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2025年04月26日 イイね!

境界層吸い込みの導入方法から見る、DIY空力設計の考え方。

結構色々な方から、「境界層を吸い込む?!」、「そんなことほんとに起こるの?」、「うちの車でも使える?!」などのお声を頂くので、改めて技術背景と、RS3でボディ表面の結露を利用して可視化した結果をお示しつつ、DIYでの空力設計に必要な考え方をお伝えできればと思います。



そもそも境界層とは、分子同士の引き合う力に由来する、俗に言う空気の粘り気が引き起こす現象です。
ざっくり言うと、この引き合う力による粘り気があるおかげで、空気の分子は物体のごく表面をなめらかに滑ることができなくなります。
こちらも以前のブログにてざっくり解説しましたので、引用しておきます。
https://minkara.carview.co.jp/smart/userid/3142035/blog/47958704/

この境界層ですが、剥離を起こしにくくしたいのであれば、層の厚み方向のエネルギー交換を促してあげればよいわけですね。
例えば、物体表面の温度と気温を上昇させると、分子一つ一つの速度が上昇し、分子同士が衝突する機会も増えます。これにより、速度の違う空気分子同士もぶつかりやすくなりため、境界層は厚く(見かけ上、空気がサラサラに)速度変化もなだらかになり、剥離もしにくくなります。
また、巷で話題のボルテックスジェネレータも、作り出した渦の持つ流れが層の厚み方向のエネルギー交換を促進することを意図しています。
どちらにも共通するのは、層の厚み方向のエネルギー交換の促進を図っているという点で、このような挙動は車体周りの気流全体で言えば摩擦抵抗を増やすことにつながります。
しかしながら、層流を敢えて早めに乱流に遷移させることで、多少の摩擦抵抗の上昇を許容しながら、より高速域での剥離による圧力抵抗の発生を低減することができ、高速走行時の抵抗や車体後方の剥離渦による姿勢不安定を低減できるわけです。
流れそのものの名前的に、層流=摩擦が小さくて綺麗、乱流=摩擦が大きくてきたない、みたいな感覚を持ってしまいますが、層流の境界層がこのような不安定な効果をもたらすなら、正直剥離のポイント含む流れ管理が簡単な乱流の方が扱いやすいので上記のようなVGの設置をしたくなるし、もっと言えばそもそも層流境界層なんか無い方が(極めて薄い方が)良いよね?っていう発想に至るわけです。
そうして生まれたのが、境界層吸い込み技術です。

以前のブログで紹介した通り、境界層吸い込み技術自体はもともとは航空工学での翼面の境界層制御技術の一つです。
https://minkara.carview.co.jp/smart/userid/3142035/blog/47997646/
物体表面の境界層を何かしらの圧力差で吸い込み、吸い込み領域の後方では再度薄い境界層にして、剥離しにくくかつ摩擦抵抗も小さい流れを作るのがコンセプトです。
これができると、車であればリアスポイラーなどの効率を最大化でき、最後方での不安定な剥離も極めて小さくすることにつながります。

一方、一般車では飛行機のエンジンなどのようにアクティブに吸い込む力を供給することは難しいので、自然に生じる圧力差でパッシブに機能する吸い込み経路を作り上げる必要があります。
以前のTTでは、リアゲートのサイドとCピラーのチリの隙間を吸気口、リアゲートとリアバンパーの隙間を排気口とみなし、境界層の表面近傍の低流速域(高静圧)と、車体の真後ろの剥離渦=ウェイク領域(低静圧)の圧力差で空気を抜くようにしました。
この経路の途中に存在する他のチリは、圧力差を抜いてしまうので、全て塞ぐのがポイントでした。





TTでこのように経路を定めたのは、ルーフをなだらかに下ってくる流れとサイドからリアウィンドウ上に入り込んでくる流れをうまくバランスさせ、リアスポイラーの機能を強めすぎずバランスさせる必要があったからです。
おそらく、ルーフエンドとテールゲートの隙間からの吸気としてしまうと、左右からの流れの安定化による姿勢安定ができず、リアスポイラー下面の流速のみが上昇してダウンフォースだけが強まり、乗り心地と性能の両立の点では難しい方向に行ったことでしょう。

一方のRS3では、ルーフエンドとリアゲートのチリの隙間を吸入口、リアゲートとリアバンパーの隙間を排気口と定めています。




RS3は比較的なだらかとはいえ、切り立った後端のハッチバックスタイルであることには間違いないです。
故に、ボディ後方の剥離渦はサイド流由来のものよりもルーフエンドやボディ下面からからの流れによるものの影響が大きくなると予想されます。
それをメーカー側も当然理解していると考えられ、後期型ではリアディフューザーそのものがアンダーボディ流と後方ウェイク領域の圧力差の利用を想定した上下二分割構造になっております。
したがって、メーカーが想定した流れをうまくアシストするように、地面に対して水平な面の気流を整えることが、ボディ後方での効率的な整流とウェイク低減、それによるリアリフトの低減とボディ全体でのダウンフォース傾向創出に繋がると考えられます。
ゆえに、このようにハッチのサイドの隙間を全て塞ぎ、テールゲートの下端に集約して排出する設計となったわけです。

これが機能することで、後方のウェイクに適度なエネルギーを供給でき、アンダーボディ流とテールレンズ高さ以上の領域の流れとがボディ真後ろで剥離渦として混ざることを防ぎます。すると、ボディの直後からだいぶ後方までの広い範囲で、上下面由来の流れ同士がやや上方に向かいながら滑らかに合流できるようになり、低抵抗かつダウンフォース傾向の創出に繋がります。

想定した流れが生まれたかは、例えば結露した状態で80 km/h走行させると見ることのできる水滴の流跡線などで確認できます。




写真一枚目は、その条件で走行したときのルーフを後方から写したものです。
ルーフ全体で水滴が綺麗に後方に流れておりますね。アンテナ後方では渦の生成の証拠となる巻き込み流れがみてとれます。
このことからも、ルーフ後端までに剥離は起きていない様子がわかります。

二枚目はルーフ後端とエッジスポイラーのチリ(吸入口)全域を写したものです。
通常であれば、ルーフ後端からの水滴がエッジスポイラー側にジャンプして、スポイラー上にも大きめの水滴の流れた跡が残るはずです。今回は吸入がうまく作用しており、そのような大きな水滴は全てチリに吸い込まれ、後ろには新しい流れが生まれたことがわかります。
また、AP製スポイラーの下側では局所的に結露が全て解消されており、翼型がうまく作用して高速流が生じ、結露が全て流れ去ったことを意味します。
ただ、ちょっと難しいところが、純正スポイラーの前半には流れ始めるような跡がない点です。
これは、流れが吸い込み口に向かって局所的に小さく逆行したであろうことを意味しています。
その後のAPスポイラー手前では結露が消えているため、この部分で再表面の流れの逆行は終了して高速流に戻ったと考えられます。より高速走行して主流が早くなれば逆行もしにくくなりますが、排出口側の負圧が大きいと吸い込み力も高まりますので、ここはいかなる速度でもAPスポイラーの直前には逆行が終了するように設計を詰めたいところですね。
具体的には、純正スポイラー前縁に境界層くらいの高さまでのガーニーフラップを置いて流れを堰き止め、静圧を高めつつ後方からの逆流をシャットアウトする手法なんかが、パッと思いつきます。

三枚目はテールゲート下端のチリ(排出口)を写したものです。
細かい液滴がチリからゆっくりとバンパー後方に向かって流れた様子と、同時に後方から巻き上がってテールゲート表面に付着する大きな液滴がない様子がわかり、排出機能も発揮されたことが分かります。
総じて、今回の境界層吸い込みは一定の目論見通りには機能したと考えられますが、流れの逆行問題の部分はリアスポイラーの効率の安定化の面でもう少し改善の余地ありというところですね。


さて、この境界層吸い込みも含め、これまで色々なデバイスを試して全て効果があることを確認してきました。
ここでお伝えしたい重要なポイントは、むやみやたらに色々な箇所に空力デバイス、例えばVGやカナードを着けるなどはしてはいけないというところです。

例えば、今回の吸い込み機構ですが、これを支えるのは流入側と流出側の圧力勾配なので、機能させるためにはある程度の大きさの後方剥離渦と負圧域を用意してあげないといけません。例えば、ボディサイドのVG配置ですが、敢えてテールランプ下部〜リアバンパー上部の領域には設置していません。
この領域はテールの丸みによる剥離と再付着により、水平方向に回転する大きめのウェイクが生じます。
この辺りにウェイクによる大きめの負圧があるが故に、テールゲート下端からの吸い出しや、リアディフューザーの吸い出しが、斜め上方に機能してくれます。

逆にここにVGを設置し、ウェイクを小さくして負圧を低減してしまうと、機能させたいメインの空力デバイスの効果が小さくなり、全体のバランスを崩すことにつながります。

また、ルーフのアンテナ近傍にもVGは設置しておりません。

VGは単体であれば境界層内でエネルギーを均質化してくれますが、それは動圧が大きく静圧が小さい渦を境界層内に作ることになり、表面近傍での静圧は小さくなります。
すると、境界層吸い込みにおける吸入側の駆動力は低下することにつながります。
境界層内の流速が平均化されて主流よりも遅くなるため、境界層吸い込みだけの場合よりも遅い流れがルーフスポイラーに到達し、効率の低下も予想されます。剥離後の領域に吸い込み点を設けるなら別ですが、RS3はTTのようにルーフが絞り込まれているわけではなく、極端な剥離もしないので、今回のようにルーフスポイラーと境界層吸い込みを合わせる場合にこのエリアでのVGは不要と考るに至ります。
一方、先ほどの流跡線解析の結果から、吸入口直後での逆流や流速低下が想定される場所については、車速に応じた空力効果の変化をタフトなどで可視化しつつ、ガーニーフラップ設置など対策が必要かどうかを見極めたいところです。


DIYといえど、空力設計は単体の効果に飛びつくのではなく、どこに何を設置するとどのような流れが生じ、全体でどのように相乗効果(あるいは相殺)を発揮するかを考えることが重要ということで、今回のブログの結びとさせて頂きます!
・自分の車にも境界層吸い込みを使ってみたい!
・空力で乗り心地や操舵性を改善したい!
・こんなデバイスを着けたらどうなるかを予想したい!
という方のお手伝いもしますので、気軽にコメントいただけると嬉しいです!
Posted at 2025/04/26 12:29:13 | コメント(2) | トラックバック(0)
2025年04月17日 イイね!

RS3くんと進める、空力向上施策の次なる一手…



TTで培った空力的知見もあらかた RS3にFixして反映してきた感がありますので、ここからは新しいことに挑戦してみます。
これまでそれほど手を出してこなかった、しかし極めれば絶大な空力性能向上を見込めるフロア周りの空力についてです。

一口にフロアの空力といっても、車高を下げてベンチュリ効果を少しでも得るとか、フロアをフラットにしたり翼型フィンをぶら下げたりで整流するとか、サイドスカートを延長するとか、色々なやり方があると思います。
今回は、
・純正のスタイルや乗り心地を崩さない=車高調などサスのジオメトリーは変えない
・ディーラー入庫や車検に影響させない=フロアをボードで塞いだり最低地上高に影響するフィンを付けない
を前提にして、
サイドスカートあたりの改良を推進します。

まずはサイドスカートを拡大することが空力に与える影響についておさらいします。
レースカーなどでボディ横方向に突き出たサイドスカートはアンダーフロアの気流とボディサイドの気流の分断範囲を広げて、フロアの負圧域の物理的拡大とサイドからアンダーフロアへの巻き込み流入を防ぎます。
これにより、フロアでのダウンフォースと、ディフューザーから流出する流れを綺麗に保つことが見込まれます。
一方、このような効果を期待するには、フロア下面の地上高を車検ギリギリの90 mm程度にすることが重要で、私の中では現実的ではありません。
参考にムーンクラフトさんのアンダーフロアの空力に関するブログを引用します。
https://www.mooncraft.jp/blogstaff/aerodynamic/cfd-diffuser/

市販のサイドスカートでは、ワイドボディ化しない限りは延長幅をそこまで広くできず、また下方向に延長してトンネル効果を発生させることは当然難しいため、効果は気流の分断が精々で、巻き込みの強力な防止や、負圧域の拡大に対しては大きな影響を出せないのが現実です。



図 マクストンデザインのRS3向けサイドスカート。見た目はしっかり引き締まります。


つまり、市販車の範疇でフロアや後流への効果によるダウンフォース向上・抵抗低減を機能として担保したサイドスカートにするためには、気流そのもので仮想的なサイドスカート、F1で言うようなボルテックス・シールをなんとか作る他ありません。
ボルテックス・シールは、負圧源になりかつ流れの方向を制御する渦をあえて作り出し、そいつに邪魔な流れを吸い出してもらうことで、グラウンドエフェクトを車体の見た目以上に持たせることがコンセプトです。


図 F1 2021 アストンマーティンのサイドボードエッジのスリット。ボディ上面から下ってきた高圧気流をエッジで外方向に跳ね上げるようにして、この画面内では車体前方から見て時計回りの渦を作ります。

今回はこれと同等のことをRS3でやってみました!
パッと見の見た目はこれです!

…何をした??となるかと思いますが、フロントドアの後端から前方にかけて、サイドスカート下面に4つのVGが等間隔で並べてあります。
前端部のEZ lipからは多少遠ざけて、タイヤウェイクが弱まり、かつサイドの流れと合流してある程度流れが綺麗になるであろうところがVGの先頭になります。
このVGはエーモンの雨滴型VGですが、これの前方(太い側)を15°くらい外側に向けて配置しています。
一見すると、フロア内に流れ込みそうな配置ですが、原理を理解するとそうでないことが分かります。
ここからはラフスケッチも交えて説明します。

一般に、VGは主流に対して本体後方部で起こる微小な剥離渦を使い、その時点で主流の境界層高さくらいまでの範囲で垂直方向にエネルギー交換を促進して、表面近傍にかけての流速の低下の特性を変えることが主な機能です。
言い換えれば、境界層を混ぜ混ぜすることで、表面に近づくほど遅くなる空気の流れを可能な限りどこでも均質にしてやるための装置です。
したがって、飛行機の翼など、それ単体で渦度(流れの方向を変える影響力)が大きいものに比べ、流れの向きそのものへの影響は非常に小さいです。


図 様々な形状の物体と流れの相互作用のイメージ図

このため、翼のような形状のフィンであれば、今回のRS3のサイドスカートに対しては外へ外へと流れを偏向するような向きに取り付けるのがセオリーですが、
VGであれば後方の剥離渦の流れの特性に基づいた向きでの設置が好ましいと言えます。

ここで、VGを主流に対して斜めに取り付けた場合の、後方の剥離渦や流れの特徴をまとめます。流れと先にぶつかる側の面では正圧、ぶつからない側の面では剥離により負圧が生じます。VG自体は高さが低いので、主流は正圧側から、負圧側へとVGを乗り越えながら進みます。
この時、VGを左右方向に登りおりする流れが生じ、後方に抜けた際に主流方向を回転軸とする螺旋流れが生じます。


図 迎角のあるときのエーモンVG周りの流れのイメージ図



図 RS3のサイドスカート周りの渦イメージ

今回の設置方法ではこれを上下逆さまにして、先頭側がボディ外側に向くようにサイドスカートの裏に取り付けるので、この螺旋流れは渦の下側では車体に対して外向きに、上側では内向きに流れる渦になります。したがって、アンダーフロアの流れを引き出しながら、サイドスカートを上から押さえつける流れを生み出します。
また、連続して縦列させることで渦にエネルギーを切らさず供給でき、最終的に強い渦を形成できます。
これにより、アンダーフロア流をリアタイヤの外側に向かうアウトウォッシュへと変化させ、リアタイヤ正面にぶつかる流れによる空気抵抗を大幅に減らしつつ、ディフューザーへの乱流も大幅に低減します。思想的には、F1 2021のメルセデスのマシンに近いと考えています。


図 メルセデス F1 W12のサイドボード。こちらではボードのエッジを斜め前方に向いた波形にすることで、ボルテックスシール効果を得ている。


翼型の方が効率が良くない?と思われる方もいらっしゃると思うので、その場合の取り付け方についてもコメントします。
先程のコメントの通り、翼型の場合はそれそのもので形状に応じた渦度を持つため、流れの偏向と同時に誘導渦を生じます。
飛行機に多少詳しい方ならわかるかもしれませんが、誘導渦とは飛行機の翼の端部から飛び出して後方へ引きずられる形で表れる渦で、飛行機にとっては翼面を上から押さえつける流れになり、揚力の減少を伴う誘導抵抗を生じる厄介者です。


図 雲により可視化された飛行機の誘導渦。機体メーカー各社は翼端の形状を工夫して、この渦が主翼に与える影響を軽減している。

一方、レースカーのVGのように、翼面そのものが小さければ影響はほとんどなく、むしろ強力な誘導渦でボルテックスシールを形成できます。


図 レッドブル RB16Bのサイドボード上の翼型VG群。

こちらを選択する場合は、上図のRB16Bのようにサイドスカート上面に設置し、翼型と合わせてVG前方を車体内側に向けた状態にするのが好ましいです。
どちらを取るかは、ボディ周りの流れを他の部分でどのように処理しているかによりますが、一般的に渦の軸が地面に近い方がシール性が高いこともあり、私はサイドスカート裏を設置位置として選択しました。


さて、ここまで長々と蘊蓄を垂れてきましたが、ここからは効果の程をお伝えしていきます。

まず明らかな走行フィーリングの変化としては、コースティング時に段違いに減速しにくくなったことです。
想定以上に車が前に滑っていく感覚です。
かといって、コーナリング時にグリップしにくくなったことはなく、むしろしっとりと路面に張り付く感覚が強くなった印象です。
特にリア側の張り付きは顕著で、同じコーナーを一定の速度で旋回する時で比較してステアリングの舵角も小さくなりました。
トルクスプリッターがさらに効率的に機能しているものと思います。

燃費に至っても当然向上しており、いつもの第三京浜の都筑-港北の上下平均は、これまでのチューニングでは平均で17 km/l (オートモード、80 km/hクルコン、エアコンなし)だったのが、18.0 km/lを達成するにまで至りました。
ダウンフォースによる転がり抵抗増加を鑑みても、かなりの向上があると考えられる結果です。

今後も引き続き、他のデバイスを含め流れの可視化に向けて色々と準備を進めてまいりますので、お楽しみに!
Posted at 2025/04/22 07:02:19 | コメント(0) | トラックバック(0)
2025年02月21日 イイね!

RS3をどこからイジるか…

RS3納車を月末に控え、TTの距離を伸ばせずヤキモキする気持ちをRS3のチューニングの妄想に昇華する今日この頃…


何から手をつけようかと言うところで、まずはハッチバックならではの弱点にもなっている空力的な抵抗改善とマイナスリフト化に焦点を当てようと思います。

RS3スポーツバックのようなハッチバックスタイルはリアのルーフトップからの巻き込みと再付着の起こる範囲がクーペやセダンよりも大きく、リアリフトや大きな走行抵抗が生じてしまいます。
しかし、流れをうまく処理して他の部位からの流れとのバランスを取ると、上向き流を形成してボディ全体でのダウンフォースにつながる形状とも考えられます。

どう言うこと?となるので、具体的にTTとの比較を出します。


簡単のため、まずはボディ周りの速い流れのみで考えます。
TTのようなクーペの場合、なだらかに傾斜したルーフ形状のため、ルーフを通った流れはボディ底面からの流れに対して下向きに合流しようとします。
リアの後引き渦領域が狭く、走行抵抗としては小さいですが、ボディ全体で見ると飛行機の翼断面周りの流れに近く、揚力が発生しやすい形状と言えます。
故に、TTではダックテールの役割をアクティブスポイラーや固定式スポイラーに担わせ、ボディ周りの流れ全体を最終的には少しでも上向きにさせようとします。

一方ハッチバックボディの場合、後引き渦領域こそ大きいものの、ルーフの流れは地面と平行に近く、再付着さえしなければ吹き下ろしになりにくいと言えます。
したがって、ボディ全体で見るとTTのようなクーペスタイルよりもダウンフォース状態を作りやすいのではないか?と言うのが私の見解です。
実際、生A3やRS3のスポーツバックは、フロントヘビーなのも相まってお尻の振られ感があるとの意見を聞くため、この辺りを綺麗に整えるとリアの安定感やトルクスプリッターの効率向上に効くのではないかと見ています。

ここで、新型RS3のリア周りを見てみましょう。

前期型より大きく張り出したディフューザー…
なんとも痺れますね…

そして何よりこのディフューザー、二層構造になっているんですね!(https://youtu.be/2dZ3atHzBLA?si=rcqVlzSCJd0DgUuSより)
このディフューザーの大型化&二層構造化ですが、間違いなく境界層吸い込みを加えた底面流の上向き化を狙ったものです。
通常、レースカーやスーパーカーのディフューザーはボディの中程から徐々に上向き流化しながら後方に空気を排出するものですが、このような機構ならそこまでの長さがなくとも一般的な乗用車のそれよりは遥かに強い上向き流を作れます。
(境界層吸い込みについてはこちら。剥離の原因になる境界層を強制的に除去し、剥離を遅らせる技術です。https://minkara.carview.co.jp/smart/userid/3142035/blog/47997646/)

これがあるのであれば、あとはこの効果をサポートする形で全体の流れを整えることにフォーカスするのがベストということで、RS3の最初のチューニング計画は以下の通りです!
①ルーフスポイラー装着
②リアサイド上部VG装着
③テールレンズ横VG装着
④ディフューザー最下面にVG装着&リアサイドスポイラー+VG装着

①は言わずもがなですが、ルーフ上面の流れを綺麗に流しきり、かつ抵抗の少ない範囲で上方に押し流すことをします。APあたりのルーフスポイラーを取り付けようと思います。アンテナからサイドにVGを並べると効果が向上するかも。

②はリアウィンドウサイドの流れを綺麗に流しきるのが目的です。8Y型から取り付けられた、リアウィンドウ横のグロスブラックのブレードがこの役割を持たされていますが、その効果の向上を狙います。
これにより、ルーフからの剥離流と干渉した大きな後引き渦(走行抵抗)による上向き流への悪影響を減じます。

③は②と同様、テールレンズ横で綺麗に流し切ることで、ボディ上面と下面の流れがこの領域の後引き渦で混ざり合い、ボディ直後で大きな渦になることを防止します。

④はディフューザーの効果を最大化すべく、最下面を通る流れも可能な限りディフューザーか剥離しないようにし、境界層吸い込みの効果を高めながら上向き流形成に貢献させます。また、リアサイドスポイラーとその近傍にVGを装着することで、ディフューザーからの流れとサイドの流れの干渉を減らします。

これら4つがうまく作用し合えば、こんな感じで仮想的にマクラーレンのスピードテールのようなボディ周り流れを作れるんじゃないかと期待してます!


取り急ぎは以上の4つを一つずつ試し、効果の程を確かめていく予定です。
後方での空力の詰めが済んできたら、前方の流れを整え、全体での最適化を行います!

いつもとは流れが逆ですが、RS3はもともとハイパフォーマンスですし、ボディ剛性やら吸排気チューンは空力向上のあとのお楽しみにします…笑
Posted at 2025/02/21 03:46:44 | コメント(0) | トラックバック(0)
2024年11月23日 イイね!

飛来物との衝突…

飛来物との衝突…大変悲しい出来事に見舞われました…

先日、首都高を走行中に前方へ駆け抜けて行ったWRXが路上に落ちていた金属パイプを跳ね上げ、不運にも我がTTくんに直撃してしまいました…


角度が甘かったからか、幸いにもガラスと中間膜は貫通せず人的被害はありませんでした。しかし、内側のガラスも割れて車内はガラスまみれ、おまけにバウンドしたパイプはルーフまで凹ませる始末。


落とし主が分からない以上泣き寝入り状態であることに変わりはないのですが、かろうじて板金で治せると言うことになり一安心です。
そんなわけで事故車にはならず目下修理中のTT君ですが、一歩間違えれば私自身の命も危なかった経験でした…
Posted at 2024/11/23 10:50:12 | コメント(4) | トラックバック(0)
2024年10月25日 イイね!

TTくんの空力のトータルコーディネートまとめ

TTくんの空力のトータルコーディネートまとめ

気流デザインに関する試行が一通り完了し、これで現状の穴あけなし空力チューンとしてはひと段落ついたと思いますので、全体の気流設計についてまとめたいと思います。
ベース知識については過去のブログでの流体解析や境界層の扱いに関するあれこれを参考にしていただければと思います。

「境界層について色々と考えてみる。」
https://minkara.carview.co.jp/smart/userid/3142035/blog/47997646/
「TT周りの気流を可視化した結果を共有!!」
https://minkara.carview.co.jp/smart/userid/3142035/blog/48005957/


基本的な設計思想としては、
・ボディ全体をバランス良くリフトフォース→ダウンフォース傾向にする。
・〜80 km/h走行時の燃費は出来るだけ維持する。
・80〜 km/hでは前後バランス良くダウンフォースかけて、ピッチとロールを抑制しつつ、コーナリングでのノーズの入りをクイックにする。

なので、

① フロントタイヤハウス内全域の正圧低減&前後タイヤ周りから下面への流入量低減
② ボディ後流の後引き渦を低減
③ボディ後端で上向き流を形成
について、バランスを整えつつ達成するイメージです。
TTは後端が翼断面に近く、かつ最近のウェッジシェイプなデザインも取り入れていることや、ミラーからCピラー周りの処理をうまくこなしていることなどから、素の流れもかなり綺麗です。
綺麗な流れはしっかり利用しつつ、乱れやすい部分の影響を可能な限り取り除きます。


① フロントタイヤハウス内全域の正圧低減&前後タイヤ周りから下面への流入量低減

主にフロントサイドの処理と、サイドスカートの全後端の処理、リアサイドの処理で達成を目指しました。


フロント正面にぶつかってサイドに流れる気流は、フロントバンパーのサイドに取り付けたEZ LIPスポイラーの上面を通り、ある程度まとまった流れとしてカナードへ送ります。
これにより、タイヤハウスへ正面からぶつかろうとする気流を偏向してタイヤによる抵抗を低減します。
また、途中に切れ込みを入れましたが、曲率の変わる部分で剥離を起こす前に、負圧になっている裏面側へ境界層を吸い込ませ、カナードへの流れを整ええます。カナードの真下にあたる部分は何段階かで上側に跳ね上げるように段差をつけ、カナードの効果向上を狙います。


カナードは上下二枚組とし、上側のカナードの上端をホイール中心に合わせます。
特に、カナードは下面で剥離させた流れの渦によりタイヤハウス及びホイール内の高圧空気を吸い出しますので、取り付け角度は流速に合わせて適切に剥離・渦形成できるようにします。
上側カナードは前方にフロントバンパーサイドの装飾があり流速が低下するので、やや角度をつけ目にします。下側カナードはリップスポイラー付け根を通ってきた綺麗で早い流れなので、前端が気流と平行になるようにします。これにより、特にタイヤ中心と、それより下側の高圧部の空気を効率よく抜きます。
別途取り付けているブレーキ導風板の効果も向上できると考えられます。


ボディサイドは純正のサイドスカートの機能を活かしつつ、前後タイヤハウス周りで下方向に延長し、ボディサイド流れとボディ下面流れの分流と、タイヤ後方にサイドから流入することを抑制します。
特に、前方の延長部では微小渦の発生によりエアカーテンの効果(気流を活用したサイドスカート機能)も狙います。


リアサイドは地面に対して水平にスポイラーを取り付けることで、ボディ後端とタイヤ後端で流れを分流します。
※緑は剥離渦になっている部分のイメージです。
未対策だと、主流に対して15度くらい角度がつくと剥離し始めるとされます。

以上、大きな付加物のない最低限の装備により、ボディサイドの流れを高速低圧で維持し、タイヤハウスからの流れの引き抜きとボディ下面流れの分流を狙う装備一式でした。


② ボディ後流の後引き渦を低減

ボディ後方での後引き渦の本質的な現象としては、ボディ上面から剥離してきた渦と、ボディ側面から剥離してきた渦同士が垂直水平に干渉することで、飛行機の翼端から流れ出る渦の形状によく似た流れを形成します。
詳細は以下の文献の図4あたりで読み取れます。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsaeronbun/39/3/39_3_3_41/_pdf/-char/ja

この渦が長く後を引き大きな抵抗になるために燃費が低下したり、車線変更で左右の流れの変化が大きいときにはバランスを崩す要因となります。例えば、道路の生垣のそばを通過したあと、草木がどれくらい車道側に引き込まれるかがこの渦のエネルギーを反映します。
これを低減するために、ボディ上面とサイドからの剥離渦のエネルギーをそれぞれ小さく保つ必要があります。
具体的には、曲面部での剥離をなるべく抑えてテールに向かって絞り込む流れを作りつつ、剥離を避けられないところに向かう流れはなるべく早く乱流に遷移させ、大きな渦になる空気を少なく保つことが求められます。
そこで、今回はルーフエッジのスポイラーとテールゲートでの境界層吸い込み、テールライトサイドのVGの三種類の対策で上記を実現します。






ルーフエッジスポイラーは、センターから外側に15cm付近の領域は渦による流速遅延が大きく、そこから外側にかけては徐々に流速が早まる形で縦渦を形成するような形状をしています。
したがって、ルーフからの流れは必然的に中心方向に絞り込まれるため、剥離の源になる流れの大元を削減できると考えられます。
上記の流れの変化の分、サイドウィンドウからの流れが高速でリアウィンドウ中心方向に引き込まれますので、サイドミラー周りとCピラーにVGを装着ののち境界層吸い込みを活用して剥離を抑制します。


最終的には後端の渦領域を水平方向に大きく狭めつつ二分割することで、抵抗源となる後引き渦を大幅に減少させます。


③ボディ後端で上向き流を形成

こちらは②で水平方向の渦領域が減少した分で縦方向の偏向の効果が出やすくなることもあり、少しの処理で大きな効果を望めます。
フロントのアンダーパネル付近の流速向上とタイヤハウスでのリフト低減で、フロントもダウンフォース寄りになっているので、リアスポイラー周りとディフューザーの処理で前後のバランスを整えるようなダウンフォースの発生を狙います。



リアスポイラーはルーフからの流れの剥離を抑えたこともあり、効果が高まっている(ノーマルよりもスポイラー周りの流速が向上している)と考えられます。
AP製などの大型スワンネックは翼面の高さも上がるため、リアのダウンフォースが過大になってアンダーステア傾向になることや燃費が悪化することが懸念されます。
そこで純正のRSスポイラーのリアエンドにエクステンションを装着しつつ、ボディのテールエンドにもトランクスポイラーを装着します。
これにより、スポイラー上面での流れの減速と偏向を促進しつつ、下面とボディの隙間ではスポイラー下面を通る流れの剥離を抑制しつつ上方に跳ね上げます。
この手法の良い点は、純正スポイラーの取り付け高さから変わらず、車速変化に対してもスポイラー周りの流速変化が穏やかなため、ダウンフォースの車速に対する変化も穏やかで姿勢のバランスが崩れにくい点です。


最後にリアディフューザーの機能を少しでも向上するため、ディフューザー下面にいくつかVGを装着します。これにより、ディフューザーの曲面にも流れがある程度追随できるようになると見込まれます。

全体のドライブフィーリング変化結果ですが、TTの空力やその他色々をブログでまとめていらっしゃるFujiwaraさんのTTRSとの乗り比べも実施しつつ、お互いに確認しました。
(※FujiwaraさんのブログURL https://polo9ngti.blogspot.com/2022/05/tt.html?m=1)

Fujiwaraさんのコメントを抜粋すると以下の通りです。
・60 km/hから四輪全体の接地感の向上が実感できる。
・90 km/hを越えると上記は顕著で、段差を越える時などのピッチングが非常に小さく抑えられている。
・120 km/h以上の高速でも車線変更の安心感が優秀。お尻のあたりに伝わるリアのブレ感がほとんどない。
・広い速度域で前後バランスが良い。万人受けする感じの効き方。TTRS比でもノーズがよく入り、コーナーの入り口から出口まで操舵のブレがかなり少ない。
・ダウンフォースにより登坂時やアクセルオフ時の失速感は大きい。
・風切り音がほとんどしない。
・総括してコーナリングマシンとして優秀で、吸気によるトルクアップも加味してテクニカルサーキットを全開走行したくなる味付け。

大変ありがたいコメントの数々…
全体として狙い通りのダウンフォース傾向を作り出せたと思います。
私もTTRSに試乗させて頂きつつ、上記の差を確かめることができました。

燃費に関しては従来からのパーツレビューで示してきた通り、〜80 km/h走行ではノーマル時から20〜30%程度向上しておりました。
一方、今回の新東名の120 km/h区間(御殿場〜長泉沼津の往復平均)での計測では、ノーマル時とー3%から同等程度と言う形で、ここでも高速域でダウンフォース傾向化していることが明確に数字に現れました。

近いうちに、一つ一つのパーツの気流への効き方も含め、まとめ動画を撮る計画を立てております。

ひとまずはここまでで我が家のTTくんの空力チューンは完成ということになります。
今後は様々な土地や道路、コースに出張って性能を確認したり、その結果を元に吸気の効率の更なる向上施策を試すなど考えています。
長くなりましたが、今回もみなさまのチューニングの助けになれば幸いです!!!

Posted at 2024/10/30 15:47:19 | コメント(3) | トラックバック(0)

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「妻と妻のコスプレ仲間たちが、元愛車のTT coupé Final Editionと一緒にコスプレビデオグラフを制作しました!
とてもカッコよくTT最後の思い出を飾れました!
https://youtu.be/46NpteDUwMM?si=PhMw0-s1LHnujvgs
何シテル?   04/11 19:41
Audi大好きmkmcoです。 航空宇宙工学専攻を出て、今は企業の研究員です。 原理原則から考えがちな人間です。 専攻や本職から、空力と構造強度あたりをいつもウ...
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