前回の記事「
i-DMのバネマスモデルを解いてみた」では,加速度を滑らかに立ち上げることで,発進時の振動が抑えられることを示したました.
ここでいう「滑らか」の数学的な定義は,「1階微分が連続」ということなのですが,つまりは「グラフに折れ曲がった部分が無い」ということです.
今回は,加速度が「2階微分まで連続」となる場合を取り上げます.
これは,タイトルの通り,「躍度変化が滑らか」となることを意味しています.
また,立ち上げ時間と振動の関係についても述べます.
前回と同様,停車状態からの発進を想定して,質点(乗員)の変位xと速度dx/dtの初期条件として,ともにゼロを仮定します.

前回と同様,質量は人間の頭を想定してm = 5kg,減衰係数はc = 10N·s/m,ばね定数はk = 500N/mを仮定します.
車両加速度a(t)の例として,1つ目は1次関数で立ち上がるものとします(前回と同様).

前回は「Green」と読んでいましたが,今回は「Linear(1次)」と呼ぶことにします.
2つ目に仮定する車両加速度は,3次関数で立ち上がるものとします(これも前回と同様).

前回は「Blue」と読んでいましたが,今回は「Cubic(3次)」と呼ぶことにします.
なお,これはt = 0, Tにおいて,1階微分が連続となります.
今回新たに導入する,3つ目の車両加速度は,5次関数で立ち上がるものとします.

これを「Quintic(5次)」と呼ぶことにします.
なお,これはt = 0, Tにおいて,1階微分と2階微分が連続となります.
これらは,時刻t = T = 2[s]で加速度a0 = 3[m/s^2](約0.3G)まで立ち上げることを仮定してプロットすると,以下のようになります.

Linearはt = 0, 2[s]で折れ曲がっているのに対して,CubicとQuinticは滑らかとなっています.
対応する車速をプロットすると,以下のようになります.

Linear,Cubic,Quinticともに,t > 2[s]における車速は同一となります.
対応する躍度(加加速度)をプロットすると,以下のようになります.

Linearではt = 2[s]で不連続となっているのに対し,Cubicは連続になっています.
さらに,Quinticでは単に連続なだけではなく,至る所で滑らかな曲線になっているのが分かります.
また,躍度のピークはLinear→Cubic→Quinticの順に大きくなります.
これらの加速度を入力としてバネマスモデルの運動方程式を解いて,質点(乗員)の変位xをプロットすると,以下のようになります.

Linear→Cubic→Quinticの順に振動が小さくなっているのがお分かり頂けるでしょうか?
CubicとQuinticの違いが分かりづらいですねw
ということで,変位の振動成分(実際の変位から,入力とバネの反力が静的に釣り合う位置x = m a(t) / kを差し引いたもの)をプロットすると,以下のようになります.

CubicとQuinticを比べると,ピーク値ではQuinticが大きいものの,細かい振動はQuinticの方が抑えられているのが分かります.
さらに,立ち上げ時間Tと,t = Tにおける振動の振幅の関係をプロットすると,以下のようになります.

立ち上げ時間Tを長くすると振動が小さくなるのは全てのパターンで共通していますが,Quinticは立ち上げ時間の増加に伴って,最も早く振幅が小さくなっていくのが分かります.
ということで,「躍度の時間変化は滑らかな方が望ましい」という結論が得られます.
言い換えれば,「加躍度もしくは加加加速度wは連続である必要がある!」ということになります.
はい,結局,今回は「加加加速度」というフレーズを使いたかっただけですwww
Posted at 2018/02/10 19:52:13 | |
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