
そしてついに決勝日へ・・・
今日はガレージCの店長さんや監督さんも駆けつけて頂き、ウチのチームとしてもフルメンバー体制で大変心強い限りです。
前日までのトラブルは、当日朝の時間で大方解決していただき、またまたガレージCのチームワークはすばらしいなぁ~!
朝の20分間フリー走行は、あまり走り込めていないドライバーさんに少しでも走ってもらう事にしました。
少しでも走っておいてもらった方が、決勝に向けての不安も少なくなるでしょうしね。
そしてスターティンググリッドへ。僕らは28番グリッドです。
各グリッド紹介のアナウンスが続き、仲間たちとグリッド上で話をしたり記念撮影をしたり、楽しいひと時です。
一通りのスタート前プログラムが終わり、ドライバー以外はコース外に退避命令が出て、コース上にはマシン達とドライバー達だけに。
スタートドライバーを担当する僕がヘルメットを被り、マシンに乗り込む。
「いや~久々だなーこの感覚」。スタート前のこの冷たい孤独感が、たまらなく好きだったりします。こんな僕って変かな?
フォーメーションラップ開始10秒前になり、エンジンスタート。WR250はセルスターターが付いているのでスタートボタンを押すだけ、本当にラクです。
昔では考えられない、良い時代になったもんです。
そしてフォーメーションラップ開始。隊列を整えて1周ぐるっと周り、ホームストレートへ。
グリーンシグナルで、レーススタート!5時間の耐久レースの始まりです。
74台で一斉に1コーナーになだれ込んでいきます。
3列スタートの中の、僕らは一番イン側だったのですが、目の前の車両に行く手を阻まれて行き場が無くなり、スタート直後にかなりポジションを落とす事に。
それからしばらくは混戦状態の中を数周走る訳ですが、徐々にですがポジションを回復させながら周回を重ねます。
「15周か、長いな」。たったの15周と思われるかもしれませんが、この35分間がとてつもなく長く感じます。
12周目くらいから首がだんだん疲れてきて頭を支えきれなくなってきた頃、
「あれっ?サインボードが出てない!」「さっきまでは出ていたのに」「どうしたんだろう?」と思いながらホームストレート前を通過すること数周。もう首は限界を超えていて、コーナー立ち上がりで前を見る事が出来ずにアクセルを踏む量を少し抑えなければいけない状況へ。
「一体どうなっているんだろう?そろそろピットインの予定周回は過ぎていると思うが、ピットインの指示は?」
もうろうとする意識の中、最終コーナーを立ち上がる。
あった!サインボード!ピットインだ!
天の助けとばかりにありがたいサインボードでした。大げさでなく命拾いをしたような感覚でした。
後で聞きましたら、上のほうでボードを掲示していたようで、視界の中には入っていなかったです。
出来るだけハイスピードで1周回り、ピットロードへピットイン。仲間たちが手を振って場所を教えてくれています。
砂漠の中を命からがら彷徨っている旅人が、オアシスに引き寄せられていくようにピットへ。
エンジン停止。マシンから降りようと思うのだが、自力では降りられずに仲間に助けてもらいながら降りる事に。久々のレースとはいえ、レースでここまでヘロヘロになった事ってあったかなぁ。
次は2スティント目
守谷選手のドライビングでピットアウト!コースイン!
ここで守谷選手が目の覚めるような追い上げを見せてくれました!
10台抜きのオーバーテイクショーを魅せてくれて、みんな大興奮!
素晴らしい追い上げでした。
予定の周回数をこなして、予定通りにピットイン。
さすがの守谷選手も相当消耗しているご様子。やはりこの真夏のK-TAIというイベントは、相当過酷です。
そして3スティント目
平柳選手のドライビングでコースイン!
だいぶ消耗しているミディアムタイヤにもかかわらず、タイムの落ち込みを最小限に抑えて良い走りをしてくれました。
やはり19歳の体力は凄い!自分も若い時には出来た事なのですが、やはり年齢には敵わないのか・・・、あの体力と速さは頼もしい限りです。
コンスタントに予定周回数を走り切り、ピットイン。
ここでタイヤ交換を行い、DLのミディアムタイヤ⇒BSのハードタイヤにチェンジ。多少作業時間でピット停止義務時間の5分間をオーバーしてしまいましたが、確実に作業をして次のドライバーへ!
4スティント目
最年長で謎のフィンランド人ドライバー、SUDEINI 後藤 HAGETORNEN選手がコースイン!
チーム内で一番カートキャリアの長い、ベテランドライバーです。
コンスタントに、順調に周回をこなしていきます。
しかし、事前に話し合いはしていましたがやはり体力的にキツく、予定前にピットイン。そういう事態の打合せもしていたのであわてずスムースにピット作業をこなします。
後藤さんのようなベテランをしても、やはりこのK-TAIというレースのキツさは相当なものです。
次に5スティント目
ねるとん・ピケ選手のコースイン!
昨日のコースアウトの残像が残っていただろうと推測されますが、かなりコンスタントに走れていましたよ。
一番カート歴が短い上に、初レースだったにもかかわらず、なかなかの好走でした。
ここで、ねるとん選手の走行中に、急遽作戦変更へ!僕の一存で決定して申し訳なかったのですが、時間が無かったので早急に作戦変更の打ち合わせへ。
平柳選手以外のドライバーは皆若くは無いため、ロングスティントでガソリンを消化し切るのが難しい事が分かったので、次のドライバーを急遽、平柳選手に担当してもらう事にし、出来るだけ連続ラップをしてもらう事にした。
そしてねるとん選手が予定通りピットインし、ルーティンの給油作業をした後に平柳選手がコースイン!
そして6スティント目
頑張れ平柳君!フルタンクのガソリンを使い切るくらいの勢いで走ってきてくれ!
その期待に見事に応える激走を見せてくれて、ハイペースで飛ばしていきます。
しかし気温上昇とともに、水温も上がってきたようで、思うようにエンジン回転数を上げる事が出来ずにいるようでしたが、そんな状況の中でも出来る限り速く、コンスタントにロングスティントをこなして行くのはさすが現役TDPドライバー!
ここでチームの皆が気をきかせてくれて、ゴールドライバーを僕にやって欲しいとおっしゃってくれて、またまた急遽次のドライバー変更。次は守谷選手に急遽変更です。
20周のロングスティントを終えて、平柳君がピットインしてきます。
給油を終えて、タイヤ交換へ!
今度はBSのハード⇒DLのソフトタイヤへ!
タイヤ交換の作業も、ガレージCや本店の皆様総動員でスーパーGTさながらの超速タイヤ交換!
規定時間の5分以内で交換を終えることが出来、タイムロス無しでピットアウト!
7スティント目
新品ソフトタイヤを履いての守谷選手の猛チャージが始まります。
相変わらず気温が高かったので、コーナーによっては水温が上がりすぎて回し切れない状態のようですが、それでも怒涛の猛チャージを敢行!
素晴らしい猛アタックを魅せてくれて、結果このレース中でチームのベストタイムを記録してくれました!
さすが!タイムも削れば歯も削る!
そして15周を終えてピットイン、最後のピットストップです。
燃料補給とドライバーチェンジのみ、ナイジェル満月のコースインです!
最終8スティント目
これがラストのスティントです。
僕がコースインして早々に、セーフティーカーが入り、全車縦列渋滞でフルコースコーションに。
コースのどこかで、誰かのマシンが危険な状態にあるという事です。
縦列渋滞のまま、隊列を組んで最終コーナーを回り、ホームストレートへ。
全車一斉にフル加速!
僕も当然遅れる事無くフル加速をしましたが、オーバーブリッジ上の信号がまだ黄色の点滅!
「まだSC(セーフティーカー)だ!」と、とっさに判断し、前方のクルマとラインを外してブレーキング。
危ない危ない、こんな所でペナルティなんぞ喰らってられるか!
実際、ここでの追い越し違反で何台かペナルティを喰らっていた様子。
気を取り直してもう一周セーフティーカー先導による縦列渋滞をして、最終コーナーに差し掛かり、フル加速体勢へ。
今度こそグリーンランプ!
本日2度目のローリングスタートを両方とも僕がやる事になるとは、スタートには縁があるようだ。
そのままアクセルを踏み抜き、チェッカーまでの残り数周の、おそらくこのレース最後の混戦が始まります。
まだ水温の問題は残っていますが、真後ろからもガンガン後続車が続いているので厳しい状態だが、きっと相手もラクではないはず。
僕は前にいる車両に狙いを定め、どこでオーバーテイクするか考えた。
「なかなか速い」
ちょうど今の僕とほとんど変わらないラップタイムなのでしょう。無理に追い越そうとはせず、僕は一周様子を見てみる事に。
「見つけた!相手は3~4コーナーが遅い!」
単に苦手なのか、それとも僕を気にしてイン側を意識するあまりの事なのか、真相は分かりませんがとにかく4コーナーで上手く立ち上がれば5コーナー手前で抜けるかもしれない。
僕は狙い通りに立ち上がり、5コーナーまでのストレートでオーバーテイクする事に成功した。
しかし一度抜いた車両が、諦めずに必死で喰らいついてきます。
多少は水温をいたわりながらも、全力で逃げ切ります。
しかし相手も当然諦める様子は無く喰らい付いて来ます。インフィールドは相手の車両の方が若干分があるようで、ジワジワくらい付いて来ます。相手がセパレートカウルだからか?僕の体重が重いからか?
それに対して、ストレートスピードはこちらの方が若干速いようで、ジワッと引き離す事が出来ます。これはフルカウルの恩恵だろうか。
しかし決定的に引き離す事が出来ない。スリップストリームを使われているようだ。
相手も頑張って喰らい付いて来て、ダウンヒルストレート手前のヘアピンで、インに飛び込んできた!
僕は無理にインを閉めず、立ち上がり重視のクロスラインで立ち上がり、スリップを使ってストレートエンドで抜き返す!
もちろん、前方にいる車両を追いかけながら、後方の車両とのバトルをしています。
「楽しい!」
相手もとてもフェアなバトルをしてくれました。お互い安心してバトルが出来ている、そんな気がしました。
そんな状態で、それ以降は僕が前のままでチェッカーフラッグ!
5時間の長丁場が、いま終了しました!
疲れを忘れて、残り周回さえも忘れてバトルの楽しみに没頭してしまいました。
「もっとバトルをしたかった」
多少の物足りなさを感じながら、全車ウイニングランです。
コースオフィシャルたちが一生懸命旗を振り、手を振ってくれています。
僕はゴールドライバーを譲ってくれたチームメイト達に感謝しながら、オフィシャルたち全員に手を振りながらゆっくり走ります。
僕の前後にいるドライバー達のフェアな走りに敬意を表しながら、5時間を戦い抜いたライバル達と隊列を組んで、ゆっくりゆっくりウイニングランは続きます。
5時間前に74台で一斉にスタートし、何台かは残念ながらリタイヤしてしまったようですが、みんなで一生懸命走った結果は、
総合6位完走!
K-TAI初挑戦としては快挙というしかありません。
現役でスーパーカートシリーズを走っている車両が何台もいる中、このリザルトは想像を大きく超える結果でした。
力を合わせて戦ってくれた、チームのみんなで獲得した結果です。
モータースポーツって、本当に素晴らしい。
ドライバー一人だけでは、絶対に結果は出せない。
☆メカを見てくれる人がいて、
☆エントリーや、色々な手続きをしてくれる人がいて、
☆パーツや道具を揃えてくれる人がいて、
☆時には他のチームにもかかわらず、困ったときは道具を貸してくれる人がいて、
☆セッティングデータを教えてくれる人がいたり、
☆ピットウォールで暑い中サインボードを出し続けてくれる人がいて、
☆同じくサインエリアでタイムを取り続けてくれる人がいて、
☆一生懸命写真を撮り続けてくれる人がいて、
☆レースの運営をしてくれる人たちがいて、
☆ボランティアで炎天下の中、コースオフィシャルをしてくれている人たちがいて、
☆そして、ドライバーのみんながいて、
本当に、たくさんの人たちのおかげで、レースは成り立っているんだなぁと改めて実感しました。
僕は今まで、スプリントレースばかりを経験してきました。当然ドライバーは僕一人だけでした。自分ひとりの力で、勝敗が決まってしまう事が多いです。
今回、耐久レースに参戦するのは2度目ですが、自分で言い出して、自分で興したチームとしては初めてでした。
初めて、自分以外の、いわゆる他人のおかげでレースが出来てるんだなぁと言うことを実感しました。
レースだけではありません。仕事でも、実生活でも同じ事だと思います。
誰かのおかげで、自分が居れる。誰かのおかげで、自分が生きていられる。
本当にありがたい事です。
「オレは今回、誰かの為に何かが出来たのかな?」・・・・
そんな事を考えながら、ウイニングラップを走っていました。
極低速走行のまま、最終コーナーを回り、ホームストレートへ。
ピットウォール沿いスレスレに、手を出してくれているピットクルー達の手に届けとばかりに右腕を上げ、喜びを共有したい一心でゆっくりとマシンを走らせます。
(あまりにも低速走行過ぎて、エンストして止まってしまうマシンもいました)
ホームストレート上の、マシン停車エリア『パークフェルメ』に全車マシンを停め、フィナーレセレモニーへ。
僕はマシンを降りてすぐさま、ラスト数周を懸命に戦い合った相手のドライバーの所へ。
「良いレースでしたね!」
と、握手を求める。相手も快く応じてくれる。精一杯戦った相手だからこそ、分かり合える瞬間もありますよね。
そして表彰式が始まりましたが、ここにいる全車が、ウィナーだと思った。
チームの仲間もみんな待っていてくれた。
みんな本当に良かったね、よくやったね。おめでとう、ありがとう。
このチームのみんなでレースをやれて、本当に良かったと思う。
自分一人だけの力では、絶対にこういう収穫は無かったと思う。
このみんなが居たからこそ、こんな素晴らしいレースが出来たと思う、心からそう思う。
また来年も今日のみんなでレースをしようね!
そしてもっと、あまり欲をかき過ぎるのは良くないけど、もっと上位に行けたら良いね!
とにかく、2008年度としては上々の結果でした!
そして、ガレージCスタッフの皆さん、本当にありがとう!次のレースもヨロシクね!
本店の皆さんも、本当にありがとうございます!今後ともよろしくお願いします!
お手伝いに来てくれた皆さん、本当にありがとう!
来年のK-TAIも、みんなで何かを勝ち得ることが出来る事を、楽しみにしています!
※写真はこちら ⇒
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