この絵、好きかも…
数か月前、ある日本画に一目ぼれした。
私にはこのようにして、新たな趣味がいきなり開始されることがままある。
そうそう、クルマもそうやって始まった。
ー閑話休題ー
その絵は奈良県の美術館で展示されているという。
見に行きたい!
だけどさすがに奈良は遠い…
だって、シルクロードの終着点ですもの。
遠い将来いつかの日か、となかば諦めていたら、その画家の展覧会が都内で開催されるというではないか。
しかも二か所同時開催。
これはまたとないチャンス、さっそく出かけてみることにした。
*今回、むっちゃ長いんで、流し読み/斜め読みでOKです!
趣味の世界に入っちゃってるんで、興味がなければそのまま閉じてくださ~い。
【山種美術館】渋谷区広尾
上村松園・松篁 ―美人画と花鳥画の世界―
美術館めぐりの好きなRちゃんと出かけた。
お互いそこそこ近くに住んでいるのに、電車の路線が違うのでほぼ現地集合。

HPより拝借
モダンな建物。
地下1階のみが展示会場というこじんまりとした美術館だった。

奥村土牛≪醍醐≫の桜
豊臣秀吉が花見をしたという京都・総本山醍醐寺の「太閤しだれ桜」を増殖した桜。
植わってから半年もたってないのに、花を咲かせるのはすごい生命力だと思う。
上村松園の作品は18点。ご子息の松篁の作品は9点。お孫さんの淳之の作品も1点。
いずれも美術館所蔵の作品が公開されていた。
〔上村松園〕
明治8(1875)年~昭和24(1949)年
京都の葉茶屋の次女として生まれる。
1948年、女性として初めての文化勲章を受章。
京都の風俗、歴史、謡曲の物語等に取材した気品ある格調高い女性像を描く。

「娘」昭和17(1942)年 絹本・彩色 山種美術館蔵
1枚だけ写真撮影OKの作品があったので、すかさずパチリ。
絵のまわりの表装もオシャレでいいね。
Rちゃんも私もしっかり文章を読んで鑑賞する。
「気品があって、お顔もやさしくてキレイだね」
「着物も色のセンスとか、組み合わせがとてもステキ」
と二人で小声で感想を言いあいながらまわった。
〔上村松篁〕
明治35(1902)年~平成13(2001)年
京都に生まれる。母は上村松園。
1984年、文化勲章受章。
近代的造形、色彩感覚を取り入れた花鳥画で知られる。
息子の松篁の作品はひたすら鳥・鳥・鳥!
私もインコを3匹飼っているので、鳥に対しては親しみはある。
けれど松篁の場合、自宅で鳥を大量飼い(その数1,000羽以上!)していたので、さらに鳥に対する造詣が深かったという。
表情があっていいね~
それ以外にも、鏑木清方など同時代に活躍した画家の絵も展示されていた。
2時間ほど鑑賞して、美術館のカフェでお茶をした。
二人ともカフェが気になっていたので、お昼前でも気にしない!

誰が袖
松園の美人画「春芳」をモチーフにした練り菓子。
打ち掛けを練り切りで、白梅を淡雪羹で表現したとのこと。
あんは胡麻入りのこしあんで、モダンな味わいで美味しかった。

「春芳」 HPより拝借
ランチはRちゃんチョイスの恵比寿駅近く路地裏のお店へ行くことにした。
ご飯を食べる時は、どのお友達とでかけても私が探すことが多いのだけど、
もう今回はRちゃんまかせ。
たまには他人チョイスのお店で食べてみるのも新鮮でいい!

前菜 写真はこれのみ
一方Rちゃんは、
「松園は好みじゃなかったけど、実物を見てみるとすごくよかった。
自分じゃ行かなかっただろうから、Aちゃん(私の本名ね)に誘わってもらってよかった」
と喜んでくれた。
ランチ後、健脚なRちゃんと街歩きをしながらひたすらおしゃべりに励む。
大橋まで歩いて、イタリア菓子専門店「ラトリエモトゾー」に寄る。
イタリア菓子専門というのがそもそもめずらしいのか、午後の早い段階でほとんどの商品が売れきれ!
タルトをお目当てにしていたのに、今回もフラれた涙
左:マルモロ。アーモンドとビターチョコレートのマーブルケーキ。
見た目とはちょっと違うやさしい味わい。
右:アメデオ。新商品なので買ってみた。
コーヒーは奄美大島で民宿を営む、年の離れたお友達から送られたもの。

「マカロンの原点といわれるイタリアのアマレッティに、シシリー産のアーモンドとカカオニブで香ばしく仕上げました」と書かれている

まだまだつぼみ段階の目黒川沿いの桜(3月17日なので…)

それでもところどころ花を開かせていた
数日前まで暖かったのに、急に肌寒い曇り空に戻ったこの日。
二人とも何となく薄着で、寒さをしのぐためにひたすら歩いた。
帰りは中目黒から電車に乗って帰宅。
なんとこの日は1万2千歩も歩いていた!
【東京富士美術館】八王子市
上村松園・松篁・淳之 三代展
別の日にchérieちゃんと出かけた。
松柏美術館をはじめとするさまざまなところから貸し出された絵画が展示されていた。
とてもじゃないけど、数時間で見るにはもったいないほどのボリュームである。
こっちにこそ、お目当ての絵画が展示されていた。

HPより拝借 花がたみ
大正4(1915)年 絹本着色・額装 208×127㎝ 松柏美術館蔵
能の「花筐(はながたみ)」を題材にしている。
あらすじは、継体天皇の皇子時代に寵を受けた照日の前(てるひのまえ)が、形見の花筐を手に都に上り、紅葉狩りに行き逢った帝の前で舞うという内容。
袴の赤と同色の太い枠が絵のまわりを飾っていた。
それがまたセンスいい~!
撮影不可だったので、そのよさを紹介できないのがとっても心残り…
あまりにステキだったので、3回も行きつ戻りつして眺めた。

HPより拝借 万葉の春
息子・松篁の代表作。
これもなかなかイイねぇ。
で、どこかで見たことあると思ったら、井上靖著「額田女王」ゆかりの絵だった!
大阪で中学3年生をしていた時に友達から借りて読んだ本だ。
最後の展示には孫・淳之の作品も並ぶ。
ここまで来ると、集中力はとぎれ気味だけど、最後の気力をふりしぼって眺める!
〔上村淳之〕
昭和8(1933)年~
京都に生まれる。
1994年 松柏美術館を開館。
2013年、文化功労者となる
花鳥画を通して人間の内面を描き出す。
のちのち調べてみると、どうやら鶴の作品が人気らしい。

HPより拝借 月汀
たまたま絵葉書で買っていた。
心が優しくなるような絵だと思う。

HPより拝借 兎Ⅰ 上村松篁作
同じく購入した絵葉書。
このうさぎ達もかわいい!
3時を過ぎた段階で、能楽師のワークショップが始まるという。
なぜ能なのかというと、それは松園自身が能を趣味としていたこともある。
描いた絵画にも能にゆかりの深いものが多数ある。
私がドンピシャで一目ぼれした、「花がたみ」もそう!
レイヤー陽子さんという能楽師さんが、軽快なトークで聴衆をぐいぐいと引き込んでいく。まったくの初心者向けに「能とは何ぞや」を話してくれるので、何となくわかったような気になった。
能の所作の解説の後、実際の舞も披露してくれた。その中に「花がたみ」も含まれていたので、さらに嬉しくなった!
能はいいね。
女性であってもおじいちゃんの役をやったり、しかも声色を変えずに舞うそうだ。
YouTube辺りで能についてちょっと学んでみようかなという気にもなった。
でもね、せっかく多摩地方まで出かけるのだから、そして美人画の上村松園を見に行くんだからと思って、同じ日にもう一つ博物館を訪問してみた。
【青梅きもの博物館】青梅市

160年以上前に建てられた蔵を改造している。
ここもずっとずっと前から訪れてみたいと思っていた博物館。
源氏物語の熱狂的なファンを自任する私としては、五衣唐衣裳(いつつぎぬからぎぬも:十二単の正式名称)をまじかで見たいもの。
でも関東に住んでいると、そういった機会は非常に限られてしまう。
大阪で高校生をしていた時に、学校を休んで京都の葵祭とか時代祭を見に行きたいと思ったものだったが、そのハードルは高すぎた…。
地元の中之島図書館で、写真集を借りて眺めるのが精いっぱいだったなぁ。
そういった月日を経て、初めて十二単を見たのは明治神宮ミュージアムでのこと。
たしか孝明天皇の内親王着用の単衣(ひとえ)を見た覚えがある。
でも十二単の一部分のみだったような。
十二単そのものを見てみたい!とずっと思っていたのが、今回やっと機会を得ることができた。
たまたま皇室衣裳展が開催されている。
入館して初めて知ったのだが、季節ごとに大幅に展示の入れ替えをしているらしい。
まったく違った内容の展示になるとのことなので、この機会に訪れることができてよかった!

HPより拝借 雅子皇后ご成婚時の十二単(複製)
ガラスで仕切られることもなく、ナマでおめもじすることができた。
おお、これこそまさに!
あ、袴(はかま)が渋い赤なのは、未婚扱いだからなのねと一人納得。
既婚者だと明るい赤になる。
館長さん自ら説明をしてくれるので、いろいろ勉強になった。
もっといろんな展示もあったけど、ここでは割愛。
ここまで生暖かい目で、流し読み/斜め読みしてくださり、ありがとうございます。
最後に上村松園のことばを紹介して終わろうと思います。
「よい芸術を生んでいる芸術家に、悪い人は古来一人もいない。みなそれぞれ人格の高い人ばかりである」
いつかの日か奈良の松柏美術館へも行かなくてはね。