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1節 放射線の数値認識について
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人には人の判断基準があると思いますが、原子力の恐怖の一端に「よく分からない恐怖」というのがあるのかと思います。『○○マイクロシーベルト毎時の放射線が検出され、これは自然界の放射線の100倍!』こんなこと聞くと「100倍!そりゃヤバイ!」なんて思ってしまいますね。しかし冷静になって考えて見ましょう。じゃあその値は絶対値としてどうなのか。福島県内はすでにヤバいのか。こういうことが分からないと、無用に心配ばかりがつのって、放射線で死ぬ前にストレスで死にそうなので、あらためて整理してみました。
シーベルト(Sv)という単位がここにきて急に取り上げられるようになりましたが、マスコミの報道は微妙です。このシーベルトという単位はまあ、ゲームに例えれば、「得点」というか「ダメージ点」のようなものです。その上で、
「一度に7,000ミリシーベルト=死亡」
とか、
「毎時8,217マイクロシーベルトを観測」
という表現を見れば、前者は一撃の重さを意味するのかな、と読めますし、後者は時間あたりのダメージ効率のことかな、という理解に至りますね。TVの報道では”時間”というリテラシーがイマイチ持たれておらず、バイアスが掛かっています。そのため、「胸のレントゲン写真を1回受けると50マイクロシーベルト」という数字を出して、「モニタリングポストでの観測値は60マイクロシーベルトと比較して……」などと、1回のダメージと1時間あたりの総量との大小を比較する愚かな記事(あるいは意図的なもの?)も散見されるので、皆さんが記事を読む時やテレビ番組を見る時にはご注意ください。
ご存知でしょうが、シーベルトの前についている接頭辞は、
n(ナノ)<μ(マイクロ)<m(ミリ)<無し<k(キロ)<M(メガ)<G(ギガ)<テラ<ペタ
というような大小関係にあり、それぞれ1,000倍の差があります。つまり、1,000nSv=1μSvであり、1,000μSv=1mSvということになります。ネットのいい加減な書き込みでは、意図的にこの単位を改変して大げさに騒いでみせることもあるので、念のため、敏感になっておくといいと思います。
先日発表があった、福島第一原発3号機付近での測定値は「毎時400ミリシーベルト」でした。健康被害が出始めるのが短時間(数時間のオーダー)に100ミリシーベルトの被ばくだとされているので、これは非常に危険な値だと分かります。ただし、これは原発付近での計測値であり、普通の人はこんなところをウロウロしていないので、この数値だけを見てパニックに陥るのは早計です。
一方、本日東京で「毎時0.8マイクロシーベルト」が計測され、これは通常の20倍だということ。これを受けて「東京でも放射能!やべえぇええええ!」的な煽りがネット上に見られましたが、これが1年間継続したとすると、
0.8μSv/h × 24h × 365 = 7008μSv ≒ 7mSv
となります。この値をWikipediaの「被曝」の項にあった表と比較すると、
1ミリシーベルト:一般公衆が1年間にさらされてよい放射線の限度。
2.4ミリシーベルト:一年間に自然環境から人が受ける放射線の世界平均。
4ミリシーベルト:胃のX線撮影。
100ミリシーベルト:放射線業務従事者が1回の緊急作業でさらされてよい放射線の限度。
とあるので、7ミリシーベルトは平常時の自然放射線よりは多いですが、自然放射線+胃のX線撮影をやや上回る程度であり、また、人間の体が短時間に浴びて健康維持可能な上限である100ミリシーベルトを遥かに下回る(しかも1年間かけての被ばく量)ため、実質的な健康被害が出ることはないと言えます。したがって、今のところ、東京近辺における放射線量の報道を目にして「通常の○倍!?死んだ!」と騒ぐには、ちょっとまだ早いのではないかと思います。
ネットでしばしば取り上げられる茨城県の放射線テレメータ。ここでの単位はシーベルトではなくグレイ(Gy)です。このグレイという単位は何かというと、シーベルトとの間に
シーベルト = グレイ × 過重係数
と表すことが出来ます。昨日記載したように放射線にもレベルが合って、
X線、ガンマ線などの光子:1
中性子:5~20(速さによる)
といったような値が決まっています。大雑把に言えば、X線やガンマ線で1発攻撃するより、中性子で1発攻撃をした方が、人体に与えるダメージはデカいということですね~。現在のところ中性子とかのように、人体への大ダメージが予想されるハイパワーな連中は、それこそ原子炉のふたを開けて、中身を目視できるような状態にでもしない限り、普通は外に飛び出してこないので、まあ、今のところは心配しないでも良さそうです。テレメータはガンマ線を基準にしているので攻撃力は「1」なのです。
きっとこのガンマ線は、原子炉の核燃料から生成されたセシウム(うんこ)がモヤモヤと大気に出てきて、周囲にガンマ線(うんこの臭)を放出したものではないかと思われます。新聞やテレビではついセンセーショナルな表現に傾きがちで、その数値が持つ絶対的な意味をあまり示さず、
「普段の100倍!ヤバイ! \(≧ω≦)/」
というような書きぶりになりがちです。もちろん、普段の100倍の放射線が出ているということは、少なくとも何かが起こっており、決して誤差の範囲ではないだろうということは明白です。しかしながら、1億円の借金が100億円になったのか、それとも10円の借金が1000円になったのか、同じ100倍でも意味は違うはずですよね。今回、この種の報道を見聞きして、ネット上の書き込みだけでなく、職場の人が一喜一憂しており、僕も、最初に「100倍!」と聞かされた時にはギョッとしたことから、
「これはちゃんと理解しないとダメだな」
と思い直して、自分なりに調べてみました。全部自宅警備情報ですがw無論、上述の理解を人に示して、「絶対大丈夫だから、慌てるな」と請け負うことはできません。今が大丈夫でも、明日が大丈夫であるという保証はありません。福島にも会社の事業場があるのですが、今は操業停止になってます。「妻子が不安がっているから、今週中に、九州の親戚宅に疎開させる」なんていう人は、もはや理屈で動いていないですし、家族を守りたいからと理解も出来ますもん。
毎日毎日、原発の悲観的な情報が小出しにされ、グダグダな会見を見せられ、その都度「ダメでした」「予断を許さない」「望ましくない」「でも健康に問題はない」というようななんだかよく分からない話を聞かされていれば、不安と恐怖心で泣きたくなるのが人間です。ですが、不安と恐怖は、知識と理解によって低減させることができます。この”数値”は、仕事や生活を放り出して関西に逃亡しなければならないほどのものなのか、それとも、気にしないでも大丈夫な程度なのか、自分で判断できるようになります。数字は素晴らしいっ!
無論、理解と情緒は別でして、本音を言えば、一刻も早く、原発の件が収まってほしいと切望します。もう心配で心配で。出版の先端である東京都が無くなってしまったら、アニメが作られなくなってしまいますよ~。東京国際アニメフェアも中止になってしまいましたしね。
PS:枝野官房長官格好良すぎます。官房長官というポストからも可能性は高いですし、是非この方に総理大臣として旗を振って欲しいです。管総理は上っ面だけで、言葉も弱くて、、。(汗)