エンジン型式 2ZR-FXE 水冷直列4気筒DOHC
●エンジン最高出力 99馬力 最大トルク 14.5kg
●モーター最高出力 82馬力 最大トルク 21.1kg
車両重量 1350 kg
モード燃費で、ついにリッター・38キロを記録した新型プリウス。
排気量は、これまでの1500ccから300ccアップの1800cc
になった。
上記の馬力は、単純にエンジンとモーターの馬力を足して181馬力とする
のではない。 両方がフルで回る時はないためだ。
カタログでは2400ccクラスと同等に達すると記載されているが、
あながち間違いではない。 まぁオーバーに記載しているとしても、
2000ccクラスに達していることは間違いない。
ホンダ・新型インサイトがプリウスに敵わないポイントの一つがこれだ。
インサイトの動力性能は、「1500ccクラス程度」で、
新型プリウスと比べてしまうと、どうしてもパワー不足を感じる。
さて、前書きはともかく、新型プリウスに乗り込んでみる。
スマートキーを持っていれば、カギを必要としない。
これを一度味わうとやめられなくなる装備だ。
まずブレーキを踏む。 そしてステアリング左側にあるスタートスイッチを
押してみる。 このアクションを起こすタイプのクルマ、たとえばS2000
や、シビックタイプRなら音だけで高潮するものだが、
プリウスは拍子抜けする。 電子音だけが「静かに」鳴る。
視覚では、メーター周りやナビの表示が現れる、「普通のクルマと一緒」だ。
10周年を越えたプリウスは、初代と2代目は、いわゆる「未来のクルマ」を
演じて見せた。 特に、センターに鎮座していた、ナビモニターと共用していた
「プリウス・ハイブリット情報画面」。 デカデカと映るように、見えるように
存在していたモノだが、今回の新型には、「それ」がない。
インパネ周りの造形は、相変わらず「未来」を感じさせるが、
新型には、「プリウス・ハイブリット情報画面」がナビモニターには鎮座せず、
「センターメーター周り」に集約されているのだ。
この善し悪しは別にして、今回の新型は「ハイブリットとしてのアピール」を
あえて薄め、「これが今のクルマの普通」を演出してきたように思えた。
もうハイブリットは普通で、アピールするモノではないという「アピール」が
見え隠れしているようだった。
ソロソロとクリープだけで道路に出てみた。
もちろんモーターだけで走行している。
この瞬間だと思う。 ハイブリットを初めて乗る人が、
一番「違和感」を感じるポイントだ。 耳に頼っていると、聞き慣れている
エンジン音が聞こえず、ウィーンといわようなモーター音が聞こえるのだ。
アクセルを「普通」に踏んでみる。
通常状態では25~30キロ地点で「エンジン」が始動し始める。
このポイントは、「耳でも感じられる」。 「あ、エンジンきた」と。
それと同時に、パワーが明らかに増したと感じられる瞬間でもある。
いま、ウチの嫁が乗っている初代スパシオより明らかにパワーがある。
サンバーは足下にも及ばない・・。
あまりにも静かで、耳を澄ませると「ロードノイズ」だけが耳に付くのは、
初代・2代目も一緒で、ロードノイズを含めた「静か」という事だけに
着目すれば、それこそレクサスなどの高級車に負ける。
そして、この新型は初めだけではなく、それ以降も違和感を感じさせてくれた。
それは、これまでの初代、2代目に共通していた、吹かす時なども含め、
「エンジンの助っ人にモーターが入る」という特性が、
「モーターの助っ人にエンジンが入っている」感じに変わっているのだ。
実際は、エンジンの助っ人にモーターかも知れないが、乗ってみると不思議と
逆に感じてしまうのだ。
そして、パワー感が増したのを良いことに、そして静かなのを良いことに、
メーターを見ていないと100キロ近い速度があっという間に出ているのだ。
乗りながら「おっとー」とつぶやいたほどだ。
これは耳から入ってくる、エンジン音の錯覚によるモノも理由の一つで、
パワーと静けさが共存している高級車に乗ってもやりがちなことなのだが、
新型プリウスでもこの事態が起きてしまうと言うことは、
2400ccクラスと同等の性能とカタログが表現しているものは、
間違いではないかも知れない。
2代目でも存在していた「EVドライブモード」というスイッチは、
新型でも存在している。
これは、ある速度の範囲までなら「モーターだけで走行できる」というモノ。
これを試してみると、50キロくらいまでモーターだけで走行が可能だった。
インサイトはモーターだけで走行するには、ごく限られた場面でしか不可能で、
しかも「いまモーターだけで走っている」という感動が
薄いのが一番残念だった。
ハイブリットに乗る上で、楽しみの一つとしてあげられるのが、
「電気/ガソリン」の使い分けだと思う。
これは、乗ってみると「どこまでモーターで走れるだろう」という
チャレンジ精神が出る楽しみが存在する。 もちろん、それは比例して
環境にも燃費につながる。
ハンドリングにも特に違和感は感じられなかった。
初代、2代目にも存在していた、弱点とも言えた「ブレーキ」。
初代は特にカックンブレーキが存在したが、新型ではどうだろう。
新型は、ブレーキはほぼ、問題ないと言って大丈夫だと思う。
ただ、ほぼといったのは、新型にも少し「違和感」があるのだ。
ただカックンではない。
ブレーキタッチの面に、普通車とは違う違和感が存在するのだ。
しかしこれは、「慣れ」で打ち消すことが出来る範囲のモノ。
どういう事かというと、「普通車とは違うブレーキタッチ」がプリウスには
あり、ブレーキアシスト機能が常に効いているような、
人間が踏んでいるはずのブレーキに、機械的な何かが邪魔している感が
あるのだ。 2代目にも存在していた。
しかし、慣れればなんら問題もないし、初代にあったカックンもしない。
レンタカーや試乗という短い時間で、いちばん神経を使うのは、
意外にアクセルワークではなく、ブレーキタッチかも知れない。
そんなに長い時間を乗っていたわけではないが、
欠点という欠点は、ほとんどないと言っていい。
というより、あったとしても
「完全に、長所が細かい欠点を打ち消しているクルマ」と言えるのが
新型プリウスだ。 こんなクルマも最近じゃ珍しい。
ホンダのインサイトと、トヨタのプリウス。
当初、189万という先行で発売したインサイトだったが、
当初の予定通り230万ほどで新型プリウスが出てきたのなら、
「安価で手軽なインサイト」と「少し高いが満足感を得られるプリウス」
という構図が出来たと思うのだが、
新型プリウスは、自動車業界の構図を壊す勢いで「値下げ」に踏み切った。
採算ギリギリと言われる205万。 オプションで、儲けるつもり?
しかも、2代目プリウスを継続販売し、装備はほとんど落とさず、
税込み189万まで下げて、いやらしい?やり方でインサイトにぶつけてきた。
意外に、新型インサイトのライバルは、2代目の気もする。
こうなってくると、インサイトがダメだと言ってるわけではないが、
プリウスが205万、220万ラインまで下げられると、
ホンダ党でない限りは、インサイトは完敗している気がしてならない。
もちろん、好みもあるが。
現状で、新型プリウスは、仙台市内で11月納車という予定になっている
そうだ。 オーダー8万台を突破しているとか・・。
個人的にも、人数の乗る機会のないミニバンを購入するなら、
プリウスを買う気がする。
試乗で普通に走ってリッター28キロと表示された。
45リッター満タンで、 リッター30と計算すると、
軽々満タンで1200キロ走る計算になる。
ガソリン代だけでも助かる・・。
リッター20近くいくコンパクトや軽自動車も最近では多くなったが、
1800cc、性能的には2リッター以上の動力性能を持ち、
環境にもいいとなれば、売れて当たり前と言えば、当たり前のクルマだ。
今年のカーオブザイヤーは、プリウスで決まりであろう。
あとは、変な欠陥・リコールが出ないことを祈る。
売れたクルマほど、致命的な欠陥は厄介だが、トヨタは売れたクルマほど
リコールが出るクセがあるのが難点か・・・。