
先々週。8月17日、18日と函館市へ行っていた件は、
先のブログでも書いておりまして。。。
目的は、長男の陸上大会観戦、ではあったのですが、、。
実はもう一つ、私にとって大事な目的がありました。
これがあったから函館まで行きました。
北海道立函館美術館で「蠣崎波響」の代表作、「夷酋列蔵」特別展示が9月9日まで催中だったのです。
蠣崎波響(1764~1826)は、松前藩主の5男であり、本名は廣年(波響は号)。画家であり、そしてのちに松前藩家老家として藩政にも関わった人物です。
で、この「夷酋列蔵」がどう特別なのか?
それは、、どんな理由で海を越えたのか謎のようですが、
「蠣崎波響」が1790年に描いた2組みの「夷酋列蔵」のうち、そのうちの(ほぼ)1組みがこれまでずっとフランスのブザンソン美術考古学博物館に収蔵されていて、
その作品11点が、今回特別に松前へ帰郷して特別展示されている。
222年ぶりの帰郷だそうです。
これは特別でしょう。
最初、この特別展示のことを知らなくて、、
次男は、“函館? 遠くて疲れるから行かない”って言うし、、。
長男も、“まだ調子戻ってきていないし、、、わざわざ来なくていい”
なんてツレないこと言うし。
じゃ、函館の大会は、行かないでRと2人で留守番してるかなぁ、、。
なんて思っていたんですよ。
ところが!
たまたま長男を合宿に連れて行くinプリウス時、
ラジオで「夷酋列蔵」の特別展示のことを知り、
「これ、見たい。絶対みたい。母さんも函館に行ってもいい?」
と聞くと、「ふぅん…別に、いんじゃね?」と長男も言うもので、
やおら行く気満々となったのでした。
「蠣崎波響」の代表作といわれる「夷酋列蔵」とは、北海道各地のアイヌ指導者12名を描いたものです。
12枚1組。これが2組描かれています。
蠣崎波響が描いた12名の長たちは、ツキノエ、イコトイ、ションコなど、、。
クナシリ・メナシ争乱に関わった人物たちが描かれています。
クナシリ・メナシ争乱とは1789年、和人による迫害に我慢できなくなった東蝦夷地のアイヌらが蜂起した事件です。
そして結局、松前藩により騒動を起こしたアイヌたち37名が処刑され、
「騒乱を収めた」という既成事実のみが幕府に報告されました。
しかし、幕府からすると、
松前藩は、このように何度も何度もアイヌ民族と衝突していて、
そんなだから一番大事な海防の役目もイマイチ怪しく、
蝦夷地を治める力量がないかも?
と、疑問視されていたところに、このメナシ争乱。
やっぱりダメだな、と判断され、
このクナシリ・メナシ争乱の後、南蝦夷地は幕府の直轄領となり、
松前藩は東北のどこだったかに国替えさせられています。
そして、松前藩の運命を翻弄したクナシリ・メナシ争乱の1年後。
この「夷酋列蔵」は描かれているんですね。
波響の心情はいかに?
私が思うに、、。
波響は政治家以前に芸術家ですから、同じく芸術派民族であるアイヌの人々を敬っていたと思います。
だから、特別な思いを込めて、「夷酋列蔵」を描いたのだと思います。
松前藩とアイヌの人々とは、永きに渡る因縁の間柄でありながら、
その一方で、切っても切れない縁で繋がれてもいたような、、。
そんな気がします。
松前藩が開祖の地を追われていたのは、たしか20年間くらいだったと思います。
その間、波響は、早くまた祖国松前に戻り藩経営ができるよう、
時の老中に働きかけます。
国替えを余儀なくされた藩など、賄賂の余裕さえない。
そこで波響は、せっせと画を描き、その画を売ってお金を作り、
それを老中に贈り続けながら、藩の松前帰参を願ったと、、。
宇江佐真理さんの本で読んだ事があります。
これまで複写されたポスターや印刷物では、
「夷酋列蔵」の1部を見た事はありましたが、
原画を間近に見たのは初めて。
A3サイズより一回り大きいくらいの、現代でいうところの色紙風の台紙に描かれており、台紙の周りには金箔が押されていました。
交易をして手に入れたのであろう、美しい衣や装飾品をまとったアイヌの長たちの、壮麗な姿が精緻に描かれています。
目の力強さから、野生動物や独自の宗教観のもと生きて来た民族独特の所作。
こういうところまで活き活きと描かれていて、
原画を見ることができて良かったと感激しました。
しかし、、。
ここで疑問なのですが、、。
波響は実際に、12名のアイヌの長たちと会ったことがあるのだろうか?
蠣崎波響は、興味はあるものの、ほとんど分からない人物です。
この人を主人公にした小説や映画を堪能してみたいものです。
それを叶えてくれるのは、やはり函館出身の作家、宇江佐真理さんだろうなぁ。
最後に、クナシリ・メナシ争乱に関するウィキを張ろうと思って検索してみたら、
私が過去に書いたブログが2番目と3番目に出てきて、ちょっと照れました。
これと、
これです。
そしてこっちが、
フリー百科事典版。
Posted at 2012/08/30 00:13:39 | |
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