マツダスピードアクセラ BK3P (以下、
MS)に乗り続けて、
11年を過ぎました。
新車で購入し、街乗りで楽しんで、サーキット走行を始めて、、、セラちゃんに色々と手を加えました。
一番悩まされたのは足回りで、その中でもバネの選択でした。
そこで、
「MSのバネ選択」について、私が数々の失敗を経験してえたことを
備忘録にまとめようと思います。
これから、足回りをいじる方にも、無駄な出費を抑えて理想の足回りに近づく一助になれば幸いです。
これから記載することは、
かなり私の主観が入っていますので、それを認める方のみお読みください。
足回りには正解はなく、自分の運転スタイルによって到達するところが全然違います。
このため、
最終的には自分でかみ砕いて理解し、自分の責任で参考にしてください。
〇純正サスペンション
まず、純正の足回りについて簡単にお話しします。
MSの純正脚は非常に優秀で、街乗りからサーキット走行までカバーする優等生です。
こんなに良い純正脚が装着されている車は、滅多にないと思います。
(タイヤのみ225/40R18に交換したフルノーマル車両で、TC2000では1分10秒フラットで走る方がいました)
よって、明確な目的がない場合は、交換をしないほうが良いです。
脚をいじり始めると、純正の良さがなくなるどころか、目的に逆行する結果になることが多いです。
その時間や手間、及び費用と自分の覚悟を比較して、それでも交換したい場合のみお勧めします。
いやいや、私は絶対に脚を交換するんだ、という場合は、、、
ようこそ、泥沼の世界へ。
これからの話は、車高調に交換することを前提としています。
そして、記載内容の前提は「車高調説明書の内容を優先」とします。
私は、HKS ハイパーマックス スポーツ3を使用していますので、それを前提に話を進めます。
車両はDBA-BK3P、フロント荷重900kg、リヤ500kgとし、脚1本にかかる荷重は
フロント900/2=
450kg、
リヤ500/2=
250kgとします。
乗車人数は1人を想定してますが、前座席に二人まで対応可能です。
さらに、まずは基本の”シングルバネ”を前提に話をします。
〇レバー比
HKS車高調の説明書によると、以下のとおりです。
なお、この数値は使用する車高調メーカーによって若干異なっているので(以前の記憶が確かならば、HKSとTEINで違いました)、説明書の数値を参考にしてください(本当の正解は一つなはずです)。
フロント:1.09
リヤ :1.18
リヤのバネレートは作用点と力点で結構違いますので、レート選択をするときは十分注意してください。
リヤに
10kのバネを装着しても、力点(タイヤ部分)のバネレートは
8.4kになります。
この差は、結構大きいです。
レート計算はネットで検索すればすぐにわかりますので詳細は割愛しますが、作用点(A)と力点(B)のバネレートの関係は以下の通りです。
B=A/(レバー比の2乗)
〇バネの長さ
MSはスポーツカーではなく、
お買い物カーにターボを付けた車です。
ですので、シビックやインテグラのTypeR等のFFピュアスポーツカーと比べると、いろいろな部分でお買い物カーな作りをしています。
大パワー車なのに太いタイヤを履けない、は典型的な例です。
そして、リヤバネの長さ制限も特徴的です。
これ、いじり始めるとわかるのですが、MSをサーキット仕様にする場合に使用可能なバネ長に悩まされます(シングルバネではほぼ悩みません)。
あれこれ話す前に、
装着可能なバネ長さの結論を述べます。
フロント:8インチ
(注意:減衰力調整ダイヤルがバネ・車高調整時に一緒に上下移動する車高調の場合、8インチを入れたらダイヤル調整できなくなる可能性があります。
私の車高調は8インチを入れたらダイヤルが上に上がりすぎて調整ができなくなりました。
ダイヤル調整できる「実用的な長さは7インチ」でした。)
リヤ:6インチ
(注意:厳密には7インチ近くまで入りますが、7インチだとプリロードがかかります。)
です。
車高を純正より下げる条件ならば、ここが限度です。
さらに短くする場合は必然的に(バネ長が短いほうがバンプタッチ(車体とタイヤが接触する)の可能性が高まるため)
、高レート(縮み量を少なくする)
のバネが必要になります。
フロントはそれほど大きな問題はなく、中古品の入手しやすさを考えると、7インチでよいと思います。
8インチを入れる場合のメリットは、乗り心地を改善するためにレートを下げたい、またはツインシステムにしたい場合のどちらかだと思います。
問題のリヤは、バネを一本入れるだけならギリギリ大丈夫ですが、2本入れるとキツいです、、、まぁ、、、それは別の機会に書く時があれば。
とりあえず、このあたりのバネ長さを選びましょう。
〇バネレート
こちらも、先に結論を述べます。
装着バネ長さに対応する最低レートはこちらです。
(条件は、フルブレーキ時に力点が1G荷重(つまり、バネが1mmも縮んでない状態から2G状態になった時)でバネが密着しないことです。)
バネ長さ 作用点レート 力点レート
フロント
203mm 9kg/mm 7.6kg/mm
178mm 11kg/mm 9.3kg/mm
152mm 12kg/mm 10.1kg/mm
127mm 15kg/mm 12.6kg/mm
リヤ
178mm 6kg/mm 4.3kg/mm
152mm 7kg/mm 5.0kg/mm
127mm 8kg/mm 5.7kg/mm
100mm 10kg/mm 7.2kg/mm
バネレートの選択で注意することは、フロントのバネレートです。
レートが高くなるほどバネの動きが少なくなるため、すべて
の挙動がシビアになります。
その中でも、ハンドル操作が非常にシビアになり、例えば16kg/mmですと遊びが相当少なく、一般道を走る時に疲れます。
言い方次第ですが、ハンドル操作がクイックで好みか、遊びがないため運転が疲れるか、自分の運転スタイルと相談してレートを決定したほうが良いです。
個人的な意見ですが、12kg/mm(一般道向け、サーキットも楽しい)、14kg/mm(一般道ではやや硬い、程よいクイック感)、16kg/mm(かなりクイック。峠道は楽しい)、という感じでした。
〇前後バネの組み合わせ
バネの長さとレートの最小値はわかりましたので、今度は前後バネの組み合わせについて話をします。
基本的に、
前後のバネのバンプ(縮み)、リバンプ(伸び)量が同一になる組み合わせにします。
理由は、加速時やブレーキング時にタイヤを接地させるため、フロントが伸びる(縮む)長さと、リヤが縮む(伸びる)長さを同程度にする必要があるためです。
このバランスが崩れると、加速時にフロントが接地せずタイヤが空転、ブレーキング時にリヤが接地せず不安定(最悪スピン)となります。
応用で、斜め方向(右前と左後ろ、左前と右後ろ)のバネのバンプ・リバンプ量を同一にする考え方もあります。
理由は、コーナリング時に対角線上のタイヤを接地させれば、4本のタイヤを接地させることができて車体が安定するという理屈です。
逆に、右前(左前)が接地せず、左後ろ(右後ろ)が接地の場合はアンダーステア、右前(左前)が接地して、左後ろ(右後ろ)が接地しない場合はオーバーステアな挙動になります(上級者はこれを狙うこともあります)。
これは、単純にバネレートだけの話ではなく、スタビライザーの硬さ+バネレートを対角線上で釣り合わせる必要がありますので、私はこの考え方でのレートの出し方はわかりません。
ちなみに、MSのスタビライザーは結構固くて、無視できない程度のロール抑制力があります。
これ以上の話は、走り方と関係してくるので、いったん終了します。
さて、次の
グラフで組み合わせの説明をします。
グラフの見方ですが、縦軸がバネの伸縮量、横軸が荷重で、450kg(静止時フロント荷重)と250kg(静止時リヤ荷重)から左右に伸びている線はフロントとリヤバネの伸縮量を表しています。
つまり、急加速及び急ブレーキの前後のバネの動きそのものと思ってください。
結論から述べると、前述した条件を満たすには、同じ傾きの線(バネレート)を選べば大丈夫です。
(グラフは、力点レート換算→1G静止時を原点→入力荷重1G、として計算しています。前述のバネレート説明と同じ条件です。)
数値で表すと以下の通りです。
第一、第二及び第三候補は◎、〇及び△と表現しました。
フロントレート(バンプ・リバンプ量)、リヤレート(バンプ・リバンプ量、フロントとの差)
Case1:8kg/mm(±66.8mm)、◎5kg/mm(±69.6mm、2.8mm)
Case2:10kg/mm(±53.5mm)、◎6kg/mm(±58.0mm、4.6mm)
Case3:12kg/mm(±44.6mm)、◎8kg/mm(±43.5mm、-1.0mm)
Case4:14kg/mm(±38.2mm)、◎9kg/mm(±38.7mm、0.5mm)、〇10kg/mm(±34.8mm、-3.4mm)
Case5:16kg/mm(±33.4mm)、◎10kg/mm(±34.8mm、1.4mm)、〇11kg/mm(±31.6mm、-1.8mm)、△12kg/mm(±29.0mm、-4.4mm)
となります。
ちなみに、フロントとの差(2.8mm)とは、フロントバネよりリヤバネのほうが2.8mm伸びるという意味です。
この数値が小さいほど、前後のバネの伸縮が同じ動きをするため、車体の挙動が安定します。
よくわからない場合は、この組み合わせにしとけば大ハズレではないな、程度で大丈夫です。
余談ですが、フロントとの差がマイナスの場合は、フルブレーキ時にリヤタイヤが先に浮き上がるため、リヤが不安定(浮く)になります。
補足しますと、5.0mm以下は誤差の範囲で、第二候補以下を選んでも悪いわけではありません。
ただ、10mm変われば挙動も変わりますので、その50%と捉えると5.0mmは大きな誤差とも言えます。
参考までに、市販されている(いた)車高調のバネレートをまとめてみました。
メーカー:製品名:フロントレート:リヤレート(フロントとの差)
「メーカー品」
HKS :HYPERMAX3 Sport:Fr=8kg/mm:Rr=4.5kg/mm(10.5mm)
BLITZ:DAMPER ZZ-R :Fr=7kg/mm:Rr=4.0kg/mm(10.6mm)
XYZ :RS-DAMPER :Fr=16kg/mm:Rr=16.0kg/mm(-11.7mm)
XYZ :TS-DAMPER :Fr=14kg/mm:Rr=6.0kg/mm(19.8mm)
XYZ :SS-DAMPER :Fr=12kg/mm:Rr=5.0kg/mm(25.1mm)
「ショップオリジナル」
RE雨宮 :AXELA MS DG5 雨宮spec DAMPER KIT:Fr=8kg/mm:Rr=6.0kg/mm(-8.8mm)
odura :蹴脚specⅡ:Fr=14kg/mm:Rr=10.0kg/mm(-3.4mm)
RIGID :アルファスペック・ジムカーナ サスペンションキット:Fr=15.40kg/mm:Rr=12.48kg/mm(-6.8mm)
書き出してみて分かりましたが、
メーカー品(吊るし)は、フロントバネの伸縮量よりもリヤバネの伸縮量を大きくしています。
この場合の車の挙動は、アンダーステア傾向=安定側となります。
アンダーステアはアクセルを戻せば制御できますから、扱いやすいようにしていることがわかります。
確かに、メーカー品という立場上、このような仕様にせざるを得ないのかもしれません。
XYZのRS-DAMPERは、リヤレートを見て驚きました。
私には扱えそうにない高レートです。
ショップオリジナルは、すべてがリヤバネを高レートにして、フロント伸縮量より少なくしています。
さらにフロントとの差は10mm未満ですね。
MSはサーキットを走ると、とにかく曲がりませんので、
リヤを硬くしてオーバーステア挙動が出る仕様にしています。
これは、メーカー品とは対極の考えで、タイムを出すことを最優先にした結果だと思います。
特に蹴脚specⅡは前後のレートバランスが良いため、極端なオーバーステアにならず扱いやすそうです。
ただし、ハイレートのバネを扱うには相応の運転技術が必要になります。
街乗りメインならばFr:10kg/mm、サーキット走行も視野に入れるならFr:12kg/mmから始めるのが良いと思います。
〇バネメーカー
余談ですが、
左右に同じバネメーカー品を使うのは当然として、なるべく前後も同じにすることをお勧めします。
何故かというと、メーカーごとにバネレートの立ち上がり方が異なり、その違いを武器に販売をしているからです。
例えば、初期からキチンとレートが立ち上がる(といわれる)ハイパコと、初期は穏やかにレートが立ち上がる(といわれる)Swiftでは、そもそも同一初期荷重に対して同じ伸縮量ではありません。
先に書いた計算はあくまで机上の話ですが、4本とも同じレートの立ち上がり特性ならば計算結果が成り立ちます。
しかし、異なるレートの立ち上がり方をするバネ同士ですと、大前提だった計算結果が成り立ちません。
よって、
好みのレートを探しているときは別にして、最終的にレートを固定する場合はメーカーを統一することをお勧めします。
〇私の過去のレート
私が過去に試したレートの乗り心地を書きます。
なんとなく
、レートによる乗り心地のイメージがつかめたらよいな、と思います。
なお、バネを組み込むときは必ずプリロード0にしています。
プリロードをかけた状態は、バネがプリロード分は伸縮しないことになりますから、当然乗り心地が悪くなります。
そういう意味では、ハイレートのバネの乗り心地の表現は
「最初の突き上げは穏やかだけど、車は跳ね上がるね」が正しいかもしれません。
〇Fr=8kg/mm:Rr=4.5kg/mm:今となっては乗り心地良かったです
〇Fr=12kg/mm:Rr=6kg/mm:ハイパコ、乗り心地悪かったです。ハイパコは最初の突き上げが強いです。ただし、サーキットでは一番乗りやすいです。
〇Fr=10kg/mm:Rr=5kg/mm:かなり乗り心地がよいです。サーキットでは腰砕け感があります。ただ、ヒラヒラと走るので好みの脚でした。
〇その他失敗色々。
今日はこの辺で。
まる。