
先日、読み終えた本です。
船戸与一さんの「新・雨月 戊申戦役朧夜話」。
いやー、読み応えあった!
視線が新鮮で、ゾクゾクしっぱなしでした。
戊辰戦争に関しては、いろんな作家さんのいろんな作品を読んできて、
だいたい知ってるつもりだったのですが、
ほとんどを知らなくて、しかもより肝要な部分を知らなかった事に気付きました。
たとえて言うなら、、。
長年歩き尽くしてきたメインストリートは、今でも好きな街だけど、
ちょっと食傷気味だったこともあって、
ちょっと裏道に入ってみたら…。
これまで知らなかったお店や風景が広がっていて、
“あぁ、こんな街があったなんて! 私はこっち側が好きかも!
よーし、これから先は、こっち側を歩き回るぞ~”
みたいな。
この作品には、いわゆる歴史の表舞台に出てくる人は、あまり出てきません。
出てきてもあくまでも脇役です。
主役たちは、各藩の名も無き人たち。
家老であったり、間諜であったり、、。
みなが、それぞれの立場でうごめき合う。
これまであやふやだったこと、腑に落ちなかったことも、
すごくよく分かりました。
“そうか、、アメリカの南北戦争が終わったばかりで武器が余っていたからか・・・”
とか、
“奥羽越列藩同盟は、こんなふうに瓦解していったのか・・”
“会津があんなに早く追い詰められた理由は、そこにあったか・・”
などなど、
「NHK歴史秘話ヒストリア」よりも、生々しくぶっちゃけていて恐れ入りました。
あと、この本を読んで初めて感じたのは、
船戸与一さんて、私がこれまで思っていた以上に、
人間味あるひとだったんだな、ということ。
船戸さんの作品はほとんど読んできましたが、
これまでの作品では、
“与一兄さんは、世界の紛争地域を見過ぎて、
命や情を感じる神経が麻痺しているんじゃないか?”
と感じざるを得ない風合いがありました。
でもこの作品はその点で大きく違います。
人間らしく、あわれや情を感じさせる場面や表現が多くて、
“与一兄さん、いいわぁ。前より好きになったわぁ”と思いました。
会津戦争ものでは必ず描かれる、門閥家老、西郷頼母の屋敷で、
一族の女と子どもが全員自刃した壮絶なシーン。
その場に踏み込んだ西軍兵士に対し、
死にきれなかった女性が、“敵かお味方か?”と聞き、
西軍兵士が“味方だ”と答えて介錯をしてあげる場面も、
与一兄さんらしくもなく、とても痛ましく哀れをもって描いています。
しかも、当主である西郷頼母は、藩主・松平容保よりも、
自分の方が藩祖・保科正之の血が濃いことを誇りにしていて、
女子どもを全員自刃させたくせに、
自分だけは生き残って会津藩が滅んでも保科家は再興させようと
仙台へと逃げたことをチクチクと批判しています。
女性や子どもに優しい目線で書く与一兄さんは、、、珍しい。(笑)
しかも、異例はこれだけじゃない。
三春藩が西軍についたことで、隣の二本松藩・霞ヶ城が攻め込まれた時の
描写がまた泣かせる。
12歳~14歳までの二本松少年隊が自ら志願して、
歴戦の薩摩兵士たちに向かっていったというやつです。
取りあえず「突き」だけを教えられて、敵の懐目がけて突っ込んでいき、
強者揃いの西軍・薩摩六番隊を手こずらせたという、、。
そして、最後のほうに、その薩摩六番隊長が後に語った話が添えられていて、
それが、、。
「余は、鳥羽伏見から函館までの戊辰戦争、西南の役、そして日清、日露戦争と
数え切れないほどの戦場を駆け巡ってきた。そして、それらの戦闘の中で、
1番恐怖に駆られた戦場が霞ヶ城攻撃だった。
12歳かそこらの子どもが命を捨てて切っ先をこちらに向けて襲いかかってくる。
次々とだ。あの20名足らずの二本松少年隊ほど、余を畏怖させた兵士はいないし、
1番思い出したくない恐ろしい戦場だった」
というもの。なんだか、胸に迫ります。。
12歳から14歳って、
今の小学5年から中学1年くらいですから。。。
戊辰戦争といえば、会津の白虎隊の悲運が目立ちますが、
白虎士以外にも、奥羽越ではいろんな藩の少年兵が果敢に命を散らしていたようです。
また、与一さんは、会津・白虎隊にも緻密な資料調査を駆使して、
それを情あふれる描き方をしていてたまりません。
メインストリートでは知ることができないシーンに出会えます。
あと…。
この作品を読みながら感じたのが、
与一さんが、好きな人。好きじゃない人の区別。(笑)
書き方で分かりました。
与一さんが1番好きなのは、越後の蒼龍、河井継之助だと感じました。
これは相当好きだな。
あと、新撰組関連では、山口次郎(斎藤一)と土方歳三のことは
かなり好きだな。
もうね、軽くサクッと格好良く描いてる。巧いわぁ。(笑)
山県狂介のことは、あんまり好きじゃないと思う。
で、意外にも、西郷吉之助のことは結構、好きっぽい。
会津藩が降伏するときも、
すでに割腹していた会津家老2人を生きていたことにして、
降伏時に割腹したということにして、
死する人を最小限にしてくれたり。。。
へぇ、、と思う一面を描いていたりね。
でもって、
幕末好きに人気の高い、
勝安房や榎本釜次郎のことは、あんまり好きじゃないふう。
米沢藩の某門閥家老のことも相当嫌いっぽいな。
とにかく、表舞台に出てこない戊申の傑士たちが
良くも悪くも活き活きと描かれていておもしろかった。
あと、強く思ったのは、
いつも戦で迷惑を被るのは、農民や社寺、町人など、
弱きものたちだったのだなぁ、と。
物事には必ず明と暗がある。
時流が人を作る。
驕れるものは領民に破滅の口火を切られる、、。
などなど、学ぶものが多い本でした。
裏道、いいですね。
しばらく、裏道を探索しようと思います。
まずは、裏道の中でもまだ大きい道を…。
越後の蒼龍、河井継之助の生涯を描いた、
司馬遼太郎氏の「峠」を読もう。
これ、ネット古書店でゲットしたのですが、
昭和43年の初版ですよ!
ビニールカバーもついていて帯もしっかり。
すごい!
日焼け具合がまたいい。
こんないいもの、なんで売りに出されたんだろう?
「そろそろおじいちゃんの遺品本棚、、整理しようか」
ということでしょうかね。
この上下刊が送料込みで1000円以下で入手できたんですよ。
何度も言いますが、大ベストセラーの初版ですがな!
左の「富山藩」の本も古書です。
父が制作中の家系略図の別冊執筆のために買ってきました。
中に赤鉛筆で要所をなぞってあって、
これをもとに誰かが何かの執筆をしたことが伺えます。
これまでは古い作品は文庫で買ってきましたが、
古書もいい、ということに気付き、最近は
「名作を買うなら古書で、初版を」です。
なんといいますか、
アンティーク蒐集家の気持ちが分かってきました。
ですが、いわゆるアンティークは高価だけど、
古書は絶版になった有名作品でも低価格。
買う立場としてはうれしいですが、
“この価値はこんなもんじゃないですよ!”と叫びたいほどに
切ないわけです。(笑)
今日は24日ですか。
3月の下旬なのに、毎日雪が降っていて、、。
春は来そうで、足踏みですね。。。
来週火曜はプリウスを点検に出すのだ。
前回の点検以来、エンジンオイルの交換していなかった。(;゚д゚)