【君は月夜に光り輝く +Fragments】
メディアワークス文庫 著:佐野 徹夜

僕は今でも君が好きだよ――映画化も決定、あの感動作が再びよみがえる!
不治の病「発光病」で入院したままの少女・渡良瀬まみず。余命ゼロの彼女が、クラスメイトの僕・岡田卓也に託したのは「最期の願い」の代行だった。限られた時間を懸命に生きた、まみずと卓也の物語の「その後」とは――。
「僕は今でも君が好きだよ」少しだけ大人になった卓也と、卓也の友人・香山のそれぞれが描かれていく。他、本編では語り尽くせなかった二人のエピソードも収録。
生と死、愛と命の輝きを描き、日本中を感動に包み込んだ『君月』ワールドが再び。
などという仰々しい触れ込みで書店に並んだ君月ワールドの後日談となる小説です。
とは言っても、六編の短編小説が並ぶ、ショートストーリーズのような一冊です。
「もし、キミと」
「私がいつか死ぬまでの日々」
「初恋の亡霊」
「渡良瀬まみずの黒歴史ノート」
「ユーリと声」
「海を抱きしめて」
上気の六編が収録されていますが、全体の六割~七割のページは香山君の後日談にあたる「ユーリと声」で占められています。残りの五作品は、ショートショートと読んで良いほどのあっけなさです。
ゆえに、「ユーリと声」を楽しめない人にとっては買う価値の無い一冊ともいえます。ちなみに「もし、キミと」は僅か4ページしかなく、ただのプロローグともいえます。
個人的に好きなのは、本編をまみず視点で描いた「私がいつか死ぬまでの日々」
彼女が発光病を患ってから卓也を出会うまで、そして出会ってからの日々を描いたショートストーリーですが、まみずはこんなことを考えていたんだな~と感慨に耽ることが出来ました。
もっともこちらの作品も、32ページしかありませんが(苦笑)
なのでどうしても触れないといけないのが、「ユーリと声」になるんですが、こちらは本編でも女癖の悪さを窺わせていた香山君が、案の定女癖の悪さを披露している後日談です。
悩みを抱えつつも、やっぱりクズの香山君が、彼以上にクズ人間である侑李さんという女性と、彼女の娘である声に振り回されるお話です。
声も小学生とは思えないほどの達観した感性を持った子供であり、やはり彼らと同じようにクズです。
登場人物が全員クズで、ストーリーもわりとダラダラと展開されていくので、多分……大部分の人が取っ付き難い(読みにくい)と感じる物語だと思います。
彼らなりの心の闇は理解できるし、共感もできるんだけど、なんだかな~とモヤモヤするのも事実です。嫌いじゃないんですけど、面白い話でもありません。
そんな訳で、総評としては香山君が好きだ! という人以外は、買う価値の無い一冊だと思います。君月が好きな人でも、買う価値はありません。
もう一度言いますが、香山君が好きな方だけどうぞ。です。
文章:☆☆☆
ストーリー:☆☆
読みやすさ:☆☆☆☆
総合評価:☆☆
Posted at 2019/06/09 19:53:23 | |
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