
私の趣味の範囲は、自分で言うのもなんだけど、わりと広範囲。
でも全部一緒に同時進行的に楽しんでいるわけじゃない。
そんなことしていたら、時間もお金もモタない。
長い周期を経てそのシーズンがやってくる。
簡単に言えば、「いきなり、再び、夢中になる」といった感じだ。
2024年のNHK大河ドラマ「光る君へ」が放映されるに当たり、2023年秋頃から、私のなかでムクムク「源氏物語」趣味が復活してきた!
前回ハマっていたのは学生時代なので、かなり年季の入った趣味だ。
今現在の居住地は、平安時代的に言えば、京から離れた鄙(ひな)の地、武蔵国。
なので前回の大阪時代とは異なり、楽しむ趣味も限られる。
ひたすら首都圏で催されている展示会に足を運ぶのみ!
【その一】圧倒的な量の国宝にヘロヘロ状態
東京国立博物館(東京都台東区)
特別展「やまと絵 -受け継がれる王朝の美-」
2023年10月24日鑑賞

HPより拝借。黄色のポスターはインパクトがある

HPより拝借。紫式部日記絵巻断簡
これが見たかった!
赤ちゃん(将来の後一条天皇)を抱っこしているのが、道長の妻、源倫子(りんし)
手前中央の男性は、藤原道長
右側の背を向けているのが、道長と倫子の長女であり、赤ちゃんを産んだ藤原彰子(しょうし)
一緒に行ったRちゃんに、彰子は中宮(皇后)で両親より身分が高いから、顔を見せないような配置になっているんだと思うと、解説してみた。
平安時代に描かれた絵では顔はもっと小さい。
この絵巻は鎌倉時代に描かれたものなので、顔がより大きく描かれている。
もう一つ気になったのがこの絵!

HPより拝借。神護寺三像の源頼朝像
昔の教科書でおなじみの「源頼朝」
教科書では小さく載っているが、実はとても大きい。
色白で端正な顔立ちの貴公子に目の前で見つめられて、ちょっとばかりドキドキしてしまった笑。
しかも迫力の肖像画が3つも並んでいる。
等身大スケール、あなどりがたし!
そして私は想像した。
「推し」の等身大ポスターを自室に貼って、喜んでいる推し活中の人のことを。
こういう気分なんだろうな~

美術館の壁
この展示会では国宝作品が「これでもか!」というくらい怒涛の如く、次から次へと大量に展示されていた。
見ている私達に知識が乏しいため消化しきれないし、そして量が多すぎるため、丁寧に立ち止まる時間もなく、適当にはしょって眺めて終わった。
そして二人ともぐったりしていた。
本来なら数日かけて観たい展覧会だと思う。
ちなみにやまと絵と日本画の違いは何かと言うと、
<やまと絵>
平安時代にうまれる
それ以前には中国的な要素、題材で描いた唐絵(からえ)があり、
それに対比して日本の文化や自然の要素、題材で描いたもの。
<日本画>
明治時代にうまれる言葉。
日本画は、西洋絵画と比べて日本のものとして独立させた語。

午前中は仕事、ランチの後に美術館へ
ランチは、穴子の箱めしにした。
サイズは中間の中箱にして、煮上げと焼き上げの両方を乗せた「合いのせ」に。
穴子好きなので、とっても嬉しかった!
下町の味付けなので、味付けは濃いめ。
夕方には「やたら喉が渇くね」と二人で同じことを言っていた。
【その二】目からウロコの十二単
丸紅ギャラリー(東京都千代田区)
「源氏物語 よみがえった女房装束の美」
2023年12月22日鑑賞

1階のロビーにも巨大ポスターが飾られていた。
年末の忙しいなか、時間をこじあけて訪問
今回は入場料が500円ととても良心的。
前回の国宝だらけの展示会は2,000円もしたので、お財布に優しい。
(本来は2,100円だが、別の友人から割引券をもらった)
企業ビルの中にギャラリーがあるため、1階ロビーは地味な色合いのスーツ姿の男女がほとんどなのに、右端だけ異彩を放っていた。ギャラリーへの訪問者だ。
和装での来場者は入場無料とのことで、男女を問わず着物姿の人達が目立つ。
正絹の気品あふれる訪問着もステキなんだけど、私の心をとらえたのはポップでモダンなかわいらしいアンサンブルを着たお姉さん。
こういう着物を着てみたい!
展示量は少ない。
だけど濃密な内容。
私は嬉々として狭いギャラリー内を1時間以上ウロウロしていた。

HPより拝借。第35帖「若菜下」の明石の君
右前に襟を合わせていないことに注目。
天然素材で染められた衣は、艶やかというより、しっとりと落ち着いた雅びを表現していた。
ここでの展示は目からウロコがボロボロ落ちまくった!
①当時の絹糸は細いものだったので、1枚1枚の衣はもっと薄くて軽かった。
じゃないと何枚も重ねられない!

HPより拝借。見るからに軽そうな単衣
再現するに当たり、国産の細い絹糸の使用許可を得るのが困難だったとのことで、ブラジル産の絹糸を使用している。日系移民の人達が昔に日本から持ち込んだ蚕とのこと。
②現在の十二単は大正時代に近代化した。
平安時代の女性貴族は立ち上がることはほとんどなく、終日座ってすごし、
歩く時は膝で摺って歩いていた(膝行:くっこう)。
だけど、大正時代に十二単で立ち上がるために作り替えられたのは初耳だった!
時代とともに変化する十二単。
Tomekkoさんのイラスト、わかりやすい。

同じくTomekkoさんのイラストです
衝撃的なのは、衣を羽織っている感覚。
片方だけしか袖に手を通していない…

HPより拝借。イメージが湧くでしょうか。

HPより拝借。この体勢で日常を送る
裳(後ろに長く引いている白い布)は、頼りないヒモで結ばれていただけなのを、
大正時代にしっかりとした腰ひもをつけるようにしたらしい。
平安時代の装束を布地の段階から再現するというプロジェクト。
普段、メディアで目にする十二単とはまったく異なる趣があり、とても興味深かった。
さらに研究が進めば、博物館等で展示される平安時代の十二単ががらりと変わる可能性もあると思った。
【その三】源氏物語マニアたちが嬉々として集っていた
東京富士美術館(東京都八王子市)
源氏物語 THE TALE OF GENJI
─「源氏文化」の拡がり 絵画、工芸から現代アートまで─
2024年2月25日鑑賞
雨のなか小走りに美術館へ向かうと、またもや着物姿の男女がチラホラと。
学芸員の人に尋ねると、和装だと特典があるとのこと。
こんな雨の中はさすがに…
その後の手入れが大変だよね。

HPより拝借。
宇治十帖の大君と中君の姉妹だ!
茶色く変色した、ちょっと切れてたりする古い絵ばかり見てきたので、色柄の明るい大正時代の絵に感動する。
【その一】の「やまと絵」ほどではなかったけれど、かなりの量の展示品。
54帖のあらすじにそれぞれ源氏絵が展示されていて、それを読み、鑑賞するだけでもかなりの時間がかかった。
あ、もちろん、あらすじはすべて頭に入っております!
しかし、それからが苦戦。
マニア受け間違いなしの、屏風三昧。
屏風には、物語のハイライトがピンポイントでいくつか描かれている。
例えば、
「光源氏誕生」
「若紫をこっそりのぞき見する光源氏」
「養女の玉鬘を蛍で照らして、弟宮の恋情を湧きたたせる」
とか、こういう目立つシーンならわかる。
でも、黄色い山吹の花を持った女の童(めのわらわ:少女の召使)が渡殿(わたどの:渡り廊下のこと)を歩くシーンだけで「第24帖 胡蝶(こちょう)」だ!ってわかる人はどれだけいるのだろうか?
屏風の脇の解説文にはどこのお話と書いてはあるものの、一つ一つ確認するのも煩わしくなってきた。
まだまだ修行が足りないデス。
帰宅後、すぐに54帖のあらすじのアンチョコをこしらえました

HPより拝借。これはたぶん1つの物語だけ描いていると思う
鑑賞者のなかには、真剣なまなざしで展示物を長いこと凝視している人もいた。
あ、この人、マニアだ。
休憩場所では、若い男女の会話、いや女性の話が興味深かった。
源氏物語の登場人物は歴史上の誰それに当たるかを、熱心に男性に語っている。
私はまったくその分野には興味を持ったことがなかったので、その話をこっそり盗み聞き。
勉強になりました!

打衣(うちいで)。御簾(みす:すだれのこと)から華やかな衣装の一部を見せている
この鮮やかさは化学染料だと思う。
いろんなところで展示するのに、天然繊維だと劣化も早いのでこれはこれでいいでしょう。
狩野派とか土佐派とか、【その一】の「やまと絵」でも出てきたけど、勉強不足のため出たとこ勝負で鑑賞するしかない。
もっといろんなことを知っていればさらに深く味わうことができただろうにと、もどかしさを感じずにはいられなかった。

HPより拝借。現代アートの分野から
第1帖「桐壺」。これはもう光源氏誕生そのもの
気を取り直して、今回足を運んだのは十二単の着付けの実演会に参加するためだった。

一人では着られない。
二人の着付師の息の合った作業により、スムーズにどんどん着付けられていく。

完成のポーズ

高貴な姫君は人前で顔を見せることはありません。
ちなみに白い裳(も:後ろに引いているスカートのようなもの)の腰の部分が帯のようになっているのは、大正時代の工夫。
平安時代は立ち上がることが前提ではないため、細いヒモで簡単にくくっていただけ。
あとがき:
ちょうど一年前から、源氏物語に関連する美術館通いを始めたのに、なかなかブログ化できませんでした。どのように書こうかイメージが湧かず、書きたいのに書けない月日が続きました。
ところが先週から風邪を引き、1週間寝たり起きたりの生活を送るなかでゆっくり構想を練ることが出来ました(おかげさまで今では風邪は完治しています)。
あと2つか3つほどブログが続きます。
適当に流しながらでご覧ください。