みきらでぃんのブログ一覧

著者は、医師で作家の久坂部羊氏。

認知症についての講演会で、突然介護欲に火が付いた主人公・幸太郎。老人ホームから父親を引き取り、自宅介護を始めるが、不安とともに始まった新しい生活には「想定外」が次から次へとやってくる。

十分な準備をしたつもりが、思ってもみなかった方に行ってしまったり、決心して行ったことがやってみるとそう大変ではなかったり、しかし別の問題を浮き上がらせてしまったり・・・

「認知症あるある」が次々と起こる中で、幸太郎は少しずつ考え方を変えていき、「あきらめ」の境地に至る。無理をせず、感謝を忘れずあるがままにすべてを受け入れる・・・そんな人が生きていく上で、必要な知恵を身に着けた幸太郎。

読みやすい文脈で、一気に読めてしまう。
最後までわからなかったのがタイトル「老父よ、帰れ」って、どこに帰るの?
途中、介護疲れに落ちいった幸太郎が限界を感じるところでは「あれ?
お父さん老人ホームに帰すのかな?」と思ったが、そんなこともなく、生死を彷徨っているような時でさえ自宅介護を続ける。そして、お父さんは奇跡の復活を果たし・・・
そう、結局どこに帰るのかわからなかった。

あくまで小説なので、そこを踏まえた上で、介護に行き詰っている人は一読すると少し肩の力が抜けるかもしれない。

著者は科学ジャーナリスト・松浦晋也氏。

独身男性によるお母さんの２年半の介護記録。２０１７年出版。
「あなたをごめんと言わせないために」「介護対策が満載」と帯には書かれている。

う～ん・・・あんまり役には立たないかも。
まず、時系列がバラバラで、「え?いつの話?」と思うところが何度もあり、読みにくい。
そして、うまくいかなかったことを「介護敗戦」と呼んでいるが、いろいろな事情がある中で、本当にそれが良かったか悪かったかなんて、商品が売れたか売れないかのような簡単な判断でできるようなものではなく、実際には「わからない」が正しいのではないだろうか?

また、介護疲れから精神バランスを崩し、とうとう母親に手をあげてしまう。このことも前兆で「殴ることが出来ればさぞかし爽快な気分に」とあるが、それ以前に筆者は「死ねばいいのに」とつぶやいて近くにいた女子高生が異様な反応をしたことを印象深いと記している。すでにその時から壊れかけていることに気づいていないのか。

予防医学のパラドックスについても、「社会全体で医学的根拠に基づき大きく患者数を減らして」と言いながら片方では「予防対策をしても確率的に発症してしまう人はいる」といい、対策をしても病気になる人はいるし、守らなくても長生きする人もいる、と言っていて、じゃあ何のために個人が犠牲を払うのかがよくわからなくなる。社会全体で見れば…なのかもしれないが、人はみんな違っているし、本人が後悔しない選択をすることが一番いいのではないだろうか?

書評でとてもいい印象を受けて読んだが、なんだか残念な印象が残った。