
前回のブログで故障原因を特定したいと考えていることをお伝えしていましたが、結局エンジンクレーン等を買ってきて自分でエンジンを開封することにしました(^_^)/
それで先日エンジンの分解が終わりましたので、その結果をまとめます。
どこが壊れて、どこが壊れていなかったか
故障箇所は2番のコンロッドメタルで、メタルがクランクピンに抱き付いてしまっておりました。

このエンジンの定番故障ですね。
コンロッドを取り外した後にクランクピンからメタルを剥がしたのがこちらです。
上下のクランクメタルが松葉崩しするように結合しており、芸術点が高いなと感じました( ̄▽ ̄)
ちなみに1-3-4番のコンロッドメタルは、摩耗はしていましたが2番ほどではなく、クランクピンは傷が一切ないレベルで綺麗でした。
故障していたのは2番のコンロッドメタルでしたが、ブロックを開けたところ、クランクメタルの2番と3番にもダメージがありました。特に2番に大きな負荷がかかったようで表面が大きく抉れていました。
それぞれ対応するクランクジャーナルにも傷がありました。
取り外したクランクメタルです。
バンク1(運転席側)よりバンク2の方がダメージの程度が酷かったです。

メタルの縁からはみ出したところは、指で押したら簡単にペラリとめくれました。
1-4-5番は綺麗で、5番に関してはスラスト部分も綺麗でした。
次の写真は5番のスラスト部分です。
コンロッドメタルとクランクメタルのどちらが先に大きなダメージを受けたのかはわかりませんが、クランクメタルが先に流れ始めて2番のコンロッドメタルを傷つけた可能性も考えられるのかなぁと。
で、メタルが流れたことで、ピストンが本来の上死点よりわずかに上昇してしまったようで、燃焼室と軽く接触した痕跡がありました。
ピストン表面のツールマークが残っているのでごく僅かな接触だったようでした(シリンダー内に何かが砕けたかのような粉が写っていますが、分解時に吸気口から入った砂です)が、なぜかピストンはインジェクターの先端とも接触してしまっており、インジェクターの先端が軽く変形し、ピストンの表面にも傷がついていました。

注意深く点検してヘッドは再利用できそうだと思っていますが、ピストンとインジェクターは要交換です。
メタルブローしたら金属粉がエンジン全体に回っちゃって使い物にならないでしょう?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし実際に分解して確認したところ、金属粉はすべてオイルフィルターがキャッチしていたようです。
まずこちらがオイルフィルターの中身で、金属粉が大量でした。
FA20では、オイルフィルターの先ではヘッドとクランクに並列に給油する回路となっており、ヘッド側にはVVTフィルターが配置されているのですが、このVVTフィルターの中には金属粉は一切ありませんでした。
また、その他の箇所を点検しても、オイルパン付近を除いて金属粉を確認することありませんでした。
したがって、ブローして出た金属粉はオイルフィルターがすべてのキャッチしてくれていたと見られます。ブロー後にガレージに車を収める際に冷間始動もしたのですが、意外とオイルフィルターのリリーフバルブは開かないようですね。
(ブロー後から冷間始動するまでに10時間以上の時間が経過しており、気温は1ケタ台でした。)
さすがにオイルポンプはギタギタになっていると思いますが、他の箇所は金属粉でやられた心配はないと受け取っています。
コンロッドメタルが故障した原因を考えてみる
生き残った1-3-4番のコンロッドメタルを観察してみたところ、いずれも同様に摩耗していて、次の2点の特徴がありました。
1. パーティングライン付近は機械加工でついたような規則正しい溝が残っておりほとんど摩耗していないように見える。また、弧の真ん中にいくほど摩耗しているように見える。
2. 摩耗している箇所は光沢があり、黒く変色しているところもある。
エンジンパーツメーカーのMAHLEが
Failure Analysis Guideを公開してくれているのですが、これと照らし合わせると、世界各国の先人がご指摘してこられたように、
エンジンオイルの供給不足(Oil starvation)の兆候が現れているように思います。
FA20に関してはコンロッドキャップの剛性不足が指摘されているようで、キャップ剛性が足りないとclosed-in現象(コンロッドが上下方向に伸びて横方向が絞り込まれる現象)が起こりコンロッドメタルのパーティングライン付近がクランクピンと強く当たって摩耗するようですが、僕の個体はそのような兆候が見られないように思います。キャップの剛性不足による問題はもっとハイパワーを発揮するようになると顕在化してくるのかな?と想像してみましたが、どうなんでしょう。
2025/03/08追記:
コンロッドキャップの剛性不足の兆候が見られないように思う、という点について補足します。
(私は専門家ではないため、詳しい方がいらっしゃいましたらご指摘等いただけましたら幸いです。)
スバルが公開してくださっている情報を踏まえると、筒内圧と慣性力に起因するコンロッドメタルの変形とクランクピンの相対位置を踏まえたうえでコンロッドメタルに最も高面圧が発生するところ=最高面圧部は、画像のパーティングラインあたりにあるようです。
その情報を踏まえて、最高面圧部を中心にメタルを観察してみます。
ピストン側メタル
1番 最高面圧部付近

1番 最高面圧部~コンロッド小端側
3番 最高面圧部付近

3番 最高面圧部~コンロッド小端側

(3番は私がウェスで拭いたときにつけてしまった傷もあります。不規則な光沢のある引っ掻き傷がそれです。)
4番 最高面圧部付近

4番 最高面圧部~コンロッド小端側
キャップ側メタル
最高面圧部付近(左から1、3、4番)

最高面圧部~キャップ頂点側(左から1、3、4番)
見る角度によって色が変わるため、画像を通して見ると私とは見え方が異なるかもしれませんが、私が見た限りでは、1-3-4番のいずれも、最高面圧部付近とそれ以外を含む受圧可能範囲の間で摩耗の仕方に大きな差は見られない(むしろ均一に摩耗している)ように感じました。
また、最高面圧部内ではメタルの両端の縁に最も圧力がかかるようですが、縁だけが大きく摩耗しているようには見えないと感じました。
エンジンはどんな風に運用していたか
参考情報として、エンジンの運用がどんなだったかを記載します。
- 車に乗るのは休日のみで、ここ3年くらいはほぼサーキット走行とその行き帰りの自走で使用するのみでした。総走行距離は約60,000kmでした。
- エンジンが経験した最大回転数は8,016rpmでした。
*エンジンのECUを書き換えた3年半前からこれまでの間、サーキット走行時には欠かさずサンプリングレート30Hz前後のロガーを使用してエンジンのログを記録していました。上記の最大回転数はそのすべてのログファイルをスクリプトで処理して抽出したものです。私のECUではレブリミットは7,600-7,900rpmで作動するようになっていまして(ROMのリビジョンによって7,600rpmで作動するものと7,900rpmで作動するものがあります)、8,016rpmを記録した一瞬を除くとシフトミスによるオーバーレブはなかったと見られます。
- エンジンオイルはスバルのレプレイアードゼロ0w-30またはelfのevolution 900 ft 0w-30を、オイルフィルターはスバル純正の指定品を使用していました。
- 東名パワードのオイルパンバッフルプレートと、Killer-B motor sportのオイルストレーナーを使用していました。
- オイルクーラーは4~5年前にわずかな期間のみ水冷のものを使用していましたが、その期間を除けば使用していませんでした。
とりあえず以上がエンジン分解のレポートになります。
ブロックやヘッドが再利用できないほど壊れていればエンジンを載せ替えなければならないな…と考えていましたが、そこまでのダメージはなかったため、修理してみようかなと考えています。
自分でエンジンを組むのはワクワクします!
次回のブログでは、オイル供給不足に対してどういう対策が取れそうか、エンジン分解時に気づいたことも交えながら考えをまとめたいと思います。