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2022年05月16日 イイね!

(E36レストア本和訳) 第5章:サスペンション・ステアリング

(E36レストア本和訳)  第5章:サスペンション・ステアリングE36レストア手引き書(原題:「BMW 3 Series E36 Restoration Tips & Techniques」・Greg Hudock著・2012年Brooklands Books刊)の非公式和訳です。

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第5章 サスペンション・ステアリング

  E36は前輪にマクファーソン・ストラット式の独立懸架を採用した。後輪は、限定モデルのZ1ロードスターで初お目見えした「Zアクスル」と称するマルチリンク式独立懸架をコンパクト系以外のモデルで採用した。コンパクト系については、先代のE30型3シリーズから受けついだセミトレーリングアーム式とされた。

 卓越した乗り心地と操縦性を味わわせてくれるE36とてサスペンション構成部品の経年劣化は免れないし、当然ながら大径ホイールと扁平タイヤに換えたり頻繁にサーキットを走ったりすれば尚更だ。本章では、本来の走り味を取りもどすために比較的劣化しやすいところとその直し方についてご紹介しよう。




(項目一覧)
1. ダンパー
2. ハブベアリング
3. ブッシュ類
4. 前コントロールアーム・ボールジョイント
5. 後ショックマウント・マウント取り付け部
6. 後サブフレーム
7. ステアリング
8. 要約



ダンパー
 乗り心地が落ち着かなくなるか本体からのオイル漏れを見つけたら、ダンパーの替え時だ。純正同等品への交換も大いに結構だが、E36にいちばんお勧めなのはビルシュタイン製だ。乗り心地も操縦性も、その向上ぶりには目を見張ることだろう。

 前輪ストラットユニットの交換はさほど難しくはない。まずブレーキキャリパーの固定ボルトを外して脇へよけ、バンジーコードのような紐で吊っておく。ABSセンサーと配線、そしてパッド摩耗センサーも外す。M3ではスタビライザーがストラットに付くので、その固定ボルトも外す。続いてハブナックルを下からジャッキなどで支えてからストラット下部の固定ボルトを外す。最後にエンジンルームからストラット上部の固定ボルト3本を外せばストラットを取り外せる。新品の取り付けはこの逆手順となる。締めつけ規定トルクはブレーキキャリパー固定ボルトが110Nm、ハブナックル固定ボルトが107Nm、ストラット上部のボルトが24Nm、スタビライザーのボルト(M3のみ)が59Nmである。

 後輪ダンパーの脱着も前輪と同様だが、こちらは上部のボルトを先に外す。まず作業する側のハブをジャッキで支え、トランク内でダンパー上部を覆う内張りをめくって固定ボルトを外し、続いて下部のボルトを外す。こちらも取り付けはこの逆の手順である。上部のガスケットとダストカバーは古い物を流用すればよい。下部のボルトの締めつけトルクは77Nm、上部は24Nmである。

 両者とも、取り付けの際は新品のセルフロックナットを使い、「ロックタイト270」などの高品質の緩み防止剤を塗っておく。また、作業後には信頼ある整備工場でホイールアライメントを調整してもらおう。
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ハブベアリング
 ハブベアリングの交換は前後ともなかなか大変だが、DIYも可能といえば可能だ。何よりも辛抱強さが美徳となる類の作業ではあるが。

 前側はまずホイールを外し、中心のダストカバーを外して中のハブカラーナットの回り止めを叩いて戻す。続いて一旦ホイールを取り付け、助手にブレーキをかけてもらった状態でナットを外れない程度に緩める。再びホイールを取り外し、ABSセンサーとブレーキローターを外し、ブレーキキャリパーも外してよけておく。ここでハブカラーナットを取り外し、ハブ(と内部のベアリング)をプーラーで引き抜く。新しいハブとベアリングはプレスで圧入する。ハブカラーナットを手回しで取り付け、ローター・キャリパー・ABSセンサーを取り付ける。ホイールを取り付けたら助手にブレーキをかけてもらい、ハブカラーナットを290Nmで本締めする。再度ホイールを外し、ナットの縁を曲げて回り止めをしてホイールを取り付けたら完了だ。

 後側はさらに難度が高くなる。ドライブシャフト・ブレーキローターを外し、キャリパーは脇によけて吊っておき、ABSセンサーを外す。次にプーラーでドライブフランジを引き抜き、ベアリングを固定するCクリップを外し、再度プーラーでベアリングを抜く。抜いた後のハウジングを清掃し、新しいベアリングを圧入したら新品のCクリップを取り付ける。以後の取り付け手順は取り外しの逆である。
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ブッシュ類
 古めのBMW車全てに当てはまる話かもしれないが、ほとんどのサスペンションアームやリンクの両端に付いているブッシュの寿命は短い。一見小さなゴムの塊にすぎないのだが、これが距離を走ると弾力を失うので交換することになる。E36では前輪のコントロールアームと後輪のトレーリングアームのブッシュが特に劣化しやすいが、他もいずれそうなることに変わりはない。ゴム製はあまりにも劣化が早いので、交換するならポリウレタン製のような強化品を選ぼう。クルマの動きが鈍くあいまいになったから交換しようと思い立ったとしても、すべてのブッシュを交換するとなるとなかなかの大仕事で時間もかかる。

 E36のサスペンションには数多くのブッシュが使われている。ブッシュ交換は、基本的にはアームを外して古いブッシュを打ち抜き、装着面を滑りやすくして新品を圧入するという手順だ。だがこれはまさに「言うは易く行うは難し」という言い習わしそのもので、どうしても時間はかかるし心も折れそうになる。自宅でできないとは言わないが、自信がなければ腕に定評のある整備工場かBMW専門店に預けたほうがよい。
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前コントロールアーム・ボールジョイント
 前輪の偏摩耗や前サスペンションからのコツコツという異音がみられたら、ボールジョイントを新品に交換した方がよいだろう。これまた、サスペンションの中では劣化しやすいところだ。愛好家の中では、基本的に互換性があってE36用よりも耐久性が高いことが知られているE30(特にM3)用のボールジョイントとコントロールアームへの交換もよく行われている。

 コントロールアームの取り外しも特に難しいところはない。M3以外のモデルでは、まずスタビライザー(M3はストラットに付く)を取り外す。タイロッドのボールジョイントを留めるナットをゆるめ、タイロッドエンドプーラーなどの器具でジョイントを取り外す。このジョイントやコントロールアームブッシュを交換するだけなら、それぞれプーラーで引き抜いて新品を圧入する。それでも大いに構わないのだが、ボールジョイントとブッシュがあらかじめ付いている社外品の強化コントロールアームに取り替えてしまうことをお勧めする。高価だが、それだけのことはある。
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後ショックマウント・マウント取り付け部
 後からコツコツと音がする場合、原因として一番考えられるのはショックマウントだ。単にマウントが劣化しただけならよいが、マウント取り付け部のパネルが割れていたら最悪だ。いずれにしてもマウントはより強化されたE46用に交換し、取り付け部にはZ3用の補強プレートをかませて固めておくのが一番の対応策だ。

 重症例ではマウントが機能を失うどころか、ダンパー取り付け部のパネルまで裂けることがある。これは頻繁とまでは言わないが、思ったよりも起こりやすい。不幸にして見舞われてしまったら破損部分のパネルを切断して新しい部品を溶接し、Z3用の補強プレートを付けておこう。
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後サブフレーム
 ハイグリップタイヤを履かせてサーキットを存分に走り回るつもりなら、後のサブフレームも強化する必要がある。取り付け部のボディパネルに溶接する補強プレートのキットも多く市販されている。

 ただ、日常の用にしか使っていないのにサブフレームの亀裂でコツコツ音が出たとなれば進むべき道は2つ、サブフレームを溶接し直すかクルマを解体屋送りにするかだ。手間もお金もたくさんかけてきたクルマなら直して乗り続けることだろうが、過走行でどこもかしこもヨレヨレなら普通は解体屋行きだろう。
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ステアリング
 E36のパワーアシスト付きラック&ピニオン式ステアリングには、基本的に大きな問題はない。確かにフルードは漏れるが、機構そのものの不具合は稀だ。フルードが減る原因としては、パワステホースの疑いが濃厚だ。距離を重ねたクルマでステアリングの反応が鈍くなった場合、下回りに赤いパワステフルードが漏れて付いていれば確定となる。ちなみに整備を怠ったクルマの場合、フルードの色は本来の鮮やかな赤ではなく汚ならしい茶色や黒色を帯びる。

 フルード交換作業はとても単純だ。タンク周辺に手を入れるために、先にエアフィルターハウジングを外す必要があるかもしれない。フルードはタンクからポンプで吸い上げて抜きとるか、パワステポンプ底部のバンジョーボルトを外して排出する。後者の場合は、フルードの流出が止まったらキーを回してステアリングロックを解除し(エンジンは始動しない)ステアリングホイールを何度か左右いっぱいまで切って回路内に残った分も出し切る。全て抜けたらドレーンプラグを戻し、新しいATFをタンクの満タン近くまで注ぐ。ステアリングを何度か左右いっぱいまで切り液面が下がったら注ぎ足す作業を満タンになるまで繰り返す。

 最後に、奇妙に思われる話をしておこう。初期型のE36はステアリングコラムの下部がひどく錆びることがある。これはメーカーも新車保証期間中に把握していたにもかかわらず対策がなされなかったため、依然としてステアリング系統で気をつけるべき箇所となっている。
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要約
 ボールジョイントやブッシュ類がいちばん劣化しやすく、その次にダンパーやハブベアリングが来る。後のダンパー取り付け部の損傷は頻繁にサーキット走行を行った場合に起こりがちだが、どのクルマでも安全に走るためには注意するべき箇所である。
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Posted at 2022/05/16 17:11:07 | コメント(0) | トラックバック(0) | E36レストア本和訳 | クルマ
2022年05月14日 イイね!

(E36レストア本和訳) 第4章:ボディワーク

(E36レストア本和訳)  第4章:ボディワークE36レストア手引き書(原題:「BMW 3 Series E36 Restoration Tips & Techniques」・Greg Hudock著・2012年Brooklands Books刊)の非公式和訳です。

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第4章 ボディワーク

 E36は別段錆びやすいクルマではない。それもそのはず、生産工場でボディパネルの66%に亜鉛めっきが施されているのだ。とはいえ、何年も苛酷な環境に晒されたような場合は錆を免れないこともある。本章では、比較的直すことが多いと思われる箇所とその一番確かな直し方についてご紹介しよう。




(項目一覧)
1. ボディ全般
2. フロントフェンダー
3. BMWエンブレム
4. ボンネット・トランクリッド
5. ドア
6. ドアミラー
7. 無塗装バンパー・グレー色サイドスカートのお色直し
8. バンパー
9. サンルーフ
10. 後部ボディパネル
11. 前後ホイールアーチ
12. サイドシル
13. 車室・トランク床面
14. ゴム・プラスチック製外装部品
15. カウル排水口の増設(1994年7月以前生産分)
16. ヘッドライト・テールライト
17. 要約



ボディ全般
 E36型3シリーズは世界中で270万台以上も生産されたモデルなので、ボディ関係部品の入手にも当面困ることはないだろう。安価な社外品のボディパネルという選択肢もあるが、その品質はBMW純正の新品のみならず中古品と比べても月とスッポンである。
 本書は読者の皆さんがなるべくご自身でクルマを直されることを前提にしている。もちろん、溶接が必要だがその技術がないという場合は腕と信頼のある板金工場へお願いするのが一番だし、最高の仕上がりを求めるなら本格的なブースと専用のスプレーガンが必要となる塗装も同じだ。でも心配はいらない。E36には特殊な技能や高価な器具がなくても直せるところがいくらでもあるのだ。
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フロントフェンダー
 ここで最も錆びやすいところは、ホイールアーチ周辺とタイヤ後部の下の部分だ。マッドガードが付いていたりすると危険度はさらに上がる。錆びた箇所を切りとって継ぎ板を溶接する手もあるが、フェンダーを丸ごと中古品に取り替えてしまうのが一番だろう。脱着がさして難しくないのも、有難いところだ。

 作業にあたっては、まずボンネットを開ける。次に車体前部をジャッキアップしてタイヤを取り外し、ホイールハウスのプラスチック製内張りを外す。そしてフロントバンパーを外し(後述)、フロントグリルパネルを両側で固定するボルトを外し、ウインカーユニットを外す。フェンダー上部の固定ボルトを抜いたら、ドアを開けた隙間からフェンダー後部の固定ボルトも外す。全てのボルトが外れたら、フェンダーを持ちあげて外す。

 新しいフェンダーの取り付けはボンネットとの隙間を調整するのが多少手間だが、基本的には取り外しの逆の手順で行う。取り付けは十分に時間をかけて慎重に行い、ボルトは仮止めの状態で位置決めしてから本締めを行う。
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BMWエンブレム
 風雨にさらされるボンネット先端のBMWエンブレムは、ほぼ例外なくいずれ色あせ割れてくる。ささいながら見過ごせない問題だが、対処は簡単なのでまったく心配ない。ボンネットとトランクリッドのエンブレムは同じ部品だが、コンバーチブルのトランクリッドだけは天地が短いためにエンブレムも専用の小型のものとなっている。ホイール中心部のエンブレムも同様に劣化してくるが、これはホイールを外して裏から押し出すだけで外れる。
 ボンネットとトランクリッドのエンブレム交換は、まず先端にテープを巻いて保護したマイナスドライバーの先をエンブレムとボディパネルの間にすべり込ませ、そっとこじって古いエンブレムを外す。塗装面を傷つけないために、ドライバーが当たるところにはあらかじめテープを貼るか、ドライバーの下にプラスチックの板などで枕をしておこう。新しいエンブレムの裏面にある固定ピン2本にゴムのグロメットをかぶせ、元の位置に押しこむ。もしがたつきがあれば、ピンの回りにテープを巻いて太くしてみよう。
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ボンネット・トランクリッド
 ボンネットとトランクリッドはそう錆びるものではないが、例外もなくはない。もし取りはずす羽目になったとしても、作業自体は非常に簡単である。

ボンネット
 当然ながら、まずボンネットを開ける。次に、ウインドウウォッシャーノズルを外して配管を抜きとる。そして両側のガススプリングを外すが、この際ボンネットは丈夫な木材などを支え棒にするか助手に保持してもらうなどしてしっかり支えておく。最後に、両側のヒンジに各2本ある固定ボルトを抜いてボンネットを取り外す(ここでも、助手の支えはまことに有難い)。取り付けは取り外しの逆の手順だが、ここでも固定ボルトは仮止めの状態で位置を合わせよう。

トランクリッド
 まず、トランクを開けてリッド裏面の内張りと車載工具入れを取り外す。内部にある配線の接続を外し、両側のガススプリングならびに各2本あるヒンジ部の固定ボルトを外す。この際、助手に保持してもらうなど何らかの方法でトランクリッドを支えておくことを忘れないでおこう。ボルトが抜けたらトランクリッドを取り外す。ボンネットと同様、取り付けは取り外しの逆の手順に加えて位置合わせとなる。
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ドア
 ドアにひどい錆や損傷がある場合、きれいなドアに交換してしまうに越したことはない。小さな凹みはハンマーと突き棒で叩いたりスライドハンマーで引っぱったりして直すことも可能だが、少しでも錆が見られるなら解体屋できれいなドアを探して換えるのがよかろう。

 作業に当たっては、まずバッテリーのマイナス端子を外し(特にサイドエアバッグ装着車)、ドア前端部にある配線ハーネスのボルトを外してコネクターを外す。次にドアストッパーの軸となるピンを外す。ドアをジャッキや木片などでしっかり下から支えておき、ヒンジのボルトを外せばドアは外れる。1人で運ぶにはちょっと重いので、助手がいた方がいいだろう。

 新しいドアの取り付け手順は取り外しの逆となる。位置がぴったり決まらない場合はヒンジの背面にシムプレート(0.5mm・1mm厚がある)を挟むことで調整が可能だが、必要となることはあまりないだろう。
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ドアミラー
 標準のドアミラーは必ずしも総取替えする必要はなく、一部分の交換も可能だ。例えば鏡面部だけが壊れた場合は、カバーをそのままに鏡面だけ取り替えられる。

 鏡面部は先端にテープを巻いたマイナスドライバーを鏡の裏に滑りこませてこじれば外れる。熱線付きの場合は裏面の端子も外す。カバーが壊れて取り替えたい場合は、鏡面部を外した後で内部のねじを抜けばよい。ドアミラー全体を取り替える場合は、ドアの内側からミラーの向かいにある三角形のカバーをこじって外し、配線を抜いて3本の固定ボルトを外す。いずれも取り付けは逆の手順である。
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無塗装バンパー・グレー色サイドスカートのお色直し
 初期型E36のデザインで最も不評だったのが無愛想なグレーのバンパーとサイドスカートだが、バンパーがあえて無塗装とされたのは2つの理由があった。歴代3シリーズ中最もリサイクル性を重視したクルマであることを外観の特徴で示すためと、カラードバンパー装着車をより上級に位置づけて高い値付けを正当化するためだ。

 無塗装バンパーが劣化してきても、多くの場合塗装は可能だ。ボディと同色にするのが普通だが、新車の頃の見た目にこだわって元のプラスチック地の色に塗る人もいる。塗装は自宅でもできるといえばできるが、信頼ある塗装工場で塗ってもらうことを強くお勧めする。仕上がりの質も耐久性も、家で缶スプレー塗りするのとは大違いになるはずだ。ご自身で挑戦されるなら、まずクルマから取り外して300番のサンドペーパーで表面を削り、表面の汚れを取り除いて脱脂し、プライマー・本塗装・クリアコートの順に塗ろう。

 サイドスカートの方は、ボディ色の上に石はね対策としてグレーが塗られていた。この上塗りを剥がして下のボディ色を出すこともでき、良質の脱脂剤と研磨パッドで剥がす人も実際いるが、これには下のボディ色面を傷つけないよう十分注意する必要がある。
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バンパー
 複合素材のバンパーカバーはボルトとねじ数本で留まっているだけなので、取り外しはすこぶる簡単だ。

フロント
 まずバンパーを取りまく黒いプラスチックモールを外そう。けん引フックを覆う部分の裏側にマイナスドライバーの先を突っこみこじって外せば、残りは手で引っ張るだけで簡単に外れる。モールの下には片側2本ずつ合計4本のボルトが隠れているので、これらを外す。

 バンパーの下に潜って、バンパーとホイールハウスのライナーにねじ留めされているアンダーカバーを外す。次はホイールハウス内側前面のボルトだが、これにはまずステアリングを左右いずれかいっぱいまで切り、切った方向と反対側のホイールハウス内側に見える2本のボルトを外す。今度はステアリングを逆方向いっぱいまで切り、反対側のボルトを同様に外す。

 あとはフォグライトと外気温センサー(装備車)の配線を外せば、バンパーを取り外せる。もし外れてこなくても、力任せに引っ張ってはいけない。一旦手を止め、まだ外れていないボルトを落ちついて探そう。

リア
 クルマの後に潜り、まずはリアバンパーパネルの下側部分を留めているボルトを探す。これらが外れたら、パネル下側は単独で取り外せる。次にその裏側に現れた大ぶりなトルクスボルト2本を外す。フロントバンパーと同じく、ホイールハウス側から固定するボルトも左右2本ずつ外す。これでバンパーは外れてくる。フロント側と同様、決して力任せに引っ張らないこと。外れてこないところを特定し、外し忘れたボルトがないか確かめよう。
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サンルーフ
 そんなに頻繁ではないが、サンルーフのパネルが錆びることもある。この場合の選択肢は2つ、車載のまま錆を直すか取り外すかだ。錆が比較的小さければ、パネルはそのままで腐食部分を削ってプライマーを塗った上に本塗装を行えばよいだろう。

 もし錆がある程度深刻なら、サンルーフユニットごと交換してしまった方がよい。それにはまず天井内張りを外し、ユニット周囲の固定ボルトを外す。この時、シートを傷つけないようあらかじめカバーをかけておくか外しておいた方がよい。大がかりではあるが、もっとも単純な方法ともいえる。
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後部ボディパネル
 ボディの後部では、リアフェンダー下部・トランク開口部の縁・トランクリッドとバンパーの間のパネルあたりが錆びることがある。これらは錆びた部分を切断して新しいパネルを溶接するしか手はない。
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前後ホイールアーチ
 ホイールアーチはE36でいちばん錆に弱い部類に入る。前のホイールアーチが錆びたら前述のようにフェンダーを丸ごと交換してしまえばよいが、後のホイールアーチはボディ構造と一体なので錆びてしまっても外して交換というわけにはいかない。よくあるDIY補修としてはまず腐食部を削りとり、錆穴にパテをたっぷり押しこんで埋め、プライマーを塗って本塗装という手順だが、これは一番悪い錆の直し方だ。そのうち錆は再発し、押しこんだパテは崩れ落ち、塗装面も泡のように浮いてきて事態はより悪くなるだろう。
 では正しい方法はというと、まず広がり具合をみるためにパネルを錆の周辺まで含めて削る。もし穴が開くほどでなければ、プライマーを塗って塗装すればよい。もし錆び穴があった場合も、小さいものならMIG溶接でふさいでしまうことも可能だ。それが無理な大きさなら、錆びた部分を切りとって継ぎ板を溶接するしかない。広範囲または曲面にかかっている場合は、ホイールアーチを丸ごと切断して補修用部品に交換した方がよいだろう。やり直しはきかないので、切断の位置決めはくれぐれも慎重に。
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サイドシル
 サイドシルはフロントフェンダー直後あたりが錆びてくることがあるが、これもまた厄介だ。比較的小範囲なら切断し継ぎ板を当てることもできるが、シャシ強度を損ないかねないほど広範囲にわたる場合はもはや手を出す意味はない。
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車室・トランク床面
 ボディ床面は下から凍結防止剤のような腐食源にさらされ、また上から漏れて侵入した水が溜まることで錆びることがある。このような床面の錆については、錆びた部分を切りとって新しい継ぎ板を溶接するほかにない。
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ゴム・プラスチック製外装部品
 E36の外装にやたらと多く見られるゴム・プラスチック部品も、これまたオーナーの悩みの種だ。こういうささいな部品も、年月が経つと干からびてもろくなる。よく割れてくるリアウインドウ周りのゴムモールは、単に引っ張れば取れる。外れにくいところはヒートガンやヘアドライヤーで温めて柔らかくしてから再挑戦しよう。外れた後の溝をきれいに掃除してから新品を元通りの形に押しこむ。
 ボディ外周を取りまくプラスチックモールも長年の間に色あせてくるが、これらもボディにプラスチックのクリップで留まっているだけなので交換はさほど難しくない。フロントガラスの下にあるプラスチックのカバーもよく色あせやひび割れを起こすが、有難いことにこれも数カ所がボルトで留まっているだけなので交換に問題となることはない。ドアハンドルを取りまくゴムのガスケットもみすぼらしくひび割れてくるが、ドアハンドルのボルトにたどり着くには内張りとドアウインドウを外す必要があり、特に後者はひどく苛立たしい作業となる(訳注: ドア後端上部のサービスホールから細い棒を突っこんでロックを解除するとドアハンドル周囲のプラスチック板を外せるので、ゴムのガスケットも外れるはずです)
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カウル排水口の増設(1994年7月以前生産分)
 第3章で述べたように、1994年7月以前の生産車ではフロントガラス下のカウルに高圧の水流をかけると溢れた水が車内へ侵入するという由々しき問題がある。それ以後のモデルでは排水口が3カ所に増えているが、それでも車内へ水が漏れる事例はあるので、年式にかかわらず特に高圧洗浄を行うならばカウルの外気取り入れ口周辺に落ち葉や汚れを溜めないよう注意を払う必要がある。ここでは、1994年7月以前の生産車に3つめの排水口を増設する方法について見ていこう。
 空気取り入れ口にたどり着くには、まずフロントガラス下のパネルを外す。そして取り入れ口前部のパネルも外さねばならないが、そのためには前を横切るワイヤーハーネスの固定を外してエンジン左側によける必要がある。エンジンカバーとバルブカバーを外し、内部に異物が入らないようにエンジンには覆いをかけておく。

 バルクヘッドに付いている排水ホースのうち進行方向右側のものは引き抜いて捨てる。次に遮音材をめくると、今引き抜いたホースの場所の進行方向やや右上に3番目の排水口の場所となる円形の型押しが見つかる。この円の中心にパンチで穴を開け、ドリルで10mm(0.375インチ)径の下穴を開ける。BMWでは穴開けの際に金属片の出にくい円形パンチを使うよう勧めている。

 次に下穴をパンチで22.2mm(0.875インチ)→28.2mm(1.11インチ)と広げていく。穴の直径が28.2-30mm(1.11-1.12インチ)になったら、穴の縁のバリを削ってならし、掃除機で金属片を取り除く。切断面の防錆に亜鉛塗料を塗る。遮音材を戻し、穴と重なる部分を切りとる。

 新しく開けた穴と古い排水ホースを抜いた穴に、改良型の排水ホース(BMW部品番号51738144152)を差しこむ。石けん水を付けて滑りやすくし、穴の後側から差しこむと入りやすい。ホースが穴に収まったら、先端をクルマの中心方向へ約30°傾ける。バルブカバーとエンジンカバーを戻し、外気取入口前部とフロントガラス下のパネルを戻す。
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ヘッドライト・テールライト
 欧州仕様車のヘッドライトは耐久性の高いガラス製だが北米仕様はプラスチック製となっており、これは次第にくすんできて見た目もさることながら暗闇で十分に光が届かない不都合を生じる。電動ドリルバフに付けて磨けばくすみが落ちるヘッドライトの専用の研磨剤も売られており、安価で効果抜群だ。

 磨いただけではどうにもならないほどくすみがひどい場合はヘッドライトユニット交換だが、その方法についてはテールライトやフォグライトと合わせて第11章で説明する。
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要約
 E36のボディパネルは防錆対策がなされているが、苛酷な環境に置かれると錆を生じることに変わりはない。錆があまりに広範囲な場合はまず修復に見あわないが、多少の傷や錆は十分に修復可能だ。
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Posted at 2022/05/14 21:42:31 | コメント(0) | トラックバック(0) | E36レストア本和訳 | クルマ
2022年05月11日 イイね!

(E36レストア本和訳) 第3章:E36を長持ちさせよう

(E36レストア本和訳)  第3章:E36を長持ちさせようE36レストア手引き書(原題:「BMW 3 Series E36 Restoration Tips & Techniques」・Greg Hudock著・2012年Brooklands Books刊)の非公式和訳です。

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第3章 E36を長持ちさせよう

 どんなクルマも機械である以上、所期の性能を保つにはきちんと整備するべきポイントとなる箇所がある。本章では、BMWがE36というクルマに込めた本来の走り・信頼性・丈夫さを長持ちさせるための基本中の基本について説明しよう。




(項目一覧)
1. ボディ
2. エンジンオイル・オイルフィルター交換
3. スパークプラグ交換
4. 冷却系
5. トランスミッション・ディファレンシャルのオイル交換
6. タイヤ・ブレーキ
7. サスペンション・ステアリング
8. フィルター類(燃料・エンジン吸気・室内気)
9. 要約



ボディ
 現状で錆がないのであれば、それを保つのは当然といえば当然だ。とはいってもそう難しいことではなく、保管場所は乾燥したところを選び、折に触れ洗車しワックスをかけ、錆に弱いところには効果の確かな錆防止剤を塗っておくなど、昔からの一般的な方法で十分だ。既にボディに錆や損傷があるという場合は、第4章をご覧いただきたい。

 洗車は高圧洗浄を避け、バケツとスポンジと品質の確かなカーシャンプーを使った手洗いをお勧めする。E36はフロントガラス下にあるカウルの排水に問題があり、ここに高圧の水流をかけると外気取入口からあふれて車内へ浸水してしまう恐れがあるからだ。そうなると前席の足元が濡れるくらいならまだしも、最悪だとDME(エンジンECU)が壊れることもある。これに対しては、BMWから1994年7月以前の生産車を対象に排水管を増設するよう整備指示が出されている(第4章を参照)。
 この問題はそれら初期のモデルだけと思われがちだが、1998年式のクルマですらDMEが浸水でやられてしまった例を1つならず知っている。排水管の詰まりがよほどひどいクルマでなければ雨水が侵入する可能性は低く、たいていは高圧洗浄が原因なので、年式にかかわらずカウル周辺に落ち葉や汚れなどを溜めないよう、また高圧の水がかからないよう心がけたい。

 塗装面そのものを侵す汚れは、ざっと洗車した後に専用の粘土で取り除くとよいだろう。ワックスは、カルナバロウか化学合成の製品が最適だ。私は素早く作業できるスプレーワックスを愛用している。液体・固形いずれのワックスを使うにしろ、安価で簡単に手に入り仕上がりも良くなる電動バフは強い味方になってくれる。

 E36自体はさほど錆びやすいクルマではない。ただ、ホイールアーチ周辺・フロントフェンダーやドアの下部・トランクリッドとバンパーの間のパネルなど比較的弱いところには、「ワックスオイル」のような錆防止剤をスプレーしておくのがよいだろう。
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エンジンオイル・オイルフィルター交換
 エンジンの長持ちにはオイル交換が欠かせないのは言うまでもないが、ありがたいことにE36はこの作業がきわめて簡単だ。使用可能な走行距離は化学合成油なら6,000マイル(約10,000km)、鉱物油なら3,000マイル(約5,000km)くらいだ。いずれの場合でもオイルフィルターは6,000マイル(約10,000km)で交換しよう。化学合成油は性能に優れるが、その分高価でもある。
 鉱物油が標準の318iをおとなしく乗るような場合はあえて化学合成油をおごる必要はないが、M3など化学合成油が標準のモデルまたはサーキット走行をするような場合は必ず化学合成油を使うべきだ。

 オイルの粘度はモデルと使用環境、そして積算距離を考慮して選ぼう。E36では、10℃/50℉を下回ることがある寒冷環境下では5W-30、それ以上の温暖な環境では15W-40が推奨されている。銘柄は多くのレーサーが愛用するモービル1か、工場充填オイルのカストロールあたりがお勧めだ。

 オイル交換を行うにはエンジンの下に潜りこむ必要があるので、前部を持ちあげるジャッキおよびリジッドラックあるいはカースロープ、そして輪止めを準備する。カースロープは傾斜の緩いものでないとバンパー下端がぶつかる可能性があるので、注意が必要だ。

 他に必要なものを列挙する。

・17/19mmのメガネまたはソケットレンチ(オイルパンのドレーンプラグ用)
・13mm(後期モデルは36mm)のメガネまたはソケットレンチ(オイルフィルターハウジングキャップ用)
・廃油受け容器(7.5-8.5L程度)
・新品のオイルフィルター、ハウジングキャップ用Oリング
・新品のドレーンプラグワッシャー
・新しいエンジンオイル(5-6.5L)
・オイル注入用じょうご
・作業用手袋(熱い廃油から手を守る)
・古毛布・新聞紙など(床面保護・掃除用)

 オイルは温まると粘度が下がり抜けやすくなるので、あらかじめ20-30kmほど走るとよい。エンジンが十分温まったら地面が水平で固いところにクルマを停め、ボンネットを開け、バルブカバー上のフィラーキャップを外す。次に、リジッドラックやカースロープに車両前部を乗せて固定する。クルマが不安定でないことを確認したら、エンジンの下へ潜り込んでドレーンプラグを確認し、下に廃油受けを準備してプラグを外し古いオイルを排出する(熱いオイルが体にかからないよう注意)。オイルが抜けきるのを待つ間に外したプラグを掃除し、ワッシャーを新品に交換する。オイルが十分に抜けたらプラグを排出口にねじこみ、最後に25Nm(17mmプラグ)または60Nm(19mmプラグ)のトルクで締め込む。

 オイルフィルターも交換するならこの段階で行うのがよいだろう。フィルターはエンジン型式にかかわらず前部のハウジングに収まっている。頂部にある13mm(後期モデルでは36mm)ボルトをゆるめてキャップを外し、フィルターを取り出す。キャップ内側の溝にはまっている古いOリングを取り外し、新しいオイルをなじませた新品を代わりに取り付ける。フィルターも元のところに新品を挿入し、キャップを戻したら25Nmのトルクで締めつけて完了だ。

 さて、残るは新しいオイルだ。注入口にじょうごを差し込み、オイルを注ごう。規定量は4気筒モデルが5.0L、6気筒モデルの多くは6.5Lだ。注ぎ終わったらフィラーキャップを閉め、エンジンを始動する。エンジンが回った状態で下回りを覗いて、オイルが漏れてこないことを確かめよう。2~3分動かしたらエンジンを止め、ディップスティックを抜いて油量を確認する。適正範囲を下回っていたら少し注ぎ足し、再度確認しよう。
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スパークプラグ交換
 E36はスパークプラグの交換作業もとても簡単だ。ほとんどのモデルでは純正装着のプラグはNGKのBKR6EKかボッシュのF7LDCRだ。例外としては、323iと328iがボッシュF8LDCR、北米仕様M3のS52型エンジンがボッシュのFGR8KQC、欧州仕様M3がNGKのPKR7Aとなっている。これらは将来廃番となるかもしれないが、その際は他社製品ではなくこの両メーカーの互換品をお勧めする。白金プラグは特に問題なく使われていることも多いのだが、点火不良や性能低下を招く恐れもあるので私は基本的にE36には使わないようにしている。100,000マイル(約160,000km)交換不要を謳う製品もあるが、所期の性能を保つには60,000から70,000マイル(約100,000km)ごとに交換するのがよいだろう。

4気筒モデル
 エンジンが熱いまま作業するとアルミ製シリンダーヘッドのねじ山を傷める恐れがあるので、あらかじめ手で触れるほどの温度まで冷めていることを確かめてから作業を始めよう。まず、バッテリーのマイナス端子を外す。次にエンジンのバルブカバーの中央を縦に走るプラグカバーを外す。留め具2つをマイナスドライバーで回して緩め、カバーを持ちあげて外せばプラグコードが見えてくる。

 カバーの裏側後部に、プラグコード取り外しに使う青色の器具が収まっているはずだ。これをまずコードのブーツ部分にはめこみ、頭部に開いた穴にドライバーか車載工具のプラグソケットハンドルピン(金属棒)を差し込み、これを把手として引っぱり上げればブーツが外れる。プラグを外したときに燃焼室に異物が落下しないよう、この段階でプラグホールに圧縮空気を吹き込んで清掃しておくのが無難だろう(オイルの付着がみられたら、バルブカバーガスケット交換を考えよう)。プラグ周囲に異物がないことを確認したら、トランクリッド裏の車載工具入れにあるはずのプラグソケットにハンドルピンを取り付け、プラグを緩めて外す。

 E36用スパークプラグの多くは接地電極が2つ以上ある。ギャップは調整済みなので、ねじ山の固着防止にカッパーグリスを少量付けてからねじ込み、最後に25Nmのトルクで締め込むだけでよい。プラグコードを元通り取り付け、コード取り外し器を元の位置に収め、プラグカバーを戻してバッテリーを接続し直せば完了だ。

6気筒モデル
 まずエンジンが手で触れるほどに冷えていることを確認し、バッテリーのマイナス端子を外す。次はエンジン上部のカバーだが、これはまずキャップ(オイル注入口の左に2箇所・右に1箇所)をこじって外すと現れる固定ねじを緩めて外す。

 エンジンカバーを外すと、ヘッドカバーの中央に6個のイグニッションコイルが見える。プラグはその下にあるので、まずは金属クリップをマイナスドライバーでそっとこじって配線コネクターをコイルから外し、その後に固定ねじを緩めてコイルを抜く。ちなみに私はコイルを再び取り付けるときはそれぞれ元のシリンダーに戻すが、特にそういう決まりはない。もしエンジンに失火の症状が出ているなら、この時点でコイルも新品に取り替えておこう。初期のM50型エンジンでは特にコイルの故障が多い。

 コイルが外れたら、ようやくプラグとご対面だ。コイルの列の下には2本のアース線があるが、これは最後に配線とコイルを元の順序通りにつなぐときの基準となるので、ちゃんと確認しておこう。燃焼室に異物が落ちこまないように、プラグホールを圧縮空気で清掃する。もしオイルで汚れている場合は、バルブカバーガスケットを新品に交換しよう。あとは4気筒の項と同じく、車載工具のプラグソケットとハンドルピンでプラグを緩めて抜き、新しいプラグのねじ山に固着防止のカッパーグリスを付けて25Nmのトルクで締め込む。再度コイルを取り付けて配線を接続し、エンジンカバーを戻してバッテリーの配線をつなぎ直せば完了だ。
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冷却系
 エンジンの冷却水は、BMW純正冷却水の原液を蒸留水で2倍希釈したものを2年ごとに入れ替えるのがよいだろう。ゴム製ホースの耐久性は標準的だが、数千マイル(約5,000-10,000km)ごとにひび割れや水漏れがないか確かめておこう。そのような症状が出たら、シリコン製の製品に交換するのが良いだろう。

 OBD1または初期のOBD2仕様車(訳注:1996年頃より前のモデル)に標準のウォーターポンプは、プラスチック製インペラーがだいたい30,000-75,000マイル(約50,000-120,000km)で壊れてしまう。おそらく現在までに一度は交換されていると思われるが、もしそれがまたもやプラスチックインペラーのポンプだったら問題だ。1996年式以前のモデルでアルミインペラーのポンプに交換された記録が見あたらない場合は、一度ポンプを外して確認する意味はあるだろう。こんな面倒を申し上げるのはまことに心苦しいが、オーバーヒートでポンプどころかエンジンまで壊してしまうよりははるかにマシだ。エンジンを長持ちさせるためには、ポンプはぜひともアルミ製インペラーのものにしたい。ちなみにプラスチック製の補機ベルトプーリーも割れることがあるので、ウォーターポンプと一緒に金属製のものに換えておくとよいだろう。
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トランスミッション・ディファレンシャルのオイル交換
 これに関しては多少ややこしい。どんなクルマであれトランスミッションやディファレンシャルのオイルの指定交換時期をメーカーが明記するのが普通だと思われるが、BMWはE36においてはその必要性が低いとして特に定めていないのだ。1995年9月以降のAT車のフルードは「交換不要」とされており、M3を含む一部のMTモデルのオイルも同様の扱いとなっている。

 しかし、いくら純正フルードの寿命が車両よりも長いとして整備の手間が減らせますよとBMWが謳ったところで、ATの変速に時間がかかったりぎこちなくなったりすれば結局は交換することになるのだ。BMWの言い分を真に受けて「丸ごとトランスミッション交換なのか」と恐れる一方で「フルード交換で安く簡単に直るのでは」という考えが頭をよぎる人も多いと思うが、だいたいは後者が正解だ。もっとも、フルード交換で症状が改善しなければアセンブリー交換にならざるを得ないので、お金も手間もかけずにATを長持ちさせるならフルードは変速動作に違和感が出るか30,000-40,000マイル(約50,000-60,000km)走るごとに交換することだ。
 MT車のクラッチフルードは、クラッチの感触が悪くなってきたら交換が必要だ。トランスミッションフルードの交換については第7章をご参照いただきたい。
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タイヤ・ブレーキ
 タイヤはだいたい5,000マイル(約8,000km)ごとにローテーションを行うのが習わしのようになっているが、BMWは前後のタイヤの減り方が大きく異なるという理由でE36ではローテーションをしないよう勧めている。ローテーションでタイヤの寿命こそ延びても、減り方が路面に合わなくなって全体的には性能が落ちてしまうということだ。それを承知の上でどうしてもローテーションしたいという方は、左右それぞれの前後を入れ替えるに止めておくのが良いだろう。

 ブレーキフルードは使っているうちに水分を吸って劣化してくるので、2年ごとの交換を勧める。ブレーキ系統全体については第6章で説明する。
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サスペンション・ステアリング
 パワーステアリングフルードにはATF(デキシロンIII)が使われており、約30,000マイル(約50,000km)ごとに交換が必要だ。E36では前後のダンパーおよびサスペンションのブッシュやボールジョイントも劣化しやすい。サスペンション・ステアリング機構については第5章で説明する。
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フィルター類(燃料・エンジン吸気・室内気)
 エンジンが取りこむ空気ならびに燃料から異物を取り除くフィルターがちゃんと機能しないと、エンジンの調子を保つことはおぼつかない。エアコンフィルターも車内の空気を清浄に保つのに重要だ。燃料・エンジン吸気の各フィルターについては第10章で、エアコンフィルターについては第9章で説明する。
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要約
 E36を長く健康体に保つには、オイル・フルード類を適切な間隔で交換し、メーカー指定の整備時期をしっかり守ること。ボディは汚れを放置せず、ワックスをかけて錆防止剤で処置しておこう。
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Posted at 2022/05/11 17:26:07 | コメント(0) | トラックバック(0) | E36レストア本和訳 | クルマ
2022年05月06日 イイね!

(E36レストア本和訳) 第2章:間違いのない中古E36選び

(E36レストア本和訳)  第2章:間違いのない中古E36選びE36レストア手引き書(原題:「BMW 3 Series E36 Restoration Tips & Techniques」・Greg Hudock著・2012年Brooklands Books刊)の非公式和訳です。

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第2章 間違いのない中古E36選び

 E36は中古車選びからして大きな楽しみだが、ハズレをつかんでしまうとせっかくの楽しみもそこでついえてしまう。本章では売り物をどこで見つけるか、そして試乗時に注意するべきはどこかなど、間違いのない1台を選び抜くためのポイントについて説明しよう。




(項目一覧)
1. 良い個体選びの第一歩
2. どこで探すか
3. 購入前のチェックポイント - ボディ
4. 購入前のチェックポイント - エンジン
5. 購入前のチェックポイント - トランスミッション
6. 購入前のチェックポイント - 駆動系
7. 購入前のチェックポイント - サスペンション・ステアリング
8. 購入前のチェックポイント - 電装品
9. 購入前のチェックポイント - M3を買うなら
10. VINコードの読み方
11. E36の弱点一覧・要約




良い個体選びの第一歩
 まずはモデル選びだが、選択肢は第1章で述べたとおり幅広い。318のセダンを日常の足とするにせよ、328コンバーチブルでオープンエアを満喫するにせよ、はたまたM3でレースに打って出るにせよ、それぞれに選びがいがある。膨大な数が造られタマ数の多いE36の場合、基本的には厳しい目で選んでいいだろう。めでたくお目当てのモデルの売り物が見つかったとして、実車を見に行かれるときには必ず肝に銘じていただきたいことがある。

 何よりもまず、整備記録の有無を確認することだ。きちんと揃っているのはしっかりメンテナンスを受けてきた証というだけでなく、今後必要となる整備の内容と時期を予測する助けにもなる。車両は目・鼻・耳・手を総動員し、隅から隅までしっかり確かめよう。クルマを買うというだけで舞い上がって感激と勢いで突っ走ったり、あるいは売主の押しに屈したりすることなく、何があろうと一歩引いて客観的な目で見るようにしたい。

 整備記録がない場合は要注意だ。不具合を起こしやすいポイントは本章でよくおわかり頂けることと思うが、確実にくまなくチェックするならBMWのディーラーあるいは信頼ある専門店に点検してもらうに越したことはない。第三者による点検にお金を出すくらいなら自分で確認したほうが節約になるじゃないかと思われるかもしれないが、ボンネットの中や下回りなど素人目につかないところに病魔が潜んでいる可能性を考えれば、保険としては決して高くないのではないだろうか。
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どこで探すか

分類広告・オークション
 インターネットから当たってみるのが順当なところだろう。クルマの売買に特化した「Auto Trader」や無数のクルマの中から選べる分類広告サイト「Gumtree」「Craigslist」など、優れたウェブサイトも数多い。もっと的をしぼって探すなら、「BMW Car Club」のようなマニア向けサイトの分類広告も当たってみたい。在庫数は一般の中古車検索サイトや分類広告サイトが優るが、数は少なくともマニア向けサイトの方が愛好家に手厚く扱われた程度の良い個体を見つけやすいはずだ。

 ネットオークションという手もある。例えばebayはE36の部品ならまず何でも見つかるサイトだが、クルマそのものも多く出品されている。ただ、利用にあたっては商品説明を鵜呑みにせずに個体を自分の目で確かめることをお勧めする。住まいからあまりに遠い場合は、目当ての個体に近いBMWディーラーか専門店にお願いして購入前のチェックを代行してもらうのも一法だ。どんな場合でも専門家による購入前診断はお勧めだが、特に遠方の売主から買う場合は必須といってもいい。事前に問題点を洗い出すことで、後々の悩みの種は大きく減るのだから。

BMW専門誌・中古車情報誌・新聞
 今や自動車売買の中心はインターネットだが、それでも専門誌の巻末や中古車情報誌、そして新聞の分類広告欄はいまだ価値ある情報源だ。専門誌の広告欄へ売りに出るのはたいてい希少モデルなので、M3の特別版や数少ないチューナーモデルが目当てなら見ておく価値は大きい。中古車情報誌に載るクルマはだいたいネットと似た顔ぶれだが、これも見ておいて損はないだろう。もはや分類広告の雄ではなくなった新聞も、ときに思いがけない掘り出し物が出たりするので見逃せない。

オーナーミーティング・オートオークション・サーキットイベント
 ネットや紙媒体でめぼしいクルマが見つからなくても、BMWのオーナーミーティングやライブのオートオークション、それにBMWのサーキットイベントに出かける手がある。ネットほど効率的ではないが、いずれもさまざまな種類のクルマが一堂に会する場である。

 オーナーミーティングにやって来るのは、だいたいが手塩にかけられたクルマだろう。気になる1台が見つかったら、まず売る気があるか尋ねてみよう。オーナーにあいにくその気がなくても、もしお心変わりされたらよろしくと連絡先を伝えておけばよい。幸運にも売る気ありとなれば、あとは交渉次第だ。オートオークションには、大きく分けて卸売りオークションとコレクションカーオークションの2種類がある。前者は参加許可が要る場合もままあるが、とにもかくにもまずは近所で開催されるオークションをネットで探すところから始めよう。ただしE36のように年数の経ったクルマは、今後流通は減っていくだろう。同じように古くなったモデルでも、コレクションカーオークションはM3やチューナーモデルのような希少車を見つけるにはいいだろう。もしM3 GTが欲しくてたまらないなら、その手のモデル専門のオークションの動向にはしっかり目を光らせておこう。
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購入前のチェックポイント

ボディ

 E36型3シリーズはそれこそ何百台と見てきたが、生産時にボディ鋼板の66%にわたって電気亜鉛めっきを施されていることもあって錆が深刻な問題となることは皆無と言っていい。それでも例外がないわけではないのだが、手の施しようがないほど錆びた例は凍結防止剤に晒されたままじめついた車庫にこもりきりでろくに手入れも受けなかったようなものが多かった。

 このクルマが当時の新技術だった水性塗料の実験台だったことは疑いのないところだろう。当初は品質に問題があったとみえ、1994年以前の生産車は錆に弱い傾向がある。主な弱点はホイールアーチの内部や周囲、フロントフェンダーの後下端、そしてトランクリッドとバンパー間のパネルあたりだが、トランクの床面もカーペットをめくってチェックするべきだ。とにかく、腐食に関しては徹底的に調べよう。ボディの修復に踏みだすかどうか逡巡するのは、どんなクルマであっても頭の痛いものだ。ドアミラー・バンパー・フェンダーのようなボルト留めの部品なら交換の抵抗感もさほどではないが、大がかりな切断溶接が必要なくらいに錆や損傷がひどいとたいていの場合は直す決断にかなりの思い切りが必要となる。

 こういう言い方もできる。目の前にあるボロボロのE36が例えばM3 GTのような数少ないモデルだったなら、その揺るぎない希少価値を鑑みて直す意味はあるかもしれない。しかしそれが316iあたりだったら、時間とお金をつぎ込んで再生するよりも錆も凹みもない小ぎれいな個体を探す方が賢明ではないだろうか。自分のものでもないクルマに解体屋行きの引導を渡すのはまことに心苦しいが、その後のクルマの価値と直す費用が見あわないなら修復に手を出す意味は薄いだろう。やはり、初めから錆も損傷もないクルマを選ぶに越したことはない。
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エンジン
 E36型3シリーズ最大の弱点といえば間違いなく冷却系で、1990-1995年の初期モデルが特に厄介だ。ウォーターポンプ内部のインペラーは1997年前半までアルミでなくプラスチック製が用いられており、これが劣化により破損すると冷却水の流れが止まってしまうのはもちろん、プラスチックの破片が冷却系に散らばってしまう。1997年半ば以降は金属製インペラーに変更されたが、これもベアリングが劣化しやすい。

 E36全モデルに関わる冷却系の弱点としては、サーモスタットとそのハウジング、ラジエーターのホース接続部、冷却ファンクラッチなどもある。サーモスタットが開いたまま固着するとエンジンの過冷却や空調の温風が出ないなどの症状を生じ、逆に閉じっぱなしはオーバーヒートを招く。純正サーモスタットのプラスチック製ハウジングもまた壊れやすいので、交換の機会があれば純正よりもアルミニウム製の社外品に交換するのがよいだろう。4気筒エンジン(特にM42型)はヘッドガスケットの交換が頭痛の種だ。とはいえ、実際に問題となるのはたいていシリンダーヘッドの前方にあるプロファイルガスケットの方である。

 純正ラジエーターはアルミニウム製だが、両端のプラスチック部分が経年でもろくなる。それを嫌というほど実感するのが、ラジエーターホースを交換しようとして接続部をポッキリ折ってしまった瞬間だ。そんな時は総アルミ製の社外ラジエーターが強い味方だし、もちろん予防的に交換しておけばなお良い。

 冷却系以外の不具合は、多くの場合日々の点検を怠ったことが原因だ。ディップスティックに付いたオイルの状態はもちろん、エンジンオイル給油口のフタの裏側に変質してねばついたオイルがこびりついたりしていないか確認しよう。過走行でオーバーホール歴のないエンジンの場合、圧縮抜けがないかの確認も重要だ。E36はヘッドガスケットの不具合もままあるが、その原因は冷却系の故障によるオーバーヒート以外にも低オクタン価ガソリンの長期使用など様々だ。

 E36ではほとんどのエンジンで調整不要の油圧式バルブリフターを採用しているが、これも距離を重ねると異音が出ることがある。固めのエンジンオイルを入れて症状を和らげる手もあるが、最終的には交換を余儀なくされるだろう。バルブカバーガスケットからのオイル漏れは、交換してしまえば問題ない。エンジン前端にある可変バルブ機構(VANOS)も、不調になるとガラガラと音が出る。普通はユニットごと交換だが、時には内部のシールガスケットの交換で解決することもある。あとは、E30型と同じ鋳鉄製の排気マニホールドもひび割れに注意が必要だ。
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トランスミッション
 運転を楽しめる上に比較的壊れにくいマニュアル・トランスミッション(MT)は、私も好みだ。これについては、シフトリンケージを支えるブッシュが経年でへたるとシフト感が曖昧になる。MT本体はタイプにかかわらず堅牢だが、変速時にガリガリ音が出る段が1つでもあるようならアセンブリ交換を考えたい。トランスミッションマウントは経年で軟化するため、シフトがカチッと決まらない感じになってきたら交換するのがよいだろう。

 オートマチック・トランスミッション(AT)は、大多数の北米仕様に付く4段も欧州仕様に付く5段も信頼性はかなり高く、大事に至ることは皆無だ。AT仕様は元々MTよりもなまくらに感じられるものだが、それでも変速のタイミングがおかしいとか変速動作にやたら時間がかかるような場合は、まずフルードを交換してみよう。それでも改善がみられなければ、アセンブリ交換を考慮したい。

 欧州仕様のM3には、数は少ないがSMG(シーケンシャル・マニュアル・ギアボックス)装備車が存在した。E46では高評価を受けたSMGもまだ発展途上の段階だったE36では問題山積で、あまりの信頼性の低さに耐えかねて通常の6段MTに載せかえられた個体が多い。
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駆動系
 いちばんの弱点は、やはりトランスミッションとプロペラシャフトをつなぐゴム製ジョイントディスク(英語圏では通称「guibo」とよばれる)だ。車両中央下あたりから振動や異音がするようなら、交換時期と考えてよいだろう。

 車体後部にあるディファレンシャルは、E36ではよほど酷使や放置でもしない限り大きな問題とはならない。分解整備が必要なほどくたびれた場合、コツコツと異音が出ることがある。後からの引っかくあるいはこすれるような音はデフが原因と思われがちだが、実際はたいていハブベアリングだ。
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サスペンション・ステアリング
 駆動系と同様、これらも使われ方次第で状態は千差万別だ。過走行あるいはサーキット走行の機会が多いのに何の手当ても受けた様子のない個体では、おびただしい病魔の群れが巣くっていてもおかしくはない。逆にもっぱら日常の足だったクルマなら深刻な問題を抱える可能性は低いと考えられるが、いずれにしてもトラブルと無縁とは限らない。

 どのE36でも、サスペンションのブッシュやダンパーの劣化は避けて通れない。思ったほど動きが機敏でない場合はブッシュの劣化が疑われるが、これは50,000マイル(80,000km)ごとに定期交換しても決して短すぎることはないくらいだ。サスペンションのダンパーがオイル漏れを起こすほど劣化すると乗り心地に落ち着きがなくなるし、後ダンパーのマウントは劣化するとコツコツと音を立てるようになる。

 タイロッドの端にあるボールジョイントも問題となるところで、ここが疲労してガタが出ると制動時にステアリングが振動することがある。ブレーキローターの反りと思われやすい症状だが、ローターが正常ならこちらを疑ってかかろう。他にも、ステアリングの不正確さや前方からのコツコツ音、また前輪の片減りという症状が出ることもある。

 特にハードな使われ方をされたクルマではサブフレームの異音や後ダンパー取り付け部のひび割れなど、より深刻な問題が起こりうる。後からはっきりコツコツ音が出るときにまず疑うのは前述の後ダンパーマウント劣化だが、マウント交換でも消えないとなるとサブフレームがひび割れ間近なほど疲労してしまっている疑いがある。不幸にも疑いが的中した場合は、よほどでもなければその個体は諦めた方がよいだろう。ダンパー取り付け部のボディパネルは繰り返しマウントからの力を受け続けることで割れることがある。これはトランクの内張をめくれば目視確認できるが、損傷が見られるようなら他の個体を探しにかかるのが吉だ。

 ステアリング機構については、不具合を起こす箇所はずっと少ない。E36はパワーステアリングフルードが漏れやすいのだが、フルード量が適正なのに操舵感が悪いとなるとステアリングラックかボールジョイントの損耗が考えられる。不具合を起こす一番の原因は、フルード不足とボールジョイント損耗だ。
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電装品
 ボタンやダイアルはとにかく全て操作し、正常に機能するか確かめるのが肝心だ。パワーウインドウやサンルーフもモーターやスイッチが故障の種となるので、チェックは欠かせない。空調システム(HVAC)も不調を起こす場合があるが、風が出ない症状はたいていファイナルステージ(ブロアレジスター)の故障が原因で、幸い交換にさほど費用はかからない。エアコンから冷風が出ない場合は冷媒の補充で済むこともあるが、最悪の場合はコンプレッサー交換となる。
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M3を買うなら
 E36固有の弱点については基準モデルと共通だが、M3の場合は事故車の確率も高いと考えられる。過去に大きな事故に遭った個体であれば、然るべき修復がなされているかの確認は忘れないようにしたい。こういう場合も専門家に購入前診断を受ければ心配の種は減るには違いないが、そもそも大事故に遭ったような個体は敬遠するに越したことはない。

 E36型M3も時の流れで希少価値が出るのではと思うかもしれないが、先代のE30(17,920台)よりもはるかに多く(71,241台)生産されたことを考えれば、皮算用しながらガレージにしまい込んでおくよりは大いに乗って楽しむべきクルマといえるだろう。希少価値が付くとすれば一番手はM3 GTやM3-Rのような特別仕様車、それにアルピナやACシュニッツァーのようなチューナーモデルだろう。
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VINコードの読み方
E36は全車、「WBABG1326VEX12345」のような17文字の車台番号(VINコード)が付いている。

 最初の2文字は生産国を表し、WB・WAならドイツ、4U・5Uならアメリカである。3文字目は用途を表し、E36は乗用車を示すAもしくはSとなる。4~7番目の4文字は車種・世代・ボディ形式・仕様を含んでいる。8文字目は安全装置の種類で0は手動シートベルト、1は手動ベルトと運転席エアバッグ、2・3は手動ベルトと運転席・助手席エアバッグ、4は手動ベルトと運転席・助手席ならびにサイドエアバッグを装備することを示す。9文字目は内部生成コード(訳注:チェックディジット)である。

 10文字目はモデルイヤー、11番目は生産工場を表す。

※訳注: 8・10文字目については北米仕様のみに当てはまるようです。

(10文字目)
L=1990, M=1991, N=1992, P=1993,R=1994, S=1995, T=1996, V=1997, W=1998, X=1999, Y=2000

(11文字目)
A,F,K = ミュンヘン工場(ドイツ)
B,C,D,G = ディンゴルフィング工場(ドイツ)
E,J,P = レーゲンスブルグ工場(ドイツ)
L = グリア工場(アメリカ・サウスカロライナ州)
N = プレトリア工場(南アフリカ)

 12~17番目は車両固有の通し番号である。

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E36の弱点一覧
 ここでは、E36で不具合の起こりやすい箇所についてまとめる。それぞれの詳細については、後の章をご覧いただきたい。


外装
前後の窓ガラス縁のゴム製モールが劣化する
フロントガラス基部のプラスチック製カウルパネルが割れる
外側ドアハンドル周囲のゴムパッキンがひび割れる
ホイールアーチ周辺が錆びる(放置車に多い)
プラスチック製ヘッドライトユニットの表面がくすむ(北米仕様のみ)
ボディ前面に飛び石傷が付きやすい
内装
ドア内張の接着が剥がれてガタつく
シートのサイドサポート部表皮がすり切れる
ファイナルステージ(ブロアレジスター)の故障で空調の風が出なくなる
ラジオ・オートエアコン・オンボードコンピューターの表示が暗くなり、ついには消える
シフトノブがひび割れ、レバー本体から外れる
グローブボックス脱着を重ねるとフタが垂れ下がる
可倒式リアシートの背もたれ上部にあるゴムモールが溶けてねばつく
パワーシート(装備車)のモーターが焼けつくかギアが壊れて動かなくなる
走行機構
ボールジョイントやサスペンションのブッシュが損耗によりタイヤが異常に摩耗する
ラジエーター両端部のプラスチック部品が割れる
サーモスタットが固着する
ウォーターポンプが壊れやすい
4気筒車のヘッドガスケット・プロファイルガスケットが漏れやすい
後ダンパーのマウントが歪む・割れる
O2センサーが故障しやすい


要約
 特に中古車を買うときは、品定めはできるだけ厳しく。値段交渉はクルマの問題点を洗い出してからの話。状態をしっかり把握してから買えば、その後のクルマ生活もはるかに楽しく充実するはずだ。
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Posted at 2022/05/06 17:27:05 | コメント(0) | トラックバック(0) | E36レストア本和訳 | クルマ
2022年05月03日 イイね!

(E36レストア本和訳) 第1章:E36全モデル概説

(E36レストア本和訳)  第1章:E36全モデル概説E36レストア手引き書(原題:「BMW 3 Series E36 Restoration Tips & Techniques」・Greg Hudock著・2012年Brooklands Books刊)の非公式和訳です。

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第1章 E36全モデル概説
――クーペ・セダン・M3・コンパクト・コンバーチブル・
ツーリング・ディーゼル・チューナーモデル


 レースで栄冠を勝ち取るクーペ、経済的なセダン、街にピッタリのコンパクトカー、丈夫なボディのコンバーチブル、そしてディーゼルエンジンを積んだ頼もしいワゴン。これらすべてを同じプラットフォームから作り分けるなどそうそうできるものではないが、BMWはE36で見事にやってのけた。本章では、E36型3シリーズのそれら全種類について解説しよう。




(項目一覧)
1. クーペ・セダン標準モデル(ガソリンエンジン車)
2. 4気筒モデル
3. 6気筒モデル
4. 特別仕様車
5. M3標準モデル
6. 特別仕様M3
7. コンパクト・コンバーチブル・ツーリング・ディーゼル
8. チューナーモデル
9. E36年表




クーペ・セダン標準モデル(ガソリンエンジン車)
 E36標準モデルのクーペとセダンは単にドアの枚数が異なっただけではなく、ほとんどのボディ外板がそれぞれ専用だった。重量はセダンの方がわずかに大きいが、性能に事実上差はない。E36ではコンパクトを除き、リアサスペンションに従来の旧式なトレーリングアーム(訳注:セミトレーリングアーム)式に代わって「Zアクスル」と称するマルチリンク式が採用された。

 欧州仕様の標準モデルにはGM製4段(4気筒車)もしくはZF製5段(6気筒車)のオートマチック・トランスミッション(AT)、そして5段のゲトラグまたはZF製マニュアル・トランスミッション(MT)が設定された。北米仕様にはGM製4段ATとゲトラグ/ZF製5段MTが、アジア・オセアニア仕様にはゲトラグ/ZF製MTとジヤトコ製ATがそれぞれ設定された。
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4気筒モデル
 基準となる4気筒車のエンジンは1991-1993年にM40型が、1994-1998年にM43型がそれぞれ搭載された(北米仕様は1992-1995年がM42型・1996-1998年がM44型)。欧州仕様の廉価モデルでは後ブレーキがドラム式となったが、北米仕様は全車4輪ディスク式であった。パワーでは6気筒に譲るとはいえ4気筒でも十分楽しめることに違いはないし、ターボやスーパーチャージャーでパワーアップを図るにはむしろ好都合である。

316i
 316はE36欧州仕様のもっとも基本となるモデルで、装備レベルにより普通の316iと充実の316i SEに分かれた。お値打ち価格で経済的なのにまごうかたなきBMWということで、市場でも好評を博した。信頼性が高くてコーナリングも楽しめる手頃なお値段のクルマを求める向きには今でもお勧めできるし、むろん初めてのクルマにもうってつけだ。

318i・318is
 318は欧州では316のひとつ上で、北米ではもっとも基本のモデルであった。316のすべてを兼ねそなえつつパワーのおまけが付く点は従来モデルそのままで、「新しい直6までは無理だがBMWは欲しい」という層に大いに受けた。燃費がよくてキビキビ走るE36として、依然として小さな出費で大いに楽しめる1台といえよう。北米以外の115bhp仕様はちょっと眠たいが、140bhp版は相応に楽しめる。

 318をベースにした特別仕様車も多数存在した。FIAクラスIIの公認取得目的で1994・1995年モデルとして生産された318isクラスIIセダン(ドイツ向け1000台・他欧州市場向け1500台)もその1台で、M3 GTに倣うかのように専用サスペンションならびにM社製エアロパーツとM3 GT用リアスポイラーが付いていた。他にも、フルオプションのシンガポール仕様やBMW南アフリカのプレトリアで生産される「リミテッド」「エグゼクティブ」など、各地域独自のモデルも多く発売された。
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6気筒モデル
 4気筒にちょっとおまけした程度の320からM3に近い迫力の328まで、標準6気筒モデルの性能はひじょうに幅広い。

320i
 欧州とカナダでは直列6気筒エンジン搭載車の基本だった320は、6気筒のE36では最量販モデルとなった。甘美な音を奏でる2.0Lエンジンは1991-1994年がM50型、1994-1998年はM52型で、両者とも150bhpを発生した。より上位のモデルほどの愛好は受けないが、価格はともかくとして経済性は4気筒車に近い。

323i・323is
 (訳注:北米では)コンパクトを除くE36の基本モデルだった318の販売終了に先んじて、その代替として1996年に投入されたのが323だ。搭載するM52型エンジンは325のM50型と排気量はまったく同じだが、328との差をつけるためにあえて出力を168bhpにまで抑えられ、モデル名の数字も小さくなった。下位モデルとして軽く見られがちではあるが、今仮に325を探すなら323も候補に入れたい。325の方が上とみる人もいるが、323は本質的に325をより新しく上質にしたものだからである。

325i・325is
 328以前に3シリーズ標準車の最高出力版だったのが325だ。M3の登場までは全E36中の花形的存在で、内容もそれに見あうものだった。エンジンは力強く滑らかに回り189bhpを発生する鋳鉄ブロックのM50型で、スリリングな加速は先代のM3にも匹敵する。M3以外のE36中最強となる328の出現で多少なりとも影が薄くなったとはいえ、いまだに安価に楽しめる1台には変わりがない。

328i・328is
 入れ替わりに退いた325よりもわずかに力強く(189bhp→190bhp)、より強大なトルクと低排出ガスを実現した328は、3シリーズ全体の水準を引き上げたモデルだ。余計な出費に悩まされずにスポーティなE36に乗りたいとなれば、M3の代わりとしてお勧めできる。
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インディビジュアル・Mテクニック・Mスポーツ・クラブスポーツ各モデル
 E36の生産期間中、これらの名前を冠した特別仕様やパッケージオプションも用意された。たいていは上級のホイールや強化サスペンションを装備あるいはエアロパーツや内装の装飾を追加したものである。標準モデルに対しては明らかな高値がつくが、M3ほどの威光はない。
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M3標準モデル
 E36型M3の例えとして引き合いに出される「サヴィル・ロウのスーツをまとったフェラーリ」という言いまわしは私もいたく気に入るところだが、このE36型は先代のE30型とは成り立ちが大きく異なる。競技向けの強化版だったE30はエンジンも4気筒を積んでいたが、E36はサーキットと公道の両方に軸足をおいてGT的要素を強めたのだ。「GT」と聞いて軟弱とあなどるなかれ、実はリアルスポーツカー顔負けのとんでもない速さを誇るのだ!
 欧州仕様3.0LモデルにはZF製5段MTが、後の3.2L版にはゲトラグ製6段MTが設定された。ゲトラグ製6段セミオートマチックトランスミッション(SMG)装備車も少数存在する。北米ではZF製5段のMTならびにATが用意された。

M3・M3エボリューション(欧州仕様)
 欧州仕様M3は、1993年モデルとして登場するやいなや傑作の名をほしいままとした。一見普通のE36にしか見えないが、内にはサーキット走行もこなせる強靱な足回りを秘めていたのだ。ボンネットの下に収まるS50型6気筒エンジンは286bhpを発生し、リミッターが働く155mph(250km/h)までたやすく導いてくれた。1996年には同じS50型ながら321bhpとより強力な3.2Lエンジンを得たM3エボリューションへ交代した。当時も今も、BMWの歴史上類いまれな素晴らしいスポーツカーであることはまちがいない。

M3(北米仕様)
 もともと、北米市場にはE36型M3を導入する予定はなかった。ところが欧州での大好評を受け、BMWは1994年になって北米版のM3を仕立てることを決定した。もっとも、生産コストの関係で北米仕様には欧州仕様とは別のエンジンが載せられることになった。1995年モデルとして登場した3.0LのS50US型エンジンは最高出力240bhpで、気筒別独立スロットルのような欧州仕様にみられる高コストの部品は省かれていた。1996-99年には3.2LのS52型が搭載され、240bhpは据え置きながらトルクはより豊富となった。パワーでは欧州仕様に見劣りするものの、1990年代以降の北米向けスポーツカーの中では依然として際だつ1台である。

M3(カナダ仕様・1994年のみ)
 北米仕様M3の登場前、BMWのカナダ法人は欧州仕様1994年モデルのM3を45台限定で輸入した。これは欧州仕様M3が北米へ正規導入された唯一の例である。
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特別仕様M3
 M3にも数々の特別仕様車が存在したが、その多くは競技公認取得用や記念モデルであった。

M3 GTR(1994年・ドイツ)
 1994年のADAC(ドイツ自動車連盟)ドイツGTカップツーリングカー選手権に出場するための公認取得モデル。エンジンは欧州仕様3.0Lの強化版で300bhpを発生する。公道用としては2台のみ生産された。

M3-R(1994年・オーストラリア)
 同じく競技公認取得用のモデルで、こちらはオーストラリアのスーパープロダクションシリーズ出場を目的とした。3.0Lの欧州仕様がベースだが、出力はBMW製E36型M3中最高となる322bhpまで向上している。E31型850Ciから流用した強化プロペラシャフトやAPレーシング製のクラッチ、自社製グループN仕様スプリング・ダンパーで武装し速度リミッターも解除される一方、ラジオ・集中ドアロック・チェックコントロールは省かれている。外装色はアルピンホワイトIIIのみ、内装もアンスラサイトのスエード調のみとなる。生産台数はわずか15台であった。

M3 GT(1995年・欧州)
 3番目の公認取得用特別仕様車となるM3 GTは、FIAならびにIMSAのGT選手権出場のために造られた。欧州市場限定で400台のみ販売されたが、うち50台は英国向けの右ハンドル仕様(M3 GTインディビジュアル)だった。サスペンションは固められ、ストラットタワーバーや調整式の前後スポイラーが追加された。英国以外ではアルミ製ドアパネルが付くが、英国仕様のうち9台にも特注で装備されている。欧州仕様3.0Lがベースのエンジンは295bhpを発生し、外装色はブリティッシュ・レーシング・グリーン1色のみであった。

M3 CSL(1995年・北米)
 1970年代のCSL本来の精神に則り、E36のCSLでは標準車から90~140kgの軽量化がなされた。その手法にはエアコン・サンルーフ・遮音材・ラジオ・スペアタイヤならびにジャッキといった装備品の撤去はもちろん、ドアパネルのアルミ化やカーペットの軽量化ならびにカーボンファイバー製内装材など軽量材料への置換も含まれる。エンジンは北米仕様M3標準の240bhp版である。生産台数は公式に発表されていないが、およそ120台とみられる。

M3コンパクト(1996年・ドイツ)
 ドイツの自動車雑誌「Auto Motor und Sport」の創刊50周年を祝して1台のみが造られた、特別仕様M3の中でも一番希少なモデルである。エンジンは3.2Lの321bhp版を積んでいた。

M3エボリューション・イモラ・インディビジュアル(1999年・欧州)
 1996年以降の欧州仕様M3には、それまでの3.0L版と区別するために「エボリューション」の名前が追加された。このM3エボリューション・イモラ・インディビジュアル(GT2ともいわれる)は、欧州向けの限定車である。イモラレッドの外装色と特別仕立ての内装、それにM3 GT用のリアスポイラーが装備された。トランスミッションがSMGとなるのも良い話に聞こえるが実際は不具合の種となることが多く、信頼ある6段MTに換装するオーナーも少なからずいた。生産台数は英国向けが50台、その他欧州市場向けが200台であった。

M3アニバーサリーエディション(1999年・オーストラリア)
 BMWモータースポーツ社の創立25周年を記念してオーストラリア限定で発売されたモデルだが、センターコンソールにスターリングシルバー製の銘板が付くほかは標準のM3とまったく同じである。クーペ50台・コンバーチブル70台の計120台が生産された。
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コンパクト(E36/5)
 1994年、標準のE36型3シリーズの後端を23cm切りとって生まれたのがコンパクトだ。リアサスペンションは標準車の「Zアクスル」ではなく、先代E30型から引き継いだトレーリングアーム(訳注:セミトレーリングアーム)式となる。街乗りに適した小柄で経済的なクルマをというねらいで開発されたコンパクトは、北米では予想ほど売れなかったものの欧州では大成功を収めた。今日では、軽量さと他のE36用部品の流用で手軽に高性能化を図れる点でサーキット走行用の種車として注目される。

316iコンパクト
 北米以外の地域で販売された。実用的かつ経済的なのはセダン・クーペ譲りである。ついでにパワーが足りないのも同じだが、軽量なコンパクトではさほど大きな問題ではないだろう。

316gコンパクト
 BMWがいかにしてE36にクラス随一の先進性を与えようとしていたかを最もよく物語る、超希少モデルだ。80L入りの圧縮天然ガス(CNG)タンクを備え、ガソリンと天然ガスを切り替えて走行できた。出力はガソリンで102bhp、CNGで87bhpであった。収集の対象にはなりそうにもないが、生産はわずか544台と珍しさでは最右翼だ。

318tiコンパクト
 4気筒のコンパクトとしてはスポーティな位置づけで、このモデルのみ北米でも販売された。エンジンはM42型またはM44型(1996年以降)で、いずれも138bhpとまずまずの性能だった。特別仕様として、スポーツサスペンションと赤黒コーディネートの内装ならびにM社製エアロパーツを装備した318tiクラブスポーツ・エディションというモデルも存在した。また、大型キャンバストップを備えた「カリフォルニア・エディション」も限定販売された。

318tdsコンパクト
 好燃費と余裕あるトルクをもたらす、コンパクト唯一のディーゼルエンジン搭載モデルである。傑出した所こそないが、特徴的なことは確かだ。

323tiコンパクト
 一種ダークホース的な1台といえよう。北米以外で販売されたこのクルマ、およそ気取ったところがない見た目は他のコンパクトと選ぶところがないのだが、軽量ボディには威勢のいい直6が載っているのだ。ステアリングを握ればもう興奮のるつぼ、しかもスポーツ・リミテッド・エディションならなおのことだ。

コンバーチブル
 E36のコンバーチブルには2種類あった。通常の2ドアモデルと、奇妙奇天烈かつ希少なバウアTC4である。

標準コンバーチブル
 E36では318・320・323・325・328にコンバーチブルモデルが存在し、オープンながら堅牢なボディと優れた性能が売りであった。本質的なところはクーペ・セダン版とまったく共通である。

バウアTC4
 バウア製E36コンバーチブルは、独特というほかない。第二次世界大戦前からBMWのコンバーチブル化を手がけてきた同社だが、ことE36ではセダンの屋根を切りとって幌を付けるという奇策を採ったのだ。1996年まで造られ、当初はドイツのみで販売された。生産はわずかに310台である。


ディーゼル
 3シリーズとディーゼルエンジンの関係は、BMWがより経済的なエンジンを求めて試行錯誤するさなかのE30型の時代に始まった。E36型もその流れを引き継ぎ、セダン・ツーリング・コンパクトの各ボディに設定された。1.7Lの318tdsは出力こそ89bhpと興味を引くものではないが、ディーゼル乗用車の例に漏れずトルクは充実の140lb-ft(19.4kgf-m)を発生した。2.5L版の325tdsともなれば出力は141bhp、トルクも210lb-ft(29.0kgf-m)とはるかに上を行く。インタークーラーなしの325tdというモデルも存在し、こちらの出力は115bhpとなる。収集的価値とはおよそ無縁だが、E36の中でも特異なモデルにはまちがいないところだ。
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各種チューナーモデル
 ちょっと珍しくて特別な1台を望む顧客の受け皿として、チューナーがよりをかけたモデルも存在した。BMWを手がけるチューナーは多いが、中でもドイツで著名なのがACシュニッツァーとアルピナだ。他にも、ディナン・ハルトゲ・レーシングダイナミクスといったチューナーがチューニングあるいはドレスアップパーツ製作を手がけている。

ACシュニッツァー
 同社のE36チューニングカタログの表紙に記された「Made by winners, made for fun.(勝者から、歓びのために)」という標語がすべてを物語る。ACシュニッツァー・アウトモビル・テクニークは1987年にシュニッツァー・モータースポーツ・チームから派生してドイツのアーヘンで創業し、以来成長を続けてきた。E36ベースのモデルについても基本的にはサーキット指向だ。4気筒・6気筒にかかわらずE36の全ボディタイプのチューニングを行ってきたが、特筆すべきモデルとしては260bhpのS3 3.2コンパクト、320bhpのS3 CLS、344bhpのS3 CLS IIが挙げられる。

アルピナ
 1965年、アルピナはブルカルト・ボーフェンジーペンによってドイツ・バイエルン州のカウフボイレンで設立された。今日ではZ8ベースのロードスターや7シリーズベースのB7などのように、BMW本社と直接連携して開発を進める独自の立ち位置にある。E36においても325iに軽く上乗せしたモデルから火傷しそうなV8パワーを誇るB8まで、優れたチューニングモデルをいくつも生みだしている。

 B2.5はMテクニック・サスペンションを装備した325iをベースとし、ECUマップの書き換えならびに自社製吸気管・カムシャフトならびにステンレス製排気管を組みこんで出力を225bhpに上げている。外装は専用エアロパーツとホイールで決め、内装もレザーのスポーツシートとモモ製のステアリングホイール・シフトノブが装備されるとともにアルピナ製であることを示すシリアルナンバー入り銘板が付く。このB2.5は200台のみ生産された。328ベースとなるB6 2.8はB2.5と内容としては共通するところが多いが、2.8Lへの拡大によりパワーも240bhpまで上乗せされている。

 B3 3.0は328iがベースとなる。3.0の名が示すとおり、このアルピナ版ではボアアップにより3.0Lの排気量から250bhpを発生する。アルピナ車の例にもれずエアロパーツと専用ホイールが付き、内装もさらに豪華となる。B3 3.2はB3 3.0の進化版で、3.2Lとさらに拡大したエンジンから265bhpを発生する。

 そしてBMWがV8搭載のM3を登場させる2008年よりも前のこと、アルピナはE36で掟破りともいえるV8モデルを生みだしていた。5/7シリーズから32バルブV8エンジンを拝借して造り出した、311bhpの4.0L版ならびに最高速度175mph(282km/h)を誇る333bhpの4.6L版だ。4.0L版はわずかに5台、4.6L版はコンバーチブル23台を含む221台が生産された。

ディナン・ハルトゲ・レーシングダイナミクス
 スティーブ・ディナンが1979年にアメリカ・カリフォルニアのモーガンヒルで創業したディナンは、北米有数のBMWチューナーだ。E36型M3をベースに仕立てた「ステージII」モデルはスーパーチャージャー付きの直6で354bhpを発生し、0-60mph(0-96km/h)加速を4.7秒でこなす。
 ハルトゲはレーサーのヘルベルト・ハルトゲがドイツのメルツィヒで1971年に創業したチューナーだ。ここも他に違わず、見た目も性能も過激なE36を造っている。ハルトゲH3には2.8・3.2・3.5の種類があった。280bhpを叩きだしたハルトゲ323tiコンパクトは特記すべきところだ。
 フェデリコ・パヴォンチェッリが1980年にミラノで創立したチューナーが、レーシングダイナミクスだ。3シリーズの直6をベースに程よいチューンアップで265bhpを発生したK30.4がある一方で、R55コンパクトという怪物そのもののモデルもあった。こちらは427bhpまでチューンした7シリーズのV12を移植したもので0-60mph(0-96km/h)加速は4.2秒、そして最高速度はなんと仰天の190mph(306km/h)という代物である。
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E36年表

1989

  • 試作車3台を生産。


1990

  • E36型欧州発表。
  • 市販車の生産開始。4ドアセダン8,335台を生産。


1991

  • この年半ば、1992年モデルとしてE36型北米発表。
  • 生産体制が本格化、265,527台を生産。


1992

  • クーペモデル登場。
  • 欧州仕様M3登場。
  • アンチロックブレーキ(ABS)の全車標準化。
  • 運転席エアバッグを325に標準化。
  • 前年を上まわる362,845台を生産。


1993

  • 6気筒エンジンに吸気側の可変バルブタイミング機構(VANOS)を導入。
  • 運転席エアバッグを全車標準化。
  • エアコンディショナーの冷媒をR-12からノンフロンのR-134aに変更。
  • セダンに可倒式リアシートをオプション設定。
  • 生産台数339,791台。


1994

  • コンバーチブル登場。
  • オートマチック・スタビリティ・コントロール(ASC+T)をオプション設定。
  • この年後半、サイドマーカーを標準化。
  • ドアロック・サンルーフ・ドアウインドウの集中コントロール化。
  • 10月、運転席・助手席エアバッグの全車標準化。
  • 米サウスカロライナ州のスパータンバーグ工場で北米市場向けE36を少数生産開始。


1995

  • 北米仕様M3登場。
  • E36/5型コンパクト登場。
  • 欧州市場限定でツーリング登場。
  • イモビライザー導入をはじめ、盗難防止対策を強化。
  • 316iコンパクトを除く全車にエアコンディショナーを標準化。


1996

  • 325生産終了。
  • 323・328登場。
  • M3のエンジンを欧州・北米仕様とも3.2L化。
  • オーディオの車速連動音量自動調節機能ならびにラジオのプリセット選局数追加、CDチェンジャーをオプション設定。


1997

  • M3セダン登場。
  • サイドエアバッグをオプション設定。
  • トラクションコントロールの全車標準化。
  • 新型5シリーズに倣い、キドニーグリルの意匠を変更。
  • ターンシグナル・サイドマーカーのデザインを変更。


1998

  • サイドエアバッグ標準化。
  • コンバーチブル全車に全自動トップ標準化。
  • 8月、E46型3シリーズ発表。E36はクーペが1999年まで、コンパクトが2000年まで生産とされた。


1999

  • E36型セダン生産終了。
  • E46型3シリーズ発売。
  • この年をもってE36型クーペ生産終了。


2000

  • 12月31日をもってE36型コンパクト生産終了。


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Posted at 2022/05/03 11:26:29 | コメント(0) | トラックバック(0) | E36レストア本和訳 | クルマ

プロフィール

「先日はE36ミーティングで鷲羽山へ。お昼にうどんが食べたくて一瞬だけ四国に踏み込みました(笑)」
何シテル?   04/09 10:05
今の時代にNA・MT車をこよなく愛する天の邪鬼?です。まっとうな家庭人としての顔との両立に日々悩みつつも楽しんでおります。よろしくお願いします。
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