クルマの商談はエキサイティングで、何より新型車の発売直後というだけあって、私も脈が上がりっぱなし。意外にも時間がかかり、悩むことも多かったのだ。悩んで決めるプロセスもまた新車を買う醍醐味なのである。
## CX-3発売後のウイークエンドは
2月22日にデミオの試乗を済ませればCX-3の発売日は2月27日。翌日の28日にCX-3の試乗を13時と時間指定して東海マツダC店に訪れる。ショールームは多くの人が訪れており、この人たち皆CX-3を見に来たのか!?と心配したが、後にデミオの商談客の方が多いという事を聞いた。商談テーブルが相席、キッズコーナーで商談なんて珍百景が繰り広げられたというから驚きだ。
担当セールスSが現れ、挨拶もそこそこに早速CX-3と対面。C店の試乗車はXDグレード。目星を付けているのは18インチを履いた中間グレードのXDツーリングだ。XDの場合ホイールが16インチなので、18インチと乗り心地が比較検証できると思い、都合が良かった。CX-3に乗り込むと担当セールスSから簡単なコクピットドリルを受ける。ここで思い出したのは、東京オートサロンでレクチャーを受けた試乗に際しても正しいドライビングポジションの指導をされた事に感心。販売店でも客に「Be a driver」を啓蒙しているとは驚きだ。私自身は、東京オートサロンでレクチャーを受けてきたんだよ!とドヤ顔を露にしたかった。
さてCX-3のポジションをDにして、いざ出発。先週デミオXDツーリングの試乗を済ませていたので、第一印象は「アイポイントの高いデミオ」と、そのまんまだった。この試乗では、ポジティブな印象とだけ記しておこう。話を間に入れると、数日後に他店でXDツーリングLパッケージに乗りに行った。異例の18インチサイズがどうしても気になっていたからである。16インチと18インチの差は明快で、XDツーリングに乗って最初の出だしで大径タイヤであることが感じられ、「ばたつくなぁ」と思った。収束は速やかに収まるものの、荒れた路面を踏んだ瞬間、ブルッとしたバイブレーションを伝わるが、これが2インチ分振れ幅が大きいだけに感じた。これが嫌かといえば気になるほどではなかった。率直には「18インチで16インチの乗り心地が得られればいいのに」と思った。この時点で乗り心地に関しては16インチを履いたXDに分がある印象である。ただ、低速域だけの試乗だったので、中高速・コーナリングでの印象はまた違った印象になるだろう。
ディーラーが設定した試乗コースというのは事故のリスクの少ない左回りと決まっていて、クルマの性能を引き出すような走り込みが出来ないのは事実。しかし経験から大抵のクルマは敷地内から車道へ出る段差まででクルマの第一印象が決まってしまうものである。 きょうび、大衆クラスの量産車なんぞ、どんなクルマか察しがつくものだが、試乗というのは自分の想定通りかどうかを確かめる作業のようなものである。
## 一番楽しみなグレード選定、カラー、オプション
グレードについては中間グレードのXDツーリングと大方決まっている。ボディカラーも新色のセラミックメタリックが気に入った。元来、クルマ選びにはカタログの表紙を飾るカラー、即ちイメージカラーを選ぶのが定番としてきたけれども、ワインレッド系はスイフトで2台も乗り継いできたから新鮮味に欠けるし、ソウルレッドプレミアムは5万4000円も価格が跳ね上がるほか、何より愛車遍歴中ホワイト系は一度も手にした事が無かった。このセラミックメタリックというやつ、白系でも暗いところではグレーがかってスゴく気に入った。こういう光の加減で見え方が変わるボディカラーが好きで、アルファ156のヌヴォラブルーが素敵だった。そしてセラミックメタリックは新色でも価格が上がってないというのも気分がよい。今回はソウルレッドプレミアムとセラミックメタリックで比較検討したが、直ぐに決まった。
オプションについては本カタログと同じ分厚さになる位、充実している。あれやこれや欲しくなるが、結論からいうとフロアマットすら注文せず、セーフティクルーズパッケージこれ一点のみ注文した。ちょっとお目が高いオーダーかもしれない。まずエクステリア。例えばマツダスピードのスポーティパッケージをフルで装飾させればカッコ良くなるが、22万2154円ではムムムな出費である。まぁでもCX-3に華飾は不要だと思った。元々いいデザインだし、既に完成されているデザインというのは華飾すれば崩れるものである。できるだけシンプルにすることはクールであり、本来のクルマの形が映えるというものだ。因みにフロアマットについてはさすがに無しというわけにはいかず、予め社外品を調達するつもりだったのだ。
オーディオビジュアル系については最近の趣向で、Bluetoothさえあれば事足りる。スマートフォンの登場はこの領域まで駆逐するようで、スイフトの時はナビもDVDも地デジも使わなくなってきた。最近は深夜ラジオや昼帯、夕方のニュース番組をスマートフォンで聞く事が日常で、クルマで映像コンテンツはほぼ観ない。スイフトの時はフルセグにデッドニングまで施したが、運転中だからモニターに映っている映像はチラ見しかできない。映像に気をとられてしまうと安全性でも不向きだし、オーディオはスピーカーからアンプ、ケーブルまで散々凝ってきたが、ラジオコンテンツの視聴なら音に拘らなくてもよくなったということ、そして音を漏らして周囲に迷惑をかけたくない(というか何を聴いているのかがバレるのが恥ずかしい)という気持ちが強くなったのが理由で、BluetoothとAUX入力、適度なパワーアンプとそこそこのスピーカーさえ標準でついていれば私はOKなのだ。
## 軽く炎上気味のナチュラル・サウンドスムーサー
ピストンピンに組み入れたダンパーが振動を打ち消しディーゼル特有のノック音を軽減するという新しい技術。抑制するというか、カタログにも曖昧な表現なのだ。何しろ初物でCX-3から採用されるから誰も経験しておらず、実際のインプレッションは発売後のメディアの情報か一般人の試乗書き込みしか頼りにできない。発売後に装着車を乗った人から上がった感想で散見されたのは対コストに見合わないという書き込みが多く、効果テキメンというわけではないようだ。それもそのはず、このダンパーと回生で蓄電した電力を放出するキャパシタとセットで64,800円。ムムムなお値段である。それでも付けた方がいい、いや要らないでしょ的な書き込みが多く、プロのジャーナリストのインプレッションでも微妙な表現である。キャパシタについてもそりゃあ回生エネルギーは欲しいが、スズメの涙程度の燃費向上させる為にキャパシタを運搬するサイズと重さは微妙に感じる。ピストンピンに入れるダンパーは宮崎駿が好きそうな形をしているし、キャパシタの発想は好きなんだが、別々の設定にするとか、パッケージの内容が今ひとつだと思う。新しいテクノロジーは取り入れたいが、そうそう財布の紐を緩めるわけにもいかなかったのである。
## 安全は妥協したくない、セーフティクルーズパッケージを見積もりに追加
積極的に取り入れたい装備品があって、それはセーフティクルーズパッケージ。パッケージの中身の一番はスマート・ブレーキ・サポート(SBS)で、最近のクルマには時速30キロ以下で衝突の危険を判断されて時に自動ブレーキが介入するという機構が標準で装備されるのも少なくなくなってきたが、時速35キロで追突しました、残念でした申し訳御座いません…と後悔したくないとずっと思っていて、遠くまで補足できるミリ波レーダーがいいなとは思っていた。
他に車線逸脱警報システム(LDWS)、これは日産車で経験していて、わざとショートカットするときなどピーピーと結構うるさいと感じていた。ただ無いようにしなければならないが、うっかり車線をはみ出したり、左側のガードレールにこすりつけたりなんてミスはあり得る。これが警報音で注意を促されるなら助かるではないか。これは積極採用である。
ハイビーム・コントロールシステム(HBC)については東京オートサロンでデモ映像を見た時に大変関したもので、前車や対向車がいる・いないでロービーム・ハイビームを自動で切り換えてくれるというもの。それに交差点にいる歩行者が発見しやすいように真横に来たら歩行者を照らしてくれるらしい。これについては私が毎日通っている裏通りでパフォーマンスを発揮するならありがたいと思っている。効果の程は後にレポートしよう。
マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール(MRCC)は昔からあったクルーズコントロールにこの機構を付けて完成だと思った。というのはクルーズコントロールを経験している人なら誰もが感じただろうが、設定の速度を保ちつつ、自動でアクセル踏みっぱなしなので、ほおっておけばいつかぶつかるのである。北海道の延々続く直線ならいいが、忙しない日本の道路事情ではブレーキペダルに気を遣っていたり、ちょくちょく設定速度を上下させて交通の流れに乗っていたのがこれまでで、これでは「クルーズコントロールをコントロールする」という不毛な機構だった。やはりアメリカの発明だなと思っていたが、レーダー・クルーズ・コントロールについては約30〜100km/hの範囲で、先行車との車間を維持しながらついていってくれるというもので、先にスバル車に採用されていてイイなと思っていたからこれにも期待。
グレードがXDでもXDツーリングでもアクティブセーフティ機構については結構なモノがついているが、セーフティ・クルーズ・パッケージで118,800円を余分に払ってでも安全と安心がついてくるなら是非とも採用したい、ということで躊躇無く見積もりに加える事にした。
## ならLパッケージは如何でしょう?
ここまではトントン拍子なグレード・オプション選びであるが、セーフティ・クルーズ・パッケージの中身が標準で付いてくるXDツーリングLパッケージに目移りしてしまうのがメーカーの作戦だろう。安い下位グレードで欲しいオプションを選んでいくと、もうちょっと出せばもっとイロイロ付いてるこっちのグレードがいいですよ!じゃあそうするわとアップグレードさせるのが流通業界のオキテなのは同業なのでイタい程分かっている。
ご存知CX-3の最上グレードで、LパッケージのLはレザーという意味なのは言われるまで気づかなかった。ホワイトレザーで設えたインテリアが魅力。これはデミオの頃からスゴいなイイなと思っていたが、いざ自分のものと考えた時に、誰もが懸念するのは汚れだろう。私はクルマで菓子やらパリポリ食べないが、お茶はしょっちゅう飲む。三菱アイの赤いシートでもお茶をこぼした時に染みになって落すのに苦労した。それに汗っかきの人は夏場の汗でも蓄積されシミとなってしまうことから、心配ではあった。レザーであれば、布シートよりさっと一拭きで事なきを得るが、経年劣化でレザーが割れてくれば、隙間に汚れが入り込み黒ずんでいくというのは想像に値する。これについて担当セールスSは、「家族持ちの方は最初からNG」とのこと。レザーシート自体はリセールバリューに大きく貢献し、余分に払った分も取り返せる位というが、それも状態がいいのが前提の筈。白シートについてはネガティブキャンペーン推進している自分に気づいたのだった。
ただ、まだLパッケージ推進派の自分がいるのも事実で、XDツーリングLパッケージの2,808,000円のプライスに対して、XDツーリングは2,592,000円。これにセーフティ・クルーズ・パッケージを追加すると2,710,000円。その差98,000円にまで詰まってきている。後の付加価値ではLEDフォグランプ、シートヒーター、サイドガーニッシュである。この中で欲しいのはシートヒーター。フォグランプはこれまで霧で困った事はなかったので要らない。サイドガーニッシュも横だけならまぁまぁかな、といった感じ。ここで気になったのはXDツーリングにセーフティ・クルーズ・パッケージの118,000円をかけて、リセールバリューに反映されるのか、されないのかだ。これについて回答を持っている人はどこにもいない。あくまで自分が売りに出す時の市場で決まるものだ。担当セールスSもなんともいえず、といった感じで、こりゃあ自分で考えるしかない。ここで思い出したのは買取り大手のアップルで聞いた話。高価で豊富にあるポルシェのオプションは、流通の時点で装着の有無がわからなければ価値を弾かれる事もあるし、100万円以上するセラミックブレーキも時と場合によっては査定アップとは限らないという話。私の場合、小さな金額でやきもきしているわけだが、私なりの結論。XDツーリングにセーフティ・クルーズ・パッケージをオプション追加して、付いてないよりも査定アップが見込めるか?答えは「査定時に付いてる事を訴求して頑張る」ということ。
材料としては安全装備はポジティブに市場が受け入れるだろうということ。例えばこれが外装のオプションをフル装備していたとしても、好みは分かれる。流通業界にとって滞留在庫はネガティブそのもの。必然的にお金に反映されるから、好みの分かれる外装のオプションはリスキーだ。社外品があるかどうかも市場でそれがウケているかどうかである。余談だがナビが付いてる付いてないは大きく、外して売るならAMラジオだけでも付けておかないとマイナスになるとのことだ。
では将来XDツーリングを売る時に訴求しなければならないセーフティ・クルーズ・パッケージが付いているかどうかの判断はミリ波レーダーが付いている事。だから私は買取りの交渉に「あそこに付いてるでしょ!だから高くしてよ」とセコいアピールが出来るわけである。
XDツーリングLパッケージは白レザーこそ懸念材料だったが、飲み食いはしません、傷も付けませんと宣誓して手を出そうとしたが、CX-3は実用車ということを忘れてはいけない。それに今回営業車としても活用するので、白の華やか雰囲気よりはクールな雰囲気が必用、ということで、シートは黒を推進。もうXDツーリングで発注できる段階。この商談の時点ではXD20%、XDツーリングが50%、XDツーリングLパッケージが30%のシェアらしく、フムフム合点がいくものだった。あとは肝心のお値段の交渉だ。
## おカネの話
今回のお買い物は車両本体価格が2,710,800円、値引きが一律50,000円と聞いていて、実際ネット上の情報でも値引き5万円が固いというのは念頭に置いていた。期待は出来なかったが、何もないよりかはマシで、気休め程度の値引きである。端数等を引いた59,340円の値引きとなり車両店頭引き渡し価格が2,651,460円。延長保証は少し考えたが今回は見送り、整備関係は定期点検のパックDEメンテの36ヶ月分の46,700円を発注。クルマの車各からすればムムムなお値段だが、クロージング後のディーラー客にとっては泣き所。新車だし、付き合いもあるし、先ほど記したマツダの世界を共有し、話ができるという意味も含めての発注である。
細かい諸費用は割愛するが、スイフトは結局下取りとし、査定額は600,000円。車庫証明も当然のように自分で申請して受け取るという、自分で手間をかけて各種手数料の類いを節約するという体裁をとり、東海マツダへ支払う金額は2,200,000円となった。あとからクリーンディーゼル補助金が15万円、国から入金される。もともとクルマから税金を取り過ぎだと思っている私としては、これしきの事、と思っているが、ハイブリッドカーには入らない事から、ディーゼルに対し追い風が吹いているわけだし、CX-3がディーゼルだったから補助金前提に背中押された事は間違いない。はじめはCX-3購入にはスイフトを売ったカネを握りしめてあと200万円が落しどころだったから、若干オーバーしてしまったが、いい買い物になると思っている。
値引きについてはスカイアクティブ+魂動デザイン展開が上手くいっている背景でマツダ側にイニシアチブがあることが明らか。最近知った事だが、その昔マツダ地獄なるあり得ない値引きがあって、担当セールスSによると私が乗ったLW5W型MPVなんて60万円引きだったという。その代わり下取りも安い、ということでしょうがなく乗り潰す、という顧客も少なくないという。なるほど、MPVが長寿だなと思った。旧型デミオも、ディーラーの折込チラシでナビ付き9,980,000円を見てたから、軽を買う前にデミオは如何?と奨めたくなったものだ。スカイアクティブコンセプト以降、マツダは変わろうとしている。初めての新車マツダ車となったが、CX-3の強気な価格設定については後日、考察するとして、値引きについては下取り車からまずまず取れたと思う。スイフトをどうやって売るかは別の機会に書くが、タイミングが悪かった事もあってディーラーでの下取りとした。最後に私が逃した切り札、燃料満タン納車を忘れてしまったことは後悔している。これ、鉄板だろうからユーザーさんは使うべき。
さて遡る事2月22日から4週にわたって商談してきたCX-3。目出たく3月21日に実印を押印し成約となった。さて気になる納車日は発売前にあれだけ騒がれていたので納車日は刻一刻と後ずさりしていくのかと思いきや、意外と早く1ヶ月後の予想。ディーラーから発注すると車体番号が採番されラインに乗っかるのがGW明け、ということらしい。広島の宇品で生産され、4月の3週目には船に乗せられ衣浦港に到着、ディーラーに納品されれば登録をする、といった段取り。だいたい4月の22日にはナンバープレートが付くとのことで、納車日はその週末の4月25日とした。次回はいよいよ自分のものとなったCX-3納車〜ファーストインプレッションを認めていこう。
<2015年6月1日>