自分なりに数式を使わずにざっくり捉えた内容の覚書。
間違ってる可能性あり。
鵜呑みにせず「本当にそうなのかな」と疑いながらお読みください。
つっこみ・訂正、歓迎です。
※あまりにも間違いが多すぎた場合は、恥ずかしいので削除するかも…
○位相とは。
音を周波数ごとに分割して考えたときに、基準となるものからどれだけ時間的にずれているのかを、その周波数の周期に対する割合で示すもの。
※誰かが位相の話を始めたときは、どの周波数で、何の基準との比較を言っているのかに注意する(そこが明らかでない場合、話が噛み合わなかったり、そもそも話してる人自体があまりよくわかってないこともあるかも…)
高校物理で習うときは交流回路の例で出てくるのでなんだか難しいが、オーディオ分野では「遅れ」の量のことと捉えておけばOK。
(位相が進むっていまだに自分にはよくわかんない)
○位相歪
アナログ回路(コンデンサとコイル)のフィルターをかけると、位相-周波数特性に歪み(乱れ)が生じる。
全然遅れない周波数と少し遅れる周波数といっぱい遅れる周波数みたいなことが起こる。
※「パッシブネットワークが○次(○dB/oct)なら○°ずれる」という説明をよく見かけるので、ユニットまるごと(全周波数)一律で同じ度数ずれると勘違いしてる人がたぶんいる(カオデ分野だと、それでお金もらってるレベルの人でも結構あやしい笑)。
対象のクロス(LPF/HPF)をかけたときのクロスオーバー周波数(フィルターのカットオフ周波数)でのずれのことなのを理解する。
位相歪が生じると、元の波形が変化する。
デジタル信号の通信などの分野だと位相歪によって波形が変化してしまうと大問題になる(正しくデコードできない)。
一方、音に関して言えば、教科書には「耳は位相歪には鈍感」と書かれている。
1kHzと4kHzの音がほんの少し(位相で表現されるレベルで)タイミングがずれていても、聴感上はそんなに気にならないかもしくは全然判別できないってこと。
※ではどれだけずらしたら聴感上もわかるくらい問題になるのかと言えば、やったことがないのでわからないけれど、たぶんms(ミリセカンド=1000分の1秒)オーダーでずれてきたらわかるかも知れない。
1kHzで位相が180°ずれても0.5msなのでたぶんわからないと思うが、100Hzで180°ずれると5msに相当するのでわかってしまうかも知れない。
○DSPのフィルター。
特に製品仕様で何もうたわれていなければIIRという形式のフィルターで動作するので、アナログ回路と同じように位相歪が生じる。
FIRというフィルターだと、位相歪を生じさせない(線形位相)も実現できるし、逆に振幅-周波数特性に影響を与えずに位相特性だけを変化させることもできる。
※株価の動きをチェックするときの「移動平均」は最も単純なFIR。
※FIRの方が1サンプルあたりの計算量も多いし、バッファ(直近の過去分のデータを保持するためのメモリ)もたくさん必要とする。FIRが使えるDSPはたぶん値段の高いものに限られていたのではないかと思うけど、最近は香港のminiDSP社で手頃な価格の製品がある。
○逆相の話。
スピーカーを接続するときに+-を逆に接続すると「逆相」になる。
2次(12dB/oct)のクロスオーバーを使う場合、片側のユニットを逆相にすることはよく行われている(クロスオーバー周波数での位相差がちょうど180°になるため、両方とも正相で接続すると打ち消しあってしまうため)。
なのでDSPには正相/逆相を切り替える機能がついていることが多い(クロスオーバーフィルターのスロープを変えたときに簡単に切り替えられると便利なため。配線を間違えたときに修正するためのものではない笑)。
この逆接続は、全帯域で「位相が180°ずれる」…のだけれど、その表現が正しいのかどうかよくわからない。
個人的にはあまりそういう表現はしないほうがよさそうに感じている。
なぜなら元の波形を+-で反転させただけで時間的にはいっさいずれていないから。
自分はなるべく、「逆相」という表現は使わずに、「ポラリティ」とか「極性」という言葉で捉えたり説明したりしたい(誤解を避けるために)。
○いったんタイムアライメントの話。
カーオーディオでは車内の偏った場所に運転者が座り、各スピーカーユニットも運転者から見てあちこちの方向に配置され、距離もバラバラである。
音の到達タイミングが合っていないと、音像が広がって聴こえたり、先に到達する音の方向に定位が引っ張られたりするので、各ユニット毎に適切なディレイ(遅延時間)を与えて、到達タイミングを合わせる。これがタイムアライメント。
※タイムアライメントの値を調整することで音像定位の位置を調整するという手段もよく見かけるが、個人的にはちょっと気持ち悪い(本人がよいのならよいのだけど…)。自分的には到達タイミングは合わせた上で、定位をいじりたければ各ユニットの音量の大小で調整したい。
※ディレイをかけると位相も変化するわけだけど、全帯域が同じ時間ずれているだけなの
で、波形が変化しないことはイメージできるはず。位相特性のグラフで見ると、直線のまま傾いた状態になる。線形位相とか直線位相とか呼び、位相歪は生じていない。
○位相差の話。
位相歪は聴感上あまり問題にならないと先に書いた。
ではどうしてカーオーディオでは「位相の話」が頻出するのか。
各周波数ではなくて、複数のユニットの同じ周波数で位相が一致しない(位相差が生じる)ことが、定位感や音像に影響を与えるから。
・左右のスピーカーの片方を逆極性にすると、どこから音が鳴っているのかわからなかったり、広がって聴こえたりする。これが極端な例。
・離れた場所で同じ周波数の音が鳴っているとき、位相が進んでいる方の音に定位が引っ張られる。
ホームオーディオではたぶんあまり気にされていないのかも知れない。
ツイーター・スコーカー・ウーファーと分かれていて、たとえそれらで位相差が生じていたとしても、リスナーから見ればなんとなく同じ方向にまとまって配置されているので、合成された音として聴けるから。
合成したときに振幅-周波数特性が平坦であれば結果オーライになる。
ホームオーディオでスピーカーやネットワークを自作してきたような詳しい人と話すときに、その辺の事情から話が噛み合わないことがあるかも。
サラウンドシステムではカオデと似たような問題が(たぶん)起きている。そっちの人のほうが話が合うかも笑
・LRスピーカーとセンタースピーカーとリアスピーカーが異なる機種を使っているせいで位相差が生じる(スピーカーユニットは一般的に機種ごとに違った位相特性を持っている、線形位相ではない)
・部屋の形状などでスピーカーの置き場所が制限され、視聴位置からの距離がばらばらなため、到達タイミングのずれや位相差が生じる
※「位相」の話が出てきたときに、位相歪の話なのか、位相差の話なのか、後者の場合ユニット同士は離れているのか一体とみなせるのか、このあたりを明確にしないと話が噛み合わなくなる(荒れがち笑)。
○クロスオーバーとタイムアライメントの話。
カオデのタイムアライメントについて。
到達タイミングを合わせるという意味では、距離の実測から換算されたディレイをかければOK?
パルスを再生して到達時間を測定すればなお良しだけど、高域成分が含まれないサブウーファーでは困難(音の立ち上がりがゆっくりになるため)。
…と思いきや。
カオデのあちこちに配置したユニットは、同じフルレンジスピーカーを並べているわけではない。
各帯域を担当するユニットが使われている(分担している)。
それらの破損を防いだり同じ音がなるべくダブらないようにするためにクロスオーバーフィルターをかけて、それぞれの帯域を分割している。
このフィルターがアナログ回路やIIRフィルターであれば、位相歪が生じている。
つまり、周波数によってばらばらな時間のずれが生じている。
ではタイムアライメントはどの周波数のタイミングで合わせたらいいのか?
A. 各ユニットの通過域(振幅-周波数特性が平坦な部分)で合わせたら、時間的に一致してる箇所は多くなる?(ような気がする)
B. クロスオーバー周波数の位相が一致するように合わせたら、システム全体の位相-周波数特性がきれいな感じになる?(上がったり下がったりしない=線形位相の形に近いので「歪み」が少ない?)
どっちが正解なのか今のところわからず。
やってみて自分なりの印象としてはこんな感じ(まだ実験段階、正確に調整できているか不明)。
A. 音の塊感・一体感・アタック感が強い。音像はダッシュボード上にぎゅっとまとまってる感じがする。
もしかしたらダッシュ上の高域ユニットが相対的に早くて、そちらに定位が引っ張られてるのかも知れない。
B. 音が自然な印象。リラックスして聴けそう。音像が上下や奥行きの広がりを感じられて立体的。
でも、ダッシュ上とドア足元のユニットのタイミングがずれて広がってしまっている可能性もありそう。