燃料ポンプ交換、車内ガソリン臭対策として

KWカングーではときどきあるらしいのですが、車内が妙にガソリン臭いということがここ数年、特に夏に確認されていました。リコールになったエンジンルーム内の燃料配管破損ではありません。車体の後方が臭います。いろいろ調べて、燃料ポンプの一部に亀裂が入ることがあるらしく、私もそれでした。

参考URLは私の過去記事で、動画URLはフランスで似たような作業（ただしディーゼル車）をされた方のYoutubeです。

燃料ポンプは燃料タンクの上面についていますが、KWカングーはリアシート下のサービスホールがなく、基本的には燃料タンクを下ろさないと燃料ポンプをさわることができません。しかもKWカングーは排気パイプをまたぐように燃料タンクが作られているためタンクを下ろすことも容易ではありません。今回、燃料タンクを完全に下ろさずに燃料ポンプを交換することに成功しました。
まず、車体下の作業スペースを確保するために後輪をスロープに乗り上げます。スロープはジャッキアップ＆馬よりはるかに安全なのでよい方法です。

左リアのインナーフェンダーを外して、このカプラー（燃料ポンプ＋ABSセンサのハーネス）を外します。また、給油パイプを固定しているボルトも外します(13mm)。

そのハーネスの反対側にある、後輪のABSセンサのコネクタを２つ、外します。中間に車体に固定するプッシュリベットもありました。

給油口を外します。

車体下で、燃料を送るパイプ、チャコールキャニスターからの燃料蒸気をエンジンが吸い込むパイプ、ブレーキパイプ2つの計４本がこのような部品で固定されています。ブレーキパイプを部品から外して、タンクを下ろしたときに燃料系の２本が車体から離れられるようにします。
これが５か所あるので、すべて外します。

燃料タンクの右のほうについているチャコールキャニスターを外します。カプラーの配管を２つと、単に差し込まれているだけのパイプを１つ、外してから、燃料タンクとの間にヘラなどを入れてキャニスターを外します。（写真は外れた状態）

ここでスペアタイヤとスペアタイヤキャリアを外します。

後の作業でマフラーの取り付けを緩めたときに排気パイプをリアのトーションビーム部に乗っけておくことになりますが、このブレーキパイプに排気パイプが若干ぶつかるので、念のためブレーキパイプをこのプラスチックの固定具から外しておきます。3か所。

遮熱板を外します。まずここの変なナットのようなものを24mmのソケットで外します。あと1か所、板バネのような固定金具をマイナスドライバーなどで外します。ビヨーンと跳ねてくるので目に入らないように気を付けましょう。

中間マフラーの釣りゴムを車体に固定している金具を外します。13mmのボルト4本。釣りゴムを取らなくていいので助かります。

次に写真ありませんが車体の一番後ろでメインマフラーの釣りゴムを車体に固定している部品を15mmのボルト2本で外します。
するとこのように排気パイプがトーションビームに乗っかる状態になります。

遮熱板をずらして前方に押しやって、できるだけ燃料タンクから遠ざけます。

そもそもの話ですが、作業開始前に残り走行距離が50kmを切るくらいまで燃料を減らしておきます。
このホースバンドのカシメ部をニッパーで開いてバンドを外します。ホースバンドは2か所ありますが、タンクに近いほうを外しましょう。
その上にあるブリーザーパイプもカプラーを外します。

燃料パイプを引っこ抜きます。意外とぬるっと簡単に抜けました。208のラジエターホースを抜いた時も思いましたが、欧州車はホースは緩めでバンドに
依存している感がありますね。
このパイプの中にも逆止弁がついていました。

気休め程度ですがパイプを適当にふさいでおきます。
ホースバンドはこれを使いました。
この手のバンドは最大径付近で使うと真円度が高くて良いです。
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燃料タンクを固定しているボルト5本(13mm)を外すと、タンクがこのようにおりて、燃料ポンプが見えます。

燃料タンクを車体の外に出せないか頑張りましたが、無理でした。車体をジャッキアップしてトーションビームを車体から離してトーションビームに乗っかっているマフラーを車体から離さないと、タンクを抜き取ることはできません。しかし燃料ポンプ交換はこの状態で可能です。

燃料のカプラーを外します。残圧で20ccくらいガソリンが噴き出すので、ウェスでつかんで抜くといいと思います。
電気配線のコネクタも外します。
（なお写真は新ポンプを取付完了後のものを流用）

買っておいたSSTで、ロックリングを外します。Youtubeの海外系動画などではみんなマイナスドライバーをハンマーでたたいてロックリングを回していますが、かなり固く締まっているので、あまりいい方法とは思えないです。
同じ車種ではないのであくまで参考ですが110 Nmとかのトルクだとか・・・ホイールボルトと同じですね。

（なお写真は新ポンプを取付時のものを流用）

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旧ポンプを外します。
結構スペースはあるので、簡単に抜けます。
このへんからガソリン臭が激しくなるので、扇風機をバンバン当てて換気するとか、防毒マスクをするとか対策したほうがいいと思います。

新しいOリングをつけます。タンクとポンプのフランジ面の上下の面でリングを挟む感じですね。リングがよじれているとこの場所にとどまってくれないので、結構気を使います。Oリングとロックリングは新品を使いました。ロックリングは再使用できる気もしますが、容易に点検できないところなので新品を使っておくのが無難ですね。

4.6万km走行車から外したという中古ポンプと交換します。
ポンプがばねの力で出てこようとするのを押さえながらロックリングを閉めるのは結構難しかったです。
タンクとロックリングのねじ山をよく見て、私の車両のタンクはねじ山の始まりが車体右側だったのでそこにリングのねじ山の始まりがぴったりくるように合わせてやるとうまくいきました。
SSTでリングをしっかり締めて完了です。なんでもリングにある矢印が車体の後方に向くところまで締めるらしいのですが、今回確認できませんでした。外すときに力いっぱい回して緩んだので締める時も力いっぱい締めておきました。

このハーネスが接触不良を起こして焦げるらしいので、もし焦げていたらポンプ側もろとも配線加工しようと思っていましたが全然きれいな状態だったのでこのハーネスのパッキンにシリコングリスを塗る（防水確保）程度にしてそのまま再接続しておきました。

あとは逆の手順で戻します。切ってしまったここのバンドは再使用できないのでさっきリンクを貼ったバンドを使います。手締めできると案外便利です。

さてではガソリン臭の原因は何だったかというとこの部分が割れていたからと考えられます。POM(ポリオキシメチレン)という材質でガソリンには強いのですが、カングーはたまに割れるようです。下からばねの力がかかっているのでそのせいなのか、成型時の応力がキンク部に残っていたのか・・・

交換した中古品はこのように問題ありません。

カングーの燃料タンクはポンプのフランジ面よりも余裕で液面が上にくる構造なので、特に満タンだとここにひびがあったりすると漏れるのだと思います。

それにしても、やっぱりタンクを下ろさないと燃料ポンプにアクセスできないというのは、最近のデンソーのリコールに思いをはせても、厳しい作りですね。KCカングーはリアシート下の穴があるようです。最新のKFカングーはどうでしょう・・・

実は燃料ポンプはKWH5F1(EDC車)からの外し品で、万が一違うといけないので、燃料ゲージの抵抗値を測ってみました。
旧： E時 320Ω、F時 19Ω
新： E時 341Ω、F時 40Ω
ダイナミックレンジは300Ωでほぼ同じですが、7%ほど少ない側の表示になりそうです。燃料切れランプが早めにつくということで安全側で良いですね。

今回いろいろ調べていてわかったのは、ポンプの冷却は吐出する燃料で行いつつも燃料にポンプを浸すことでも行われているので、燃料がタンクに少なめだとポンプの冷却がおろそかになりがち、特にブラシ・整流子のある上側のほうが冷えなくなるようです。燃料は満タンがいいのか少なめがいいのか論争はこの点で決着がついた気がしています。