
昨日の日曜、お天気が良かったので、
玄関先の階段部分に、息子たちのスパイク類を干していた、、、
というお話しを昨日は書きました。
その、気持ち良くひなたぼっこしていたスパイクたちが、突如受けた驚きの出来事をご紹介します。
では、その一部始終を、現場を目撃していたミズノ・クロノインクス君に語っていただきましょう。
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いやー。前日の大会ではK君の短距離4本を無事フィニッシュさせまして。
お昼ころから日差しが出てきたので、K君のお母さんが玄関先に僕らを干してくれたんです。
次男R君の野球アシックス君も、外の水道でジャブジャブ洗われて干されてます。
“いやー、なんかねぇ。昨日無難に活躍した陸上ミズノさんや陸上アシックスさんたちと、
あまり活躍しなかった僕が一緒に並んでいいものかどうか、、とちょっと気は引けますが、
まぁ、ごめんくださいね”
とか言いながら、R君の野球アシックスが並んで座ってひなたぼっこ。
“でも、こうやって陸上の諸兄と並んで干されるのも、今日が最後なんですわ。
そう思うと感無量です。実は昨日の帰り。R君が、
『野球のスパイク、きつくて足が痛い』って言い出しましてねぇ。
お父さんが、『なんで早く言わないんだ。痛いのはダメだ』って言ってね、
そのままスポーツデポに寄って、新しい野球用スパイクを買っちゃったんですよ。
ええ、その新しい25センチ君。あぁ、クロノインクスさんのご親戚ですよ。
ミズノの野球スパイクです。その彼が明日からR君のお伴です。
僕は洗って乾いたら、どこかに片付けられるだけ。
うはいてもらえることはないんです。ぐすん・・・”
って愚痴をこぼす。
だから少しでも元気づけてあげようと思って、つい、、。
“いやいや。がっかりするのは早いよ。なんかそのR君、
リードが特にやばいらしくてね。昨夜試合のビデオを見ながらお父さんとK君が、
『こんなリードじゃ話にならん』『せっかく脚だけは速いのに、そんなんじゃ
唯一の宝の持ち腐れだべや。ばかたれ』とか怒っちゃって、
しまいには『よし、今度から自主練習だ。兄ちゃんがキャッチャーやって
父さんがピッチャーやって、、、セカンドは、、、仕方ないから母さんにやらして、
そしてRがリードの練習だ』って言ってたから。
だから野球アシックス君は、お母さんがはいてくれるかもしれないよ。
ちょっとお母さんには大きいかもしれないけど、はけるんじゃない?”
って気を持たせるような事を言ってしまった。
すると野球アシックス君の目が輝いた。“え? 本当? お母さんが?”
思い切り期待させてしまった野球アシックス君の手前、
“いやぁ、、、でも、やっぱりお母さんは野球練習の手伝いなんかしないよね。
むしろお母さんの本心は、これだと思う。
『なんで私なのよ? ほかに格好な人がいるじゃない。最適者が!
そう、毎日麻雀にばっかり行ってるあの暇老人よ。お義父さんよ!
若いころは会社の野球部でブイブイ言わせてた、みたいなことをいつも
自慢げに言っているあの方に、今こそ実践指導してもらったらいいじゃない。
父子3代、総出のリード練習…。美しすぎて涙が出るわ』。
でも、野球アシックス君の上向いた気持ちを思うと、今さらもう言えなかった。
おや、風が出てきたね。僕はとても軽い。片方約140グラムという
世界トップレベルの軽量スパイク。あ、、こんな風でも転がっていきそう。
あっ! 飛んじゃった!
僕は隣でうたた寝していた幅跳び用アシックス君を乗り越えてさらに北側へと
転がってしまった。お母さん、気付いてよー。助けてよー。
と、その時、見知らぬ車が止まって、中から人が、、、。
どうやら並平家に用事があるらしく、玄関へと向かってくる。
そして風除室の引き戸を開けようとしてるのだけど、、、
ちょっと! おじさん。そこ違うよ。そこ入り口じゃない。そっちじゃないって。
あ~ぁ、反対側の戸を開けちゃったよ。
いや、開けてもいいけど、そこで気付こうよ。
ほら、足もと! お父さんが育ててるお花の苗ポットのケースがあるでしょ。
ちゃんと見なさいって。
写真は、その苗ポットのケース。
違う場所に置かれた苗ポットケースですが、ようは、こういうものが玄関風除室の、
人が出入りしない方の場所に置かれてあった、と想像してください。
その、人が出入りしない方の戸をわざわざ開けて、苗ポットのケースを、
今、踏もうとしている人がいる。
いや、多分、踏もうという意識はないと思うけどね。
あ、あ、あーー!
踏んじゃった! ひっくり返しちゃった。
お花の苗もみんな宙返りしちゃったよ。
あ~ぁ、玄関風除室の中も外も土だらけ。
余計な家事を増やされることくらい、お母さんの機嫌を損ねることはないからね。
これは、かなり、、、好ましくない状況ですね。
あ、、おじさん。
素手で何しようとしてるの?
ぶちまけた土をかき集めて手でポットに戻そうとしてるの?
無理だって。
だって、苗が完全に出ちゃってたりしてるじゃない。
これは育て主に直接やり直してもらわないと、むしろ余計迷惑な事になりかねないよ。
まずは、先に、この事情をこの家の人に伝えようよ。
完全に修復はできないんだからさ。
それにほら。。。
あなたのこの家に何か用事があって来たんでしょ?
ああそうか。おじさん、メール便の配達員さんか。
じゃぁまずは本来のお仕事を先に完遂しようよ。
あ~ぁ、そんなところに封筒を置きっぱなしにして土戻し作業なんかしてちゃダメだってぇ。
あ~ぁ。僕たちのところまで土が吹っ飛んできてるじゃん。
うわっ。ちょっ、、。よりにもよって傷心の野球アシックス君に土が。(笑)
げげっ! K君のお気に入りロードワーク用ナイキ君の鮮やかブルーにも土が。(笑)
やばいよ、やばいよ。K君はめっちゃ神経質で、
(すぼらなお母さんに似ず)めっちゃキレイ好き。
知ってる? K君は大会の前の晩、ナンバーカード(いわゆるゼッケン)と、
ユニフォームに丁寧にアイロンを掛けてるんだよ。
あんな化繊のユニフォームにさ、わざわざアイロン掛けて大会に臨むという意味不明なことをするくらい、陸上の用具に思い入れを込めて大切にする子だよ。
そんなお気に入りの道具を他人に汚されたら、、、。
あぁ恐い恐い。K君はまるでナイキ君みたいなブルーになっちゃうよ。
いやー。たまたま風に吹かれて土が飛んだエリアから逃れられた僕はラッキーだった。
K君が、まるで分身のように可愛がってくれている僕だからね。
あぁ、幅跳び用アシックス君にもちょっと土が入っちゃったね。でも、君は平気でしょ?
普段から砂が入る運命だもんね。そういえば跳躍選手のスパイクって、みんなすっごく汚いよね。(笑)
え? 競技場の砂場の砂はいいけど、園芸用の土は嫌だって? ふーん。そういうもんかね。
それにしても、おじさん。真面目、、、というか、神経細いんだね。
緊張しちゃって、過呼吸気味。しかも震えてきてるし。
あ、おじさん。落ち着こうよ。
あぶないよ。ほら、周りをよく見て!
あ、、危ない!
と、僕が叫ぶと同時に響いた、「いてぇーーー!」という野球アシックス君の断末魔!
可哀想に傷心の野球アシックス君は、パニック状態のおじさんに踏まれてさらに泥だらけ。
一昨年6年生時のK君と、昨年4年生時のR君。
仲良し兄弟にそれぞれ1年ずつはいてもらって、
ほどよくスポイルされたその姿も誇りだった野球アシックス君の、引退の時に、、、。
突然やって来た知らない人に踏んづけられて。。。
それはあまりに、、あんまりだ。
あのね、ここんちのお母さん、だれかの失敗を責める人じゃないから。
間違いを素直に謝れば、愛想は良くなくても、特に文句も言わないって。
真面目に働いている人の味方だし、そういう人が仕事中に失敗してもわりと寛容だよ。
だから、下手なことしないで、先に状況を知らせちゃえば良かったんだよ。
お、やっとチャイム押す気になったかい?
“ピンポーン”
あっ。出てきたお母さん、なんか不機嫌。
これはあれだ。加藤廣著「秀吉の枷」を読んでいるうちにうたた寝しちゃって、
それを起こされた、って図だ。
この人、寝てるのを起こされた時くらい機嫌悪化する事はないからね。
「あの、あの。。。花を倒してしまいました。すみません。すみません。できる限り戻したんですが」
明らかに不自然なほど過呼吸で、
しかもぶるぶる震えているおじさんの様子を見てお母さんは瞬時に決めた。
この人が何やらやらかしたらしい事は、とりあえず責めない方向で、、、と。
「え? 花? それで、どちら様ですか?」
「あ、メール便なんです。それで花を倒してしまって」
“倒すっていうからには背の高いものでしょ?
まだ外にお花のプランターは置いてないのに・・。何のこと?”と怪訝に思い、
玄関を出てみたお母さん。風除室の中も外も土まみれで、
花の苗ポットがとっちらかっている光景を見て、、、。
きっとこう思ったはず。
“なんで入り口じゃない場所に置いてあった苗のケースをぶちまけてるのよ。
どっちから入ったのよ。まったくもう。。。
普通、玄関マットがあって、表に戸がある方を開ける、
というのが日本家屋の常識でしょうが。
お花の苗は、、いいけど。。。ここのお掃除はちょっと難儀だわ。
でも、それはまだいいけど。。。。
せっかく干してあった息子たちのスパイクに、何してくれたのよ”
でも、おじさんの緊張度が尋常じゃないので、何も言わず、最低限のことだけ言ってみたようだ。
「それで、そのメール便は?」
「は?」
「うちへ郵便物を届けに来たんですよね? その郵便物を下さい」
「あ、、、これです」
と、ぶるぶる震えながら差し出された封筒はくしゃくしゃで泥だらけ。
「はい。ご苦労様です」
「はい・・」
「もう、いいですよ」
「はい・・」
「もう、戻っていただいていいですよ」
と、ここで正気に戻ったように声が少し落ち着いて、
「あ、はい。すみません」と言って、メール便のおじさんは逃げるように戻っていった。
おじさん。
ひとんちの玄関先で何かを蹴飛ばしたくらいじゃ、そんな大ごとにはならないよ。
だいたい許されるよ。
でも、もしも、、、車の運転に支障を来す可能性があるくらい緊張する症例が
確認されているなら、お仕事を替える、という選択肢も視野に入れよう。
と、ここで僕がつぶやいても仕方ないけどね。
そしてお母さんは玄関の土を掃いて、R君の野球アシックスを改めて洗い、
K君のナイキや幅跳びアシックスたちの土を出していた。
この、スパイクたちの受難については、K君やR君に秘密。
でも、メール便のおじさんがお父さんの花の苗をぶちまけたことだは教えてあげたら、K君たちにとてもウケていた。
「きっとさぁ。反対側を開けて、下見ないで入って、
ポットケースの壁をクンって踏んじゃって、
てこの原理みたいなそんな原理でひっくりかえったんだって。
うひゃうひゃ。信じらんねぇ」と、K君は事件の発生について推理してたけど。。。
事件の全貌を知ったら、絶対、ナーバスの海に沈むね。
これが、5月15日の「並平家・玄関先の受難」でした。
あぁ、長かった。
仕事でもこんな長文、ありまへん。(笑)