
そんなわけでクラウンという車、私が抱く印象としては生きた化石です。
これだけ長く作られていながら、どの世代でも一目で車種がわかる、珍しい車。
日本の車を代表できそうなのって、クラウンじゃないですかね。センチュリーとかGTRは一般性が薄いので、やっぱり妥当なところクラウン。
それにパトカーですから。公費で買う車がそんなにクセが強いはずがない。警ら活動は娯楽じゃないですから、そんなに変な車は買わないでしょう。
そうすると、何もかも普通な車を想像します。
なにせ乗ったことがない車、ちょっと乗ってみたかった車。よくは知りませんが、クラウンアスリートという車のようです。
キーは一般的なリモコンキーです。
カードキーみたいな鍵も付いてきましたけど、よく分かんないのでその辺に置いておきました。なんか面倒くさそうなので…。
鍵を開けると、勝手にミラーが開きます。95年式のスカイラインに乗る私には、へぇ…という感じ。
10年ぐらい前のミニバンにも付いている機能なので、まぁこれぐらいは付いてるでしょう。
しかし…洗車する時にキーをポケットに入れていると、勝手にミラーが開いたり閉じたりして鬱陶しかったです。オートミラーのスイッチがあるようですけど、初見で気づかない感じの場所。
キーを中に入れたまま立ち去ると、ずっとピーピー鳴ってうるさいです。洗車の時とかDIYの時、鬱陶しい。
ドアの動きに少しクセがあります。ドアの金具…ヒンジの部分の形状に工夫がしてあるのかな。
上品に開け閉めできるように、ドアの角度によってトルクが違います。いい感じに閉まるように、いい感じに止まるようになっていますね。個人的には開け閉めでギーギー言わないだけで高級車です。
半ドアにして2秒ぐらい置いておくと、勝手にちゃんとドアが閉まります。いかにも電動感のある動きで、ドア面のズレが吸い込まれていきます。今の車にはこんな機能があるのですね。中の人は大変そうです。
乗り込むと、とても見覚えのあるシート。左足首を目指して伸ばす手元に、レバーがない。
見た感じ、アリストと同じ電動シートです。
元々アリストとクラウンって、ほぼ同じような車です。同じ材料で作られた別の料理みたいなもので、キャラはカブってない。
でもこのアリストって、もう20年ぐらい前の車のような…。トヨタの電動シートは結構長いこと変わらないみたい。
電動シートについては、正直めんどくさいです。
シートなんてのはガチャッと動かしてサッサと走り出しちゃうもんです。わずか0.5秒。
電動シートというやつは、電池の切れかけたプラレールみたいな速度で動きます。超ゆっくり。遅刻しそうな時に食パンくわえて乗る車じゃないですね。
調整できるのはシートの前後位置、座面前部の上げ下げ、座面後部の上げ下げ、シートのリクライニングですかね。
前部をマックスに下げて後部をマックスに上げると、まるで滑り台のような座り心地になります。トヨタは一体何をさせたいのでしょう。
ちなみに電動シートは常時電源です。エンジンとか掛けなくてもキーを挿さなくても、常に好きなだけ動かせます。
すごくバッテリーに負担になるはず。エンジン切ったまま4人で前後左右の座席調整をしながら窓の開け閉めをして遊んでいれば、5分しないうちにエンジン掛からなくなると思います。子供にイタズラされたら諦めましょう。
キーを挿すところはないです。キーは持ち込むだけで良い様子。
右手のところにボタンが付いてます。プッシュスタートというやつですね。
これを最初に押すと、ハンドルと椅子が電動で動きます。
もともとハンドルが上奥方向に引っ込んでます。シートは少し後ろになってます。
乗り降りしやすいようにという配慮だと思います。ただ、もうちょい下げてくれないと降りにくいです。下げるのに5秒ぐらい待ちます。
決して乗り降りがしやすい車とは思わなかったですね。2ドアの33スカイラインの方がマシな乗降性。
そうそう、電動収納ステアリングについて。これが信頼できるシステムなら良いのですけど、もしこれが壊れたら?
実際あることのようです。特にBMWなんかだと、収納された状態で壊れて動かなくなるようです。
蛇足機能に不便を強いられるのが高級車なのか…ちょっとそれは疑問です。
アリストもこんな感じでした。というか、かなりの部分アリストです。さすがにアリストはキー刺しなので、キーの差し込みに連動して動きます。
アリストのキーは、バタフライナイフみたいに仕舞ってあります。
普段はマッチ箱みたいな形で、ボタンを押すとキー部分がシュッと飛び出します。アメリカ映画の、噛ませ犬の若い不良役みたいな感じです。暇な時にそれで遊んでたら職質されると思います。
あと飛び出す分には良いですけど、なぜかスムーズに収納できません。うーん。
クラウンに戻って。
電動シートは、持ち主の好きなシートの状態を記憶できる機能が付いています。というか、それがないと電動の意味がないようなもの。
なお2人分まで位置を記憶できます。ちょっと尻軽な車です。
エンジン音は、すこーし聞こえてくる程度。遮音性がものすごいですね。エンジンルームからの音に限らず、走っていても他の車の走行音とか聞こえてきません。
こんな車は初めて乗りました。改造されて訳分からんホイールにろくなタイヤ履いてないのに、ロードノイズもほぼ聞こえないようなもの。走行中にクリアに会話ができます。
駐車時のハンドルは物凄く軽いです。
走り出すとそう思わなかったので、違和感なく速度連動で重さを変えているのでしょう。
ということは電動パワステですかね。油圧だと出来そうにない芸当。
ただ何故か、走り出して10分ぐらいで疲れました。腰が痛いです。シートが悪い気がします。
それに運転姿勢も馴染みません。結構調整できる割には、特に良い位置はないみたい。シートと運転姿勢なら大昔のスカイラインの方が良いです。
アクセルペダルに物凄くクセがあります。クリープ現象での動きは割とトルクがない感じ。少しアクセルを踏むと、全く進みません。故障かと思うほど進みません。
もう少しだけ踏むと、いきなり加速します。
30分乗りましたけど慣れませんでした。アクセルペダルの特性が絶対おかしいです。
ちなみにペダルの形自体はアリストと同じ。いわゆるオルガンペダルで、下から生えてるペダルです。ペダル自体の大きさは巨大で、デカい下駄のよう。夏祭りとかに履いていくやつです。
後方視界はぶっちゃけ悪いです。バックするの怖い。最近の、バックモニターありきの車。バックモニターが苦手な人にはすごく運転難しいです。
メーター内のモニターには燃費計が付いています。常にリッター6ぐらい。
多分燃料噴射圧と燃料弁(インジェクター)の開弁時間から算出しているのでしょう。
砂利の駐車場でバックする時は、癖のあるアクセルが物凄く悪さをします。
砂利道をクリープ現象だけでスイスイ進むほどの力はない車です。バック駐車の時に、ブレーキだけ踏めばいいタイプのオートマ車ではないです。
アクセル踏まなければ動かない…アクセル踏めば、後輪が空転しながらバックします。なんなんですかね…。普通の車じゃない。
一応わたし、アクセルコントロールは細かく出来る方です。
愛車スカイラインにはデジタルのアクセル開度計が付いているので、街乗りなら%単位でコントロール出来ます。
でもこのクラウンはムリ。車庫にするなら綺麗な舗装の平地がよいです。
ギアはステップオートマともCVTとも取れる変わり方をします。すごく細かく刻んで変速しているのか、それとも無段階変速なのか…。
車の格的にいえば、最近の多段オートマだと思うのですけど、普通に乗っててイマイチ確信出来るような場面がなかったです。乗り方によって一応シフトショックは出ます。踏み込めばギアをホールドして加速しようとはするのですけど…CVTだって車用のはそんな感じですし。
CVTでリッター6はないと思いますけど。そんなちぐはぐな車をトヨタは作らない気がする。
エアコンは、運転席と助手席が独立した系統になっているようです。別々な温度を設定できます。アリストもそうだったような。
ただ、設定できるのは温度だけ。より詳細な決定権は譲ってくれないようです。車が勝手に風量とかコントロールするので、冷たい微風が欲しいときとか困ります。
設定温度を下げると極寒の暴風、上げるとヌルい微風。
シートベルトをしないで走ると、警告音がうるさいです。停車しても鳴り出します。冷蔵庫を開けっぱなしにしたような、急かす音質。
駐車場内でグルグルと空きを探している時なんか結構不快です。
サイドブレーキはサイドにありません。クラッチのところにあります。
しかもクラッチでいえば相当手前。
一般的な足サイドブレーキ車の感覚でも、相当足を上げないと踏めないです。手間です。
戻す時は再びふむ…のではなく、左手を伸ばした辺りにあるレバーを引きます。給油口のフタを開けるレバーのような感じ。初見の人は少し戸惑うかなぁ。
車自体は、遅くはないです。すごく速くはないけど、遅くはない感じ。
その反面、ブレーキが全然効かないです。効き始めが深いとかではなく、純粋に効きが悪いです。初乗りで飛ばすと死にます。
初代ヴォクシーより遙かに止まりません。普通の車よりも止まらない感じ。
…と、なんか良くない部分が多かったような。
良くないというより、クセが強い感じが意外。誰もが知ってる車が意外と普通でないことが意外でした。
私としては、車って免許があれば誰でもサッと乗れる道具だと思います。
別に特異な機能が付いていることがイヤなわけじゃないです。
でも、そういう機能って一見して分かるように付いてるべきだと思います。
スイッチの場所とか、アイコンとか操作とか…説明しないと理解できないような作りって機能的と言えますかね。
少なくとも、デザインとしては優れてないと思います。洗練されているとは感じません。
毎日乗る車ですから、パーキングブレーキをもっと疲れずに掛けられるとか、疲れて運転交代してもらっても一々説明しなくていいとか、そういうのが思いやりじゃないかなと思いますが、どうでしょう。
私のスカイラインはマニュアル車ですけれど、そっちの方が街乗りは楽です。
ギアを替えるとかそんな事じゃなくて。信号待ちの時のマニュアル車はギアをニュートラルに入れて…というかギア抜いて、手元のサイドブレーキ引くだけ。減速時にクラッチさえ踏みません。フットブレーキを踏むのさえ面倒な時は、下手するとサイドブレーキ停車です。
あとは胡座をかいていようと自由。うっかりすると寝そうなぐらいです。
そのサイドブレーキが本当にいい位置にあるのが、90年代のスカイライン。普段運転中になんとなく手を置いてる人だって多いと思います。左手が自然に休む位置にサイドブレーキがあって、すぐ近くに垂直にシフトノブ。信号待ちは左手を殆ど動かさずに乗り切れます。
ちょっとした発進はギア入れて、のんびり左足を上げるだけ。アクセルなんか不要です。普通車クラスのマニュアル車の微調整はアクセル踏みません。
オートマだって、ドライブレンジから一つあげればニュートラルですけども。あの足パーキングブレーキが一々曲者です。あんなのいちいち踏むぐらいなら、普通にブレーキ踏んでた方が何倍も楽だったりします。
でもその足が緩むと危険なのがオートマです。オートマに右足が休まる時間はないのです。休まらないと、信号を見ている頭だって疲れてきます。
究極はパーキングレンジに入れる事ですけど…それって一瞬バックランプ付きますよね。変な人に絡まれないうちに辞めた方がいい習慣だと思います。
センターコンソールが小物入れで埋まってるような車なんて、別に足サイドにする必要ないと思うのですけどね。サイドブレーキはサイドブレーキであるべきです。
教習所で…フットブレーキが効かなくなったらサイドブレーキで徐々に減速するように…なんて言いますが。確かにそれは嘘じゃなくて、フットブレーキとサイドブレーキは結構な確率で完全に別の構造になっています。だから片方効かなくても片方は効いたりする…ので、じわじわ効くサイドは命綱です。
足サイドじゃそんな減速無理です。すごく危険な止まり方しかしません。解除だってやりにくい。だからなのか、なぜか最近の車のパーキングブレーキにはABSがついてたりしますけど…なんだか本末転倒というかお粗末というか。
フットブレーキが効かないなんて映画や怪談ぐらいのように思うかもしれないですけど、意外とあります。フットブレーキの油圧ピストン構造って、そこまで超信頼できる構造してないです。整備士のちょっとしたミスで簡単に効かなくなります。
スカイラインのサイドブレーキは特別です。ドリフトに使われるぐらいの意味不明最強サイドを持っていて…これ、熱さえ持たなければ普通に街乗りに使えるレベルで効きますし、フットブレーキ並みにコントロールもできます。
なんだかこう、高級車の代名詞みたいな車が意外と快適じゃなかった…なんてのがショックな経験でした。慣れの問題だけじゃなく、そもそももっと基本的な車の出来の問題。燃費も同じ程度なら、私は4ドアのスカイラインやローレルの方に魅力を感じます。そっちの方が疲れなくて快適です。ローレルなら少なくとも同世代のクラウンにそう劣る事もないでしょうし。
という…なんだかイマイチ思ってたのと違うインプレになりました。いつかはクラウン…が何か、もっと古い車に取って代わられた気がしました。