
■基本的な1日のタイムスケジュール
さて、ここで場内の基本スケジュールをご紹介します。ちなみに時刻は実際の時刻ではありません。
最悪の場合スケジュールに応じてなんらかよからぬことをされても困るのでざっくりの時間です。
7:00 起床・点呼・洗面
7:30 朝食・官本希望聴取
8:00 運動(実際には髭剃りと爪切りの時間)
8:30 運動後点呼・官本配布
9:00〜12:00 取調べ調書対応+居室清掃
12:00 昼食
13:00 昼食後点呼
13:00〜18:00 取調べ調書対応・面会等
18:00 夕食
18:30 夕食後点呼
19:00 洗面・布団敷き
20:30 官本回収・就寝前点呼
21:00 消灯就寝
もう節目節目に点呼です。
基本は居室中央から外に向け顔が見えるようにして「はい!」と応答しないと穏やかに注意を受けます。私がいる間は逆らう益荒男はいませんでしたが、ここで逆らったりすると恐らく接見者に危害を加える恐れありとして接見禁止処理が入ります。
■まずは逮捕から勾留へ
割と聞く話なのでご存知かと思いますが、逮捕が通じるのは原則48時間です。再逮捕とかあると追加されると思いますが、逮捕はあくまでそれ以上の犯罪を犯さないよう、取り調べのため勾留処理まで逃げないように捕まえておくことを指すので、48時間以内に「比較的軽微な迷惑行為であり、被害者等が特に存在しない」場合、48時間で釈放される場合もあります。
ゴルゴ13とかで「不法侵入のお兄さんがただ、2・3日泊めてやってくれ」ってありましたけど海外だと被害届一々出さなかったりするんかな?
で、この勾留は検察庁の要請に沿って裁判所が発行します。
それぞれの場所に「護送」されて、
検察「じゃあ勾留するからざっくり事件のあらまし教えて。警察に証言した内容と整合見ながら勾留期間決めっから。原則10日間な」
裁判所「って検察が言ってるから勾留するね。ちなみに勾留期間中により詳細に取り調べが必要ってなったら更に最大10日延長すっから。あと弁護士つけてね。お金ないなら資産が50万以下として資力調査すっから」
というお言葉をいただきにそれぞれ離れた場所にある検察庁と裁判所をお参りすることになります。
しかも被疑者達は列をなしているので、現地で30分〜90分の待ち時間があります。
その間暇潰しなんか当然手段なく、居室に似た鉄格子付きの待合室で寝るか寝るか或いは寝るかストレッチぐらいしかやることありません。
あ、護送担当は留置場担当さんの2.5倍ぐらいの筋量の人達なので脱走は諦めてください。最悪不慮の事故が起きます。
ここは人を裁くという重い事実のために対面が必須で仕方ないんでしょうが、このご時世なのでID疎通とってオンラインで移動なしにできないんかなって思いました。
被疑者が暴れてマイクやカメラ壊しそうだけど防弾ガラス越しにするとかでいい気もします。
移動はプライバシーに配慮して鉄格子とスモーク全開の車両で行われ、移動中に襲撃があっても即封鎖ができるように定時無線が飛び交います。諦めろ試合終了だ。
現地も門の開閉が完全に所内のコントロールしか受け付けないスタンドアロン制御になってるので物理的に門破って最奥部にあるガチムチキャッスルにカチコミするしかありません。
多分RPGとかヌカランチャーが要ります。
■ここで変わり種 署内で読んだ本の紹介
さて、勾留が決定したら取り調べが始まるんですが、自首してる人の場合大抵は「自分に不利な事実は黙秘する権利がある」と言われても洗いざらいハイパーゲロリングらしいです。
私の場合もなんていうか、事情がクッソ特殊なので何一つ隠さずガチンコ自供します。
取り調べについては後述しますが、全ゲロでしかも中身の検証が容易いぐらい話の内容を練ってあるとですね、ぶっちゃけ勾留期間が半分以上余ります。
もうわかりますね?
マジで、もう言葉に尽くせないぐらい、いっそ痛いぐらい
暇なんです。
この暇を潰すには寝るか、寝るか、寝るか、近隣に迷惑にならない音の範囲で筋トレするか、官本と呼ばれる所内で許可された50冊程度の新書、小説の類から1日2冊限定で選んで読む。
或いは家族から差し入れされた書籍が「検閲査読されるのを待って」、3冊まで居室に持ち込んで読むしかありません。
小説3冊をあまり文章に馴染んでない査読担当が読むのを待つと大抵2日かかります。
ちなみに筋トレを選ぶ人はガチンコ筋トレはおすすめしません。せいぜい軽く体が温まる程度のものをインターバルこまめに取りながら極力汗をかかないように実施しましょう。
何故なら
留置場での入浴は「週2回」だからです。
やだ!あたし.......臭い!!
ってなって自尊心が壊れ始めた頃にしか入浴できないんです。
滝汗かいても任意のタイミングでシャワーは浴びられません。その状態で荒御魂布団にinすることになります。
控えめに言って死にます。
で、私ちょっと文章に好き嫌いが激しくて、最初に選んだサスペンス系新書が本当にどうしようもなく肌に合わない文体で2日ほど敬遠してたんですが、耐えきれず別の本を読んでみたら新しい世界が開けたのでおすすめがてらご紹介を。
① 悪いうさぎ 若竹七海 著
https://bookwalker.jp/de29569858-257e-439f-8fea-e52e27607bdb/
一言でいうと、ケイゾクやトリックみたいな舞台感で軽くサイコパスのテイストもある映画小説。
何よりもキャラがそれぞれ個性豊かで大変よいです。ミステリになるのかな?
展開もかなりビックリの連続で、食わず嫌いで新書系を読んでない人には是非おすすめしたい一冊です。
②空中ブランコ 奥田英朗 著
https://bookwalker.jp/de41de49fe-194a-4e18-a713-a4b3626984f6/
注射針が刺さるのを見るのが大好きな破天荒というかイカれ神経科医が、イップスやチックなどの神経症を抱える人達をメチャクチャな方法で、でもすべて解決していくコミカルな作品。
なんでしょうねこの、パタリロと漆原教授を足して2で割ったような人は。
③ゴールデンスランバー 伊坂幸太郎 著
https://bookwalker.jp/de606c29c4-9915-415c-a0c8-f57d38e3395f/
後で知りましたがこれ映画化してたんですね。
邦画はかなり敬遠してるので見る予定はないですが、小説の方は是非一読を推奨します。
この人後述のAX アックスも書いてるんですが、角川文庫と違ってしっかりミステリしてます。
ただちょっと舞台装置として使われたセキュリティポッドって設定がポロっと感はありましたが、それでも文章素晴らしくページを追うごとにハラハラしました。
④AX アックス 伊坂幸太郎 著
https://bookwalker.jp/de5decadf1-bb88-4341-8f50-0020edb5697d/
一言で言うと
ギャップおじさんTRPGとフルメタルパニックを悪魔合体させて男泣きエッセンスを添えた魔改造書。
かなりコミカル寄りな内容ではありますが、最後まで読み終えると兜おおおおおおおおおお!!!って叫びたくなります。
絶対これアニメ化すべきだと思う。
もしくは松重豊を主人公にしてドラマ化。
⑤魔力の胎動 東野 圭吾 著
https://www.kadokawa.co.jp/product/322003000371/
こちらもかなりコミカルというか、クトゥルフ神話TRPGが好きな人なら楽しめる内容です。
あらゆる物理現象を即座に計算する不思議な少女と鍼灸師の主人公が、いろんな著名人の問題を解決していく作品です。
ミステリというよりはやっぱりコミカル寄りな作品だと思います。
⑥三毛猫ホームズシリーズ 赤川次郎著
https://bookwalker.jp/series/173/?adpcnt=7qM_VshC&gclid=CjwKCAjw2bmLBhBREiwAZ6ugo4PrXU0-3ZohU0aE6Wa17QN6pFCqKPN39KR1Uz-Zv2qFGCF2Pu-hkBoCgyUQAvD_BwE
サスペンス系小説では有名な作品ですね。
私サスペンス系はあんまり好きではありません。
何故かと言うと、目線が主婦に寄ってる作品が多いので、無駄に家庭的な描写が無駄に詳細に書き出しされてて、文章の2/3ぐらいがまったく共感できない心理ト書きになっちゃうんですね。
なのにこの作品はとても物語として楽しめる書き口なので非常にお世話になりました。
紹介順は決してお勧め順ではありませんが、全作品、メモすら許されない留置場で人の名前を覚えるのが苦手な化け猫が呪文のように繰り返して覚えて帰るぐらいには良い作品です。
よい本をお探しの方は是非、オンラインででも。
ただ......官本がサスペンス満載なあたり人間って業が深いですよね......
また明日以降その3に続きます