
クルマネタです。中国でも世界の高級車は跳梁しております。右前方のクルマはポルシェのカイエンSです。ふむ、やるなぁ、と眺めていてアッと気が付きました。写真を拡大してみてください。この写真には何も修正を加えておりません。お気付き?そう、ナンバープレートが付いていないのです。現地の人に聞いてみると「新車で、まだナンバーが交付される前なんじゃない」とのことです。「あるいは名義変更中なのかもしれませんね」と、まったく意に介しておりません。注意して観察していると、確かにナンバー無しのクルマが公道をチラホラ走っております。タクシーでもいました。ナンバーの交付(切替)という手続きはどこの国でもあるのですが、その時期に乗って良いのか悪いのか、ここが倫理観の分かれ目です。ここではそれは「是」なんでしょうね。
飲酒運転においても寛容です、飲む側の解釈が(笑)。今回の滞在中も関係会社の方々と毎晩食事をしましたが、ハンドルを握る人 も普通に飲むのです。私の「お酒を飲んで運転しても大丈夫なのですか?」との質問に対する答えがイケてました。「酔っ払って運転するとダメヨ。でも私、これくらいでは酔わないからダイジョブ」でした。この答えは当を得ていると思います。日本もほんの数年前まではこの感覚の持ち主はゴマンといたのですから。中国は、少しビハインドなだけなんですが、今の日本人の感覚から言えば驚きに値します。でもその驚きは自分では操作できない周辺の常識のラインがたまたま変わっただけで、自分が偉くなったわけではないですよね。この辺を自覚しながら、彼らの常識を理解してあげることが肝要だと思ったりします。
それにしても中国は不思議な国です。日本とはまさに一衣帯水の地でありながら、現在では感覚的にかなり遠い国なのです。特にビジネス上では欧米の距離にくらべて倍以上に遠いと感じます。私たちは中国から宗教や漢字といった極めてベーシックな要素をもらい受けました。中国は我々の文明的宗主国であり、アジアの盟主として長く歴史に君臨してきたことはご存知の通りです。本来はもっとも近く感じるはずなのです。ところがこの国は、多分、国土が大きすぎるがために、歴史上のある一点から文明的に遅れるような政策を選択することを余儀なくされてしまいました。これが彼我の距離を実際よりはるかに大きくしてしまっているのではないでしょうか。
いつも中国に行くと感じる事はこの国の多様性です。一見、中国には中国人しかいないように思うのですが、実は多くの民族でこの国は成り立っています。中国の歴史は民族の対立の歴史であることを思い出してください。少し離れた出身地になると、まず言葉(マザータン)が違います。顔付も違います。感性も違います。アメリカのように肌の色の違う人種の坩堝なら分かりやすいのですが、中国の人々は外見は似ているのに本質が坩堝なんです。とりわけアモイ市のように、早くから改革開放路線に組み込まれ、工業特別区となった地域ではその傾向が強いです。中国全土からここに出稼ぎにこられるわけですから。
多様性のなかでも中国独特だなと感じるのは、時間軸に対してのそれです。欧米では肌の色や貧富に差があっても、時代感覚はそう大きく変わらないものを共有しています。しかし、中国では同じ現代に、10年前の人、20年前の人、50年前の人、100年前の人がタイムマシンに乗って出てきているような感じを受けるんです。内陸部の農村などでは今だに時間が止まっているところがあるのですが、その止まった時間の中で生まれ、教育され、大人になった人が、ある日突然現代の急拡大中都市に出てくるのです。
過去の感性の人は、都市生活のイロハが分からないことは勿論、価値観そのものが別次元であるにも関わらず、最新のシチズンと同じ空間である日突然共同生活を始めるのですから、そりゃ大変です。一例を挙げれば、ベンツの走る大通りをヤギの引くリヤカーが一緒に通っていたり、最新のファッションの人と50年前の歴史的衣服の人が隣通しでバスに乗っていたりするわけです。他にも色々な場面で時代的にちぐはぐな光景が散見されます。これが中国の多様性の大きな特徴だと感じています。
私は特に中国通でもなく、知識も人並み以上にはないのですが、彼の地ではありふれた日常のなかでも異文化を感じることが多いです。しかしそれは、今の私の価値観や常識から判断した異文化であって、もう少し視野を時間的且空間的に広げてみれば、同じ民族としての共通点もまた感じます。だって、もともと我々日本人はアイヌ民族と琉球民族以外は中国大陸や朝鮮半島からのボートピープルの末裔ですもんね。ルーツは同じなんです。辿ってきた道のりは時間的に前後したり、文明的に前後したりしてるところはあっても似たり寄ったりです。みんな祖先は同じだと思うと心が開けますね。
今回、当初の予想に反して長文で私の異文化体験を紹介させていただくことになったのですが、コメントをいただいたみなさんとの会話を通じて、自分自身も中国という国をもう一度考え直す機会を得ることが出来ました。有難うございました。一部で中国の人をあたかも茶化すような表現があり、ご不快を感じた方がおられたかも知れませんが、もとより悪意や侮蔑の意識は毛頭なく、寧ろあらためて中国という国と人の偉大さを最認識し尊崇の念を感じていることをご理解いただきたいと思います。毎日、駄文にお付き合いいただき有難うございます。また機会があれば異文化紹介を通じて皆さんと楽しく文化人類学につき考察をしたいと希望しております。
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アレ、これクルマ関係のブログとちゃうん?
PS
チョットだけ怪しい写真も...
Posted at 2008/09/13 02:27:09 | |
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