
X PROACTIVE Toring Selection 3ヶ月【1000km】
待ち遠しかった納車
スカイアクティブXの発売が2019年10月予定から12月へと遅れ、契約をしたのが19年の7月上旬だったから半年も待たされる格好となった。それまでの間は下取り車のアクセラに乗り続けられるのだが、アクセラの減価償却分はマツダ本体が補填してくれるそうなので、12月の引き渡し時に相場が急落しようと下取り価格はユーザーとディーラーには保証されるのだ。これまでクルマを買って納車まで半年も待たされたことなかったから、よりマツダ3が待ち遠しかったのと、アクセラにまだ乗り続けられるという気持ちが交錯した期間だった。
オーナーになってみると
東海マツダで新車を買うのは5年間で3台目。ディーラーでの過ごし方も勝手知ったるものである。
いつだって、どんなクルマだって納車というのは気分が高揚する。
待ちどおしかった2.0Xはこの店で最初のトレーディングで、一番乗りというのも気分が良い。
昨今、業界では顧客満足のため納車のお祝いをしてくれるものだが、今回もお花と記念写真、スタッフ総出のお見送り。
嬉し恥ずかしの展開なのだが、顧客満足にはとてもいいことだと思っている。
今回も下取り車のアクセラとマツダ3を並べて営業S氏と並んでパチリ。今回はスカイアクティブXのポーズを決めて見せた。
営業S氏に「これ流行らせましょう」と冗談もそこそこに、コックピットドリルを受ければディーラーを出るときにはスタッフ整列でお見送り。ここの間が苦しいのである。
イイもの手にした感
マツダ3との生活が始まった。
CX-3からアクセラ、マツダ3へと乗り継いできたし、さんざん試乗したので、涙を流すほどの感動でもない。
というより、イイものを手にしたゾとは強く思う。それは腕時計をグランドセイコーにしたように、ブランドのバッグを買うように、
北欧家具を揃えたように。マツダ3はその成り立ちから、生活に充実感をもたらしてくれる。ファミリアからアクセラの系譜で、紆余曲折あったマツダだが、ここまで成長できた賛辞を送りたい。
つまりマツダ3はもう、お買い得小型車からライフスタイル提案型の商品になった。ディーラーも黒を基調とした落ち着きのあるものになったし、マツダはプレミアムとは位置付けはしないようだが、独自の世界観を持つことを確立したように思える。このポジショニング、ちょうど私の身の丈に合ってるので丁度いい。さて、ポエムはこれくらいにして、実利のところをレポートしよう。
ハイオク入れるかレギュラーか
さて燃料をどうするか。ご存知、スカイアクティブXエンジンはプレミアム推奨だがレギュラーも使える仕様。いざスタンドに入ると悩む。詳しいことは言えないがハイオクは高負荷でより発揮するというのは分かっている。大丈夫だろうけど、何となく“慣らし”はしておこうかなと思うので、1000kmまでは3000rpm以下とし、レギュラーとハイオクを一回ずつ入れて、低負荷でも何か違いがあるのかを試す機会とした。従って燃費がいいとか、フィーリングがどうとかは次回以降にお知らせしよう。
ガッカリしたのは前後重量配分
Xについては車検証を見るまで主要諸元はわからなかったから仕方がなかったが、前後重量配分を見てガッカリ。
前軸930kg、後軸510kgで比率にすると65:35と、意外にフロントヘビーだったのだ。
かつてCX-3の1.5ディーゼルでフロントが重いことに苛まれていた。一方でアクセラ1.5ガソリンは軽快さが光っていた。
試乗車のマツダ3セダンで1.8ディーゼルの車検証を見たときに、フロントが重く、ディーゼルを遠ざける一因になっていた。
まぁ、最近のクルマはベクタリングコントロールもあるし破綻を来すようなことはないだろう。職業柄、様々なクルマに乗るが、プジョ−308のフロントはマシだったし、マツダディーゼルは特に
フロントヘビーで、徐々に選択肢から外れたのだが、2.0Xにしてもバッテリーがエンジンルームに搭載され、尿素処理を持たずパーキュレートフィルターのみで完結しているあたり、エンジンも分厚く単体では重くなっているのかもしれない。
それに忘れてはならないのは2.0Xは24Vのマイルドハイブリッドを搭載してるのも考慮する必要がある。それにフロントの方が重いからといって、前にツンのめる訳ではないのだが、BMWのほぼほぼ50:50は確かに気持ちがいいもの。エンジニアリング的に電気に頼らずメカトロニクスでできるのであればそれに越したことはないし、追求してほしいところではある。
「美しく走る」に寄与するマイルドハイブリッド
現状、2.0Xのみに設定されている24Vのマイルドハイブリッドのシステムだが、意外やコイツが「美しく走る」に寄与していると思った。
信号停車のシーンでは10km/hのところでエンジン停止、ブレーキペダルを1mm単位でそっと停止まで踏んでいけば、助手席のパートナーの首を
1mmも傾けることなくスッと止めることができる。発進までは当然無音。信号が青になりブレーキペダルから足を離せば、これまでのアイドリングストップ車のようなクランキング音に振動はなく、ベルトスターターによる若干の駆動力を感じながらエンジンに火が入ってスタートする。これらの感覚は日産のS-HYBRIDに最も近いと思った。
一方でモーターアシストはフルハイブリッドのようにモーターでクルマを押してる感覚は皆無。エネルギーモニターを見ると加速と減速で電気の出し入れが見て取れるが、本当にモーターやバッテリーが介入しているのか疑心暗鬼になる程、感覚で伝わって来るものは何もない。当然、回生も行なっているが、音や引っ張られるようなゴリゴリ感はなく、アクセラハイブリッドの時にトヨタを驚かせたというから、相当上手くできているんじゃないだろうか。このマイブルハイブリッドシステム、どれだけ燃費に貢献しているのかと言えば、補機類で重くなった分を鑑みてもスズメの涙程度の還元だろう。
今のところスカイアクティブX搭載車(国内)のみ、マイルドハイブリッドが搭載される。他のグレードはistop、アイドリングストップが搭載され再スタート時の振動や音は新世代になり相当抑え込まれているが、コストパフォーマンスを考えるとペイできるのかは疑問が残る。しかし発進はスムーズだし音も静か、振動も僅かになるのであれば、マツダが標榜する「美しく走る」に共感できるものだ。
映ろいを発見
季節ごとに愛車の撮影をしているのだが、今回は名古屋駅界隈の高層ビル群を背景にできるスポットに。
夜の駐車場の照明に頼って撮影するわけだがここで発見、第7世代商品群のトピックの一つ、サイドパネルの「映ろい」が見事に具現化されている。これ、金型を作る過程で職人が特殊スクレイパーのようなものでチョチョイとやってるのだが、久しぶりにクラフトマンシップを思い出した。
マツダ3後に発売されたCX-30にも、同様のモチーフが採用され、街で出会うとその美しさに目を奪われる。間も無く「魂動」デザインから10年になろうとしているが、飽きさせずにアップデートして行くのは大事なことだ。
これがSPCCI、スカイアクティブXなのか
初回点検を済ませ、オドメーターが1000kmを超えたので2000rpm以上を許された我がマツダ3は、コロナウイルス covid-9 で世界中が大混乱の4月11日、知多半島を走る機会があったので、高速道路と適当なアップダウン、カーブの連続する道路を走らせてみた。
近所の街中を流すのとは明確に違いを感じたので報告しよう。まず、一連の燃焼工程からタイヤに駆動が伝わり、推進を得るまでの「ツキ」がいいのだ。
もう、表現に悩むのも既出の記事の通りだが、粘っこいとか、ねっとり食いつくようにとか、濃いとか、滑らかとか色々な感じ方の表現があるのだけれど、一言で括って「気持ちがイイ」という使い古された言葉になってしまうが、実際にそうなのだ。これらがマツダ3のキャラクターと相まって、思わず「いいなぁ」と独り言を発してしまった。
これだけは言えるのはゴルフのようなダウンサイジングターボ+ツインクラッチ、カローラスポーツのようなフルハイブリッドとは感覚が違い、2.04気筒の自然吸気らしく全域で気持ちの良いドライビングが味わえる。
勿論、SPCCIのポテンシャルはこれしきのこととは思っていない。燃焼の様子の動画を見る限り、序の口だと思っている。今のところ価格設定で議論が持ち上がっていて、数値の上でも大したことないとか、期待外れとか、マツダマニアのためのものという話が出ているが、あるジャーナリストの話ではディーゼルエンジンは排ガス規制の関係でもう頭打ち、それに気づいたマツダからのソリューションだとも言っていた。10年前に標榜していたサスティナブルZ00M-ZOOMを憶えているだろうか。レンジエクステンダーの為にロータリーエンジンを再開発しているし、BEVだけがエコカーに留まらず、Well to Wheel で比較も発表されていることから、マツダのこのスタンスに共感しているし、賛辞を送りたい、と思った筆者である。