合は、このプロファイルガスケット異常の疑いがある。解決法は、ガスケットをより耐久性のある対策品に交換することだ。M42型エンジンを積むE36の車齢を考えればまずたいていは既に対策がなされている可能性が高いが、該当車をお持ちならこの件の整備記録が存在するかどうかはぜひとも確かめておきたい。
始動時のカチカチ音も、M42型にはよくある問題だ。M40型ならあまり考えたくないバルブタペット劣化の可能性も考えられるが、M42型の場合はタイミングチェーンテンショナーの劣化によることがほとんどだ。
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M42型エンジンのプロファイルガスケット交換
上述のとおり、M42型でヘッドガスケット関係の不具合を起こすかなりの原因はタイミングケースプロファイルガスケットの欠陥である。プロファイルガスケット・ヘッドガスケットの部品価格はそう大したことはないのだが交換作業がきわめて大がかりとなるのが難点で、整備工場に頼めば車両価値に匹敵する工賃を請求されかねない。一度新しい改良版ガスケットに交換してしまえば未来永劫にわたりまず心配はいらなくなるのがまだしもの救いだ。
作業は基本的にヘッドガスケット交換と同じなので、シリンダーヘッドを外さなければどうしようもない。さほど難しくはないが、面倒ではある。バッテリーの接続を外し、冷却水を抜き、ヘッドに付くものは全て外す。手が入りにくくガッチリ留まっているエキゾーストマニホールドのボルト外しが一番手間取るところかもしれない。他には、負圧ホースやエアクリーナーケース、ラジエーターのアッパーホース、サーモスタットとハウジング、イグニッションコイルとプラグコード、スパークプラグ、バルブカバーとインテークマニホールドといった諸々を外す。
外すべきものがヘッドから外れたら、クランクシャフトを1番シリンダーのピストンが圧縮上死点(TDC)に来るように合わせる。このとき、1番シリンダーの吸排気カムが向き合うこととカムスプロケットの目印が両者とも12時(シリンダー長軸)方向を指すことを確かめる。ここでクランクシャフトとカムシャフトを専用工具(それぞれ品番112300・113240)で固定するが、作業終了時には取り外すのを忘れないこと。固定できたら、チェーンテンショナーを外してチェーンをスプロケットから取り外す。そしてE12トルクスソケットを用い、ヘッドボルトを取り外す。ヘッドのゆがみを防ぐため、ボルトは星形の順序で2-3回転ずつ緩めていく。
4 | 6 | 10 | 8 | 2 |
M42シリンダーヘッドボルト解除順 |
1 | 7 | 9 | 5 | 3 |
ヘッドはすんなり外れてくれないこともあるので注意が必要だ。外れてくる様子がなければ、まずはボルトが全て抜けているか確認しよう。本当に固着しているなら、ゴムハンマーで軽く衝撃を与えてみよう。ヘッドやブロックを損傷する恐れがあるので、決してこじってはがしてはいけない。うまく外せたら、ヘッドは傷つかないようペーパーウエスを敷いた作業机に逆さまに置いておく。ここで、ヘッドに歪みがないかストレートエッジを使って簡単に確認しておくのがよいだろう。ブロックとの当たり面が平滑なら問題はないがさもなくばオーバーヒートで歪んだということなので、ヘッドを機械加工業者へ面研に出すか交換することになる。歪みが軽度なら面研で回復可能だが、加工できないほど重度なら根本解決は交換しかない。
正直言って取り外しが大変なのは間違いないが、それに比べれば新しいガスケットを組みこんで外した部品を戻していくのはずっと順調にいくだろう。まず、ヘッドとブロックに張りついた古いガスケットのカスを、傷を付けないよう注意して取り除く。位置決めの印を合わせてヘッドガスケットをブロックに置き、前方にプロファイルガスケットを付ける。ヘッドを戻したときにピストンとバルブが干渉しないよう、クランクシャフトの固定具を外して45°反時計回りに回転させピストンをすべてシリンダー内に収める。ヘッドをブロックに組み付けてボルトで固定したら、再びクランクシャフトをTDC位置まで戻す。ヘッドボルトは新品を用いて仕上げは指定の順番通りに30Nmで締めつけ、それからクランクシャフトとカムシャフトの固定を外す。
7 | 5 | 1 | 3 | 9 |
M42シリンダーヘッドボルト締結順 |
10 | 4 | 2 | 6 | 8 |
残りの手順は取り外しの逆である。工程の多い大仕事だけに必ず一つ一つ確認しながら進めていき、戻し方を間違えないように必要なところは写真を撮っておこう。
M40/M42型エンジン諸元
M40B16 : 1990-1992 316i: (1596cc / 102bhp / 14.5kgf-m)
M40B18 : 1990-1992 欧州仕様318i: (1796cc / 115bhp / 16.8kgf-m)
M42B18 : 1992-1995 北米仕様318i/is・欧州仕様318スポーツ/318ti: (1796cc / 138bhp / 17.8kgf-m)
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M43/M44型
BMWの直列4気筒エンジンはこのM43/M44型でまた一つ進化を遂げた。先のM40/M42型と同様にM43型は8バルブ、M44型は16バルブとなる。M43型は1994年以降の欧州仕様316(M43B16・M43B19)・318(M43B18)に、M44型は1996-1999年モデルの北米仕様318・318tiと欧州仕様318is(M44B19)に設定された。従来型からは性能・信頼性とも進化しているが、朗報なのはM40型でベルト式だったカム駆動がM43型ではチェーン式に改められたことだ。E36全般に共通する冷却系の問題を除けば、M43型の信頼性はかなり高い。M44型はM42型の環境性能を高めたもので、これも信頼性は向上している。両者に共通する唯一の実質的な弱点がアイドルコントロールバルブ(ICV)だ。標準装着品は製造上の欠陥があるため壊れやすく、そうなると始動性の悪化あるいは始動不可を招いたりアイドリングが不安定になったりすることがある。
M43/M44型エンジン諸元
M43B16 : 1993-1999 316i・316iコンパクト: (1596cc / 102bhp / 15.3kgf-m)
M43B18 : 1993-1995 欧州仕様318i: (1796cc / 115bhp / 17.1kgf-m)
M43B19 : 1999-2000 316iコンパクト: (1895cc / 105bhp / 17.0kgf-m)
M44B19 : 北米仕様318i/is・欧州仕様318スポーツ/318ti: (1895cc / 138bhp / 18.4kgf-m)
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6気筒エンジン
VANOSとは
以後の本章で頻出する「VANOS」について、まず軽くまとめておこう。これは可変バルブタイミング機構のBMW式の呼称で、E36の6気筒ガソリンエンジンのほとんどに採用されている。カムシャフトの位相を6°の範囲で前後に動かすことで(訳者調べ:M50TU型は12.5°差の2段階切り替え)、全回転域での性能向上をもたらした。VANOSの機構はシリンダーヘッドの前面にあり、ソレノイドと油圧ギアで構成されている。エンジンECU(DME)の制御でソレノイドが作動すると油圧のかかったギアが内外へ動き、カムシャフトのスプロケットを周方向に動かすことでバルブタイミングが変化する仕掛けである。吸気側カムのみが可変式のものはシングルVANOS、吸排気カム両方が可変式のものはダブルVANOSと呼ばれる。名称の由来は可変カムシャフト制御を意味するドイツ語「Variable Nockenwellen Steuerung」の略である。
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M50型
M50型は1991-1994年モデルの320(M50B20/M50TUB20)・325(M50B25/M50TUB25)に設定された他に、少数ながらアジア・オセアニア向けにタイで生産されたM50B24型という機種もあった。このうち、VANOSが採用されたのは技術進化版(Technically Updated)を意味する「TU」が型式名につく機種である。E36のエンジンはどれもウォーターポンプ不良の問題がつきまとうが、中でもM50型はもはや朝飯前といってもよいほど当たり前に起こる。
1992年1月から1994年8月までに生産された(ほぼ全ての)VANOS付きM50型には、冷間時に始動不良となる問題があった。これはDMEのプログラムの不具合が原因でソフトウェアの更新により対策されているので、ディーラーでバージョン5.1以上のソフトに書き換えてもらうとよい。前輪ストラットタワー近くに対策済みであることを示すステッカーがあれば確認できるが、なくても最寄りのディーラーで記録を参照できるはずなので尋ねてみてもいいだろう。
M50型エンジン諸元
M50B20 : 1991-1992 320i: (1991cc / 150bhp / 19.4kgf-m)
M50TUB20 : 1993 320i: (1991cc / 150bhp / 19.4kgf-m)
M50B24 : 1993-1997 タイ生産車: (2394cc / 188bhp / 24.5kgf-m)
M50B25 : 1991-1992 325i/is: (2494cc / 189bhp / 25.0kgf-m)
M50TUB25 : 1993-1995 325i/is: (2494cc / 189bhp / 25.4kgf-m)
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M52型
1994-1999年モデルの320(M52B20)・323(M52B25)・328(M52B28)に設定されたM52型は、当時の標準モデル用直列6気筒の最終進化版だった。M50との共通点は多いが、より大きなトルクと低排出ガス性能を実現している。
1998年3月以前に生産された欧州仕様M52搭載車には、ガソリンに含まれる硫黄がアルミ製のシリンダーブロックを腐食してしまう問題があった(北米仕様は鋳鉄製ブロックなので影響はない)。もし該当車をお持ちなら、これによる圧縮抜けを生じていないか一度調べておいた方がよいだろう。他にも、このエンジンは製造時のアイドラープーリーの組み付け不良で補機ベルトから異音を生じることもある。
M52型エンジン諸元
M52B20 : 1994-1999 320i: (1991cc / 150bhp / 19.4kgf-m)
M52B24 : 1996-1999 タイ生産車: (2394cc / 181bhp / 24.5kgf-m)
M52B25 : 1996-2000 323i/is・323ti: (2494cc / 168bhp / 25.0kgf-m)
M52B28 : 1996-2000 328i/is: (2793cc / 190bhp / 28.5kgf-m)
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M3用エンジン
欧州仕様: S50 3.0L(S50B30)・S50 3.2L(S50B32)
1993-1995年モデルの欧州仕様M3に設定された3.0LのS50B30型は基本的にM50型の超高性能版で、気筒別のスロットルボディや吸排気効率の高いVANOS付きシリンダーヘッドを奢られている。それをさらに過激にしたのが1996-1999年モデルのS50B32型で、3.2Lへの排気量増加はもとよりさらなる圧縮比の向上や吸排気バルブの軽量化ならびにダブルVANOSが大きな特徴だ。両者とも容赦なく高回転域を多用してもまったく苦にしない頑丈なエンジンで、それどころか回すのをせがんでくるかのようである。VANOSのオーバーホールが必要となる頻度もM50型と変わりなく、性能も構造も思い切り強化したM50型とみてよいだろう。
北米仕様: S50 3.0L(S50B30US)・S52 3.2L(S52B32US)
1995年モデルの北米仕様M3に設定されたS50B30US型はM50型を基本に3.0L化したという点では欧州仕様と共通だが、より大きな利幅を目論んだこちらは低コストで仕立てられている。例えば、吸気系が欧州版のようにスロットルが気筒別に独立した複雑なものではなくM50型と同じ仕様となるのが大きな違いだ。1996-1999年モデルの北米仕様M3に設定されたS52型は同じ北米仕様の鋳鉄ブロック版M52型の焼き直しで、高リフトのカムシャフトや出力指向のECUが付くなどの違いがある。
一般的な弱点はベースのM50/M52型と同様で、冷却系では1997年初期までのモデルでウォーターポンプのインペラーがプラスチック製になることや、ラジエーター・サーモスタットとそのハウジング・冷却水ホースあたりだ。VANOSの修理や交換の時期もベースエンジンと同じようにやってくるし、カム角センサーも故障しやすい。
M3用エンジン諸元
S50B30US : 1995 北米仕様: (2990cc / 240bhp / 31.1kgf-m)
S52B32 : 1996-1999 北米仕様: (3152cc / 240bhp / 32.6kgf-m)
S50B30 : 1993-1995 欧州仕様: (2990cc / 286bhp / 32.6kgf-m)
S50B32 : 1996-1999 欧州仕様: (3201cc / 321bhp / 35.7kgf-m)
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6気筒エンジンのオイルポンプナット問題
E36型M3の6気筒エンジンはどれも信頼性が高く丈夫だが、ガンガン走らせるドライバーにとって一番気になるのはオイルポンプの軸を留めるナットだ。M3のみならずE36の6気筒MT車で存分に力を引きだすような走り方をしていると、逆方向のトルクがかかったナットがゆるんでしまう恐れがあるのだ。もちろんこれが外れてしまえば油圧がなくなりエンジン内部のベアリングをダメにしてしまうことになるのだが、その予防としてはナットにワイヤーを通してスプロケットに固定する方法がある。エンジンオイルを抜いてオイルパンを外し、穴を開けたナットをオイルポンプの軸に取り付けてナットの穴とスプロケットをワイヤーで結びつけてしまうのだ。BMW部品専門店ではあらかじめ穴を開けたナットとワイヤーのセットまでよく見かけるくらいだが、中にはナットとスプロケットをMIGまたはTIG溶接でくっつけてしまう剛の者までいる。
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タイミングチェーン
タイミングベルトが不具合の種になりやすいM40型を除けば、E36のエンジンはカム駆動がすべて耐久性に優れるタイミングチェーン式となるのは有難いところだ。チェーンはクルマと同じだけ保つ設計で実際にもまずその通りだが、あまりの多走行車やサーキットでレブリミッターに当てまくったようなクルマでは壊れてしまう例もないわけではない。そのどちらでもないのにチェーン周りからガラガラと音がする場合はたいていチェーンテンショナーの不良で、交換してしまえば解決することが多い。チェーン交換が必要となるのは、テンショナーを換えても音が消えないようなよほどの場合くらいである。6気筒モデルではVANOSの不調でもガラガラ音が出るので、チェーンからの音と決めつける前にVANOSの状態を確認しよう。本来、チェーンはテンショナーやVANOSよりも頑丈なものである。
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タイミングチェーンテンショナー
大多数のE36に標準だった2分割型テンショナーは概して壊れやすいが、後期モデルの一体型はずっと信頼性が上がっている。交換するならぜひとも一体型の改良版にしたい。ねじ込んである古いテンショナーの取り外しは難しくないが、内部でばねが圧縮されているので飛び出しに注意が必要だ。取り付けはまず新品にOリングを組みこんでおき、テンショナーが収まる穴に指を入れて奥の峰を触れる。その峰とテンショナーの溝の向きを合わせて新品を挿入し、最後に40Nm(一体型)または50Nm(分割型)のトルクで締め込む。
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VANOSの整備
上述のとおり、タイミングチェーンやテンショナーからの異音はVANOS故障時の音と区別しにくい。VANOS起因の音はバルブカバーの前端あたりからで、大小の石をかき混ぜるような感じである。YouTubeで「E36 VANOS noise」をキーワードにして検索すれば、この音がよくわかる動画がいくつも出てくる。テンショナーは悪くなっても単に音が出るだけだが、VANOSの場合は異音だけでなくエンジンの力感も損なわれる。また特にエアコン使用時など、まるで足が泥に埋まったように反応がもたつくこともある。VANOSの故障に対しては、シール類を交換してオーバーホールするかユニットごと交換するかを選択することになる。
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VANOSはオーバーホールか交換か
VANOSのオーバーホールでは、漏れやすいニトリルゴム製のシール類を耐久性のあるフロロエラストマー(バイトン)製のものに交換するのが一般的だ。ユニットごと新品に交換するのももちろん正解だが、ニトリルゴム製のシールが付いたユニットを入れてしまうとまたいずれ不調を来してしまうのが唯一の懸念だ。それを考えると、異音と長くおさらばしたければ確実にバイトン製シールを組み込めるオーバーホールを選択した方が間違いはないだろう。
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カム角センサー
もしエンジンが始動しない場合は、スキャンツールにつないだらカム角センサーの異常が検出される可能性が高いだろう。これもまたけっこうな割合で不調を来す箇所だ。
4気筒エンジン
1993年9月以前生産の4気筒エンジンではセンサーはシリンダーヘッド前面にあって手が届きやすかったのだが、それ以降は吸気マニホールドの上側を外さないと手が入らない場所に移されてしまった。マニホールドの取り外しは骨だが、それさえできればセンサーの交換は簡単だ。
6気筒エンジン
まずオイルフィルターのフタを外してフィルターを抜き、異物が入らないようカバーをしておく。次にPCVホースを外してVANOSの油圧パイプとソレノイドも外す。シリンダーヘッド上部のソレノイド裏側にセンサーがある。新品センサーに付属してこないこともあるが、Oリングも必ず新品に交換しよう。
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ディーゼルエンジン
M41型
1994-2000年モデルの318tdsに設定されたM41型は、6気筒のM51型から2気筒を切り落とした成り立ちだ。バルブリテーナーが外れてシリンダー内にバルブが落ちこむというあまり類を見ない不具合をおこすことがあり、これはもちろん壊滅的な損傷をもたらす。タペットの損耗も比較的早い方である。
M51型
標準の325tdとインタークーラー付きの325tdsに設定されたM51型は豊富なトルクと低燃費を両立し、E36用エンジンの中では一二を争う傑作として評判が高い。もっとも、だからといって不具合と無縁というわけではない。噴射ポンプ不良は割とよく起こる不具合で、燃料タンク内のリフトポンプも壊れやすい。
ディーゼルエンジン諸元
M41D17 : 1994-1998 318tds・318tdsコンパクト: (1665cc / 89bhp / 19.4kgf-m)
M51D25 UL : 1991-1996 325td: (2498cc / 114bhp / 22.7kgf-m)
M51D25TU UL : 1996-1998 325td: (2498cc / 114bhp / 23.5kgf-m)
M51D25 OL : 1993-1996 325tds: (2498cc / 141bhp / 26.3kgf-m)
M51D25TU OL : 1996-1998 325tds: (2498cc / 141bhp / 29.0kgf-m)
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要約
E36用のエンジンはあらゆる面で扱いやすく、また頻繁な整備を要しない設計になっている。めぼしい弱点も全機種にいえる冷却系の他にはM42型のプロファイルガスケットくらいのもので、機構的にはBMW歴代で指折りの傑作揃いといってもいいだろう。定期的なオイル交換と基本整備を欠かさなければ、現実的にどのエンジンも優に200,000マイル(約300,000km)の走行に耐える素質を持っている。
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Posted at 2022/05/26 13:03:25 | |
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