前回の記事ではギター集めでしたけれど。実はギターの演奏は得意ではないです。私はギターにおいても製作型だったのですね。
いつ買ったかも覚えていない、Grecoの…ミラージュのなんかですね。品番は覚えてません。
ガーゴイルの与太郎モデルだったと思います。90年代のグレコだとおもうのですけど、どうもこの頃のグレコは好きじゃないです。
70年台後半のギターは質感が良かったのですけれど、この頃ギターはセールス的にも振るわなかったんでしょうね。90年代の良いギターなんて、ハンドメイド品でもない限りロクなものがないイメージです。主に木材面でですね。
しかし今回のギター、確かに塗装は酷いもんでしたが。
剥がしてみれば、まあまあ悪くないボディ材。アルダーかその代替材でしょう。重さがちょうどよく音も普通ですが、何より素晴らしいのは加工性。
木材の加工性というのは単に柔らかければ良いというわけでもないです。
硬い木の代表として紫檀(シタン、ローズウッド)や黒檀(コクタン、エボニー)がありますけれど、それが加工しにくいのは確かです。感覚的には金属に近い硬さで、ドリルで穴ひとつ開けるのにも苦労します。
しかし…これは00年台前後のGrassRootsやAria ProIIに多いのですが…なんかよくわかんない柔らかい木が使われている事があるんですね。
質的には桐に近いです。繊維同士の繋がりが悪く、とにかく割れる。木目が安定していなくて、うねっている…ので、削っているときに少し引っ掛けると滅茶苦茶に割れ目ができます。そして何より不便なことに塗装剥離のとき、木目に引っかかるから刃物が使えない…。極め付けは、どうしようもなく音が悪い…。
とまあ、そんな木だろうなと思って剥がしたら、全然違ったので儲けたものです。むしろこの時代に8万円程度のギターでこれだけ健闘しているのは評価すべきですね。えらいです。
リペアのプランに移りましょう。フロイドローズ系のブリッジが付いていたようですが、私自身フロイドローズが好きではないのでTOM系にします。
HSH系のピックアップ構成も嫌なので2ハムにします。そんでブリッジに近いボリュームも邪魔なので移動です。トグルスイッチもあるし、私にはワンボリュームあれば十分でしょう。スイッチまみれ系も惹かれますが。
このギターはなんとなく、メインにはならない気がします。勘ですね。それであまり真剣には仕事しません。適当に密度のある木片を切り出して、タイドボンドを塗って詰め込みます。これで十分です。
タイドボンド…エレキギターの世界では最もメジャーな接着剤だと思います。ニカワに代わる木工接着剤ですね。
時々ニカワで接着されたギターをバラしますが、匂いが。昔の事なのでうろ覚えですが、ヘナ系の髪染めとか廃デフオイルの匂いだと思います。あらゆる理由でニカワを遠ざけたい気持ちがタイドボンドを産んだのでしょう。実際作業性は最高です。
私は指につけて塗るのですけれど、しばらく乾燥させてネリネリすれば練り消しのようになって簡単に取れます。なんなら完全に乾かせばペロリと取れます。ほぼ無臭です。一般的な木工ボンドの香り。
これを圧着…圧をかけたまま接着すれば、元の木より強い強度を持ちます。割り箸を折ってくっつけたら、次からは別の場所で折れるという逸話も。今後木工で高い強度を必要とする方は…米フランクリン社のタイドボンドをご用命下さい。
あーなんだっけ、そういえばこの接着剤も結構各ギターメーカーが苦労してきたようで。研究熱心で常に接着剤を変えているメーカーもありました。エピフォンの90年代に、確か接着関係でヤバイのがあったように記憶しています。
そうそう、ロータス社のエリーゼ…とても軽いスポーツカー。あれはモノコックが接着だと聞いた事がありますね。2液の化学反応で硬化するエポキシ系。
師匠によると、事故車やレストア社のAピラーをカットした時、溶接は避ける場合があるとのこと。溶接は熱により金属の歪みが出るので、どっかで寸法がおかしくなるのですね。上手くやれるのは単に溶接工の腕です。溶接は単にくっつけることだけ考えてやるわけじゃないのですよね。確か、エキマニの割れの原因も、製作や使用熱での歪み設計の甘さによるものが大きかったと思います。
…とまあとにかく穴を埋めていきますが、今日はセンターピックアップ穴とフロイド穴を少し残しました。
なんならセットネックにしようと思っています。
塗装を剥がす時は結構楽をしました。ガストーチで塗装を直に炙り、刃物でぺろっと剥がす。昔はアイロンとかでやってましたが効率悪いです。しかもアイロンは時々木材割れますし。
サイドを剥がす時、肝心なこと忘れてました。ブランク2年で焼きが回って…セルロイド製のバインディング、縁取りが燃えやすいの忘れてました。ガッツリ燃えたのでバインディングは全部剥がしました。
JGTCだったかな、90年台前半まではレーシングカーのボディの中に発泡ウレタンを入れることでボディ剛性を高める手法がよく取られていたそうです。しかし発泡ウレタンって、特別外気を取り込まなくともよく燃えるんですね。消火のセオリーは窒息鎮火ですが、こいつは空気の入り口を塞いだところで燃え尽きるまで燃えます。だから禁止になったのだそうですね。
どっちにしてもウレタンで剛性が出るのはウレタンのハリがある時期だけのお話で、ほどなくそのボディは使えなくなるようです。
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2016/11/19 00:59:05