2017年09月04日
RB水温論
ながーーいのを。
…
気になることを聞きました。
"RBエンジンのドリフトは、サーモスタットを外すべき。
そうでなければウォーターハンマーが起きて、エンジン本体が壊れる。
これまで何度もそういう壊れ方を見てきた。"
とのこと。
初めて聞いたけど…ほんとかな?
どういう事か、詳しく説明すると。
①水道の蛇口を開けると、勢いよく水がスイスイ出る。
②動く水には慣性がある(勢いがある)。
③蛇口を急に閉めると、勢いのついた水の行き場がなくなる。
④かといって、"水"は圧縮できないのでパワーを発散できない。水さんイライラ。
⑤他の水を攻撃できないなら、周りの水以外の物を攻撃して発散する。
⑥水道管とか蛇口にダメージ。
というのが、ウォーターハンマー。
お水がギュッとして、結構えげつなく叩いちゃう。ざっっっくり簡単に説明をするとこんな感じかな?
で、サーモスタットとウォーターハンマーがどう関係するかという点については、
①サーモスタットは76.5度で開閉する
②エンジンを流れる冷却水が76.5度になる
③サーモ開き、エンジンとラジエターが繋がる
④走行風でエンジン冷却水を冷やせるようになる
⑤水温が下がると、サーモ(蛇口)が閉じる
⑥巡ってた冷却水の行き先が塞がれ、ウォーターハンマー
という事かなと思います。
うーん…
いくつか納得できない点が。
・ハード走行をしている時、サーモが開閉するような状況があるのか
…水温(ロア側)が76.5度付近を行き来するような状況なら、サーモはよく動くでしょうけれども。
RBエンジンのハード走行時の水温は、あと2回りは高いところを推移します。
・サーモの動き方
…76.5度になったからといって、ソレノイドのように瞬時に開け閉めされる訳ではないです。
少なくとも、水道の蛇口をいきなり閉めるような、そういうせき止め方ではないです。
水温だって精々0.1度/秒 程度の動きなので、動きはとても緩慢です。
・水ラインの経路
…RB25の水ラインは、ウォーターポンプ→エンジン
→アッパーホース(ゴム)→ラジエター→ロアホース(ゴム)
→サーモスタット→ウォーターポンプ→エンジン→…
サーモスタットで発生した衝撃波は、エンジン本体まで届くでしょうか。微妙なところです。
たぶん、ウォーターハンマー由来の故障ではない気がします。
サーモレス仕様についても、ちょっと疑問です。
・高負荷時の水温を下げる効果はない
…サーモが関係する温度は76.5度で、高負荷水温は85度以上。
高負荷の時、サーモは全開です。
・水路抵抗の変化
…サーモは全開時でも、いくらか水路を狭めます。
この時ごく僅かに水路の抵抗になるので、それを嫌って低抵抗なサーモが販売されています。
もっと水をたくさん循環させて、ラジエターにもっと仕事をさせよう…という発想なのですが、ラジエターの冷却性能がそのままである限り殆ど変化はないと思われます。
むしろサーモの抵抗が0になると、エンジンに流れ込む水勢や脈動を受け止める構造がなくなるので…どこか別の場所に変な動圧が掛かって水漏れの原因になります。
ヘッドガスケットへの静圧も変わってくる恐れがあるので、下手をするとそこで水漏れして…その時こそ有名なウォーターハンマー。
・オーバークール
…そもそも現実的に、サーモ無しで暖気が完了できるのか謎です。
スポーツ走行は暖気が済んでから始めるものです。水温80度ぐらいまで。
何のための暖気か。オイルとかじゃないです。
エンジンは高精度で組み合わされた擦り合わせの塊です。
寸法の狂いがあると、そこにあってはならないスキマが生まれます。
そこからオイルが通り抜けてブローバイガスになり、吸排気をギトギトに汚します。
高速で動き回るシャフト・ピストンにスキマがあると、シャフトが細かく暴れまわります。特に高回転でエンジンを少しずつ壊します。
ギアのバックラッシュのような感じに。
RBはアルミと鉄の集合体なのですが、特にアルミの熱変化は想像より結構エグいです。
正しい温度で使わないと正しい寸法の部品じゃなくなるので、すごく精度の低いエンジンになります。
そんな訳だから暖気完了まで待たなきゃいけないのですけれど…
それまでアイドリングして待つ→熱がそれほど出ない→ラジエターが放熱
となると、外気温とそんなに変わらない温度のまま上がらない気がします。ラジエターの性能にもよりますし、試したことはないですが。
・オーバークールとECU
…ラジエターアッパーホースのエンジン側に、純正の水温センサーがいます。インマニにねじ込んであります。
こいつはECUに水温を教えてます。
暖気完了までの間、ECUは結構いろいろと気を遣ってエンジンを制御します。
はやく水温を上げようと燃料を濃くしたり、ブーストの解放圧を下げたり、パワーを抑えたり。
片想いのように、影で一方的な努力をしています。暖気が終わらないままでエンジンに何が起こるか、ECUはよく知ってます。
…小説とかアニメとか、なんかそういう役どころのキャラって結構いますよね。
ECUの暖気制御にパワーを抑えられるのが嫌なら、ECUを書き換えるか、水温センサーに細工をして騙すか。
チューンナップが目的ならば、それぐらいに水温だって現車合わせをすべきです。
そうすると、街乗りでサーモレスは非常にマズイです。
エンジン精度を採るレーシングユースなら尚更暖気は必要ですし、抵抗変化などに合わせて水回りの耐圧を全て見直さなければトラブルの元でしょう。
…と。私は今のところ、そういう結論になってしまいます。
いや実は、本当のところは。
上記の意見を覆すような情報を与えてくれる人が現れてくれて、それでカルチャーショックを受けてみたい…という、ゲスな下心があって長文を書いてます。
みんからはRBに少なからず意見を持っている人が多いでしょうから。
場合によっては、私がガチガチのサーモレス派に転向するかも…?
もちろん、エンジンは各人の信条に基づいて作るべきです。
何かを追い求めるとエンジンは、いつか必ず壊れます。
その壊れ方が納得いくものになるか不本意なものになるか。
それは自分の信念がエンジンに現れているかどうかによると思いますからね。
「店の人がこの前なんかよく分かんないもの付けた。それからすぐエンジン壊れた。許せん。」だと、絶対にお互いモヤモヤしますし。
自分の中でしっかりメニューを選んで、メリットもリスクも頭の中にある事が大切です。
そしたら壊れた時に「あー、アレはやっぱダメだったか…次はどうしようかな?」と考える楽しさがありますしね。
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Posted at
2017/09/04 17:02:44
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