夏風邪をひいてしまい, 早めに寝床に入ったのですが, そんなに早く寝つけるはずもないので, DVD で映画を観ました. 早めに横になった意味がない? 確かに...
14日に廃車手続きに向かう直前, 貸しヴィデオ屋に寄って DVD を返却したことは,
16日の日記で書きました. 実はそのとき返すだけでなく借りてもいたのでした. 愛車
Maria で借りてきた最後のヴィデオです. 2本あって, 片方は
Oliver Stone 監督の "
Joy Luck Club", もう一方が
Joel Schumacher 監督の "
St. Elmo's Fire" でした. 今日は "Joy Luck Club" のほうを観ました.
1年ほど前から密かに観たいと思っていた映画でした. これは1993年, 奇しくも僕が
Maria を買った年に公開された映画ですが, 当時はまったく興味がなかったのです. それを観たいと思ったのは,
Andrew McCarthy が出ていると知ったから. Andrew は1980年代後半に爆発的な人気を誇った俳優のひとりです. 日本でいえば男性アイドルに相当する, 20代前半で頭角を現す若いハリウッド俳優には, 美形で明朗闊達なだけが取り柄みたいなのが多いなかで, 深みのある含羞を感じさせる演技が印象的でした. 45歳の現在も活躍中ですが, 活動の中心を TV に移してしまったため, 作品が北米以外に紹介されることは少なくなっています. 単館系や自主公開ものを除いて, 日本で公開された映画で Andrew が出演している最後の作品が "Joy Luck Club" なのです.
ちなみに僕が Andrew McCarthy の存在を知って同性ながら惚れ込んだのが, もう1本の映画 "St. Elmo's Fire" でした. そういうひとは多いと (これが事実上のデビュー作なので) 思うけど, 僕が普通のファンとちょっと違うのは, 1985年の映画だった "St. Elmo's..." を観たのが公開から10年も経った1995年ごろで, すでに "Joy Luck Club" の公開も終わっており, Andrew の存在が日本のシネフィルたちの目からフェードアウトしようとしていた, という点です. それまで US 映画を見る習慣がなかった僕が, 初めて夢中になって観たハリウッドの作品でした. 1995年といえば
Maria を買って2年目, 運転にも慣れてきたころです. 当時は PC も US 製品を使っていました. これまでの半生で最も北米に親近感を抱いていたころでした. そんなわけで愛車
Maria と北米合衆国という国, そして Andrew McCarthy とその出演映画は, 僕にとって分かちがたく結びついた存在なのです. だから
Maria に乗って最後に行く貸しヴィデオ屋で, 借りるヴィデオは "Joy Luck Club" と "St. Elmo's Fire" にしようと, しばらく前から決めていました.
前置きが長くなってしまいました. その "Joy Luck Club" を観たのです. いやホントにもう, もっと早く観ておかなかったことを後悔しました. Oliver Stone 監督作品なので悪い映画であるわけはないと思っていましたが, 想像以上, これぞ映画って感じです. 何が凄いって, ある人物の回想シーンで別の人物が回想をはじめて, いつの間にかそのひとの回想シーンになっているという, 映画の脚本として絶対にやっちゃいけないとされていることを2ヶ所もやっていて, ぜんぜん不自然に感じさせない豪腕ぶりですよ. 演出の力なのでしょうね. France Nuyen 演じる Ying Ying (蛍蛍) おばさんの独白, ものすごい中国語訛りの英語でけっこう長く続くんだけど, 引き込まれるようなリアリスム. 中国系の人びとを描いた映画なんだから中国語訛りがリアルで当然と思うかもしれませんが, そういう次元じゃないんです. さらに, 4組の母娘のエピソードが重ねられていくにしたがって, 最初は中国系特有の問題を描いていたのが, 女性の地位の問題, 移民と北米社会の問題, そして最後には万国共通とも言える母娘の相克へ, しだいにスケールを広げながら話が展開していく物語構成の巧みさ. まるで新約聖書の四福音書 (うしろにいくほど対象読者を広げていく) ではないですか.
そして Andrew McCarthy. 彼は Rosalindo Chao 演じる Rose の夫 Ted の役で出てくるのですが, このキャスティングがまた巧い. 憂いと含羞を含んだ Andrew ならではの視線が, Ted の性格描写に効いています. 離婚の相談をするんだ, というところで彼らのエピソードはクライマックスを迎えるのだけど, 時系列上それよりあとの場面にも出てくるってことは, Rose の告白を聞いて惚れ直しちゃったということなんでしょ? こんな "いいひと" 過ぎる役, 他のハリウッド俳優にはムリでしょう. 身体に悪そうだけど Chocolate Peanuts Butter Pie なるものが食べたくなってしまいました.
素晴らしい映画でした. 自信をもって誰にでも薦められます.
Posted at 2007/07/29 02:19:16 | |
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